もう一人の雷光   作:爆鎮P

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命の洗濯、少女の選択

バスが停まり目的地へとついたことを告げるアナウンスにリュウは目を覚ます。

降りるために荷物を取ろうと辺りを見回すと隣の席で爆睡しているアルフが目に入る。

 

「まったく呑気なもんだ、なんて今回は俺も人の事は言えないな。」

 

そうぼやきつつアルフを起こし、はやてがバスを降りるのを手伝ってようやく四人が旅館に到着した。

 

「さて、目的地に着いたわけだけどどうする?まだ朝だし色々やれるが。」

 

その問いかけにフェイトとはやては特に考えてなかったのか顔を見合わせている。そこにアルフがあくび混じりに一つの案を出す。

 

「それだったら二組に別れて散策するのはどうだい?二日間それぞれ見て回って特によかった所に三日目全員で行くとかさ。」

 

アルフのその提案に疑問を持ったフェイトがアルフに念話で問いかける。

 

〈せっかく四人で来たのになんで二手に別れるの?〉

〈はやてを巻き込まないためさね、二手に別れればはやてと組まなかった方はジュエルシードの探索が出来るし、探索のためにはやてをほったらかしにしちゃう事もないと思ったんだけど駄目だったかい?〉

 

二人の念話を聞きながらリュウは話をまとめにかかる

 

「別れてか、いいんじゃないか。一塊で行動してると外湯ってのを全部回りきれないかも知れないが二手に別れれば回りきれるだろうしその中から特によかったところをピックアップして最後に皆でってのも効率いいしな。」

 

はやてもそれに同調し具体的なところまで話す。

 

「それやったら早いとこ荷物置いてタダで外湯巡りできるようになるっていうネームタグ借りてはよまわった方がええんやない?」

「そうだな、じゃあ方針も決まったことだしさっさとコンビ決めて回るか。」

 

 

 

「さて、こういう時に己の迂闊さを実感させられる……」

「私が迷惑かけてるんやからそんなこと言ったらあかんよ。」

「そうは言ってもこれはなぁ……」

 

二手に別れてから約数十分後、はやてとリュウの二人はとある温泉の更衣室の前で途方にくれていた。

何故このような光景ができたかといえば単純にはやての足の事を失念していたからである。

くじによって決まったリュウとはやての二人は一ヶ所目の温泉に到着したはいいがここであることに気付く、それははやてをどうやって温泉に入れるかである。

はやては女湯でリュウは男湯 、などと別々に別れてしまったら補助なしでは入るのが難しいはやてはどうしようもない。だがいくらはやての入浴補助という名目があれど異性の湯への入浴は11歳以下の児童に限るとの看板もあり、齢13のリュウがそのまま女湯に入れば袋叩き必至である。

そこで何かしら方法はないかと悩み今に至るという訳である。

やがてその状況を見かねたのかはやてはあることを呟いた。

 

「それったら私が男湯に入れば解決せえへんやろか。」

 

その一言はポツリと呟かれたものであれどリュウを慌てさせるには十分な威力があった。

 

「なっ、何言ってんだお前!いくら8歳児のちんちくりんだからってもう少し周りの目を気にしろよ。」

 

しかしその一言によってはやても意地になり反発する。

 

「こんな美少女捕まえて誰がちんちくりんやねん!私かて恥ずかし無いわけあらへんやろ。そやけどそれが一番やから言うてるんよ。」

 

細かいことさえ無視すれば実際その案が一番手っ取り早いことをリュウも理解しているためあまり強く出られない。

 

「自分で美少女言うな、まったく……本当にそれでいいのか?」

「かまへんよ、このまま温泉に入りもせず立ち尽くしてる方が嫌やし。」

 

はやてのその言葉により不承不承といった感じながら方針は決まり二人は更衣室へ向かっていった。

 

 

 

一方その頃、フェイトとアルフのコンビはサーチャーをあちこちにばらまきながら既に一風呂浴びており次の旅館で買い食いをしながら二ヶ所目の温泉に入ろうとしていた。

 

「それにしてもフェイト、凄い買ったね。」

 

アルフの言うとおりフェイトは浴衣を着て温泉まんじゅうや温泉卵のつまった袋を抱えて、食べながら歩いていた。

 

「あたしが言えたことじゃないけど歩きながらなんてあんまり行儀がいいとは言えないねぇ。それにそんなに食べて大丈夫なのかい?」

 

同じく浴衣を着たアルフのやや心配そう声にフェイトも食べる手を一旦止める。

 

「美味しいから大丈夫だよ、アルフも食べてみる?」

 

