東方家族録   作:さまりと

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おはこんばんにちは。さまりとです。
ゆっくりどうぞ。


第13話 【狂気】

 

「それがさっき言ってた狂気ってやつか」

 

 信は一瞬で理解する。どうしてレミリアがフランを地下から出さなかったのか。どうしてフランがレミリアに嫌われてると思ってしまったのか。

 

「その名の通り、まさに狂気って感じだな」

「遊ボッ♪」

「あぁ、遊ぼうか」

「アハッ♪」

 

 その瞬間フランから大量の弾幕が放たれるが、それ自体にはあまり集中せずに回避する。彼は今、フランを元に戻すためにはどうすればいいか。それだけを考えていた。

 

(まず狂気ってのがなんなのか確かめないとな)

「きゅっとして……」

「ん?」

「ドカーンッ!!」

「うおっ!」

 

 フランが上に手をむけて握った瞬間、その直線上の天井が爆発したように崩れ、そのまま信に降りかかってきた。

 

「!!」

「『禁忌』〈恋の迷路〉」

 

 信が移動した場所にむけてフランがスペカを唱え弾幕を展開する。

 

(ここだ!!)

「『幻符げんぷ』〈かくれんぼ〉」

 

 このスペルはただ単に姿を見えなくするものだ。これを利用して狂気の正体を暴く。

 

(狂気を共有する)

 

 能力を使い狂気を自分のなかにも発生させる。

 

(なんだ……これ……何もかも無くしてやりたい)

 

 狂気を共有して理解する。これをずっと持っていたフランはどれだけ苦しかったかを。

 

(でもまぁこれくらいなら……)

 

 信は自分のなかに芽生える異常な気持ちを押さえた。決してフランが精神的に弱いというわけではない。明渡 信は鋼メンタルである。

 

(それに、この狂気って奴は……)

 

 そして、抑えることが出来たからこそ分かった物がある。

 

「信ッ♪ドコ~?モシカシテ壊レチャッタ~?」

「そんな簡単に壊れないよ」

「アハッ♪ソウ来ナクッチャ♪『禁忌』〈フォーオブアカインド〉」

 

 影が増える。猟奇的な笑顔は数を増やし、対象に描ける圧を強める。身体的に人間の上位と言える吸血鬼。そして先程の天井の破壊した彼女の能力。それが目の前で、四倍になった。

 

(おいおい…まさかとは思うが……)

「「「「『禁忌』〈レーヴァテイン〉!コレデ壊レチャエ♪」」」」

「『舞踏ぶとう』〈暗黒盆踊りあんこくぼんおどり〉!!」

 

 四人のフランは全てが実態。手にした大剣を小さく細い腕で大きく振り回す。どれに当たろうとも圧倒的な質量と速度によって潰されてしまう事だろう。

 だからこその舞踏。このスペルは機械的に敵の攻撃を避けきるスペルだ。だがこれだけではいつまでもなにも出来ない。

 

「もちょっと我慢しててくれ。すぐにそっちにいくから」

 

 作戦は思い付いた。後は実行するだけ。

 

「『光符』〈豪華絢爛〉!!」

 

 部屋に収まりきらない圧倒的な光が二人を包み込む。

 

「ウッ!!」

「さあ、フラン。いくぞ?」

(フランの魂を共有する!!)

 

 激しい発光が治まっていく。ゆっくり、ゆっくりと。そして本来の明るさに戻った部屋の中で、先ほどまで激しく戦っていた二人は眠るように床に倒れこんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと。ここがフランの魂か」

 

 そこはどこまでも際限なく広い真っ白な空間だった。しかし、そんな空間で不自然に存在感を出す扉が二つある。片方は真っ赤な扉。もう片方は真っ黒な扉。

そして赤い扉は鎖でぐるぐる巻きにされ、南京錠の様なもので止められている。

 黒い扉を少し開けると、部屋の中心で赤いモヤの様な物が佇んでいる。襲い掛かってくる様子もなく、ただそこに佇んでいるのだ。

 扉を閉め、次は赤い扉を開けるために南京錠を破壊する。

 

「フランいるかー?」

「えっ!?信!!どうしてここに」

 

 あくまでここは精神世界。行ってしまえば夢の様な他人が入ることがあり得ない世界だ。そこに先程まで現実で話していた人物が当たり前のようにいたら驚いて当然だ。

 

「まあ、俺の能力だ」

「でも、鍵みたいなのは……」

「壊した」

「え!?」

「で、多分向こうの部屋にいるのが狂気だろ?」

「う、うん。多分」

「向こうの部屋の中を見たことは?」

「ううん。普段は私が向こうに鍵をかけて抑えてるんだけど、狂気が無理やり出てきたらこっちに鍵がかけられちゃって……」

 

 主導権の奪い合っているのだ。あくまで狂気はフランの感情の一つ。それが理性や欲など他が全て集まった目の前のフランと奪い合いが出来てしまっている。精神的の幼い彼女が持つにしてはあまりに強く、大きい特出した感情だ。狂気を抑えるためには目の前のフランが成長して抑えられるようになるしかないのだ。

