リュウ達が海鳴に来てから早くも二週間程の時間が流れていた。
その間に手に入れたジュエルシードは野良犬戦とプールで発見した物の二つである。
始めこそ開始二日で幸先よく手に入れたこともあり以外と早く帰れると思っていた三人だったが中々思うように見つからず、反応があっても現場に到着するとジュエルシードの暴走によるものとみられる惨状が広がっているものの肝心のジュエルシードが見当たらない。といった事態もあったため自分達以外にもジュエルシードの蒐集者が居るのではないかと考え焦っていた。
故に今回のジュエルシードは逃すわけにはいかない。そう決意してリュウとフェイトの二人は反応のあった屋敷の庭を付近の建物の屋根から見渡していた。
「それにしてもでかい屋敷だな、一体どんな悪いことをすればこんな家に住めるのかね。」
「そんなこと言ったら私たちの家はもっと大きいのに。それより本当にアルフは今回連れてこなくてよかったの?絶対に回収するんなら人数は多い方がいいと思うんだけど。」
(家のサイズとの関係はともかくうちは悪いことは本当にしてるんだけどなぁ…)
「アルフのことなら問題ない。俺達以外にジュエルシードを蒐集してる連中が居る可能性が出てきた今、重要なのは先手を打つことだ。既に反応を検知しながら取りのがしてしまったジュエルシードが二つもある。つまり最低でも相手は二つのジュエルシードを確保しているわけだ、だからこそ相手より迅速に行動し回収するために俺達が回収に向かっている間にアルフには他のジュエルシードの探索を任せているんだ。」
「だったらなおさらアルフのためにも今回は手にいれなくちゃね。」
会話をしながら庭を見渡しているとその一角からジュエルシードが発動した気配がした。
二人は他の蒐集者に先んじるため急いで現場へ向かった。
「うまいこと結界に紛れ込めたな、だがこれではっきりした。やっぱり俺達以外にもジュエルシードを集めている奴等が居る。」
「じゃあ戦うことになるの?」
「展開次第じゃそうなるだろうな。」
そうして木々の中を進んでいるとジュエルシードを発動させたであろう猫が見えてきた。
しかしその見え方がおかしかった。木々の上から顔を覗かせる姿は子猫と呼ぶにはあまりに巨大すぎるナニかであった。
「に、兄さん。あれはいったい……」
「た、多分大きくなりたいという猫の願いをド直球に叶えた結果……なんじゃないか。」
猫のあまりの異様さにそのすぐそばに居る少女と小動物まで気に止める余裕はなかった。
「なんか封印のためとはいえ攻撃するの少し可哀想だね。」
「あの見た目じゃあな、デカいだけでただの猫だし罪悪感は湧くよな。」
「でも仕方ないよね。…………ごめんね。」
そう小さく呟いてフェイトはバルディッシュを猫へ向け一発の魔力弾を放つ。
更にバルディッシュに指示を出し魔力弾を掃射する。
「バルディッシュ、フォトンランサー。電撃。」
『Photon Lancer. Full auto fire.』
ばらまかれた魔力弾は猫へ直撃し猫は苦しげな声を上げる。
それをすぐそばで聞いた少女は何かを決意した目になり紅い玉を取り出す。
「レイジングハート、お願い。」
『Stand by. Ready. Set up.』
杖型のデバイスを持ち純白のバリアジャケットを身に纏った少女は靴より魔力の翼を生やし飛び上がる。
『Flier Fin.』
その翼で猫の背中に飛び上がるがそこにフェイトの第二射が迫る。
『Wide Area Protection.』
防御魔法にて辛くもフェイトの攻撃を防ぎきるがフェイトが即座に放った追撃が猫の足下に直撃し倒れてしまう。が、しかし少女は猫の背中から飛び降り事なきを得る。
互いにデバイスを構え向き合う二人。
対峙する二人の魔導師を尻目に隙をみて猫からジュエルシードを抜き取ろうとする影が一つ。
しかしその影を阻止せんと一匹の小動物が立ちはだかる。
「そっちには行かせない!」
「使い魔か?悪いが構っている暇はない。」
「させるか!チェーンバインド。」
横を通り抜け猫のもとへと行こうとしたリュウに複数の緑色の鎖が迫る。
初撃は辛くも躱すが何本もの鎖によって次第に逃げ場がなくなっていき遂に捕らえられてしまう。
「ぬかったか!主人であろうあの魔導師の腕から使い魔の脅威度は低いと踏んでたんだがな。」
「生憎だったね、そもそも僕は使い魔じゃない。」
「ならわざわざ動物の姿でいるなよな…」
「こっちの方が都合がいいんだよ。僕の事より君達は何でジュエルシードを集めているのさ?」
捕縛に成功したことによりひとまず安心と考えたのかフェレットの少年はリュウに質問を投げ掛けてきた。
(このバインド中々固いな、壊すのは骨だ。予想以上にやるようだしあっちの加勢に行かれる方が面倒だしあっちの決着がつくまでこっちに釘付けにしとくか。)
目的を早々にジュエルシード奪取から時間稼ぎへと切り替えたリュウは都合がいいとばかりに会話に飛び付いた。
「何でってそりゃ必要だからに決まってるだろ。でなきゃこんな危険な真似はしないさ。」
「そもそもロストロギアが必要になる事態ってなんなのさ!?」
