東方家族録   作:さまりと

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第15話 【もちろん】

「ただいま」

「おかえり。遅かったわね」

「悪いな。なに手伝おうか」

「とにかく料理して。たくさん作んないと間に合わないから」

「そんなに呼んだのか?」

「呼ばなくても嗅ぎ付けてやってくるのよ」

「やっぱりか...。魔理沙やアリスは?

「アリスは魔法の研究。今手が話せないって言ってたわ」

「魔理沙は?」

「逃げたわ。準備が嫌だったみたいでね。気付いたらいなかったわ」

「oh...ってことは準備すんの俺たちだけか」

「そうよ」

「何時から宴会なんだ?」

「日が沈んだらね。レミリアたちは太陽に当たれないから」

「そういえばあいつら種族はなんなんだ?」

「吸血鬼らしいわね。それより口を動かしてないで早く準備しなさい」

「はーい。(吸血鬼ってまじか...。流石幻想郷ってところか)」

 

ちょっと驚きながらも準備に取りかかった。今は大体5時半。この時期は日が沈むのが遅いから宴会が始まるのは7時半ごろってところか。急がないとな。

 

『信。こいつは誰なんだ?』

『話に出てた博麗の巫女だよ。名前は博麗霊夢。今は居候させてもらってる身なんだ』

(そうか。共は誰のことも知らないから俺が教えてやんないといけないのか)

 

新たなことに気付き知りつつ、宴会の準備に取りかかった。

 

 

 

 

・・・少年少女奮闘中・・・

 

 

 

 

 

「おーい霊夢~。きたぜ~」

 

時刻は7時すぎ。魔理沙(薄情者)が現れた。

 

「やっと来たわね...できた料理運ぶくらい手伝いなさい!!」

「わ、わかったぜ」

 

疲れている霊夢に怒鳴られ少し怯えていた。まあ、同情はしない。

 

 

 

 

魔理沙が来た後から博麗神社にはどんどん人が来た。人よりも妖怪の方が多いが。

 

「信!!」

「うわっ!チルノ!!今火使ってるんだから危ないだろ」

「すいません信さん。止めたんですけど」

「こらチルノ、邪魔しちゃ悪いだろ」

 

チルノや大妖精、慧音も来たようだ。そして壁からこちらをうかがうように妹紅もいた。

 

「みんなも来たのか」

「あぁ、今日は楽しませてもらうよ」

「もこたんも楽しめよ!」

「...」

 

なにも言わずに去ってしまった。

 

「前のことをまだ気にしてるのかあいつは」

「まあそのうち機嫌なおるだろ。もうちょっとで作り終わるから待っててくれ」

「信、早くしてね!」

「はいはい」

 

フランもそうだがこいつや大妖精やルーミアももう妹みたいなもんだな。

 

『顔が広いな……』

『どっかの誰かとは違うからな』

『はて、誰のことかな?』

 

共にみんなのことを説明した。もうすぐ始まるし、急がなければならない。

 

 

 

「よし、終わった。久々だな、こんなに一気に作ったのは」

 

盛り付けも終わり、後は運ぶだけとなった。その最後の料理を運んでいくと、ちょうどあいつらが到着したようだ。

 

「お、きたか」

「お兄さまーー!!」

 

フランが手を振りながら駆け寄ってきた。

 

「フラン、今日はたのしめよ」

「うん!!」

 

首謀者が到着し、宴会が始まった。

 

「おい魔理沙、お前未成年だろ。酒のんじゃ不味いだろ」

「ふっふっふ。そういうと思ったぜ。けどな信、ここは幻想郷だぜ。外界と違って酒は自由に飲めるんだ。さあ、お前も飲め!!」

「俺はいいよ。外来人だし」

「そんなの幻想郷じゃあ関係ないぜ」

「俺は気にするんだよ」

 

魔理沙の勧めを頑張ってかわしつつ、

 

「この料理美味しいな。これをあいつが作ったのか……」

「その通りだぞもこたん」

「げ、出た」

「出たってなんだ出たって」

「わ、悪い。それよりも今回の異変解決はお前も関わってたらしいな」

「俺はただフランと遊んでただけだよ」

「フランって?」

「チルノたちと遊んでるあいつさ」

 

フランはチルノやルーミアたちと走り回っていた。

 

「馴染むの早いな」

「ずっと一人だったからな。精神年齢が近い友達ができて嬉しいんだろ。」

 

なかなか話す機会のなかった妹紅と話し、

 

