break arts ~Arts of strenger~ 1 作:ベニス川 ジョン助
first story
「さらさら」それは台詞ではなく音だった、幾重にも重なる色と繊細なタッチそして巧みな指使いを無垢なる白に惜しげもなく振る舞う、そして一つの芸術を構成した。
「私はこれを『絵』と呼ぶのは好きではない」知的な顔立ちに黒縁の眼鏡をかけた男はそうつぶやきつつ芸術に最後の工程を加えた、「ふぅ…」と少し色気のある吐息と共に芸術も1つの終を迎えた、
薄暗い部屋の中に小さな花瓶の小さな花といった表現が良いだろうか、そこには控えめながらも確かな存在感を持った『華』が添えられた、
しかし彼はその『華』をそこの空間を見つめるような目で見ていた、
「足りない…」
そう言うと簡素な木材イスから立ち上がり自室へと向かった。
「変なやつだにゃ」
彼はそこそこ名の知れた大学の学生だった、本人は“別にキツイ性格ではない”と言うが他人に対する態度はそれは素っ気なく時に刺々しいものがある、
しかしその見た目と美しくも程よく低い声そしてかなりねじ曲がった…いやその大変独特なセンスは1部の人間からの人気は絶大らしく彼は「ボッチ」という部類の人間ではなかった、
その独特なセンスというものに惹かれてしまった友人らしき1人の男 並木 達也 が登校中の彼を見つけ笑顔で駆け寄ってきた、
「愛してるからなにか言えよw」
開口一番これである、ほとんどの人間ならこんな場合どうともせず少しおどけてしまうだろうが彼はこう言う。
「そうか、なら君の血を画材に使ってあげよう、愛する者のために尽くせて本望だろ?」
こんなとびっきりのブラックジョークを吐いてくれる、これまたほとんどの人間なら鳥肌を立てながら少し後ずさりしてしまうだろうが並木はこう言う。
「朝から元気だなw でも愛してるからと言って血をあげる奴なんか少ないだろ」
ごもっともである、とんでも開口一番の割に常識を語るところに違和感を禁じえないがごもっともである。
「画材にもならん愛など迷惑だから持ち込むな」
お前も何を言っている、とツッコミを入れていると彼らの登校だけで大事な枠が埋まりかねないためこの辺で割愛させて頂く、
さてこの物語は芸術に取り憑かれた男の飽く無き芸術へのブレイクストーリーである
break arts
大学の講義、教授が自らの知識を自らの言葉で生徒に表現する、大抵の人間は天才の紬出す言葉などではその内容など理解はできない、それは彼であっても例外ではない、
彼自身あの教壇に立つ男が何を伝えたいかなど理解できない、いやしようとしてない節さえあるそんな彼はどう学習するかと言うと、
初めに貰った教科書を1度全てに目を通し、全てを彼のイメージする芸術へと置き換える、
故に今回も彼の座る席には珍妙な置物があった
「Q、それはなにかね?」
「A、教材です」
こんな会話がなされた、最初は教授を含めその講義に参加するもの全てが嘲笑ったり動揺したりと各々特有の表現により彼の『教材』に対する心境を述べた、しかし今となっては
「ほぅ、今回のそれはこの講義をどう表現したのかね」
「毎度言いますが、言葉で表現できないからこうして芸術に起こしているのです、があえて表現するなら ぺらぺら……」
とその物体に秘められた本質を事細かに語り出してしまう、以前まではもちろん変人という評価でしかなかった彼とそのオブジェクトを彼の優秀な成績が完膚なきまでに払拭し今では教授も興味津々である。
「あの…続きを……」
と誰かが切り出さない限り変人(彼 )と変人(教授)のセッションは終わらないのである、
「あぁすまない続きをやろう、後で詳しく聞かせてもらえるかな?」
「ふふ、良いですよこれの本質をじっくり堪能して頂きましょう」
とほとんどの人間ではゾッとしてしまいそうなやり取りを経てまた講義が再開する、