「人が生きてりゃそりゃたまには道理を覆してでも無理を押し通したくなる事が起きるだろう。ジュエルシードならそれができるかもしれない、ただそれだけだ。それに都合がいいことにジュエルシードはまだ管理局に指定されてないから次元震とかを起こさなきゃ違法使用で捕まることもまずないはずだしな。」
具体的な言及を避けながら一応間違っていない筈の事だけを話すリュウ。
またリュウの言った通りジュエルシードは一度ミッドチルダに送られ、そこで管理局に提出し本局に送られてそこで審査の上ようやく指定ロストロギアに認定される予定であったが輸送中の事故で地球にばらまかれてしまったため、今はまだ管理局による指定ロストロギアではなくグレーではあるが立件しづらい案件となりよっぽどの事態を引き起こさない限りは白という扱いとなる。
「詳しく話してもらうわけにはいかないかな?」
「生憎だがそれはできないし、する気もない。」
「そうかい、残念だよ。」
フェレットの少年は残念そうにそう言うが気を取り直したようにまた質問をしてきた。
「ならせめて名前だけでも教えてくれないかな。」
「人に名を聞くときはまず自分からと親に教えられなかったのか?」
リュウは少しでも時間を稼ぐためにお決まりの言葉を返す。
「そうだね、じゃあ僕の名前はユーノ・スクライアだ。で、君は?まさかあんなことを言っておいて自分は名乗らないなんてことはないよね。」
「そのまさかだ、残念ながら俺は親にそんなことを言われたことはなくてね。」
「なっ!?卑怯だぞ!」
「そうは言われても最初から答えるなんて言ってないしな……っとあっちの決着、そろそろつくみたいだぞ。」
リュウは縛られたままフェイト達の方を顎で指す。
ユーノはその声につられてそちらに目をやりちょうどフェイトにやられそうになっている少女を目にする。その隙にリュウはなんとかバインドを破ろうと試みていた。
(普通の筋力じゃ到底破れないが脱力状態から瞬間的に全力を出せばどうにか破れるかもしれん。チャンスは今だけ、やってみるしかないか。)
「だらぁッ!」
「嘘ぉっ!?」
「悪いな、ホントだ。」
縛られた状態で全身から力を抜き、足先から下半身、上半身、腕へと力を伝えて行き拳を振り放った事により瞬間的にバインドが耐えられる力を超え引きちぎることができた。
「すまないが行かせてもらうぞ。ツレがジュエルシードを確保したんでな。」
そう言ってフェイトの方へ向かおうとするが何か思い直したかのようにユーノへと向き直った。
「リュウだ。」
「へっ?」
「名前だよ名前。さんざん時間稼ぎに付き合わせちまったからな、これくらいは教えてやるよ。そのかわり、もう邪魔すんなよ。」
「それは約束できないよ、僕たちだって譲れないんだ。」
互いに譲る気の無いことを確認しあったところでリュウが慌ててユーノに呼び掛ける。
「それより助けにいかなくていいのかよ。あの高さから気絶したまま落ちたら無事じゃすまないぞッ!」
「なっ!しまった、なのはーッ!」
「なるほど、あの少女はなのはって名前なのか。」
なのはを助けたユーノを尻目にリュウはジュエルシードの封印を終えたフェイトに空中に足場を作って近より話しかける。
「流石だな、よくやったよ。」
「ありがとう、兄さん。でもまだあの子に経験が無かったから勝てたけどこの先成長したら危ないかもしれない。」
「確かにかなりの潜在能力はあるみたいだがフェイトだってかなりのもんだ。そう簡単に負けたりはしないさ。」
「そうだよね、ありがとう兄さん。」
「じゃあ回収もすんだしさっさと帰るか。」
「そうだね。」
『Divine Buster.』
そうして帰ろうとした瞬間、リュウはフェイトの背中に迫る一筋の光と微かに聞こえた電子音声に気付き咄嗟に庇うように前に出る。
(不意討ちッ!?いや、消えかけの意識で負けたことに気づかず撃ってしまっただけか。いや、今はそんなことはどうでもいい!砲撃を逸らせるかはわからんが後ろにはフェイトがいるんだ、やるしかないッ!)
「旋衝波ッ!」
どうにか投げ返すことにより桜色の砲撃がU字に曲がりなのはから少し離れた地面に着弾する。
「ったはぁー、どうにか成功できたか。しかし投げ返すので精一杯で狙いなんかつけられないか、これは鍛え直さなくちゃいかんな。」
「兄さん!大丈夫!?」
「大丈夫だから心配すんなって。それよりさっさと帰ろうぜ。」
「でもまさか不意討ちしてくるなんて…」
「ありゃ多分朦朧とした意識で負けたことに気づかず撃っちまっただけだろ。気にすんな。」
「そう…だよね。」
そうしてその場を後にするフェイトとリュウ。ふとユーノに目を向けてみると時折こちらに申し訳なさそうな目を向けながらなのはを心配していた。
これよりジュエルシード蒐集は争奪戦となる。
魔法解説
空中に作った足場
リュウは障壁魔法を空中に座標固定させ足場として使っているが空中戦などに使おうとするとある程度以上の物を相当数出すことになり魔力消費がかなり厳しいものとなるため空中で立ち止まる時に足場として使うのみに留めている。
Count the JewelSeeds!
現在魔導師達が持っているジュエルシードは?
フェイト3個
なのは4個