東方家族録   作:さまりと

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第34話【戻ってきた】

信「おーい。そろそろ行くぞー。」

 

夏休みが終わり、今日から2学期が始まる。今年の夏休みは信にとってものすごく長く感じた。

 

真「はあ~。もう新学期かぁ。」

愛「はやいもんだねぇ。」

 

もちろんそれは信だけである。

 

信「忘れ物ないか?」

恭助「大丈夫。」

静「準備万端です。」

強太「陸にいたちがまだ来てないよ。」

信「なんと!」

広美「空ねえと海ねえが今世紀最大の寝癖作ってたからね。」

高太「2人とも学校楽しみにしていつもより早く寝てたし。」

深太「なのになんで一番遅く起きたんだろ?」

空「陸早く!皆待ってる。」

海「陸早く!陸待ちだよ!」

陸「このやろう。」

急いだ様子で3人が洗面所の方から駆けてきた。

風人&華「「陸にいおそーい!」」

陸「無邪気に言われるとホントに辛い。」

信「これ全員だな。コト、留守番頼んだぞ。」

コト「任せてください。みなさんいってらっしゃい。」

一同「「「いってきます。」」」

 

出発したらまずは山を降りる。あまり整地されていないため、余計に足腰が鍛えられる。それでも学校まで約30分だ。

 

恭助「にしてもコトが神狼だったなんてな。」

 

コトや共や魔鬼のことは一昨日話した。皆最初はビックリしていたが「信にいなら仕方ない」と納得していた。

 

静「モコも狼でしたし。」

愛「そんで極めつけは式神ときた。」

真「色々ありすぎでしょ。羨ましい。」

信「受験生は勉強に集中しなさい。」

真「へーい。」

 

山を降りるとあまり坂がなくなる。そのせいか明渡兄弟の歩行スピードはやたら早くなり、ご近所さんの中では新幹線と呼ばれている。

 

信「風人、華、怪我には気を付けろよ。」

華「はーい。」

風人「いってきまーす。」

 

一番最初につくのは風人と華の保育園だ。コトの正体も明かしたし、幻想郷の寺子屋もあるし、もう保育園には行かなくていいんじゃないかとも思ったが、華も風人も友達が多いため最後まで通い続けたいらしい。

 

海「そういえば真にい。私たちはいつ幻想郷に行けるの?」

真「分かんないな、ゲーム通り異変が起こるとも限らないし。短くても2年かな。」

恭助「出てこないキャラがいるかもしれないしね。」

空「それは嫌だ。」

空&海「「信にいなんとかしてっ!」」

信「無理言うなよ。」

 

そんな話をしているうちに、三つ子と四つ子が通う小学校に着いた。

 

信「あんまり先生を困らせるんじゃないぞー。」

強太「もちろん。」

高太&深太「「適度に困らせる。」」

信「...お前たちもだぞ?」

海「もちろん。」

空「テキトーに困らせる。」

信「せめて真面目に困らせなさい。...広美、陸、頼むぞ。」

陸&広美「りょーかい。」

信「よし、楽しんでこいっ!」

「「「行ってきまーす」」」

 

7人を見送り、先生に心の中で謝りながらまた歩き始める。

 

真「先生も大変そうだな~。」

愛「でも前に海たちと楽しそうに遊んでるの見たよ?」

恭助「何気にこの地域の大人は鉄人揃いだからな。」

信「おかげで安心できるけどな。」

フェリーチェ『信っ!君の学校にはまだ着かないのかい?』

信『もうちょっと行ったらだよ。それにしても随分学校に興味あるよな。』

フェリーチェ『忍び込もうとしたらディーネとか旦那とかに止められてね。ずっと憧れだったんだよ。』

信『でもまあ、今日は始業式とテストだけだから面白いことなんにもないぞ?』

魔鬼『テストってなんなんだ?』

信『習ったことをちゃんと身につけられているかの確認みたいなものだよ。っと、そろそろ真たちの学校に着くな。』

???「「「おはようございますっ!!」」」

 

中学校の校門の前で異性のいい挨拶が聞こえた。こちらに向けられたものだ。

 

信「恭助、また舎弟増えてないか?」

恭助「舎弟じゃないよ。こいつらが勝手についてくるんだ。」

舎弟「そんなこと言わないでくださいよ~。」

共『こいつらは誰だ?』

信『恭助に懲らしめられた奴等だよ。恭助と静はよく不良の相手をするらしいんだが、たまに恭助に憧れて舎弟になりたがる奴がいるんだ。』

舎弟「ささっ、荷物お持ちします。みなさんの分も。」

恭助「持たなくていいって。」

真「んじゃお言葉に甘えて。」

愛「よろしくねぇ~。」

静「お願い。」

恭助「えっ!?」

 

