その割には短いですがどうぞ。
『ちゃんと聞いているんですか?』
「わかってるって、今回の事はちゃんと説明しただろう。」
リュウ達は現在、拠点にてリニスからモニター越しにお説教を受けていた。
それというのも前回温泉に行った時にフェイトがお土産を買いすぎてしまい三人では食べきれないと判断してジュエルシード蒐集の経過の報告と一緒に余ったお土産を送ったところこうしてリニスから通信が入ったのである。
『ええ、そちらは分かっています。現地で親交を持った相手と行動を共にした結果であり休養としても機能しているという事なのでなにも言いません。ジュエルシードも他の探索者と取り合っていることを考えると順調ですし遊び呆けているとは思っていませんよ。』
「じゃあ。」
『ですが問題はお金の使い方です。私もプレシアもあなた達に無駄遣いさせるために軍資金を渡したわけではありません。初めての旅行で受かれる気持ちは分かりますがはしゃぎすぎです。』
続く言葉にぐうの音も出ず押し黙っていると不意にリニスが表情を和らげた。
『まぁ自分達で買い物をしたのもそちらの世界に行ってから初めて体験したことでしょうし金銭感覚が養われていないのも仕方ないことかもしれませんね。今回はこれぐらいにしておきましょう、次から気を付けてくださいね。それではまた。』
そう言ってリニスは通信を切ろうとする、するとそれまで口を閉じておとなしくお説教を聞いていたフェイトが声をあげる。
「リニス!あのっ!」
『どうしました?フェイト。』
平静を装ってはいるが続く言葉を予想を予想できるリニスは内心焦っていた。
何せ今のプレシアの心はまだ死んだ二人に傾いているのだから。
「母さんはどうしてるの?やっぱり連絡で済ませずにちゃんと報告に行くべきだったのかな。」
予想通りの質問である、だがリニスの中にフェイトが満足できる答えは持ち合わせていない。そのため返答に窮していると別の通信が割り込んできた。
『その必要はないわ。』
突然のプレシアの登場に驚く四人。それをさして気にもとめず言葉を続ける。
『フェイト、リュウ。別の探索者が居る事を考えればよくやっているわね、でもこれじゃあ足りないの。優しいあなたたちなら解ってくれるわよね。』
誉められて素直に喜んでいるフェイトと対象的に間違いなく叱られると踏んでいたリュウは予想が外れ混乱していた。
(母さんは俺達を嫌ってはいなかった!?でもあの夜見たモノを思えばこのジュエルシード探索も含めて二人の蘇生が目的のはずだ。それに俺達をよく思っていないのは普段の俺達の扱いから明白、なのにここでわざわざ通信に割って入って優しい態度を見せるのは何故だ。まさか本当に母さんを信用していいのか、例え蘇生に成功してもフェイトを娘として迎えてくれるのか……?)
疑心暗鬼になりつつ頭のなかを整理していくリュウ。その間プレシアはフェイトやリニスと幾らかの言葉を交わしていたがそれももう終わりそうだった。
『それじゃあ私はもう切るわ、ジュエルシードの回収、期待しているわね。』
「待ってくれ母さん!ジュエルシードが集め終わったらまた、フェイトと一緒に皆であの幸せだった日々に戻れるんだよな!?」
『ッ!…………えぇ、そうなることを願っているわ。』
その一言と共にプレシアとの通信は切れ、モニターには再びリニスのみが映った。しかしその事も気にせずリュウは先ほどの言葉を反芻し思考を巡らす。
(明確にフェイトの名前を出しても否定しなかった……もしかしてアリシアの願いを覚えているのか、だとしたら希望はまだある。だがなんにせよ今はジュエルシードを集めなければ話にならない……か。)
思考が纏まったところで顔を上げてみれば不満顔のリニスとモニター越しに目が合う、更に横を見やれば心配そうな顔のフェイトと呆れたような顔のアルフが目に入る。
「三人とも変な顔してこっち見て、いったいどうしたんだ?」
『どうしたんだ?じゃありません。プレシアの言ったことが嬉しいのは分かりますがあなたがしっかりしないでどうするんですか。』
「……そうだな、うん、ありがとう。」
