帰ってきてから弁当箱を洗い、晩ごはんを食べ、風呂に入り、じぶんの部屋に行った。
『信、あんまり自分を責めるな。チルノも平気そうだったじゃないか。』
その通りだ。自分を責めていてもなにかが変わるわけでもない。だが許せない。自惚れていた自分が。浮かれていた自分が。
「信にい、ちょっといいか?」
恭助が来たようだ。だけど...
「今は1人にしてほしい。」
「失礼しまーす。」
「おいっ。」
拒否したのに関係なく入ってきた。
「なんか向こうであったの?」
「色々あったんだよ。」
「もし、その色々で自分を責めてるんだったら話してくれよ。」
「よくわかったな。」
「信にいが本気でイライラしてる時は基本自分に対してだからね。明渡家では常識だよ。」
「...チルノって知ってるだろ?」
「うん。」
チルノの冷気のことについて。そして何を引き起こしたのかを話した。
「ふうん。」
「俺はどうすればいいんだろうな。」
「チルノと約束したんでしょ。さっさと果たせばいいじゃん。」
「簡単にいってくれるな。」
「でも、それしかないでしょ?信にいが納得できるやり方って。」
「その通りなんだが、また間違えたらどうしようと思っちゃうんだよ。怖くて怖くてしょうがない。」
「『石橋は砕いてから渡る』だっけ?信にいの座右の銘。」
「あぁ。」
「じゃあさっさと砕いて渡っちゃいなよ。今の信にいは叩くどころか渡ろうともしてないんだから。『常に余裕をもって』でしょ?」
「・・・。」
「早く立ち直ってよ。みんな心配してるんだから。」
「・・・恭助。」
「ん?」
「チルノって能力持ってるか?」
「やっぱり信にいはそうでなくっちゃな。チルノの能力は『冷気を操る程度の能力』だよ。もしかしてもうなにか思い付いた?」
「いやまだだ。だから今日はもう寝る。」
「本当に切り替え早いな。それじゃ、おやすみ。」
「あぁ、ありがとな。おやすみ。」
恭助が部屋から出ていき、部屋には信一人となった。
(失敗を引きずってる場合じゃないよな。)
方法を考えるために布団に潜り込む。そして意識を夢の世界に飛び込ませる。
(やっぱり考え事をするならここだな。)
信は明晰夢を見ることができる。だからいつもは寝ているときに勉強の復習をやっていたりする。たまになにかじっくり考えたいときも寝て、夢の中で考える。
『お前はこんなこともできるんだな。』
真っ白い空間のなかに共が現れた。
(そっちこそ、人の夢に普通は入ってこれないだろ。)
『あいにく普通じゃないからな。』
(無理して付き合う必要はないんだぞ。)
『私がじぶんの意思で付き合うんだ。それならいいだろう?』
(・・・ありがとな。まずは情報の整理からしよう。)
共と一緒にどうすればいいかを文字通り、一晩中考えた。
(これがやっぱり一番だな。)
『...やっぱりそれは信に負担がかかりすぎるんじゃないか?』
(これくらいはしないとな。)
『...無理はしないでよ?』
(もちろんだよ。...そろそろ朝だな。行ってくる。)
夢から覚め、時計を確認する。時間は午前4時ぴったりだ。
『というか寝たことになるのか?』
「多分...。頭使ってるのになんで疲れがとれてるのか不思議だけどな。」
今更な不思議を思いつついつも通りの朝をすごす。
恭助「おはよう、信にい。」
信「おはよう、恭助。昨日は悪かったな。」
道場に向かう途中で恭助と一緒になった。
恭助「なにかいいアイディア思い付いた?」
信「あぁ、さっそく今日試してみようと思う。」
道場に着くとまだ誰もいなかった。
信「お礼といっちゃなんだが、今日は稽古の相手になるよ。護道はあまりみんなに知られたくないんだろ?」
恭助「助かるよ。それじゃあ、よろしくお願いします。」
信「これくらいにするか。」
恭助「ありがとうございました。」
もうそろそろ真達が来てもおかしくない時間帯だ。護道は切り上げていつも通りの組手に移る。
愛「2人とも早いね。」
愛が丁度やって来た。切り上げておいて正解である。
そのあと真と静も来てみんなで朝の稽古をいつも通りやった。3人も昨日のことを気にしていたようだが、信が立ち直ったのがわかりすぐに稽古に集中した。
信「そろそろ朝飯の準備してくるよ。」
時間になると稽古を終え、手際よく朝食の準備をする。
一同「「「いただきます。」」」
準備を終えみんなが集まってから食べ始めた。
広美「信にいもう平気なの?」
信「あぁ、もう大丈夫だよ。」
空「強太たち昨日の信にいを見て怯えちゃってたんだよ。」
強太「そんなことないよっ!」
深太「でも確かに昨日の信にいは怖かった。」
高太「常に無表情はさすがにな~。」
海「ゴンさんみたいだったからね。」
信「わるかったよ。でもゴンさんはいいすぎだろ。」
恭助の行った通りみんな心配していたようだ。
(しっかりしなきゃな...。)
昨日のことを話ながら食べ進めた。
一同「ごちそうさまでした。」
信「風人、華、いくぞー。」
風人&華「「はーい。」」
信「それじゃあ、行ってくるよ。」
静「無理はしないでくださいね。」
真「先に言われた...。」
信「大丈夫だよ。留守番よろしく。」
責任をとるため幻想郷へ向かった。