そう言ってアルフに温泉まんじゅうを一つ差し出すフェイト。

可笑しそうにしながらアルフはそれを受けとりほうばる。

 

「いいのかい?じゃあいただくよ。はむっ……結構いけるねぇ、あたしも買っとけばよかった。」

「ならいっぱい買っちゃったし一緒に食べようか。」

 

そうして温泉に入る前に買った分を二人で片付けようとしているとアルフの視界の端にバルディッシュに記録されていた映像で見た顔(確かなのはと言ったかか、)が映った。

 

「フェイト、先に温泉に行っててほしいんだけど。あたしもすぐに行くから。」

「別にいいけどアルフ、どうしたの?」

 

アルフは先ほどの場所を真っ直ぐ見据えながら何を見たのかを伝えた。

 

「ちょっと挨拶しにいってくるだけだから心配はしなくていいよ。」

 

「わかった、じゃあ温泉の中で待ってる。」

 

そうしてフェイトと一旦別れたアルフは少女たちの下へと向かう。そして声をかけた。

 

「ハァーイ、オチビちゃん達。」

 

最初はあくまで軽く明るく、しかしそこから徐々に因縁をつけるように中央のなのはにターゲットを絞る。

 

「ふんふん、君かね。うちの子をアレしてくれちゃってるのは。あんま賢そうでも強そうでもないし、ただのガキんちょに見えるんだけどなぁ」

 

唐突に年上の女性に絡まれた三人の少女はやや気圧されるも気の強そうな少女、アリサが二人を庇うように前に出る。

 

「ちょっといきなりなんですか?」

 

そしてなのはに小さく確認しアルフに言い放つ。

 

「なのは、知ってる人?……この子あなたの事を知らないそうですけど。」

 

その言葉に一瞬キョトンとしたあと大笑いを始めた。

 

「あっはははははっあはははっ。いやーごめんごめん、人違いだったかなぁ。知ってる顔によく似てたからさ。」

 

その様子になのはも安心し警戒を解く。

 

「なんだ、……そうだったんですか。」

「あっはっはっ、可愛いフェレットだねぇ。よしよーし、なでなでー。」

 

アルフはユーノの頭を撫でながら二人に念話を送る。

 

〈今のところは挨拶だけね。〉

〈〈ッ!?〉〉

 

なのはは突然の事に目を見開く。

 

〈忠告しとくよ。子供はいい子にしてお家で遊んでなさいね。おいたが過ぎるとガブッといくわよ。〉

 

言いたいことだけ言うとアルフはわざとふらふらとした足取りで去っていく。

それに憤慨したのはアリサだ。

 

「何あれ、朝っぱらから酔っぱらってるんじゃないわよ!」

「まぁまぁアリサちゃん、落ち着いて。」

 

すずかがアリサをなんとかなだめている間なのはとユーノはアルフが去っていった方を見つめていた。

 

 

 

「フェイト、おまたせ~。」

「アルフ?早かったね。」

 

温泉のふらふらとしたに合流したアルフは周りに聞かれないように念話を使いながら報告を行う。

 

〈見てきたよ、例の子。どうってことないね、フェイトの敵じゃあないよ。〉

〈そう、こっちもちょっと進展。ジュエルシードの位置が解ったから今夜にでも回収に行ける。だから後は夜までゆっくり出来るよ。〉

 

フェイトの報告にアルフは満面の笑みを浮かべ抱きつく。

 

〈ナイスだよぉフェイト。流石あたしのご主人様。〉

「さてそれじゃあのんびりするかねぇ。」

 

リラックスモードに入るアルフ、しかし気を抜きすぎて頭から犬耳が生えてしまう。

 

「アルフ耳っ、耳ッ!」

「おっとと。」

 

フェイトが小声で知らせるとアルフも慌てたように手で押さえ引っ込める。

 

 

 

視点は戻ってリュウ、はやてペア。

お互い羞恥心を殺して服を脱ぎ体にタオルを巻いたはやてをお姫様抱っこの体制で連れているリュウは髪と背中を洗ってやり(流石に他は自分で洗ってもらった)露天風呂へと向かった。

幸いにしてまだ朝だからか人は殆どおらず露天風呂に関しては貸切状態だったため知らない人間にジロジロ見られるような展開にはならずにすんだ。

 

「人が少なくて助かったな、これでやっとゆっくり出来る。」

「そうやね、これやったらそこまで恥ずかしないわ。そやけどリュウさん、ずっと私のこと抱っこしてくれてたけど大変やなかった。」

 

