BRAVE10S~二つの力   作:花札

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「は?花火?」


才蔵の部屋へ来た伊佐那海は、嬉しそうに頷きながら話した。


「さっき町の人が言ってたの!

今夜、花火大会やるんだって!才蔵、一緒に見に行こう!」

「嫌なこった」

「えぇ~!!

一緒に行こうよ~!才蔵!」


横になった才蔵に、伊佐那海は揺らしながら駄々を捏ねた。


空に咲く花と約束

城下町……

 

 

町を一人歩く優助……その時、風に吹かれて飛ぶ一枚の紙を、彼は拾った。

 

 

(……花火大会)

 

「この上田でやるんですよ!花火!」

 

 

声が聞こえ後ろを振り返ると、そこに見覚えのある顔があった。

 

 

「……もしや、花代?」

 

「お久し振りです!隊長!」

 

「花火職人に成られたと聞いていましたが……

 

立派になりましたね?」

 

「ヒヒ!

 

隊長達も見に来て下さいよ!凄いの打ち上げますから!」

 

 

嬉しそうな笑みを見せると、花代は去って行った。紙を見ながら、優助は軽く溜息を吐くとふと昔のことを思い出した。

 

 

それは、明日花がようやく立ち始めた頃のことだった。

 

先程みたいに花代は来るなり、近くの町で花火を打ち上げるから来て欲しいと、やって来た。優助はあまり乗り気では無かったが、紫苑と明日花は乗り気だったため仕方なく行った。

 

 

約束の町へ着き、空を見上げた時だった。

 

 

“ドーン”

 

 

爆発音と共に、空に大きな花火が上がった。

 

 

『うわぁ!綺麗!』

 

『これは凄いですねぇ』

 

『いいもの見せて貰ったなぁ……

 

ねぇ、優!』

 

『?』

 

『また花火大会があったら、皆で来よう!』

 

『……

 

 

そうですね』

 

 

笑みを浮かべた紫苑に釣られ、優助も笑みを浮かべた。二人に釣られるかのようにして、紫苑に抱かれていた明日花は、笑い彼に手を伸ばした。伸ばしてきた手を優助は握り一緒に、花火を見た。

 

 

その事を思い出しながら、優助は城へ戻った。

 

 

「才蔵!いいでしょー?ねぇー!」

 

 

城から出て来た才蔵に伊佐那海は、纏わり付いていた。彼は嫌そうな顔をしながら、聞かぬふりをしていた。

 

 

「どうしたんですか?こんな真っ昼間から」

 

「あ!優助さん!

 

優助さんも、花火大会行きませんか?」

 

「花火大会(もう知っていたんですか……)」

 

「お菓子持って、皆で!

 

ねぇー才蔵!行こうよ!」

 

「行きたきゃ、清海達と行け!

 

俺は忙しいんだ」

 

「えぇ!!」

 

「……才蔵」

 

「?」

 

「断れなくなるかも、しれませんよ?」

 

 

笑みを溢した優助は、そのまま城へ入って行った。その笑みに才蔵は、恐怖を抱いた。

 

 

 

夕方……

 

 

町を見渡せる丘……そこに敷物を敷く十蔵と六郎。

 

 

「いやぁ、優助!花火大会を教えてくれて感謝するぞ!

 

酒を飲みながら花火!実にいい」

 

「仲間から、是非皆さんでと言われたものですから」

 

(確かに、断れない……)

 

「珍しいね!父さんが、才蔵達を誘うなんて」

 

「こういうのは、大勢で見た方が楽しいですから」

 

「フーン……!

 

あ!甚と清海!」

 

 

三つの酒が入った樽を持った甚八と清海に、明日花は駆け寄った。

 

二人が樽を地面に置いた時だった。

 

 

“ドーン”

 

 

「わぁ!上がった上がった!」

 

「見事な花火だのぉ!」

 

「こりゃ酒が進む」

 

「甚、明日花も!」

「明日花!!」

 

 

優助に怒鳴られた明日花は、彼から拳骨を貰った。

 

 

「何度も言っているでしょう!お酒は駄目だと!」

 

「母さん飲んで良いって言ったもん!!」

 

「そうだぞ、優助。

 

堅苦しい事言うな!」

 

「言うな!」

 

「甚八さん!!」

 

「いいじゃないですか!優助さん!」

 

「そうだよ!明日花の姉ちゃん、お酒強いんだから!」

 

「飲んでいる間は未だしも、その後の処理が大変なんです」

 

「大変?何が?」

 

「……それは」

 

 

“ドーン”

 

 

また大きな花火が空に上がった。その花火に、幸村達は見取れ空を見上げた。甚八の傍にいた明日花は、優助の膝に座り、一緒に空を見た。

 

 

花火を見ていた才蔵は、ふと後ろの茂みから何かの気配を感じ取り振り返った。生える木々や茂みに降り立つ無数の人影……

 

その気配に、アナスタシアと佐助も気付き、武器を握ろうとした時だった。

 

 

「大丈夫ですよ」

 

「?」

 

「彼等は僕の元部下達です。

 

恐らく、この花火を見に来たのでしょう」

 

「わざわざ上田に来たのか?」

 

「この花火自体が、仲間が上げているんです。

 

その人が声を掛けたのでしょう」

 

「……」

 

「皆、出て来て一緒に見れば良いのに」

 

「あの人達は、陰でこの信濃を守っているんです……

 

そう簡単には、姿を現しません」

 

「フーン……

 

あ!」

 

 

空に大きな武田菱の花火と六文銭の花火が、同時に上がった。

 

 

「ほぉ、真田の家紋に武田の家紋か」

 

 

上田の町にいた雷之介も、上田の町を見渡せる場所から紫苑、町の別の場所にいたお頭達も、その花火を見ていた。

 

 

「ねぇ、父さん」

 

「?」

 

 

花火が上がる中、明日花は小声で優助に話し掛けた。

 

 

「花火大会またあったら、今度は母さんと一緒に見よう!」

 

「……そうですね」

 

「約束だよ!

 

次見る時は、母さんと父さんと明日花、それに才蔵達!皆でお酒飲みながら!ね!」

 

 

笑顔を見せながら小指を出した明日花に、優助は自身の小指を絡ませ指切りげんまんをした。




“ドーン”


上田に上がる無数の花火……


その光景を、離れた場所から才蔵達は眺めていた。


その中には、明日花もいた……彼女は腰に挿していた脇差と短刀を地面に置き、その前に酒が入ったお猪口を置いていた。


「……約束、果たせなかったね。


皆で来ようって言ったのに」


お猪口に入っていた自分のお酒を、飲みながら明日花は打ち上がった花火を見た。

花火の光が照らす幸村達に目を向けた時だった……


彼等の傍に、十蔵にアナスタシア、清海と伊佐那海が共に花火を見ている姿が見えた。


「……!」


何かの気配を感じた……

後ろに懐かしい気配を。振り向くことが出来なかったが、そこには恐らくいる……優助と紫苑が。


(……そうだよね……

父さんが、約束破るはず無いよね……)


「母上ー!!」


声が聞こえハッとした時、先程まで見えていた清海達は消えていた。

駆け寄ってきた髪を結った子供は、明日花に駆け寄ると彼女の膝にダイブした。その後から黒い袴を着た男が、やって来た。


「才蔵達と見るんじゃなかったの?」

「やっぱり母上と一緒がいい!

あ!また上がった!」


上がった花火を指差しながら、子供は嬉しそうな顔をして言った。男は明日花の隣に座りながら、共に花火を見上げた。
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