「さて、では寝る前に明日からの探索の方針を決めようか。」
無事地球についたリュウ達であったが転移の疲労から到着してすぐは動かず一晩休んで翌朝から探索を始めることとしたが、寝る前に方針だけ決めておこうといった話になった。
「方針もなにも普通に探して回ればいいんじゃないかい?」
「アルフ、それでもいいがちょっと効率が悪い。俺達は土地勘の一切無い場所に来てるんだ。探索はするにしても並行してこの街の事も調べた方がいいと俺は思うんだが。」
リュウは現地の情報収集の重要性を説き、フェイトもそれに同意する。
「確かに大まかな位置だけ解ってもそこがどんな場所か解らないと危ない場合もあるかもしれないしそれがいいかもしれない。」
「フェイトもこう言ってることだしアルフもいいだろ?」
「わかったよ。でもそうなるとあたしとフェイトが探索、リュウが調査ってことになるけどいいのかい?」
「確かに兄さんの魔力で、探査魔法を何度も使うのは難しそう。」
「事実だからこそ何も言い返せないのが悔しい。まぁ仕方ないがその分担でしばらくは探索は二人に任せることになるが、もし発見したら絶対に俺にも連絡すること。いいか?」
「うん、わかった。それじゃあおやすみなさい、兄さん。」
そうしてフェイトは寝室へと向かう、アルフもそれに続こうとするがリュウに呼び止められる。
「アルフ、すまないがフェイトを頼む。」
「あたしはフェイトの使い魔だよ、当然じゃないか。そっちも危ないことはそんなにないと思うけど気を付けるんだよ。」
「当然だろ。」
そうして今度こそ寝床につく二人。
明けて翌日、冷蔵庫に用意されていた物でリュウが簡単な朝食を作りその後それぞれ出かけていく。
「とりあえず図書館に来たはいいけれど、さてどうしよう。」
近所のコンビニで買った地図を便りに図書館まで来たがどう調べていいか解らなくて困っていた。その時リュウの耳に一人の少女の声が聞こえる。
「んしょ、よいしょっと。あかんなぁ、とられへん。」
なんとなく声のする方に近づいていくとそこでは車イスの少女が手を伸ばして高いところの本を取ろうとしている様子だがどうにも届かないようだった。
見かねたリュウはその本を取り渡してやる。
「そら、これか?」
「あっ、わざわざ取っていただいてありがとうございます。」
「いや、あんな姿を見ていたら流石に放ってはおけなかったからな。しかし見れば無理そうだとわかりそうなものだが職員に取ってもらえばよかったんじゃないのか?」
「それは、そうなんですけど皆忙しそうにしとりますしそんな中私がわざわざ声をかけても迷惑にならへんやろかと思ってしまいまして。」
その少女の健気さに興味を惹かれつつ、彼女に少し手伝ってもらうことにした。
「ここの人たちからすればそれが仕事なんだし遠慮しなくてもいいと思うが。まぁ、正直こちらとしてもちょうどよかったよ。俺もちょっと困ったことがあってね、助けてほしくて。」
「困ったことですか?お礼もかねて何でも言うてください。といっても私にできることなんてあんまりないんですけど。」
「そんなに難しいことじゃないから大丈夫だと思う、実はこの街に来たばかりで何も知らないからこの街について色々調べようとしてるんだけどどう調べればいいのかなーってな感じに困ってるんだよ。」
「それなら任しといてください。この図書館の事なら大体わかっとります。」
「そいつは心強い。じゃあ車椅子は俺が押すから案内を頼むよ。」
「はい。そういえばなんてお呼びしたらええですかね?」
「あぁそういえば自己紹介がまだだったか、俺はリュウ、リュウ・テスタロッサだ、よろしく。あと敬語は使わないでいいぞ、っていうか敬語じゃない方が正直楽だ。変えたくないなら別にいいんだけど。」
「私は八神はやていいます。ほんならリュウさん、よろしゅうお願いします。敬語はなるべく使わへんようにするってことでええでしょうか?」
自己紹介を済ませ多少砕けた口調になったことに満足しはやてを伴って図書館内へ繰り出す。
その後はやての助言の甲斐あって海鳴の正確な地図やこの国の仕組み、最近起きた不思議な事件等の情報が集まったため、机に向かい整理を始める。ちなみにその横でははやてがさっき取ってあげた本を読みながら時おり此方を伺っている。
「なぁ、リュウさん。」
「ん、どうした?」
