紫苑と優助の亡骸を呆然としてみる幸村達……
その時、木の葉が舞い上がり中から二人が倒したはずの久久能智神が現れた。
「無様な姿だ……
己の命を落としてまで、私を倒そうとするなど無駄なこと」
二人の亡骸を見る幸村と信之……彼等の脳裏に、幼き頃の記憶が走馬灯の様に流れていた。
「さぁ……
お前達勇士の命でも、貰おうとするか」
そう言うと、久久能智神は手から無数の木の根を出し、才蔵達に攻撃した。彼等はすぐに避けたが、背後から素戔嗚尊が攻撃してきた。
「同時攻撃!?」
「どっちを相手に」
「素戔嗚尊を相手にして!!」
どこからか聞こえてきた声に、才蔵達は従い素戔嗚尊の攻撃を防いだ。彼等の背後では、久久能智神の攻撃を盛り上がった土壁が防いだ。
(土の壁?!)
その土壁に降り立つ者……白き髪を靡かせる明日花。
「明日花!!」
土壁から降りた明日花は、紫苑達の亡骸へと寄った。
「……」
「無様な死に方だ……
主でも無い兄弟の為では無く、自分等の子供を助ける為に、命を捨てるとは」
紫苑と優助の亡骸を交互に見る明日花……
(母さん……父さん)
『ほら、明日花!
こっちよ!』
『走ると転びますよ!明日花!』
『君が産まれてきてくれたおかげで、僕等は救われたよ』
『明日花はね……母さんにとって、希望の光だった。
だから、産まれてきてくれて本当に嬉しかった』
蘇る過去……明日花は、しゃがみ見開いている二人の目をソッと閉じた。
「どうするよ、明日花。
お主にはもう、父も母もいない……ましてや、主もいない……
お前の未来に、希望はないぞ」
「……」
「さぁ……私と一つになろうではないか……明日花」
久久能智神が明日花に手を添えた瞬間、突如腕が切り落とされた。
「?!!」
「未来に希望はないねぇ……
そう言われると、こじ開けたくなるんだよねぇ。希望という名の戸をね」
いつの間にか手にしていた刀を、肩に担ぎながら振り返った。
「お前さぁ、私に主がいないって言ったよね?
残念……
真田大助っつう、若頭がいるんだよ」
その言葉を聞いた幸村は、勝ち誇ったかのような笑みを浮かべた。
久久能智神は悔しそうな表情を浮かべながら、才蔵達に向かって攻撃した。だが才蔵達は、素戔嗚尊の攻撃を防ぐのに手一杯だった。
すると、明日花は手を挙げ何かの合図を送った。それに合わせて、才蔵達の背後に土が盛り上がり攻撃を防いだ。
「残念でした。
私は、光坂の頭。私の合図一つで、一族は皆動くんだよ」
「!!」
その声と共に、森から面を着けた忍達が姿を現した。その中には、鬼の面を着けた雷之介の姿もあった。
「っ!!」
「真田に告ぐ!!
我等光坂一族は、真田に生涯仕える!
そして、我等の主は……
真田幸村、真田信之、真田大助の三人だ!!」
振り返りながら、明日花は幸村達に笑みを見せた。
鋭く尖った木の枝を明日花目掛けて飛ばしてきた久久能智神に、遠くの茂みから構えていた光坂の者達は、火縄銃を向け一斉に弾を放った。弾は久久能智神の体を貫き焼いた。
「己ぇ!!」
顔を上げた久久能智神に、明日花は短剣を顔に突き刺した。素早く引っこ抜くと、飛び離れ起点を変え腰に挿していた刀と脇差を抜き、二本同時に振り下ろし久久能智神の体を切り裂いた。
久久能智神は、体から血を流しながら明日花を睨んだ。
「な、何故……
何故、回復を」
「しないかって?
簡単だよ……
その回復能力を、父さんと母さんは死ぬ間際に自分達の体に入れて、あの世へ持って逝ったんだから」
「小癪なぁ!!」
無数の木の根を生やし、それ全てを幸村達目掛けて放った。それを見た雷之介は、合図を送りその合図に応え、数人の光坂忍達が、彼等の前に土壁を作り上げ、攻撃を防いだ。
「これで、お前は終わりだ!!
光坂流究極奥義!!五行解法!!」
手を広げ上げる明日花の手に、火の玉、水の玉、雷の玉、風の玉が浮かび出て来た。すると数人の光坂の忍達が氷の玉、土の玉、草の玉を作り、それを彼女の手に放った。集まった七つの玉は巨大な一つの玉となり、それに向けて火縄銃を持った者が、銃口をその玉に向け弾を放った。
「これで、お前は消える……
(父さん、母さん……力を貸してね)」
巨大な玉は、弓矢に姿を変えそれを手に持った明日花は、弦に矢筈を嵌め弓を引いた。
「ま、待て!!
私はまだ!!」
「さようなら……
闇に染まった哀れな、久久能智神」
弦を放つ音が響いた……放たれた矢は、久久能智神の胸を貫いた。貫いた矢から火が放たれ、久久能智神はそこから火に飲み込まれ、悲痛な叫び声を上げながら灰となり消えた。
風が吹き明日花の髪を靡かせた。彼女は刀を手に素戔嗚尊と戦う才蔵達の元へ、駆け寄り参戦した。
明日花が久久能智神を倒した頃、六郎は目と鼻から血を流しながらも、決して力を弱めることなく水鏡法を出し続けていた。それは幸村達を命懸けで守るためであった。
「六郎、無茶だ!!無茶だったんだ!!だってもう」
「退かぬ!!
十勇士が欠けたとて、成さねばならぬのだ!!ここで我等が引けば全てが滅ぶ!!」
「でも!!」
「儂等が守らねばならぬ人の世を!!
これが定め(運命)よ」
その時、六郎の腹部に黒い槍が貫いた。
「お前のその守り、実に邪魔よの月読。
主を守るのに、力を回し過ぎたな」
口から血を吐き出す六郎……
すると目の前に雲が浮き出てその中から素戔嗚尊が姿を現した。だがその時、六郎の足元に火縄銃を構えた十蔵が寝転び銃口を、素戔嗚尊に向け弾を撃ち放った。撃たれた素戔嗚尊の体の一部が溶岩となり十蔵の体に当たり、彼の体は酷い火傷に負われた。撃たれた事に激怒した素戔嗚尊は、彼の左胸に大剣を刺し込んだ。
「十蔵!!」
「下がれ六郎!!お前は守りの要!!欠けるわけにはいかん!!」
「十蔵!!」
「十蔵!!」
「おおおおおおおお!!
人の世を頼みましたぞ!!幸村様!!」
「筧のオッチャン!!」
「某は先に、逝かせて頂きます」
「うむ」
「奥義……一擲炸裂破!!」
引き金を引き、弾を撃ち飛ばした。その瞬間、十蔵の銃は砕けそれと同時に素戔嗚尊の片腕が撃ち落された。
砕けた銃は火花を放ち爆発し、十蔵の体を焼き尽くした。
「十……蔵」
才蔵達の元へ駆け寄った明日花は、大粒の涙を流した。