全身を伸ばし一息つけたところでふと気になったことを問いかけてみる。

 

「そんなことないぞ、これでも結構鍛えてるからな。それにはやてが軽かったってのもあるし。」

 

茶化しながら返すリュウ、しかし思い出したかのように一つ付け加える。

 

「後ちょっと頼み……ってわけじゃないんだけど出来ればさん付けやめてくれないか、どうにもむず痒くてな。」

「そうやったんか、それやったら…………リュウ君でどうや?」

「それだったらまぁ。」

 

新たな呼び名に納得いったのか全身を伸ばして疲れをほぐす。

 

「しっかし大きな風呂なんて初めてだがこれは気持ちいいな。」

「そやねぇ、風呂は命の洗濯ってのもあながち間違ってないんかもなぁ。」

 

二人でぐでーんと呆けたように休息を貪っているとふとリュウが聞き返す。

 

「命の洗濯?なんだそりゃ。」

「昔来とったヘルパーさんが言うとったんよ。事情知っとったっぽいから多分おじさんが寄越してくれたんかなぁ。」

 

懐かしそうに遠くを見ながら語るはやて。

それを見てリュウにもどこかわかる気がした。

 

「いい言葉だな。他にはなんかそういうのはあったりするのか?」

 

その言葉に少し考え込む素振りを見せてから口を開く。

 

「そうやなぁ……おじさんが落ち込んどる私を慰めるために言ってくれたやつなんやけど。」

 

そう前置きしてから問いかける。

 

「なぁ、リュウ君。何で人は落ちると思う?」

「問答か?そうだな……踏み外したから、では慰める言葉にはならんよな。」

「おじさんが言うてた答えは這い上がるため、やって。その言葉のお陰で今まで頑張ってこれたところもあるからおじさんにはほんまに感謝してるんよ。」

 

その言葉を聞いたときリュウの脳裏には深い穴の底から青空を見上げ這い上がろうとする映像がちらりと見えた気がした。

 

「はやてはそのおじさんが大好きなんだな。」

「お父さんの友達やったってだけでここまでよくしてもらえてるんやから当然やんか。」

 

その後も互いの話を続けるがいい加減のぼせるし他も行かなくちゃ勿体ないという事で動き出したのだった。

 

 

 

深夜、はやてが完全に寝たことを確認したリュウ達三人は起こさないように細心の注意をはらって部屋を抜け出し、日中にフェイトが発見したジュエルシードの位置へと向かうと到着したタイミングで丁度発動し、エネルギーの柱が天へと昇る。

フェイト達はまだ危険はないと判断しそれを観察していた。

 

「うっはー、凄いねこりゃ。これがロストロギアのパワーってやつ?」

「随分不完全で不安定な状態だけどね。」

「あんたのお母さんは何であんなもの欲しがるんだろうね。」

「確かに不安定だが制御さえ出来れば高純度なエネルギーの結晶体だ、使い道はいくらでもあるだろ。」

「だけど理由は関係ないよ。母さんが欲しがってるんだから手に入れないと。」

 

そう言って立ち上がり自らのデバイスに呼び掛ける。

 

「バルディッシュ、起きて」

『Yes,sir.』

 

バルディッシュが展開されると共にフェイトもバリアジャケットを纏う。

そしてそのままバルディッシュの斧の刃を象るパーツが反転し槍のような見た目になる。

 

『Sealing form. Set up.』

「封印するよ。兄さん、アルフ、サポートして。」

「任せろ。」

「へいへい。」

 

二人のサポートを得たフェイトは危なげなく封印を完了し、無力化したジュエルシードを手に取る。

 

「四つ目……」

 

丁度その時なのはとユーノも現場に到着し、ジュエルシードを持つフェイトを目撃する。

 

「あーららあらあらあら……子供はいい子でって言わなかったっけか。」

 

朝自分達に警告をしていった相手もいることに気付きより警戒を強める二人。

そんな状況でユーノは自身を鼓舞するかのように吠える。

 

「それを、ジュエルシードをどうする気だ!それは危険なものなんだ。」

 

しかしこれに応えたのはおちゃらけた口調のアルフだった。

 

「さあねぇ、答える理由が見当たらないよ。」

 

瞬間、アルフの纏う空気が変わる。軽い口調はそのままに明確な敵意を放ち、周囲の空気が重くなったかのように感じられる。

 

「それにさぁ、あたし言ったよねぇ。いい子でないとガブッといくよって。」

 

そのセリフと共に彼女の身体は変化を始める。

髪は伸び鬣と変わり尾は太く強くなり手足は力強く爪も鋭くなり牙もが伸びてくる。そして気づいたときにはそこには一頭の狼が立っていた。

 