資料から目をあげずに返答する。一見まともに聞いていないように見えるが本人としてはマルチタスクを使ってちゃんと聞いているため対応しているつもりである。
「こっちに来たばっかやってのはわかったんやけどなんでこんなこと調べとるの?」
「ちょっとこの街で探し物があってね、探すにしても何も知らない町をうろうろするよりかは調べてからの方がいいかなって思ったんだよ。」
「探し物ってどんな物やろか?ひょっとしたら私が解るかもしれへんしどんなもんなんです?」
「いや、大丈夫だよ。それにこの街に元からあった物じゃなくて最近この街に散らばったらしいから多分解らないと思う。」
あまり色々聞かれても魔法の事について言えないため下手に突っ込まれないうちに話題を変えようと試みる。
「俺の事なんか聞いても面白くないだろう、むしろはやてこそこんな時間に学校じゃなくてここにいるってのはどうなんだ?」
「うーん、所謂自宅学習って扱いやね、事故のせいで両親が居らんようになってもうて、その上でこの足やろ。せやから学校は行ってへんねん。まぁ今では誰にもなんも言われんと好き勝手できる時間を楽しんどるで。」
「はやて……」
その言葉の中に上手く隠された寂しさを感じとり、ここで初めて資料から目を上げはやてに向き直る。
「無理はしなくていいんだぞ。誰だって寂しくなるもんだ、まだまだ子供のはやてなら尚更だ。そういう時は掛かり付けの先生だとか周りの信頼できる人、なんだったら俺でも構わないからちゃんとワガママを言った方がいい。」
「せやけど、そんな事したら迷惑かけてしまうやんか。」
「迷惑…迷惑ね。確かに一切知らない子供が急にワガママ言ってきたら何だコイツ!?ってなるだろうけど今回俺が言ったのはちゃんと関係を築けてる相手だぞ、だったらワガママくらい言ってもいいんだよ。それともはやての周りにはそんな冷たい人しかいないのか?」
「そんなことあらへんよ!皆とってもええ人達で…」
「だったら大丈夫だろ、そんないい人達ならきっと安心だ。」
「それやったらリュウさんにもワガママ言ってもええの?」
「俺か?もちろんいいに決まってるだろ。あー、でも都合が悪かったりしたら聞けない場合はあるかもしれん。その時はすまないんだが。」
「それは当たり前や。でもそやったら今ワガママ1つええか?」
「今か?別に構わないが。」
「じゃあ連絡先を教えて欲しいんよ、せっかく会えたのにもう会えるか分からないなんてもったいないやないですか。」
「連絡先か…明日また同じくらいにここに来れるか?」
「明日ですか?でもなんでわざわざ明日に、ケータイで構わへんのに。」
「実はケータイ持ってないんだよね。だから一回家に帰って電話番号確認してこないと連絡先がわからないんだ。」
「それは……しゃあないな。家電でも教えてくれるんなら嬉しいわ。」
「じゃあ、俺は一旦家に帰るわ。」
そう言ってリュウは資料を片付け始める。
「もう帰ってまうんですか?」
「あぁ、集めた情報を整理して足りなかった部分をまた明日調べようと思う。」
「もう帰るんやったらこの後家に来ませんか?お礼もしたいしたいですから。」
「あー、気持ちは有り難いがそれは今度妹も一緒に行かせてもらってもいいかな。年も同じくらいだしきっと仲良くなれると思う。」
「妹さんがおったんか、それやったら一緒の時に是非。」
「おう、それじゃあまた明日な。」
「待っとりますからね。」
そうしてはやてと別れ図書館を出たリュウは少し早いが家路についていた。どうやら学校の下校時間と被ったらしく前を二人の小学生が歩いていた。
それを眺めながらフェイトが学校に行っていたらどんな感じだったろうか、等と考えていると突然目の前の少女達のすぐ横に車が止まり中から現れた男達によって二人は車のなかに押し込められてしまった 。
そして運の悪いことにリュウは目の前で起きたことに呆然としていると男の一人と目が合いそのまま一緒に捕まり車に押し込まれてしまった。
「ちょっ、どういうことだこれッ!?」
「あんな場面に居合わせるなんて運が悪かったな坊主。恨むなら自分を恨めや。」
そう言われ状況を確認するために周囲を見渡す、車種はのせられる前に見た限りだと大まかにワンボックスとしかわからないが内装も外から見た通りで3列シートで運転席と助手席に一人ずつ、二列目に男が三人、三列目には自分の他に先ほど押し込まれていた少女2人、金髪で気の強そうな少女と紫がかった髪色のおとなしそうな少女だ。二人とも身なりから育ちのよさが窺える。