「あややややっ、あなたが噂の外来人ですか」

「多分そうだよ。お前は?」

「申し遅れました。私は文々。という新聞を書かせていただいている鴉天狗、清く正しい射命丸です。お見知りおきを」

「明渡信だ。で、俺になんのようだ?」

「はい、今回の異変解決に関わっていたという話を耳にしましてね、是非とも取材をさせていただきたいと」

「なるほどいいぞ、なんでも聞いてくれ」

「では早速、好きなタイプは?」

「黙秘」

「今いる気になる異性は?」

「黙秘」

「今この場で一番可愛いと思うのは誰か」

「黙秘」

「...なんでも聞いてくれって言いましたよね?」

「あぁ、答えると入ってないがな。それになんで色恋沙汰の質問ばっかりするんだ?」

「そちらはあまり気が進みませんね……」

「いってもいいが、つまらん回答になるぞ?」

「構いません。とにかく答えてください。好きなタイプは?」

「ない」

「今気になる異性は?」

「いない」

「今この場で一番可愛いと思うのは?」

「全員可愛い」

「黙秘の方が良かったですね」

「だろ?」

「質問を変えましょう。あなたの趣味は?」

「強いて言えば、家事・マッサージ」

「弾幕ごっこの経験は?」

「魔理沙とチルノに今のところ全勝中だぞ」

「あなたの能力は?」

「共有する程度の能力」

「あややっ!こちらの方が面白い記事がかけそうですね。でもそんなすんなり答えていいんですか?」

「ダメなのか?」

「ありがたいですよ。ただ今まで取材をまともに受けてくれた人なんて数える程度しか知りませんから」

「安心しろ。今答えたのは全部本当だからな。」

「はいっ。ご協力感謝します。」

 

ゴシップ誌を書いているであろう記者の取材を受けた。

宴会が始まってからしばらくし、霊夢の様子が気になる。なにかソワソワとし、こちらをチラチラと伺っている。

 

「なあ、霊夢」

「何よ?」

「どうしたんだ?さっきから落ち着かないで」

「はぁ~。あんたには謝らなきゃいけないと思ってね」

「どういうことだ?」

「あんたが帰れなかった理由がなんとなくわかったのよ」

「マジかっ!?...でもどうしてお前が謝るんだ?」

「帰れなかった理由で一番可能性があることだったからよ」

「?」

「読んだ方が早いわね。出てきなさいよ紫、いるんでしょ?」

 

霊夢はそう誰もいない空間に向かって呼び掛けた。

 

「さすが霊夢ね。見えないのに一発で当てるなんて」

 

そこから誰かが出てきた。その瞬間、回りが静かになった。

 

「あなたに会うのは初めてよね。はじめまして、幻想郷の創設者の一人、八雲 紫よ。ゆかりんって呼んでね☆」

「明渡信だ。よろしくなゆかりん」

「っ!?」

「どうした?」

「いえ、ほんとに呼ばれたのはあなたが初めてでね。嬉しいのよ」

「そうか。それで霊夢、帰れなかった理由ってのはなんだ?」

「そのスキマ妖怪の仕業ってことよ」

「ゆかりんがか?」

「ええ」

「魔理沙っ」

「は、はい」

「霊夢のいってることには根拠があるのか?」

「まあ、今まで気付かないように細工できたのも紫くらいだと思うぜ」

「そうか...。ゆかりんの仕業なのか」

「てへっ☆」

 

カチンッ

 

「なあ、ゆかりん」

「何かしら?」

「今俺は無性にあんたをぶん殴りたい」

「「「ッ!?」」」

「だがまあ、理由くらいあるだろ。聞かせてほしい」

「た、たのしくなりそうだったから~なんて」

「それでが理由か?」

「え、えぇ」

「やっぱりぶん殴りたいが、あんたみたいな美人の顔にアザをつけるわけにもいかないわけだ」

 

ポキ、ポキ、と手の間接をならしながら紫に近づく。

 

「だがあんたのおかげでこの幻想郷のみんなと親しくなれたってのも事実だ」

 

今度は首の関節をならしながらさらに近づく。

 

「し、信く~ん。怖いわよ……。ゆかりんって呼んで?ゆかりんって……」

「ゆかりん!!」

 

ビクッ!!紫は冷や汗を流している。

 

「それを差し引いても愛するべき兄弟達から俺を引き離したのも事実だ」

 

足を止め、全身にありったけの霊力と魔力を流す。

 

「そんなわけでだ。一回絞め落とす」

 

その場にいたみんなが思った。超怖いと。

 

「なんなのこの異常な霊力と魔力は!?」

「知らなかったの?霊力も魔力も持ってるのに加えて両方とも多過ぎて底が知れない。信が来た初日にだだ漏れになったのに気付かなかったの?」

「確かに感じはしてたけど寝てたから。それにすぐ抑えられたし……。」

「何か言うことは?」

「逃げた方が良さそうね」

「その方がいいと思うわ」

 

そういって紫はスキマに逃げ込んだ。

 

「あれがゆかりんの能力か?」

「そうよ」

「なるほど」

(ゆかりんの能力を共有する)

 

そして信もスキマを開く

 

「ちょっと捕まえてくる」

 

そういって信もスキマのなかに入っていった。

 

