決戦の準備をする勇士達……
「オラ、引け!」
十枚の紙を握り、皆に差し出す才蔵……
「くじ?」
「今日の死合いの、順番決めんだよ。
相手方の出方が、分かんねぇ以上いろいろ考えても仕方ねぇ」
「だからって、クジ?」
「一番公平だろ?」
「幸村様は何て?」
「『そういえばお前、与頭(リーダー)になったそうだな。
今度の死合いの順番は、才蔵に任せる』と」
手に籠手を着けながら、皆がいる部屋へ入ってきた優助が、才蔵の代わりにそう言った。
「優助さん、凄ぇカッケぇ!!」
「昔着ていた戦闘服に、着替えただけですよ」
「何か、昔の戦闘服って露出度高かったんだね」
そう言いながら、明日花は手袋の紐を結びながらやって来た。
「わぁあ!明日花ちゃんも凄い格好!」
「へへ!幸村が、死合い見るなら一族の格好しろって!」
「一族?」
「母さんが、光坂一族っていう一族の仲間で、その一族の正装をしろっていうから」
「そう言えば……明日花ちゃん、死合い出ないの?」
「出ないらしいよ。明日花は出たいのに」
「何度も言いましたでしょう……
君は徳川に知られちゃいけない人物。只でさえ信幸様の前に出すのは危険だと」
「信幸に会いたくないもん。明日花は母さんに会いたいだけだもん」
「明日花!!」
「とにかく、いちいち意見聞いて、まとまんねぇのも面倒だし、さっさと引いて決めようぜ。
アナと六郎さんは、残った順番でいいってさ」
「んじゃ」
「何番だろう!?」
「……」
「南無」
「では」
「ん」
「よ」
才蔵が握る紙を、一人一枚ずつ引いて行った。それぞれが引いた紙を裏返し、書いてある番号を見た。
「オイラ五番手!」
「アタシ四番手!」
「六番」
「某は……」
「……」
「拙僧は一番だ」
清海の言葉に、鎌之介は手に持っていた紙を握り、突然清海に飛び掛かった。
「ふっざけんな!!
何でテメェが、一番なんだよ!!それ、よこせ!!」
「鎌之介!!」
その騒ぎに、傍にいた十蔵が慌てて鎌之介の手を止めた。
「止さんか!!
クジで決まったことに、文句を言うな!!」
「うるせぇ!!
この半月、俺がどんだけ死合いを楽しみにしてたと思ってんだ!!」
「やっぱり、こうなったか……」
「久しぶりの殺し合いだぜ!?心置きなく、ぶっ殺せるんだ!!
まずは、この俺にやらせろ!!」
「拙僧の一番は、神のお導きだ!!譲れん!!」
「神ぃ!?
んなもん、いるわけねぇだろ!!大人しく、譲れってんだよ!!」
「……鎌之介、一度決まったことだ。
潔く、受け入れんか!」
「何で!!」
「十蔵の言う通りだ。受け入れろ」
「は!?」
「死合い出られるだけいいじゃん!」
「女々しいと思わんか!!」
「女々しいだと!?」
(あっ)
(言っちゃったよ、禁句……)
「誰に向かって、言ってやがる!!」
怒りから、風を起こした鎌之介……
その時、何かを察した明日花は、手で耳を塞いだ。
「もういい!!
テメェ等から、殺す!!」
「何を騒いでいるんです!!」
鎌之介が攻撃しようとした時、障子が開き術を使いながら、六郎が大声で怒鳴り込んできた。その術に、鎌之介は大人しくなったが、傍にいた清海と鎌之介を注意していた十蔵が当たり、三人とも伸び倒れてしまった。
「ふぇー、危機一髪だった」
「才蔵、与頭としてキチンと皆を纏めなさい!」
「は?
いや……スンマセン…」
「十蔵、とばっちり受けたぞ」
「与頭でしょ?才蔵。
介抱してあげなきゃ」
「は?」
「そうね、鎌之介も何とかして頂戴」
いつの間にか障子に寄りかかり、才蔵に言うアナスタシア……
「死合いが始まるまで、縛って転がしておけば?」
「お願いね!才蔵」
「何で俺が!?」
「あら?与頭なんでしょ?」
「!」
「与頭なら、部下の世話は当たり前ですよ」
「ここの片付け、頼みましたよ」
「は、はい……(与頭って、なんか損な役割じゃね!?)」
死合い会場へ着いた才蔵達……
上田には、賑わう民の声や、数々の屋台……
そんな賑わう音に、少々キレ気味の才蔵……
「……祭りかよ」
「賑やかでいいだろう!?」
「アホか!!
俺等をさらして、どうすんだよ!!
しかも、何だ!あの大戦表!!俺等の名までさらしやがって!」
「うるさいのう。
何だ才蔵、覆面なんぞしおって」
「忍が堂々と、顔出せるか!!」
才蔵に近付いた幸村は、才蔵の覆面に手を伸ばし剥がした。
「オッサン!!」
「隠すな!これは絶好の機会だ!
つい先日、兼続の奴が直江丈なるモノを、狸に突き付けおってな。
家康は怒り心頭、今やいつ戦が起きてもおかしくない。
どこもかしこも、豊臣に就くか徳川に就くかで、騒いでおる」
「だから」
「であればこそ兄上も、このような死合いを仕組んだのであろう。
今ここで、我等を負かせば、徳川派の力を知らしめることができる」
「そして、大名の多くを、徳川に引き入れようってか?」
「だが……
相手がお前等ならば、そう上手くはいくまい。
隠すことは無い、その力を世に示せ」
「……」
「ここでの我らの勝敗に、天下の趨勢がかかっておるのだ!」
「……本気かよ、オッサン」
「無論だ」
「……ったく、話がデカくなってきやがったぜ!」
「信幸様!!ご到着!!」
佐助の言葉に、一同は城門に顔を向けた。城門を潜り中へと入ってくる信幸を先頭に、後ろから籠が九個列になって入ってきた。
「来たか……」
「何?あれ」
「籠?」
「……優助、紫苑の奴いないよ」
「恐らく、仕事にでも行っているんでしょう。
何、すぐに着ますよ」
信幸一同が席に着くと、一番手である清海がいつの間にか舞台へ上がり準備していた。
「フハーハッハ!!腕がなるのう!!
緒戦んは、拙僧に任せよ!!」
「清海!?」
「いつの間に……」
「気の早い輩が、いるようだな……
客を待たず、勝手に舞台へ上がるとは、何たる無礼な!」
「では、この儂が礼儀を教えてやろう」
『壱』と書かれた紙を貼った籠から、その声が聞こえ信幸はその籠に、勝ち誇ったかのような笑みを溢して言葉を返した。
「お頼み申し上げます、義父上(チチウエ)」
「あい、分かった」
返事をすると、籠から手が伸び中から鹿の毛皮を被った大男が姿を現し、舞台へ上がった。
「さぁ小僧、その鼻っ柱叩き折ってやろう」
(義父上だと!?)
(あれって……)
「鹿さんだぁ……」
「(何故ここに……)明日花!」
目元だけの面を取ろうとしていた明日花を、優助は殴り面を着けさせた。
「死合いが終わるまで、決して取らないように」
「は~い(殴らなくたっていいじゃん)」
「鹿の角……
まさか、徳川家重臣にして、生涯無傷、天下無双の侍大将……
本多平八郎忠勝!!」
(兄上も本気できちゃった……)