断ろうとする恭助とは別に3人は簡単に荷物を渡した。

 

恭助「真にいと愛ねえはともかく静までっ!?」

静「人の好意は素直に受けとるべきよ。」

真「そうそう。」

愛「うんうん。」

舎弟「さっ!」

恭助「うっ!し、信にい...。」

信「舎弟は大事にな。」

恭助「...頼む。」

舎弟「はいっ!」

 

諦めた恭助は舎弟(仮)に荷物を渡した。

 

信「それじゃあ、いってらっしゃい。」

4人「「「「いいってきます。」」」」

舎弟「旦那、お気をつけて。」

信「おう。」

 

校門前で別れ、ついに1人になった。いつもはこの瞬間少し寂しさを覚えるのだが...

 

フェリーチェ『ついに次が信の学校なんだねっ!』

共『あとどのくらいなんだ?』

魔鬼『いざ近くなってくると緊張するな。』

 

今は常に賑やかなこのメンバーがいる。

 

(たまらなく嬉しいな。)

 

嬉しさを胸に秘めて、自分の学校に歩き出した。

 

 

 

 

 

フェリーチェ『ここかい?』

信『ああ、ようこそ我が学舎へ。』

 

約一ヶ月ぶりの学校だ。だが夏休みが濃厚すぎて何年ぶりにも思える。

 

?「よっ、信っ」

 

校門前で干渉に浸っていると突然後ろから声をかけられた。

 

信「錬っ!久しぶりだな~。」

燈「ホントだよ。夏休みの講習全部休みやがって。寂しかったぞこのヤロー!」

信「こっちにも色々あったんだよ。」

共『こいつは?』

信『こいつは燈。俺の幼馴染み兼親友だ。』

燈「早く教室にいこうぜ!皆お前に会いたがってたんだぞ。」

信「お、おいっ!」

 

 

 

 

 

燈「おいみんなっ!信が来たぞー!」

「久しぶり。」「元気してた?」「わーわー!」

 

燈に手を引かれて教室に特急で着き、席に座る暇もなくクラスメイトに囲まれた。

 

?「信っ!どこ行ってたのよ!?」

信「桜か、久しぶり。」

信『こいつは桜。春人叔父さんの娘だよ。だから俺の従兄弟だな。』

桜「え、ああ久しぶり。...じゃないわよ!夏休み入ったとたん姿を消したって騒ぎになってたんだから!」

「どういうこと?」「失踪?」

信「叔父さんにも言ったろ?ちょっと山籠りで修行してたんだよ。」

「なんだ修行かぁ~。」「信ならやりそうだな。」

フェリーチェ『普通山籠りしてたなんて信じてくれないでしょ。』

桜「え?でもそれってむぐっ!」

信「(あんまり騒ぎにしない方がいいからな。表ではそういうことにしといてくれ。)」

桜「(え、ええ。分かったわ。)」

信「そろそろ予鈴なるし、皆席に戻った方がいいんじゃないか?」

「わっ、ホントだ!」「急げ急げ!」

燈「...。」

 

皆が少し焦りながら自分の席に戻ると間もなく予鈴がなり先生が来た。

先生「おはようお前ら、元気にしてたか?早速だけど課題回収するぞー。」

 

 

 

先生「本当にお前ら優秀だな。1人くらい忘れてこいよ。」

信「先生がそんなこと言っていいのか...。」

先生「もうすぐ始業式だからな。トイレいきたい奴は今のうちに行っとけよ。」

 

課題の回収が終わり先生がそれを運んで行った。

 

燈「なあ信、やっぱり何かあったのか?」

桜「燈には話しておいた方がいいんじゃない?」

信「...ここだと人が多い。あとで話すよ。」

燈「わかった。そういえば親父さんたちいつ帰ってくるんだ?」

信「あと2年くらいかな。」

桜「急に行っちゃってビックリしたもんね。」

燈「今度組手やろうぜ。親父さんたちがいなくなってから相手がなかなかいなくてさ。」

桜「私も私も!」

信「じゃあ明日家こいよ。こっちは毎日稽古してるから。」

燈「ああ。」

桜「うん。」

先生「よーし並べお前らー。始業式だぞー。」

「はーい。」

 

 

 

 

 

フェリーチェ『あれがジャパニーズ校長。話が長いってのは本当だったのか。』

信『精霊にまでその情報流れてるんだな。』

 

始業式が終わるとみんなぐったりしている。たったまま話を聞くのに対して話が長すぎるのだ。

 