「いよいよチートだな。信は」

「本当ね。今までにないくらい怒ってたし」

「アリスっ!研究はいいのか?」

「頑張って終わらせてきたのよ。それにしても」

(((((((怒った信超怖ぇ)))))))

 

みんなそう改めて思った頃に、またスキマが開いた。

紫が逃げてきたようだ。

 

「お願い霊夢っ!助けてっ!ってか何であの子境界を操れるのよっ!?」

「それが信の能力よ。反省することね」

「そ、そんなぁ」

「今度はこっちか...」

 

信も現れた。その表情は阿修羅を思わせるような怒りの表情になっている

 

「ひいっ!」

 

紫は霊夢の後ろの逃げ隠れた。大妖怪の紫でさえ恐怖を覚え、立ち向かおうとさせない圧倒的霊力と魔力。それに加えられた存在感。その場の誰も信を直接なだめようとする気になれなかった

 

「もう一度きくぞ。なにか言うことは?」

「謝りなさいよ。信ならちゃんと許してくれるから」

「本当に?」

「可能性は十分にあると思うぜ。あいつすごい聞き分けいいし」

「謝るなら早くした方がいいわよ」

 

紫に信と付き合いが一番長い3人が助言する。そうすると紫は覚悟を決めて前に出てきた。

 

「ごめんなさい」

「よろしい」

 

信も霊力と魔力を止める。

 

「許してくれるの?」

「まだ起こってるけど、弟や妹にも言ってるからな。やりすぎはいけないって」

「はあ~~」

 

体の緊張がとけ、紫はその場に崩れ落ちた。

 

「じゃあ早速俺を家に返してくれ」

「「「「「「ッ!!」」」」」」

「えぇわかったわ。もうあんな目に遭うのはこりごりだし」

「本当に帰っちまうのか?」

「あぁ、世話になったな」

「おにいいさまあああああ!!」「しいいいいいいんっ!!!」

 

フランとチルノがどいいに突っ込んできた。

 

「「本当にいっちゃうの?」」

「あぁ、悪いな。向こうに待たせてるやつらがいるんだ」

「でもっすぐに帰ってくるよね?」

「難しいな、俺自身が行き来出来る能力を持ってるわけでもないし」

「でもさっき紫の能力を使ってたでしょ。それがあれば自由に...」

「どうやらゆかりんの能力は持続が難しいんだ。それに扱いも複雑だったそれにたよるのはできないかな。慧音、悪いな。寺子屋行けなくなった」

「構わないさ。この一週間君からは色々学ばせてもらったよ」

「そういってもらえるとありがたいよ」

「どうしてもいくのね」

「急で悪いな。世話になった」

「...元気でね」

「あぁ、みんなも元気でな。じゃあゆかりん頼むよ」

「わかったわ」

 

紫がスキマを開く。

 

「またいつか会おうな」

そういって信はスキマに入っていった。

 

 

 

 

 

信がいなくなった宴会場はとても静かになっている。

 

 

 

「いっちまったな...」

「そうね」

「こんなに急に帰ってしまうなんてね」

「うぅぅ。おにいさまああ」

「しん...ぐすっ」

 

チルノとフランに関しては泣いてしまっている。

 

「フラン、チルノ、大丈夫だぜ。あいつ『またいつか会おうな』っていってたんだぜ。きっとそのうち帰ってくるさ」

「「本当?」」

「信さんを信じようよ。チルノちゃん、フランちゃん」

 

ふたりを魔理沙と大妖精がなだめている。

片や一方では

 

「最後に話さなくても良かったの?咲夜」

「えぇ、そこまでの仲ではありませんので」

「本音は?」

「とても残念です。こんな気持ちは初めてでしたので」

「良かったわね」

「皮肉ですか...」

「そのまんまの意味よ」

「どういうことですか?」

「すぐにわかるわ」

 

霊夢はその場に座り込み酒をちびちびと飲みはじめた。

 

「おい霊夢。お前は平気なのか?」

「平気よ」

「なんでだぜ?」

「勘よ」

「勘?」

「えぇ、多分信はすぐに戻ってくるわ」

「本当かっ。でもいったいどうy「「お兄いちゃああああああああああああああああん。」」」

 

静かな宴会場に2つの幼い声が響いた。みんな慌ててそちらに顔を向ける。

 

「えっ!?」

 

霊夢の下に誰かがいる。ちょうど霊夢が座っているところに顔がありそうだ。そしてその体の上には幼い子供がのうつ伏せになってのっている。霊夢はそこからいち早く移動した。

 

「「「「「「「信っ!!!」」」」」」」

「お、おう。ただいま...」

そこには先程去った明渡 信がいた。

「ほんとに帰ってきたわね」

「俺も想定外だった。...なあ、霊夢」

「なに?」

「白って言うのはやっぱりゴフッ!!」

 

顔を真っ赤にした霊夢が2人の子供の間を通し、信のみぞおちに鉄拳を炸裂させた。

 


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