「やっぱり、アイツあの子の使い魔だ!」

「使い魔?」

 

どうにか驚愕から抜けきるも聞きなれない言葉に思わず聞き返すなのは。

 

「そうさ、あたしはこの子に造ってもらった魔法生命、制作者の魔力で生きるかわり命と力の全てをかけて守ってあげるんだ。」

 

フェイトを庇うように前に一歩前に出る。

 

「先に帰ってて、すぐに追い付くから。」

「うん、わかった。無茶しないでね。」

 

アルフの言葉でフェイトは一緒に帰ろうとリュウの方を向く、しかしそれまで静観していたリュウが重い腰をあげフェイトとなのはの間に立ち塞がる。

 

「熱くなってるところ悪いが俺も残らせてもらおう。」

 

しかしユーノからしてみれば前回あっさり縛り上げられた相手でありそこまでの脅威と考えていいないのか、特に反応もせずにこちらを見据えている。

 

「なのは、ここで逃がしちゃダメだ。あの子をお願い。」

「そう簡単にいけるとは思ってくれるなよッ!」

 

しかしなのはが動き出すよりも早くアルフとリュウが阻止するために飛び掛かる。しかしユーノもそれは読めていたのか防御魔法にてこれを防ぐ。しかしいかにユーノの防御魔法が強固であろうと二人がかりではいささか分が悪く突き立てられた爪と刃が徐々に障壁を貫いていく。

だがしかしユーノの目に勝利を確信する色が見えたことでリュウはそれすらも予想通りであったことに気付く。

 

「させて……見せるさ!」

「転移魔法!?マズイ!」

 

その言葉を最後に一人と二匹は光と共に消えてしまった。

これにより残されたフェイトとなのはが対峙する形となるが、やはり二人の間には温度差があった。

 

「あの短時間で結界に強制転移魔法、長年連れ添った使い魔でもないのによくサポートができている。」

「当然だよ、ユーノ君は私の大切な友達だもん。」

 

リュウからの話によりユーノが使い魔でないと既に知っているため短期間で信頼を育んだ二人にやや感心し、また友達と言う言葉に少し頬を緩めるも気を引き締め直し本題へと進める。

 

「それで、どうするの?」

「話し合いでなんとか出来るってことない? 」

「私達はロストロギアの欠片、ジュエルシードを集めないといけない。そしてあなたも同じ目的なら、私達はジュエルシードをかけて戦う敵同士ってことになる。」

「だから!そういうことを決めつけないために話し合いって必要なんだと思う。」

「話し合うだけじゃ、言葉だけじゃきっとなにも変わらない。……伝わらない!」

「話し合おうよ!私たちは無理に戦わなくたってきっと……」

「戦場で何を馬鹿なことをッ!」

『Flier Fin.』

 

もう話すとはないとばかりになのはへと襲いかかるフェイト、一瞬の内になのはの背後に回り込みバルディッシュでの一太刀を浴びせるも頭を下げることにより辛くも回避されてしまう。そのまま追の太刀を振るうもなのはは咄嗟に上空へ回避する。しかしなのはの胸中は未だ戦うことへのまよいがあった。

 

「でもだからって。」

「賭けて、それぞれのジュエルシードを一つづつ」

『Photon Lancer, get set.』

 

そう言いつつフォトンランサーの準備をしながらなのはの上へ回り込み急降下を仕掛ける、今ここにジュエルシードを賭けた勝負が幕を開けた。

 

 

 

一方その頃少し離れた林に転送されたアルフ、リュウ、ユーノの三名は息つく間など当然なくアルフがユーノを追い回しながら怒鳴りあっていた。

 

「ちょろちょろちょろちょろと逃げんじゃないよ!」

「使い魔を作れるほどの魔導師が何でこんな世界に来ている?ロストロギアについて何を知っている!」

「ごちゃごちゃうっさい!」

 

その間リュウは冷静にユーノの動きを見極めスピードが堕ちる瞬間を待っていた。

 

『Netz Bind』

「しまった!?」

 

漸くきた機会を逃さずバインドにてユーノを捕らえる。

そのまま抵抗できないようにみのむしの様に縛り上げる。

 

「さて、前回とは真逆の構図になったな。とは言え二対一だった時点でリベンジとは言いがたいけどな。」

「僕をどうする気だ?」

 

その言葉に笑みを浮かべ上空で繰り広げられている戦闘を眺めながら答える。

 