先生「すぐテストだからなー。心の準備をしておくように。」

桜「信っ!ここ教えて。どうしてもわかんないの。」

燈「そこ俺もわかんないんだ。俺にも頼む。」

 

テストの前はやはりみんな緊張する。そして最後の足掻きの時間でもある。そのためこの時間、信先生は取り合いになるのだ。...が。

 

「そこ私にも教えて!」「ワイも頼む。」

 

ぞろぞろ集まってきた。しかも今回はみんな教えてほしいところが同じらしい。

 

信「みんなもか。じゃあもう黒板使って説明するから聞きたい奴は来てくれ。」

 

全員来た。

 

信「じゃあ説明するぞ。まずこれはな...。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キーンーコーンーカーンーコーン

 

先生「はい終わりー。後ろから回収してくれ。」

燈「おわったー。」

桜「信に教わったところバッチリ出たね。」

信「ああ。ドンピシャだったな」

信『どうだった?』

フェリーチェ『今の学校ではこんなこと教えてるのか...。』

共『信が説明したとこだけはわかった。』

魔鬼『同じく。』

先生「今日はこれでもう終わりだ。それじゃあSHRめんどいな...もうかえっていいぞー、事故るなよ?それじゃっ。」

 

終わったテストを持ち先生は出ていった。やっぱり適当だ。

 

信「じゃあ帰るか。錬、歩きながら説明するよ。」

 

 

 

 

 

 

燈「ってことは異世界でファンタジーことしてたってのか!?」

信「まあ、そういうこと。」

燈&桜「「なんて羨ましい。」」

信「そうは言っても大変だったんだぞ?いきなり化け物に襲われたり。」

燈「今も異世界に行ってるのか?」

信「ああ。結構頻繁に行き来してるな。」

桜「じゃあ私たちも連れてってよ」

信「ダメだ。お前たちは向こうにでかい影響与えるかもしれない。」

燈「そうならないようにするからさ、この通りだ。」

信「ダメなものはダメだ。でもそのうち行けるようになるぞ?」

桜「いつ?」

信「最低でも2年後。」

燈「そんな~。」

?「見つけたぞっ!明渡 信っ!」

信「モブチョーじゃん。久し振り。」

共『モブチョー?日本人か?』

信『こいつは模部 忠夫。部活で部長だからみんなにモブチョーって呼ばれてるんだ。』

忠夫「久しぶりだな。今日こそは空手部に入ってもらうぞっ!」

信「何度も言ったろ?俺は部活に入る気は無いんだ。たまに見てやるからそれで勘弁してほしいって言っただろ。」

忠夫「うむ。確かに聞いた。だが、お前との稽古は俺にとっても部員たちにとっても有意義極まりない物なんだ。それに、前に言ったよな?『俺に勝てたら空手部に入ってやる』って。」

信「言ったな。」

忠夫「だから今日は決闘を申し込みに来た。」

信「よし、じゃあ今すぐやろう。ちょうど空き地あるし。」

 

都合のいいことに信たちの歩いている道の傍らには小さな空き地があった。

 

 

 

信「よし、準備完了。よろしくお願いします。」

忠夫「よろしくお願いします。」

信「いつでも来い。」

忠夫「そうするっ!」

 

その試合は一方的なものだった。忠夫が攻め、信がそれを受けて流し、かわす。信は一度も攻めに転じていないはずなのに忠夫がおされている。

 

忠夫「くっ、はあっ!」

信「雑になってきてるぞ。」

忠夫「...どうして決まらない。俺も実力には相当自信があるんだが...。」

信「確かにお前は強いし早い。だけど基本がなってない。」

忠夫「基本?」

信「ほんのちょっとだけどな。動き出す前の癖が結構ある。ほんの少しだがその癖があるから、俺は簡単に回避できる。出直してこい。」

忠夫「ぐぬぬ...次こそは入部させてやるからな!」

 

捨て台詞を残しながらモブチョーは走り去っていった。

 

燈「なんか前よりキレが増してないか?」

信「俺は常に成長する男だ。ってもうこんな時間か。悪いけど先に帰るぞ。」

桜「急ぎの用事でもあるの?でもここから信の家まで結構あるよ。」

信「ところがどっこい。異世界での経験を得た俺には距離など関係ない。」

燈「どゆこと?」

信「まあそういうことだ。くれぐれも他言無用で頼むぞ?じゃあなっ!」

 

そういった信は消えた。

 

燈&桜「「ファッ!!」」

 

・・・・・・・・・・

 

燈「親友が人外になりかけているときって。」

桜「こんな気持ちなんだね。」

燈&桜「「まあ、信なら仕方ないか。」」

 

 

 

 

 




信君なら仕方ないのです。いいね?

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