 しかしそれは、長い時間を必要とするものであり、一朝一夕でどうにか出来るものではない。

 

「俺の能力は本人の許可さえあれば何かを奪うことが出来るんだ。例えば、視力とか味覚とか」

「まさか……」

「お前の中の狂気を持っていく。許可をくれ」

「ダメだよそんなの!!そんなことしたら……今度は信が……」

「それなら大丈夫だ。一回外で狂気を『共有』してな、抑えられたんだよ」

「えっ!でもそんなこと」

「出来ちゃったんだよ」

「でも、迷惑じゃ……」

「そんなわけないだろ。俺はお前のことをもう妹みたいに思ってる。だから今踏み出す道の一歩目を俺が手伝うんだ。最初に教えておいてやるぞ。生き物ってのはな単体だと絶対長く続かないんだ。困ったら周りを頼れ!で、周りに困ってるやつがいたら助けてやれ。少なくとも、紅魔館の中にはお前を助けてくれるやつがたくさんいる。レミリアや咲夜、パチュリーや美鈴や小悪魔もいる。勿論俺もだ」

「……うん」

「今回は俺がどうにか出来る。だから勇気をだして俺を信じて頼ってほしい」

「うん」

「フラン、狂気を俺の中に持っていく許可がほしい。許してくれるか?」

「うん!」

「目が覚めたらレミリアと話をしような。けど、俺は少しやることがあるからちょっと待っててくれ」

「うん!ありがとう、信!」

 

 大きく返事をしたフランの頭を撫でると、能力を解除しこの場を去る。同時に狂気もこの場に無くなった為二つの部屋の存在も無くなった。

 隔てが無くなった白く広い空間で、少女は恩人を待つことにする。

 

 

 

 

 

 場所は変わってまた白い空間。しかしここは先程まで居たフランではなく信自身の魂の中だ。そこには彼だけでなく、連れてきた赤いモヤも漂っている。

 

「さあ狂気君。お前自我あるだろ」

『よく気づいたな。フランドール・スカーレットも今まで気付く素振りを見せなかったぞ』

 

 問いに対して当たり前のように答えた。信が共有した際に気付いたのはこれだ。狂気はフランの別人格として完全に孤立し、自我をもって行動していたのだ。

 

「あいつはお前のことを抑えられなかったからな、仕方ない」

『で、俺の影響を一切受けなかったお前はいったい何者だ?』

「ただちょっとメンタルが強いだけだよ」

『はっ!簡単にいってくれるな。……無駄話はもういいだろ。俺を封じ込めるんだろ?』

「お前が悪意たっぷりのトンデモ人格だったらそれもいいかもな。だけどそうじゃない」

『どういうことだ?』

「お前、人と関わりたかったんだろ?」

『な!?』

「そんな姿でも簡単に分かるさ。現に俺のことを支配しようと試そうともしない。フランをあんな風にしてたのは狂気としての本能……いや本質か?」

『お前はなにもわかってない!!俺は〈狂気〉!!人を狂わせる存在だ。そんなやつが救われようなんて甘ちゃんもいいとこだ!』

「だけど、狂わされない人物がここに一人」

『だが……』

「素直になれ。495年もずっと足掻いてたんだろ?もう報われちまえ!……俺も素直になろう。俺って寂しがりだからさ、お前みたいないいやつとずっと一緒にいたいんだよ」

『……後悔するなよ?』

「そんなの生まれたときからしないって決めてるんだ」

『変なやつが宿主になったもんだ』

「よし。じゃあ名前を決めよう」

『は?』

「ずっと狂気なんて不吉な呼び方するわけにはいかないだろ?う~んなにがいいか」

『本当に変なやつだな』

「500年近く暇してたんだから一緒にいるのも悪くないだろ?……よし決めた。お前の名前は『共』今日から明渡 共だ!」

『狂?』

「『ともに』って言う意味の共だ。狂気にも読み方が近いから違和感はあんまりないと思うが」

『共……か。ずっと変なやつと共にいるわけか……』

「どうだ?」

『悪くないな。これからよろしく頼むよ、信』

「よろしくな、共。……お前どうしたんだ?急に光りはじめて」

『わからんがどうにかなるみたいだ』

 

 どんどん光は増していく。そして目も開けられない程の光が迸る。

 そこにはもう狂気の姿はもうない。

 

「共……お前……」

 

 そこには新しい『明渡 共』の姿があった。

 

「どうやら名前をもらったことで体が形を得たみたいだな」

「……とりあえず、服着ようか」

 

 見覚えのある全裸の姿で。

 

 

 




私は誰かが犠牲になる展開が嫌いではないですが得意じゃないです。全員助かれよぉ……ってなります。
さあ狂気改め共は誰の姿になったのでしょうか。
それは次回のおたのしみ。
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