黄泉の中へと引きずり込まれる伊佐那美……その時、才蔵は彼女の腕を掴み共に黄泉へと入って行った。
「才蔵!!何を!?」
「憎き!!憎き光の男よ!!」
才蔵は、ズボンのポケットに手を入れそしてある物を出した。
それは、伊佐那海に着けていた簪……奇魂(クシミタマ)だった。
「は!今更、奇魂などで妾は抑えられんわ!!」
「……これから始まった。
奇魂を着けた伊佐那海と出会ってから俺は……“生きて”来られたんだ。
目まぐるしく、色々な事に巻き込まれて……上田に辿り着いてオッサンや佐助、皆に出会って……
煩わしい時もあったけど、俺の居場所が出来た。
帰るぞ、伊佐那海」
手を差し伸ばす才蔵……そんな彼に、伊佐那美は黒い槍を彼の左肩に刺した。
「ああ、帰るとも。世を滅ぼすために」
その時、黒い槍が白く燃え出した。燃えた槍はやがて、桜の花弁を舞い散らした。
「出雲の地下で、神主のオッサンが言ってた。
俺がお前の『光』だと……お前が闇に落ちようと、いつでも俺が照らしてやる!」
才蔵の言葉に反応するかのようにして、奇魂は花弁となり舞い散り伊佐那美の周りを回るかのようにして、風に乗った。
(この花……)
「……才蔵は、出雲で自分が光だと悟った」
「そしてその光が花となり、奇魂と合わさって……
幸魂(サキミタマ)になる……(役目を果たすために、私から消えて才蔵の元に行ったんだね……)」
花弁を触る伊佐那美……彼女は、才蔵の服の裾を掴みながら言った。
「……思い出した……キラキラしたあの日々……
あの日……アタシの世界に、強烈な光が射したあの瞬間……あの日から、アタシは幸せだった。
才蔵」
「伊佐那海」
目から涙を流しながら、伊佐那海は顔を上げ才蔵を見つめた。
「只々、大切なものを守りたくて忘れてた……とても大事な事だったのに」
「思い出したじゃねぇか」
「……うん
でもね……アタシは地上にいちゃいけないの。
分かっちゃった……」
才蔵から離れる伊佐那海……
「そんな顔しないで才蔵。アタシもう、怖くないよ。
大好きな上田……大好きな皆……大好きな才蔵……
皆がアタシを幸せにしてくれて、アタシを伊佐那海にしてくれた。
だから今度は、アタシの番」
目に涙を溜め笑みを浮かべながら、伊佐那海は言った。そんな彼女を、才蔵は力強く抱きしめた。
「それじゃ、俺の借りは貯まる一方じゃねぇか」
「そうだね……お蕎麦の借りも、まだ返して貰ってなかったよ……
いつか返しに来てくれる?いつか、巡り会えた時に」
「……ああ……必ず……行く……」
才蔵から離れる伊佐那海……才蔵から離れた彼女は、彼を現世へと押し戻した。
「ありがとう…才蔵」
現世へと戻ってきた才蔵……
同時に、黄泉の扉は閉まった。そして、花弁となりその形は消え去った。穏やかな風が吹き、花弁は宙を舞った。
宙を舞う花弁を幸村達は見届けた……
才蔵は涙を流しながら悔しがった……
佐助は静かに涙を流した……
半蔵は宙を舞う花弁を黙って見届けた……
明日花は、紫苑の煙管を口に銜えながら、頬に涙を流し空を見上げた……
大助は大量の涙を流して空を見上げた……
『ありがとう……皆……
さよなら』