「どうもしないさ、ただ大人しくしてもらうだけだ」

「いったい何のつもりだ、捕まえておいて何もしないだなんて。」

「ただ本気でぶつかり合える相手がいればアイツも何か成長できるかもしれないも思っただけさ、その為に邪魔が入らないようにこうして大人しくさせる必要があった。」

「リュウ、あんたそんなこと考えて……」

 

フェイトの精神面での成長まで考えて行動するリュウに驚くアルフ。しかしリュウはだけどなと続ける。

 

「正直なのはという少女には悪いが期待外れだ。戦場で迷いを抱えてるようじゃいつも全力のフェイトに敵うはずもない。どうあっても意思を貫く覚悟がないのならこれ以上俺たちの邪魔をしないでくれ。」

「そんな……なのはは僕のために必死に。」

「理由を自分の外に求めているうちは足りないんだよ。」

 

そして上空の戦闘を指し告げる。

 

「そら、そろそろ決着だぞ。」

 

 

 

上空では互いに遠距離魔法を打ち合おうとしていたところだった。

 

『Thunder Smasher.』

『Divine Buster.』

 

二人の中間でぶつかり合う黄色と桜色の閃光、しかし拮抗はそう続かなかった。

 

「レイジングハート、お願い!」

『All right.』

 

少女の願いに応えるかのようにディバインバスターの威力が上がりサンダースマッシャーを貫きフェイトを桜色の奔流が襲う。

 

「なのは、強い。」

 

喜ぶユーノに二人はあくまで冷静に戦況を見る。

 

「でも、甘いね。」

「あぁ、圧倒的に経験が足りない。」

 

二人の言葉を裏付けるかのようにバルディッシュの声が静かに響く。

 

『Scythe Slash.』

「なのはッ!」

 

上空に逃れていたことに気づいたユーノが咄嗟に叫ぶも時既に遅く魔力刃によって展開された鎌の切っ先がなのはの首に突きつけられていた。

 

『Put Out.』

 

そうしているとレイジングハートがジュエルシードを一つ吐き出した、これに驚いたのはなのはである。

 

「レイジングハート、何を!?」

「きっと、主人思いのいい子なんだ。」

 

なのはは目を見開いたままジュエルシードがフェイトに回収されてしまうのを見ていることしかできなかった。

フェイトはそんななのはに背を向け歩き出す。

 

「帰ろうアルフ、兄さん。」

「んっふふ。」

 

その言葉にアルフは体を輝かせ人間の姿へと戻る。

 

「流石あたしのご主人様。じゃあね、オチビちゃん。」

「こいつは返しておこう。」

 

アルフと共に帰路へ向かう前にユーノをなのはに向かって放りながらバインドを解く。

 

「待って。」

 

ユーノをキャッチしたなのはは未だ折れずにフェイトに呼び掛ける。

 

「できるなら、私たちの前にもう現れないで。もし次があったら、今度は止められないかもしれない。」

 

しかしフェイトから告げられたのは拒絶の言葉、最後の警告であった。

 

「名前、あなたの名前は?」

「フェイト、フェイト・テスタロッサ。」

「あの、私は……」

 

しかしそれでも懸命に名前を問うなのは、それに折れたのかフェイトも名前を名乗る。だが今度は自分で名乗ろうとしたなのはに聞く耳を持たずフェイトは飛び去ってしまうのであった。

 

 

 

「私、ただお話がしたいだけだったのに何が駄目だったのかな。」

 

フェイトが飛び去った森を見つめポツリと溢す。

 

「リュウは迷っているなのはじゃ全力のフェイトには勝てないって言ってた。どうあっても意思を貫く覚悟が足りないって。」

 

その言葉になのはは一つの決意を固める。

 

「言葉だけじゃ聞いてくれないのなら私はもう迷わない。今度こそ全力全開でフェイトちゃんと向き合う。」

 

そうして顔をあげたなのはの瞳に迷いは欠片も残っていなかった。

 

「でもそれはかなり大変だけど大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ。だって……」

 

そしてユーノに笑いかける。

 

「不屈の心はこの胸に、でしょ。ユーノ君。」




大まかな流れ自体は頭の中で早くからできていたくせに割と難産でした。
着替えシーンは勘弁してください。妙なエロスは書けないので。

人はなぜ落ちるのか
これはおじさんがはやてに前を向かせるために励まそうと自分の中に強く残っていたセリフを引用しただけなので別におじさんがゴッサムの資産家とか言うわけではないです。

戦場
フェイトちゃんは戦場をせんじょうと読める常識人デス。リュウ?アイツはちょっと様子がおかしな人だから戦場をいくさばと読みます。
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