そしてまた予定の波に吞まれていくのかな・・・
ガンタンクⅡの放った砲弾が、ジオン軍基地へと当たる。
「初弾、着弾確認。狩りの合図には上出来だ」
「何言ってんだアイツ」
ハイドレインジャの満足げな声に、周りの連邦兵達が呟く。
「あの戦闘狂共め・・・」
「増援の皮を被った疫病神なんじゃないか?あいつ等が来てから仕事が増えたしよぉ」
「聞こえてるぞ!いいからさっさと付いて来い」
グラナートロート・ルシファー隊、隊長のグレモリーが黙らせる。
「っ・・・了解」
「ふふ・・・またアレシア君と遊べるかな?」
少女のような顔の少年、アマレロ・フリージアが、嬉しそうな笑顔で呟く。既に18なのだが、まるで子供のような言動も見受けられる。
「うるさいぞ、ザクレロ・フリージア」
「ザクレっ・・・!ジオンのMAじゃないか!隊長!ハイドレインジャがいじめる!」
「両方うるせぇよ」
グレモリーの冷たい目線が通信画面越しに突き刺さり、フリージアとハイドレインジャが黙る。
「エリート様は余裕のようで。・・・ったく」
今度の呟きは聞こえなかったようだ。あるいは無視されたのかも知れない。
「各機、行動開始!」
グレモリーの陸戦型ガンダム、フリージアのジム・コマンドライトアーマー、その他ジム改、ジム・コマンド、陸戦型ジムがそれぞれ数機程立ち上がり、基地へと進んでいった。
「敵機接近!数は12、後方に4!」
「何やってる、索敵が遅いぞ!非番の連中は緊急招集!先にカティス隊を出せ!」
「カティス隊、出撃します!」
「外壁の2番砲座、砲手の代理回せますか!?」
「敵機3機が基地に侵入!サガン曹長が防衛に回っています!援護できませんか!」
基地が騒然とする中、この基地のオペレーター席に馴染んだユイの声もあった。
「アレシア、リーシュ、出撃してカティス隊の援護に回ってください!」
「了解」「了解!」
二人が応答する。
「アレシア・ネイス・・・ドム高機動試作機、出撃します!」
「リーシュ・クリエル、ザク・キャノン、出る」
ゴゥン・・・という音を立て、格納庫のシャッターが開く。暗闇にモノアイを光らせた二機のMSが光に照らされた。
ドム高機動試作機の熱核ホバーエンジンが機体を浮かせ、その重量を感じさせない動きで格納庫を出る。続いてザク・キャノンが一歩を踏み出し、金属の巨人の足音が、ゴン・・・と重く響く。
「リーシュ・・・カティス隊は?」
「外の防衛に回ってる」
「了解」
そう言うとアレシアは滑走路に出た。そしてそのまま、前へとブーストで加速する。キィィィィ・・・と音を立て、バックパックと腰のサイドのスラスターが青白いブースト光を瞬かせる。大気を裂き加速した機体は、あっという間に滑走路を抜けて外へと彼を運んだ。
「新手かっ!」
アレシア機の接近に気付いたジム・コマンドがプルパップマシンガンを撃ちつつアレシア機に接近する。
「そんなんで墜ちるか!」
アレシアのドム高機動試作機が加速し、ジム・コマンドの横をすり抜け真後ろの死角に回る事でマシンガンを交わす。ホバーの機動を活かし反転。ジャイアント・バズを構え、接近するジム・コマンドに撃ち込んだ。
「グッ!」
ジム・コマンドは咄嗟に振り向き、シールドで防ぐ。シールドが破損し、半分ほどになった破片がひしゃげて砂に堕ちた。
「この程度!」
ジム・コマンドのパイロットはそう叫ぶと、破損したシールドをドム高機動試作機に放り投げる。そして加速し、死角からビーム・サーベルで斬り込んだ。
ドォォ・・・ン・・・
爆発が起こる。
「やったか!?」
だが・・・。
「馬鹿め、武装を壊しても撃墜数は増えないぜ!?」
爆炎の中に浮かぶ影。
「何っ!?」
ジム・コマンドのパイロットが最後に見たのは、高々と振り上げられたヒート・ランサーが振り下ろされる瞬間だった。
大質量の一撃が、ジム・コマンドを頭から分断した。切断面が焼けた残骸が砂漠に倒れ、流れ出たオイルとコクピット周辺の血が、砂漠の砂に吸い込まれて消えていく。
「一機撃墜・・・」
アレシアがそう呟いた。
「フィラクの機体はA-Ⅱ番格納庫だったか!?」
「そうです」
