もう一人の雷光   作:爆鎮P

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初陣、クモと剣と覇王の拳

昼過ぎ頃、リュウは郊外の森へ向かって街中を爆走していた。

というのも図書館ではやてに拠点の電話番号を教え、会話をしながら調査を継続していた時にフェイトからの念話が入りこうして慌てて現場に向かっているのだった。

 

「しっかし早速ジュエルシード発見とは幸先がいい、やはりこのやり方で間違いないな。」

 

昨日帰ってからフェイト達は待ち全体に大まかなエリアサーチをかけおおよその位置を確認し、それをリュウが調べた地図と照らし合わせることで位置情報を補足した。予定では今日は何ヵ所か判明している大まかな位置について調べ、具体的にありそうな場所を見つけるつもりだった。が、すでにその場所に何があるのか判明している場所である郊外の森へ探索に向かっているフェイトからジュエルシード発見の報が来たため切り上げて向かっている。

 

「さてと、ついたか。」

「あっ、やっときたかい。」

「すまん、結構またせちゃったな。」

「そんなことないよ、こっちが急に呼び出しちゃったんだし。」

「こっちが見つけたら知らせろって言ったんだしフェイトは気にしなくていいよ。ところでジュエルシードはアレか?」

 

会話を交わしながらリュウは目標を見据える 。その姿はアルフの狼形態を二回りほど大きくそして明らかにこの世界の生物ではないと一目で分かるほどに異形化した獣であった。

 

「野性動物に取り憑いたか、ちょっと厄介だな。まぁいい、俺がやるから結界だけ頼む。」

「ちょっとリュウ!言いにくいんだけどリュウはその…魔力も少ないし、大丈夫なのかい!?」

「兄さん、私も戦うから無理はしないで。」

「二人とも心配してくれるのは嬉しいんだけど流石にそこまで言われるほどじゃないぞ。時の庭園でも技の完成を優先してあんまり実戦訓練をしてなかったからな…肩慣らしにはちょうどいいさ。」

「本当に大丈夫なんだね?危なくなったらすぐ割って入るからさ。」

「兄さん、頑張って。」

 

二人からの過保護気味な激励を背中に受けジュエルシードの暴走体に近づいていく。向こうもようやくこちらに気付き喉を唸らせる。

 

「やれやれ、信用ないなー俺。まぁ仕方ないか。」

 

呟きつつ頭の中で戦闘プランを組み立てていく。一方暴走体もいつでも飛びかかれるように構えこちらを睨み付けていた。

 

「隙を見せたらガブリってか、かといって殺してしまうわけにもいかないから今回はハバキリはあまり使わない方が良さそうだな。ならば仕方ない、カートリッジシステムにまだ不安があるうちはあまり使いたくなかったんだけどな。アガートラーム!セットアップッ!」

『了解した、マイスター。』

 

奇妙な事にアガートラームは他のデバイスと違いリュウ達が普段使っている言語を話したがリュウはそれが当たり前であるかのように気にせず暴走体を睨みつけている。

そして展開されたアガートラームが装着されバリアジャケットが展開される瞬間、暴走体が唸りをあげ飛び掛かってきた。

 

「グルゥラァァァッ!」

「くっ、ネッツバインド!」

『Netz Bind』

 

リュウが叫ぶと共に展開された直後のバリアジャケットの袖口から魔力でできた蒼いクモの糸の様な物がが発射され近くの木の幹に張り付く。その糸を引きながら跳ぶ事により通常の跳躍より早く強く跳べ結果的に暴走体の奇襲を回避することに成功した。

 

「間一髪ってとこだな。だがあの程度のスピードなら充分見切れる。」

 

木の枝に立ちリュウは暴走体を見下ろす、その攻撃によって抉れた地面を見てもし自分に当たっていたらと考え内心冷や汗を垂らすもそれを誰にも気取らせないよう振る舞う。

 

『マイスター、見切れるのならここまで大きく避けなくともカウンターを決めてしまえばよかったのでは。』

「うるさいぞ、とりあえず最初は確実にかわした方がいいだろ。」

「グルァァァ゛ァ゛ァ゛ッ!」

『マイスターっ、来るぞッ!』

「分かっているッ!」

 

足場である枝から足を離し幹を蹴り勢いをつけて相手に突っ込む。

 

「オラァッ!」

「グギャァァァッ!」

暴走体の鼻っ柱に渾身の飛び蹴りをかまし、その反動で距離をとり相手に手を向ける。

 

『Netz Bind』

 

蹴り飛ばされ勢いで地面を転がりふらついていた暴走体が此方へ向き直ると同時にその目を魔力の糸が覆い視界を奪う。

 

「ヴァァァァァァアッ!?」

「近くには神社?だったか、があるしコイツを人の居る方へは万が一にも行かせちゃ不味い。一気に終わらせる!」

 

顔に張り付いた糸を剥がすため暴れている暴走体へ肉薄し渾身の一撃を叩き込もうとする。がしかし視界が奪われているにも関わらず暴走体は接近した位置を正確に把握し尻尾を叩きつけ吹き飛ばす。

 

(油断した、視力を奪おうとも残りの感覚で索敵を行えるとは……)

 

焦ったが故に攻撃には失敗してしまったがそれによって得られた情報もあった。

それは相手は視覚のみに頼らず嗅覚、聴覚によって大体の位置までは分かるであろう事。そして爪や牙ばかりに目が行っていたが尻尾も警戒すべき武器であった事である。

だがそれでも視覚が潰されている以上万全の状態であるはずもなく、その間に倒してしまう方が確実であるためリュウはある決断を下した。

 

