東方家族録   作:さまりと

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おはこんばんにちは。さまりとです。
結局一人としかやってません。楽しみにしてた方がいたら申し訳ありません。
少し短いですが、ゆっくりどうぞ。


第11話 【VS十六夜 咲夜】

 

 

「大丈夫か?」

「ちょっと遠慮無さすぎじゃないですか?」

 

 強力な一撃をくらい、美鈴はそのまま地面に寝そべっている。心なしかプスプスとちょっと焦げているようにも見えなくもないが、まあ気にしない。

 

「手を抜かれるのは嫌だろ?」

「それはそうですが……しかし悔しいですね。負けるというのは」

「そう思えるならまだまだ強くなれるさ。それじゃあ約束通り、ここは通させてもらうぞ」

 

 門を開け、紅魔館の敷地に足を踏み入れる。大きくこまめに整備されたであろう美しい庭だ。中心には大きな噴水が設置されており、風に乗る水しぶきが真夏の暑さを少し和らげてくれる。

 このような状況でなければ純粋に楽しめただろうにと、少し残念に思う。

 

「あ、そういえば多分この後また強い奴等が来ると思うから覚悟しとけよ」

「博麗の巫女……それに白黒の魔法使いですか。今日は全く骨が折れますね。私はしばらく動けませんので、通るのはご自由にどうぞ」

「ま、お互い頑張ろうな……じゃないな。今日はもう頑張らないでくれ」

 

 そう言い残すと信は館の敷地に足を運んだ。それを動かない体で見送り、しばらく回復を待っていた美鈴は思わずクスリと笑ってしまう。敵である自分に気兼ねなく接し、なんなら職務を怠慢してくれと頼んできたのだ。

 

「あれ程の力を持つというのに……おかしな人ですね」

 

 空を見上げた。自分の主が出した霧が太陽を隠して不気味な赤みを地上に降り注がせている。こんな不気味な状況で臆せず首謀者の本拠地に乗り込む彼は何者なのか。何も彼のことは分かりはしない。しないが、初めて人間に尊敬の念を覚えた。

 

 

 

 

 

「すごいな……レミリアって奴はどんなセンスしてるんだ?」

 

 紅魔館の中は広くそれ以上に早く目につくのが、館の目に入る全てが真っ赤に彩られていた。とても目によくないカラーリングである。

 

「どっちにいけばいいんだ?」

 

 レミリアがいるところまでいけばいいのだろうが、とても広い。なにも考えず進めば迷子になってしまうだろう。この状況であれば仕方ないと、美鈴の館の構造の知識を共有する。そんなことを考えてると急に3本のナイフが飛んできた。

 

「ッ!!」

 

 咄嗟に指で挟み凶器を受け止めた。そうしなければ間違いなく命中していたのだから投げた人物は相当の腕前の持ち主である。

 

「いきなりなんだってんだ……」

「侵入者?美鈴はいったい何してたのかしら」

 

 声をする方向を見るとメイド服を着こなした銀髪の少女が睨んでいる。どうやら美鈴の上司に当たる人物の様で表情が不機嫌で染まっている。

 

「責めないでやってくれ、俺が強かっただけだ」

「……あなた、名前は?」

「明渡 信。そっちは?」

「十六夜 咲夜。これ以上進むなら遠慮はしないわ。お嬢様のところにはいかせない!」

「女の子がそんな物騒なもん投げるんじゃありません!」

 

 どこからか取り出されたナイフを投擲された。これまた正確に、更にはしっかり関節や急所を狙ってきているのでかなりエグイ。

 

「普通、刃物が飛んできたら避けてしまうものだと思うけど?」

「刃物の扱いには少し心得があるもんでね!」

 

 会話の中でナイフを投げ、それを受け止めと、なんとも物騒なキャッチボールが繰り広げられる。しかし、キャッチする度ナイフを背負ったリュックに放り込む信の行動に疑問に思う。

 

「なぜ私のナイフをそれに入れてるのかしら?あげる為に投げている訳では無いのだけれど?」

「あんたみたいにナイフを投げてくる人は中々いないが、飛び道具を主に利用する奴にやらせちゃいけないことは決まってる」

「聞かせてもらっても?」

「喜んで。単純な話、外れたやつを回収されて無限に攻撃されるのが一番怖いんだ。だから一つ一つこっちが回収するのが一番手っ取り早い」

「成程ね。ならこれならどうかしら!」

「ッ!『武刃』〈秋水〉!!」

 

 瞬間、弾幕ともいえる大量のナイフが眼前に展開される。どれもが信めがけて推進力をもって襲い掛かる。とっさに秋水で出来るだけ弾く。しかしいきなり過ぎた為何本かかすってしまう。

 

「おいおい……今のなんだ?」

「悪いけどマジックの種を教えるほど野暮じゃないわよ!」

「そう何度も食らうかっての!『迷惑』〈刃の舞〉」

 

 スペカを発動し増殖と防御を同時に行い、秋水によって刃の舞の飛ぶ方向を強制する。ほぼ最大値となった迷惑な弾幕だ。簡単には避けることは出来ない。

 

「やったか!?」

「残念」

 

 背後から咲夜の声が聞こえた。秋水を構えながら後ろを振り向きナイフを対処する。

 

「今度は瞬間移動か。ちょっとずるくないか?」

「言ったでしょ、遠慮はしないって」

「まあいいが、出来ればりょっくを返してくれ。ってかどうやって取った?」

 

 今まで回収したナイフを入れていたリュックを一瞬で奪われてしまった。本当に一瞬で、あまりに早すぎる。それに加え、先ほどの瞬間移動だ。こんなことを出来るものと言えば……

 

「それも自分で考えなさい」

「………時間操作か?」

「ッ!!」

「羨ましいな。男なら誰でも一度は夢見る能力だぞ」

「驚いた……でも他人に羨まられても嬉しくないし……もう終わらせて貰うわね」

「こっちだって時間がないんだ。気が進まないがこっちも能力を使わせてもらう」

「あなたがどんな能力だろうと、私は職務をまっとうするだけ。『幻世』〈ザ・ワールド〉!」

 

 咲夜は時間を止め、ナイフを設置しようとする。止められた時間の中で動けるのはそれを実行した咲夜のみ。光よりも速く、誰も認知出来ない状態で攻撃を仕掛ける。自他ともに認める無敵と言える『時間を操る程度の能力』

 だが、今回ばかりは相手が悪かった。

 

「なんで……動けるの?」

 

 止められた世界の中で。十六夜咲夜のみが動けるはずの中で。明渡信は止まらなかった。

 

「お前との『時間』を共有した。もうその能力は俺に通用しない」

 

 ここで始めて彼女を前に霊力による肉体強化を行う。突然目の前の人間が今までにない速度で動き出すのだ。動揺は隠せない。

 

「速い!」

 

 一瞬で距離を積め霊力弾を直接その体にうちこむ。

 

「これで終わりだ」

「……申し訳ありません……お嬢様」

 

 

 

 


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