そうしてようやく自分の置かれた立場を正確に理解する。
「なるほど、巻き込まれたか。」
「何だ坊主、やけに落ち着いてるじゃないか。」
「ほんとはふざけんなって気持ちしか沸かねぇが隣二人がやけに落ち着いてるから騒ぐに騒げなくてな。お前ら本当になんでそんな落ち着いてるの?」
「うっさいわね、巻き込んじゃったことは悪いと思ってるけどちょっとは静かにしてなさいよ。」
「普通は喚きたててもおかしくないところを落ち着いてるだけマシだと思うんだけど肝が座ってんなぁ…」
そうしてたまに前の席の男に怒鳴られつつ隣の少女と会話をしていると目的地についたらしく車が止まった。
「ついたぞガキ共、降りろ!」
「まったく手荒い扱いだ、手違いで連れてこられただけなのに。」
「だからこそ最初に殺されるとしたらあんたよ。」
「やめてくれないか、それだけは考えないようにしてたのに。」
「2人ともやめようよ。」
「おい、なにグダグダやってやがる。早く来い」
「後ろ手で縛ったりしなきゃもう少し歩きやすいんだがなぁ…」
「いくら聞こえないように小声で言ってるとしても本当にあんたいい根性してるわね。」
男達に連れられて廃ビルの三階ほどの部屋の壁際に入れられる。
そこにはスーツ姿の男達が3人居り、全員が拳銃で武装をしていた。
(全員ご丁寧に質量兵器で武装か、金持ちの娘を2人も誘拐してるんだしきっと他の部屋にもっと戦力控えてるんだろうなぁ……2人を守りながら倒すのはちょっと無理臭いな。)
そんな事を考えていると金髪の少女がリーダー格らしき男と言い争いを始めていた。
「喧しいガキだ、用があるのはそっちの小娘だけなんだよ!」
「どういうことよ!なんですずかがッ !?」
「何だ知らなかったのか、そいつは人間のふりをした「やめてッ!!」いいや、やめないねぇ。コイツは夜の一族っつー吸血鬼のバケモノなんだよ。お前はずっとソイツにだまされてたわけだ。俺達はコイツを連れてこいって依頼を受けてきた、つまりはあとの2人はどうしようが俺たちの勝手ってわけだ。」
「勝手なこと言ってんじゃないわよ。結局すずかはすずかじゃない!」
その話を聞きながらバレないように両手を縛っていた縄をほどきこっそり魔力を練っていた。
(まったく腐ってやがるぜ、あいつら。それに比べてあの子達はいい子だ、どうにか助けなきゃならん。閃光玉がわりに魔力でフラッシュをたいて薄く電気変換させた魔力も乗せれば痺れて反射的に引き金を引くこともないだろう。後は二人を連れてどうにか逃げおおせれば…)
男達は都合よく3人から少し離れた所でこちらを見ている。
そこで2人に声を殺して合図で目を閉じるように伝える。そして隙を見て小声で合図を出し魔法を発動させる。
「今だ。覇王断空拳ッ!」
「えっ!?」「きゃあっ!」
振り返り壁に向かって断空拳を放ち壁を砕き2人を抱えて穴から飛び降りる。
(とっさに飛べなくてもいい、落下のスピードを落とせれば十分ッ!ハバキリッ!セットアップ!!飛行魔法発動ォ!)
「っと、どうにか着地成功。」
「ちょっと、どうなってるのよ?」
「いいからずらかるぞ。」
「ずらかるって何処に?」
「逃げるときに他の階も騒がしかった、多分お前らの家のどっちかが突入隊でも寄越したんだろ。ほとぼりが覚めるまでその辺に隠れてりゃ問題ない。」
そう言ってビルから少し離れた地点までやってきた。
「で、まさかこのままここに隠れてろって訳じゃないわよね。」
金髪の少女が不機嫌そうに公園の茂みから言う。
「そのまさかだ、逃げてきた残党に人質にでもされたらたまらん。それとも警察にいくか?そうしたらその子の事も洗いざらい言わなきゃならなくなるが。」
「そんな事まで気にしてくれてたんですか!?」
「ぐぬっ、わかったわよ。あんたも一緒にいるのよね?」
当然そうだろうと言わんばかりにそう聞いてくる少女に あっけらかんと答える。
「いや、俺は帰るぞ。もともと無関係なのに巻き込まれただけだし。」
「なっ!」
「それじゃあな、無事を祈ってるぞ。」
そうして2人をおいて今度こそ家路につくもやはり放っておけずこっそり軽めのフィールド系魔法をかけておいた。
一日でこなすイベントじゃねーなこれ