「仕方ないな、ハバキリも抜くしかないか。」

『マイスター、斬り殺してしまう可能性があるからハバキリは抜かず私だけで戦うのではなかったか?』

「そうも言ってられん、それに直接ぶった斬らなきゃ多分大丈夫なはずだ。ハバキリ、セットアップ!」

 

現れた剣を大きく構え力を溜める。そしてそれを全力で振り切るとその剣圧によって衝撃波が発生しそれを魔力が包み半月状の刃が生まれる。

 

「蒼ノ一閃ッ!」

 

放たれた一閃は暴走体の脇腹へ直撃し暴走体は苦悶の声を上げる。

しかし今の一撃で怒りに意識を支配された暴走体は顔の糸を剥がすことを諦め鼻と耳で割り出したおおよその位置に向かって飛びかかる。が、リュウは落ち着き払いハバキリを地面に突き刺し拳を構え迎撃体制に入った。

 

「覇王……断空拳ッ!!」

「グギャァァァ゛ッ!」

 

無防備に吶喊してきた暴走体に最初に蹴り飛ばした時と同じ鼻っ柱へ断空拳をぶつける。暴走体は派手に吹き飛び木の幹にぶつかり漸く止まるがもはや意識を手放していた。

 

「さて、それじゃあ。ジュエルシード、シリアルⅩⅥ封印。」

『封印完了。』

 

ジュエルシードが抜かれた暴走体は体が縮みただの野良犬が倒れているだけとなった。どうやら息はある様なのでリュウは人知れず安堵のため息を漏らす。

封印したジュエルシードをハバキリに格納したところでフェイトとアルフが此方へやって来る。

 

「やるじゃないかリュウ。あたしは正直結構心配だったんだけどアレなら大丈夫そうだね。」

「当たり前だろ、仮にもお前のご主人様の兄だぞ。そんなに弱っちいわけがないだろ。」

「そんなことより兄さん、さっき尻尾でやられた所は大丈夫なの?結構痛そうだったけど。」

「確かに多少痛むがあんなもんはへいきへっちゃらだ。そもそも最初から一発は喰らうだろうと思ってたしな。」

「本当に大丈夫なんだよね?」

「大丈夫だってば。信用ないなー。」

 

このままではフェイトがいつまででも心配を続けそうだと判断したアルフは別の疑問をぶつけてみる事にした。

 

「そういえばリュウのデバイスは喋ってる言葉がバルディッシュと違ったけどあれは何でなのさ?」

アガートラームが一般的なデバイスの言語と違った点を指摘する。

 

「あー、あれな。戦闘中は可能な限り魔力をセーブしながら戦わなきゃならないからそっちの方に頭を全力で使ってるんだよ。だから普通デバイスが使う言語をいちいち頭の中で翻訳してる余裕がないってんで最初からこっちの言語にしてるんだよ。」

「リュウも苦労してるんだねぇ。だったら無理に戦わなくてもいいんじゃないのかい。」

「そういうわけにもいかんだろう。既にフェイトには苦労かけてるのにこれ以上俺だけ楽するわけにはいかないさ。」

「そんなこと気にしなくていいのに。兄さんが調べてきてくれた情報はちゃんと役に立ったんだから。」

「ま、そう言ってもらえると助かるけどさ。」

 

そうして時間は流れ意識を失っていた犬もアルフが結界を解いたことでいつの間にか何処かへ行ってしまっていた。

日も傾いてきたためそろそろ帰ろうという流れになり三人はその場を後にする。

こうして地球に来て二日目の日が暮れていく。三人が確保したジュエルシードは未だ一つ。

 

 




魔法解説

Netz Bind (ネッツバインド)
クモの糸のような糸を出すタイプで近いものだとチェーンバインドに近いが、こちらは射出した糸の操作等ができないかわりに燃費がよく、弾性と粘性を付加でき、相手を縛るだけではなく張り付けるといった使用法もできる。
また、先端を張り付けロープのように扱うことで森やビル街では立体機動による擬似的な空戦も可能とする等使い勝手のいい魔法である。
余談だが当初はWeb Bind(ウェブバインド)とするつもりだったがベルカ式=ドイツ語という事でクモの巣のドイツ語であるnetzからとった。

蒼ノ一閃
ハバキリを全力で振るうことによる剣圧にて衝撃を飛ばし、それに魔力を纏わせることにより中~遠距離攻撃として使えるようにした。
剣圧による衝撃がこの技の核となっているため魔力効率は純粋な魔力砲よりはいいが斬撃を飛ばすということはそれだけの強さで剣を振るうということなので当然隙が大きく牽制には使えないため中距離から相手に一撃を入れたい時用のピーキーな魔法となっている。
元ネタは戦姫絶唱シンフォギアから。

アルフに言っていた戦闘中に頭を全力で使っている内容
収束魔法の理論を元に大気中の魔力を自身が使用する魔法へ付加することにより魔力効率を少しだけ高めたり威力を上げたりする事ができる。とはいえリュウに収束魔法の適正は無いので効率はあまりいいとは言えず自身の頭でできるキャパ限界までやってやっと使用魔力を5%軽減できる程度であり有用な技術と言うよりはあくまで悪あがきの一つである。
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