昼食を終え、俺は一人で食堂にいた。机の上で寝転がり、顔にジャンプを乗せて目を閉じている。
よく漫画で見たことあるからこれで寝てみようと思ったんだけど、これアレだな。息できないし重いしで寝れそうにねーわ。
「邪魔」
ジャンプを顔からどかしてその辺に放り投げた。ジャンプは宙を舞い、どっかにヴァサッと直撃した音が聞こえたが、多分壁か床に当たっただけなので見向きもしなかった。
あー、なんか何もやる気しねー。部屋帰って寝たい。
「ねぇ、ちょっと」
声を掛けられた気がしたが無視した。だって俺に声かけてるわけじゃなかったら恥ずかしいもの。それで何回俺恥かいて来たと思ってんの?
どーしよ、マジ部屋戻ろっかな。うん、戻るわ。
「ねぇ、聞いてんの?あんたよ、あんた」
ワートリ最新巻発売されたし、それ読みながらニコ動で面白そうな動画漁ろう。
「ちょっと!」
あーもう、さっきから誰だよマジで。
「なんだようるせーな。エクストリームクライシス・バーストモード喰らわせんぞ」
言いながら振り返ると、ジャンプの上の部分をを握って、頬をひくひくと引きつらせながら怒りを表に出してる叢雲が立っていた。
「………あっ、やべっ」
「覚悟できてるんでしょうね……!」
叢雲は言うと、ジャンプを握り潰し、俺に襲い掛かった。
ボディと肩と脳天にA+A+↑A(パンチ、パンチ、ジャンプからのカカト落とし)の三連コンボを喰らい、俺は後ろにぶっ飛ばされて、壁に叩きつけられた。
「………すいませんでした」
「いいわ。あんたも元気ないみたいだったし、特別に許してあげる」
なんだよ、こいつもかよ。そんなに元気なさそうに見えるか俺。
「それ、間宮さんと不知火准将にも言われた。そんなに元気なさそうに見えるか?」
「ええ、かなりね」
マジでか……。てか、本人より感じ取ってるってどういうことよ。
「そうか……。でも、別に普通だよ。凹むような事なんてグラブルのガチャ外しまくってる事くらいだし、全然問題ないよ」
「そんなことであんたが凹むわけないでしょうが」
「何だお前。随分と俺のこと詳しいんだな」
「は、はぁ⁉︎違うわよ!べ、別にあんたの事詳しいんじゃなくて……!そ、その、何、あんたみたいなグズが今更そんなゲームの事で凹むわけないって言ってんの!」
「お、おう……」
俺って周りの人から見たらグズだったのか……。俺、仕事はちゃんとこなしてる方だと思ってたんだけど。
「何があったか知らないけど、ちゃんと解決しなさいよ!自分で解決できないなら、誰かに相談する事!一人で抱え込むんじゃないわよ!」
………え?何?この子?すごく優しいんですけど。え、本当に何?本当に叢雲?
キョトンとした顔で見過ぎていた所為か、恥ずかしくなった叢雲は顔を真っ赤にしていきなり怒鳴った。
「何よ‼︎文句あるの⁉︎」
「や、ごめん。予想以上に優しい言葉が聞こえたから。この鎮守府に来て、多分過去最大レベルで驚いてる」
「〜〜〜ッ‼︎う、うるさいわね‼︎……た、ただっ、あ、あ、あんたの料理だけは認めてあげてるんだからッ……その、いつまでも凹まれてるとッ、め、迷惑ってだけよ‼︎」
「え?仕事に支障出てた?俺、プライベートと仕事は分けるタイプなんだけど」
「知らないわよ!とにかく、ちゃんと解決すること!いいわね⁉︎」
「はいはい」
「はい、は一回‼︎」
「は、はい」
よろしい、とでも言わんばかりに叢雲はその場から立ち去った。
しかし、周りの人から見て分かるほど俺って元気なかったのか………。なら、少し1人で考えてみるか。元気が無くなった事情って奴を。
1
厨房には、今俺しかいない。
間宮さんは自分の喫茶店で、大鯨さんと鳳翔さんは非番。つまり、ここには夜まで誰も来ない。考え事をするにはもってこいだろう。
さて、俺が周りから見て元気ない、というところからだ。俺自身はまったく自覚していなかったが、周りから見たら元気なさそうに見える。しかし、こういうのは大抵、自覚は多少でもあるはずだ。それが感じなくなっている。
つまり、同時期に俺の心中で変化したことを探せばいい。
それは簡単だ。ちょうど最近、何に対してもやる気が出なくなっていた。なんかもう、まるで失恋をしたかの如く、何もやる気が出なかった。
それは、古鷹さんのパフェの材料を買って来た日からだ。あれ以来、古鷹さんに避けられるようになり、それに連れて何事にもやる気が起きなくなった。
つまり、俺の元気が無く見える原因は、古鷹さんに避けられていることにあるようだ。
原因がわかれば、打開策を考えろ。
何故、古鷹さんは避けるのか。あの時、帰って来た俺に古鷹さんはなぜか謝ろうとした。が、俺の姿を見るなり、怒って帰ってしまった。あの時に原因がある。
あの時の俺の状況を思い出せ。買い物の途中で古鷹さんに怒られ、先に帰られ、買い物だけ済ませて、途中で鹿島さんを見つけて鎮守府まで案内した。その中に答えがある。
…………はっ、もしかして、
「…………袋の中のパフェの材料が気に入らなかったのか?」
その可能性はあるな。そもそも、古鷹さんの好きなパフェを作ると言ったのに、俺が勝手にパフェの材料を買って来てしまった。
これで原因は割れた。そこが分かれば、後は謝るのみ。
「叢雲に頼れって言われたけど、解決しちゃったかなこれ」
何を浮かれてるのか知らないが、何故かウキウキしながら俺は厨房を出て、古鷹さんの部屋に向かった。
福島必殺技辞典
・ファイナルディストラクション
定規か何かで相手のスネをゴリゴリする。
・オープン・ザ・ドリームナイト
相手の口を無理やりこじ開け、中にカルピスの原液をぶち込んで虫歯にさせる。
・エクストリームクライシス・バーストモード
相手の足を開いて、股間に蹴りを入れまくる。