【ミドリへ
私は、ミドリに伝えなくてはならない事があります。あなたのお父さん、シグの事です。あなたのお父さんは、海賊に殺されて海に落ちた、そう言われていました。
でも、本当は違います。お父さんは、知ってはいけない事を知ってしまい、殺されました。知ってはいけない事が何なのかは、私には分かりません。でも確かにお父さんは、知ってはいけない事を知って、殺されてしまいました。】
「何……それ……」
お父さんが殺された?海軍に?あの優しい人達が?どうして?そんな思いが、頭の中を駆け巡る。手紙を読み進める。
【私は、ショックでした。ミドリには言って無かったけど、私は孤児でした。海賊を両親に殺され、1人だった所を海軍に拾われ、海兵として鍛えられていました。だから私にとって海軍とは、家族の様なものでした。だから余計にショックでした。私を育ててくれた人が私の夫を殺した、信じられませんでした。
私は結局何も言えず、かと言って夫を殺した人とは一緒に居れない、そんな思いがあって、私は海軍を辞めました。問い詰める事も出来ず、犯人を探す事も出来ず、何も出来ないままでした。私はただの臆病者でした】
「……」
私は、何を言えば良いか分からなかった。手紙にはまだ続きがあった。
【ミドリにお願いがあります。決して、海軍を恨まないで下さい。確かに、あの人達はシグを殺しました。私だって憎いです。でも、あなたには海軍で過ごした思い出があります。その思い出を、復讐の思いで黒く染めないで欲しいのです。大切な時期を、台無しにしないで。
無理なお願いかもしれないけど、それでも、あなたの思い出を壊したく無い】
手紙はそこで終わっていた。恐らくここらで体調を崩したんだと思う。涙が溢れ出てきた。お父さんの本当の死を知ってしまった。
「こんな事ってある……?」
『翠、聞こえるか?』
聞き覚えのある声がした。
「風神様……」
『そのようだと、父の死を知ったらしいのぅ』
「風神様は知ってたのですか……?」
『神とは言え、流石にこの事実は知らなかった。ここは本来ならば我の管轄外。おそらく、この世界の神が仕組んだ事じゃろう……どうすることも出来ん……』
「そん……な……」
『すまんかった……こんな辛い思いをさせてしまって……』
「……」
『翠……主はこれからどうするつもりじゃ?』
「……少しだけ考えさせて下さい」
『そうか……では何かあれば、我を心の中で呼ぶが良い』
そう言って、風神様の声は消えた。
「また……一人ぼっちになっちゃった……うぅ……うぅ……」
涙は、止まらなかった。すると、持っていた手紙から、メモ用紙が1枚落ちた。これは……?
【もし、何かあったのならここから南西に少し進んだ所に、フーシャ村って所があるわ。そこには確か、ガープ中将のお孫さんが住んでいるわ。名前はルフィ、ミドリはまだ会った事が無かったけれど、きっとあなたの力になる筈よ。安心して、とても良い子だから】
書きなぐった様に書かれたこの文。日記と比べると、字が汚い。きっとお母さんは、自分の死を悟って慌てて書いたのかもしれない。
「ルフィ……」
確か、ガープ中将にはお孫さんが居るって聞いたような……今度顔合わせをするってなった時に、お父さんが死んじゃったんだったな……
「行って見ようかな……?」
お母さんが言う様に、頼りになるって言うのなら会いに行ってみたい。
「そうと決まれば早速準備だ!」
とりあえず、フーシャ村に行く為の船を確保したいので、近くの造船所に行こうか?いや、まず家の片付けをしようかな?家の家財を売れば、少しは足しになると思う。お母さんが海兵時代だった頃の貯金はあるし、いざとなれば働けば良い。働き口は大体検討が付いている。善は急げって言うし、さっさと部屋の片付けを終わらせますか!
「つ、疲れた……」
部屋の片付けは三日続き、ようやく終わった。必要最低限な家具以外はすべて処分したので、家の中が随分と殺風景になってしまった。仕方が無い事だけど……やっぱ寂しいな。
『良かったのか?』
「はい。これも1つのけじめです。主に使われなくなった物を見るのはつらいので……」
『そうか……ミドリ、港の方に出るのじゃ』
「え?どうして?」
『行けば分かる』
風神様に言われるがまま、外に出ることにした。外はすっかり夕焼け色に染まってて綺麗だった。私はその感動を抑えきれず、思わず走り出してしまった。まるで風と一体化した感触が体全体に伝わる。この瞬間こそが、最高の時間であり、誰にも邪魔される事が無い。
「今!私は!風になってるぅぅぅぅぅ!」
『ミドリ!もう過ぎとるぞ!戻って来い!』
「え?」
その瞬間、顔面に激痛が走った。何かにぶつかった様だ。私はそのまま仰向けに倒れた。痛さで地面を転げ回ったが、暫くすると落ち着いたので、ゆっくりと起き上がった。目の前には巨木がそびえ立っていた。
「いたたた……」
『だから言ったじゃろう……ミドリ、横を見るのじゃ』
「よ、横……?」
右を向くと、小さな船が1隻、波に揺られていた。
「この船って……」
『我からの贈り物じゃ。もうチャーターをしなくて済むぞ』
「ほ、本当に良いんですか?!」
『この世界に転生を願ったのは我じゃ。ならば少しでも主のサポート役に徹しようと思ってのぅ。何かあれば我に願え。簡単な事なら叶えられる』
「あ!ありがとうございます!!」
『例は要らん』
こうして私は、フーシャ村を目指すことにした。ルフィって人がどんな人なのかは分からないから、ちょっと不安だけど、お母さんが大丈夫だって言ってる人だからきっと良い人なんだろうな。会うのがとても楽しみだ!
次回、いよいよ主人公と出会います。
遅くなってしまって、すみません。