講義が始まり何分か経過した頃、少し後ろの席で最近密かに噂になっているある出来事の話が聞こえた、
「おい、茂村のやつ昨日から様子が変なんだ」
「ん?そういえば最近学校にも来てないらしいな、なんかあったの?」
「あぁ、あいつに用があって電話をかけたんだよそしたらあいつ、『ハァハァ、美しい美しい///』とか言っててさ」
「なんだそれ、キメちゃってるなそれ」
「わかんねぇーけど、ホントにおかしいんだよアイツ『愛らしい猫がぼくをいざないます』とか、とにかく異常だったんだよアイツ!!」
(一般人をそこまで狂わす芸術か…)
「君、確か西村君と言ったか」
「えっ、あぁなんだよ急に」
「時間は問わない、その話君の出来うる最高に美しいまとめ方で私に教えてもらえないかな?」
「えっ、そんななんでそこまでっ…」
「君確か、刈谷先輩に好意を抱いていなかったか? 少し縁あって知り合いなんだ、間を取り持とう」
「任せるんだ、俺なんでも教えちゃう///」
流石に変わりすぎだろ、とそんな純な青年のサービスシーンも見た頃講義も終を向かえようとしていた、、、
日も落ちてからしばらく時間が経ったころ、芸術に関して時間を気にしない彼は学校を背にある場所に向かった、この町でも見晴らしが良いとされる地元切ってのデートスポットである公園、チラホラとカップルらしき二人組が見える中彼は1人ある者を待っていた。
それは講義終了後に何度も言い直しさせられてやっと認められた渾身の「茂村物語」の登場人物(?)の1人喋る猫である、何故1人と表現しているか、それは話を聞いている段階では猫だと思わない程良く舌の回る話し方をしたらしいため、動物ではなく同じ知性体として接する心構えの現れである。
「ふん、事実ならばこれはかなり胸が踊る展開だな」
彼は基本的に人の言う事を疑ったりはしない、それはどんな途方も無いような事でも例外なく、
彼曰く“確認したわけでもないのに無いと言うのは怠慢でしかない、それに自分の認識内でしか思考できない人間の視野はあまりに狭く面白くない”
だそうだ、こう言う考えなため世間では痛い子などと呼ばれている人間に彼をひどく好きな少女がいることはまた別のお話
「そろそろか…」
しかし何も無い、何も来ない
「時計がずれているか、あるいは特定の時間に現れる訳ではないということか」
しばらく黙考を続けこのまま居座っても構わないかなどと思い始めたころ、懐から木魚を叩く音が聞こえ始める、
「......……」
黙考する
「.........」
黙考する
「......」
黙考する
「...」
............
「ピッ(機械音)、どうした?」
「どうしたじゃないよ!!!!!!」
携帯の着信音であった、そして電話の向こう側からはご立腹ではあるもののどうしても可愛らしさの抜けきれないような、なんともニヤニヤしてしまいそうな声が聞こえた、
「いったい何時だと思ってるのお兄ちゃん!!!!」
「あぁ、すまない妹よ私の芸術の探求には膨大な時間が必要なのだ」
「もう!!またそんなことばっかり言って!!そんな事言うとお兄ちゃんのご飯抜きにするよ!!」
「ま、待つんだ妹よ!! 君のご飯が食べられない人生なんてありえない!!」
「もうもう/// そんな変な事いう暇があったら走るの!!走って早く帰ってきなさい!!」
「あぁ、わかった直ちに帰るすぐ帰る、ちなみに妹よ今日の晩御飯はなにかな?」
「教えない!!気になるなら早く帰ってきてください!!じゃあ待ってるからね」
「あぁ、すぐに帰るぞ我が自慢の妹よ!!」
「/// もうバカ/// ぷつー(機械音)」
「ふぅ」
「電話わ終わったかにゃ?」
「あぁすまない、少し迷惑をかけてしまったかな」
「大丈夫」
「そうか」
声のする方に振り向いてみると、
「猫……」
「だにゃ」
「そうか」