東方家族録   作:さまりと

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第28話【切り札】

「ウギャオオオオオオオオオッッ!!!」

 

化け物は先程まで交戦していた魔理沙とアリスを見失って尚も破壊を続けている。

 

「っ!おいっ、あの倒れているやつらって...。」

 

化け物近くにたくさんの妖怪が倒れている。

 

「みんなっ!!」

 

やはり子分の妖怪のようだ。

 

「おいおいまずいぞ。」

 

暴れまわっている化け物がこのままいくと足元に倒れている妖怪を踏み潰してしまいそうだ。

 

「みんなっ!あの妖怪たちの避難を頼む。あいつは俺が引き付ける。」

「「「わかったわ(ぜ)」」」

「よし、いくぞっ!」

 

5人は化け物の元へ急ぐ。

 

「おいっ!!お前の相手は俺だっ!!!」

 

声を聞き化け物は振り返る。

 

「ギャオオオオオオッ!!!」

「『武刃』〈秋水〉。さあっ、いくぞっ!」

 

 

 

 

(ぐっ...でかいくせになんて正確な攻撃だよ。)

 

化け物の攻撃は鉤爪と拳を組み合わせ信の体を正確に捉える。しかもその一発一発が直撃すれば粉砕、あるいは切断される威力だ。

そして信がこの戦いに勝利する条件は、月が隠れるまで待つことである。だがそれは化け物の猛攻をあと約6~7時間耐え続けなければならないということだ。

 

(出し惜しみなんてしてられないな。)

「『一刀(いっとう)』〈陰鉄(いんてつ)〉っ!」

 

秋水とは別のもう一本の日本刀のような物を召喚する。

 

「第2ラウンドだ。」

「ギャウウウウウウウウッ!!!」

 

 

「ぐっ..。。」

 

信も持てる技とフルに活用して攻撃をいなし続ける。だが、傷つけてはいないという条件と相手が圧倒的馬鹿力、更には正確な攻撃をしてくるという事実がある。それを長時間続けるのは信でも容易なことではない。

 

『信、大丈夫か?』

「まだまだ行けるさ。」

『私の時みたいにこいつの体から本能を奪うことは出来ないのか?』

「本能ってのは生物の根源だ。それを奪っちまったら助かったとしてもこいつがこいつじゃなくなるかもしれない。」

『少しだけ奪うことはできないのか?こいつが本能を抑えられる程度まで。』

「俺が奪えるのは全部の時だ。少しだけ持っていくことはできない。」

『じゃあ...。』

「覚悟はしてたさ。月が消えるまで持ち堪えてみせる。」

「う...があ..ああ...。」

『「ッ!?」』

 

突然相手の動きが鈍くなった。

 

「た......む。...こ...て....れ。」

「お前っ!意識があるのか?」

「少..し..の..間だ...けだ。」

 

依然として体は攻撃してくるが先程のようなパワーもなければ正確さもない。

 

「たの...む。俺..を...し...れ。」

 

その妖怪は苦悶の表情を浮かべながら必死に伝えようとする。

 

「俺..を...俺..を...」

 

その妖怪が伝えたかったことは...

 

 

 

 

 

 

「殺...し...て...くれ。もう...傷つ...け..たくな..い。」

 

 

 

 

 

 

 

「お前...。」

「ギャウウウウウウウウウッ!!!」

 

突然動きが戻った。先程の言葉が最後の抵抗だったようだ。

 

「しまっ!」

『信っ!!』

 

突如戻った動きに反応しきれず、とっさに威力を吸収したものの流すことはできない。そのまま力に任せた凪ぎ払いによって吹き飛ばされてしまう。

 

「うわああああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで全員ね。」

 

一方霊夢たちは妖怪の救出を無事終えていた。

 

「おいっ、大丈夫か!おいっ!!」

「全員意識を失ってるだけみたいね。」

「それだけで十分奇跡だぜ。」

「それよりも速く信の所にい「うわああああああ!!」」

「「「「ッ!!!」」」」

 

4人の頭上を信が吹っ飛んでいった。

 

「「「信っ!!」」」

 

そのまま見えなくなるまで飛んでいってしまった。

 

「あの野郎っ!!信をっ!!」

「まあ落ち着け魔理沙。」

「だってあいつ信をっ!...て信っ!!」

「落ち着けって。」

 

さっきまで吹っ飛んでいた信が4人のところにいる。能力で戻ってきたのだろう。

 

「大丈夫?」

「なんとかな。でもこのままじゃ持たなそうだ。俺も、あいつも。」

「ボスもかっ!?」

「さっき俺に伝えてきたんだ。「殺してくれ、もう傷付けたくない。」って。」

「ボス...。」

「でも助けるんでしょう?」

「もちろん。」

「じゃあ全員でなら...」

「多分無理だな。あいつの相手をしててわかったが、交代で相手をし続けても夜明けまでは持たなそうだ。」

「じゃあどうするんだぜ?」

「まあ、俺がやるよ。」

「はあ?でもさっき全員でやっても持たないって。」

「持久戦ならな。だからすぐに終わらせる。」

「出来るの?」

「やってみせるさ。ついでに面白いもん見せてやる。」

 

不適に笑った信の笑みに、4人は不思議と安心できた。

 

「わかったわ。でももしもの時は...」

「そんなことさせないさ。そのために俺はここに居るんだからな。」

 

そう言い残し信は上昇する。他の4人もそれについていく。

 

『使うのか?』

(ああ。こういう時のための物でもあるしな。)

『何言っても止めないだろうしな。頑張ってこい!』

(おう、頑張る!!)

 

信はゆっくりと1人、化け物へと近付いていく。

 

「ウギャオオオオオオオオオオっ!!」

 

化け物は信に気付き、雄叫びをあげる。

 

「もう少しの辛抱だ。必ず助ける。」

 

そういった信は1枚のスペルカードを取り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『終ノ符(ついのふ)』〈無双乱武(むそうらんぶ)〉」

 

 

囁くように唱えた時、そのカードは優しい光を放っていた

 

 

 




やっと信くんの必殺技を出せました。終ノ符が先に出ちゃいましたけどこれからももっとスペルカードは出てきます。
では、次回もお楽しみに。

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