ハンドルを握りながら、セリエズがフィラクに聞く。
返ってきた答えに安心して、再びセリエズが運転に集中した。
基地の襲撃時、基地の一角の休憩所にいたセリエズとフィラクは、残骸を避けながら格納庫を目指していた。
助手席のフィラクが叫ぶ。
「10時の方向、砲弾の破片が飛んできます!」
「了解っ!」
セリエズがハンドルを捻り、それを避ける。
「地下ルートは!?」
「左に曲がってB-5ゲートから入って、A-3ゲートから出るのが最短です!」
「了・・・解っ」
フィラクのナビゲートに従いつつ、地下へ入る。ワッパが使えれば移動ももっと早いのだが、この状況下では一機でも戦力に回したいはずである。車はそこらに置かれたコンテナを最小限に近い軌道でかわしつつ、出口へと向かった。
しかし、地下を出た瞬間・・・
「正面っ!敵MS!」
「言われずとも、嫌でも見える!」
そこは『ジム改』が、マゼラアタックを踏み潰す瞬間だった。
「セリエズさん、この車、後ろにバズーカ積んでますよね!」
「そうだ・・・って、まさか!」
「止める訳無いですよね?」
「手伝うさ!」
「セリエズさんは、マゼラ・アタックから脱出した人を拾ってください!私が撃ちます!」
そう言って、フィラクがバズーカを持って車を降りる。
「仕方ない!」
セリエズは、マゼラアタックの付近で呻いている人影に車を寄せた。
マゼラアタックは踏み潰されたが、一人だけ脱出していたようだ。
「乗っ・・・て、立てないか。手を貸すぞ!」
脱出した兵は、膝から下が無かった。いや、正確にはあると言えるかもしれない。MSに踏まれ、周囲の地面に擦り付けられたものが「足」と言えるならの話ではあるが。
「悪・・・い、な・・・」
「しっかり掴まってろ!フィラクを拾いに行く!」
一方フィラクは、車から降りると、ジム改の砲を向き、バズーカを構えた。
改めて、18mという大きさを目の前にすると、逡巡が生まれる。
だが、一度後ろを振り向いてから、バズーカを構えた。
(後方確認・・・障害物無し、人も居ない!奴はまだこっちに気付いてない、今がチャンス!)
そしてフィラクはジム改めがけてバズーカを撃った。
ドッ・・・!
砲身から放たれたロケット弾は炎と煙の尾を引き、ジム改の左膝の関節を直撃した。
「よしっ!」
気付いたジム改が振り向く。
そして向き直り、人間のそれより遥かに大きいバズーカを構え・・・ようとした瞬間。
ジム改が斜め前につんのめった。
フィラクの方に向き直る動作のどこかで、左膝の関節に負荷が掛かったのだろう。脚部が外れはしなかったが、バランスを狂わせるには十分だったようだ。
「乗れ!」
四つ這いになったジム改の手足の隙間を縫って、セリエズが運転する車が近づいて来て、キキィ、と音を立て、目の前で止まった。
「奴が立ち直る前に離脱する!」
「了解」
助手席を怪我人に譲り、今までバズーカが積んであった荷台にフィラクが乗ったのを確認すると、セリエズは再びアクセルを踏み込んだ。
「やっぱり・・・俺の居場所は戦場だ!」
グラナートロート・ルシファー隊隊長のグレモリーが、そう叫ぶ。
彼の陸戦型ガンダムが横へ動きながら100mmマシンガンを撃つ。それはザクⅡF2型の下半身に当たり、脚部を破壊した。
倒れこんだザクⅡF2型を踏みつけ、コクピットに100mmマシンガンを押し付ける。
MS同士が触れ合い、接触回線が開く。
「やめっ・・・助け・・・」
引き金を引く。コクピットの弾痕から、鮮血が漏れるのを見て、皮膚を快感が細波のように走った。
「やっぱりなぁ・・・敵を殺った瞬間が、一番愉しい・・・!」
倒れ伏すザクⅡF2型は放っておき、次の敵を狙おうとした瞬間。
「っっと・・・」
グレモリーは、直感のようなものに引きずられて、機体を後方に引かせる。
一瞬の後に、彼の居た場所にヒート・サーベルが突き込まれる。
「かわされた・・・ただの戦闘狂じゃない、か・・・」
突き出したヒート・サーベルを構えなおした機体は・・・ドム・トロピカルテストタイプ。
前回、ワッパを操縦していた女性パイロット、カティスの機体だった。