『まったく、それじゃあフェイト、リュウを頼みますよ。』
「うん、兄さんのことは任せて。」
「おいおい、そこは逆だろ。っておい!切れちまいやがった。」
言うことは言ったとばかりにリニスに通信を切り上げてしまい残されたのはフェイトとアルフの苦笑いだけであった。
アルフはそんな微妙な空気に耐えられずとりあえず誉められてよかったじゃないかと二人を励ましリュウとフェイトもその言葉にジュエルシード蒐集への決意を改めて固めた。
同時刻、時の庭園にてリニスはプレシアの自室を訪れていた。
「プレシア、さっきの言葉はもしかして。」
「勘違いしないで、確かにそう願ってはいるけれどまず不可能よ。アルハザードにたどり着き二人を生き返らせまた帰ってきてリュウとフェイトを迎えに行くなんて現実的に考えて無理よ。」
理想はあくまで理想であると改めて示すプレシアにリニスはそうですかと渋い表情を浮かべるがすぐに顔を引き締めところでと話を移す。
「リュウの異常には気づきましたか?」
「えぇ、私が返答した後の考え込む姿、普通なら別に考え込むような返事ではなかったのにあの反応。考えてみればそもそも質問の仕方自体もどこか引っ掛かる言い方だった。確かにおかしかったわね。」
「リュウは考え込みすぎるきらいはありますがあれでなかなか鋭いですからね、記憶の中のプレシアと実際の態度の差から何かに気付いてもおかしくないと思いますよ。」
「そうね、何処まで気づいているのかわからない以上こちらも下手なことはしない方がいいでしょうしこれからもあの子達のサポートはリニスに任せるわ。」
「それは構いませんが体調も良くなってきたことですしいい加減プレシアももっとあの子達に構ってあげるべきです、そんなだからリュウに疑念を持たれるんですよ。」
「どちらにしろあの子達は地球に居てそんな暇は無いからいいわね。」
これでこの話は終わりだと言わんばかりに強引に打ち切られ不満そうにリニスは部屋を出ていく。
このとき二人はまだリュウが真実に辿り着いていることに気付いてはいなかった。
「…………のは!なのはってば!」
「ふぇっ!?どうしたの、アリサちゃん。」
所変わってここは海鳴市、聖祥大付属小学校。その教室である。
授業が終わりもう昼休みになったにも関わらずボーッとしていたなのはにアリサが声をかけるもこれと言った反応を見せないため肩を揺すりながら呼び掛けることでようやくなのはが気付いた。
「いい加減にしなさいよ!どれだけ人が呼んだと思ってるのよ。」
「にゃははは、ごめんごめん。うっかりしてたよ。」
「なのはちゃん、私たちに言えないことがあるのはわかるけどせめて私たちにも心配くらいはさせてくれないかな。」
その言葉は幼い頃から一人で抱え込み、誰かに心配をかけないように行動してきたなのはの胸に刺さった。そして、例え本当の事を言えなくともこの二人には真摯に向き合おうと改めて思わせるのに充分であった。
「ごめんね、やっぱり今は話せないけど全部終わらせたらいつか絶対話すから。それに、迷いはもうなくなってるから今は大丈夫。」
まっすぐ二人を見据えてそう告げるなのはにアリサとすずかは根負けしたかのようにやれやれとため息をはいた。
「なのはがそう言うんならもうあたしからは何も言わないけど。」
「でももし何かあったらわたしたちに話してほしいな。」
「うん、できるだけそうするよ。」
「じゃあ早くお昼食べに行きましょ。もうあんまり時間無いわよ。」
そうして談笑しながら屋上へ向かう三人、その脳裏には三人が友達になったきっかけの事件が思い返されていた。
(やっぱりお話しするためにも正面からぶつかっていかなくちゃ駄目だよね……)
運命の少女と不屈の少女は決意を新たにし、少年は覚悟を固める。
絡まり合う思惑と別に新たなる勢力が動き始める。
非常に時間がかかってしまったわりに本編が余りました長くない訳ですが申し訳ないことに特に理由と呼べるほどの事があるわけでもなく気づけばこんなタイミングとなってしまいました。
このようなことになってしまい申し訳ありません。