冒頭の擬音とかまさにそうですね(笑)
結構しっかりとした内容にするつもりだったんですが、勢いだけで書き始めて内容をほとんど考えていませんでした。
面白くなる未来が見えなかったのでボツです。
――――オォーン……――。
静寂は耳を割った。脳髄の詰まった頭部を反響する振動は大気のもたらした重圧か。瞳に映る景色には見覚えがある。それを見たのは一体いつだったか、彼の意識は未だに混濁していた。
真一文字に横たわる体を起こそうと地に手を付ける。硬くざらついた感触――コンクリートだろうか?――は屋外なのだと錯覚させた(・・・)。膝を四十五度に曲げると平穏な血の波に勢いが増すのを感じる。どうやら長い時間同じ態勢でいたらしい。
夢寺(ゆめでら)黒仁(くろひと)は今自分に起きている事を整理しようと試みた。ここは一体どこなのか。自分の知るところでは無いのは大よそ理解していた。しかしどこか既視感がある。それ故に本当にここが自分の知らぬ土地がどうかの判断がつかなかった。
自身の記憶を呼び起こさんとニューロンの海を巡らす。最後に覚えているのは仄かな闇。明かりの消えた居間には都市から逃げ出したネオンの燐光が舞い込んでいた。過密な人類の首都は光すら空へと追いやる。雲はまるで暁のごとく橙黄に照らしだされるのである――。
黒仁はふらりと、キッチンから飲みかけの黄色いウイスキーを伴い青いソファーへどっかりと腰を落とした。グラスを用意する必要はなかった。二週間前にその理由がなくなったからだ。
アルコールの香りが口内を満たし喉をピリッと焼く。音が欲しい――そう思いテレビジョンのスイッチをつけたが、すぐに切ってしまった。いずれの放送局も代わり映えのない低俗な番組しか流していない。例えば黒仁の求めるような伝統的ロックンロールやジャズといったものは彼らにとって価値のないものへとなり下がっていた。
一瞬の喧囂は残響の幻を置き去りにした。そのために静かな部屋はより一層寂しくなったような気すらした。今や独り身となった黒仁は、この家はこんなにも広かっただろうか、と思い耽るのであった。
残光の踊りに惹かれて窓へと視線を移す。目まぐるしく動き回るそれらはまるでうるさかった。音などいらないと、その時感じた。
しばらくそれらを眺めながらひたすら肝臓へと燃料を投下する。沈黙の臓器はその鉄のように冷たいエンジンに火を灯すと勢いよく酵素を働かせ始める。体に取り込まれた有害物質を無害化させる代償に血流が衰えていく。血のめぐりの悪くなった黒仁の瞼は油の切れた歯車のようだった。
体をソファーの上へと横たわらせる。酒に浸りきった体はずぶずぶとシートへ沈み込んだ。背からの圧迫は黒仁の自重を優しく受け入れる。その心地良さときたらはまるで夢の中にいるようで、ゆえに彼が次第に歪になる視界が幻想の産物であると紛うのも致し方がないのである。
――意識は覚醒し始めたが完全ではなかった。黒仁はこれは夢の続き(・・・・)であると悟った。先ほどから見えている灰色は雲のそれではない。まるでベニヤの合板に白ペンキを塗りたくったかのような安い作りであり、彼の意識の靄が晴れれば映画のセットのようにすら見えていたに違いない。
良く辺りを見回せばそこは住宅街だった。周りの建物はいずれも空色(・・)で、かろうじて植木の色彩が目を引いたが別段珍しいものでもない。何一つ面白みのない退屈な世界だ。
徐に立ち上がりなんとなしに歩みを進める。建造物はいずれも中流階級の住居ばかりであり都市部ではなじみ深い高層ビルディングは一つも無かった。昔懐かしいノスタルジアを感じさせる閑静な住宅街、人口の激増する半世紀前の街並みだ。
「これは、夢だな?」
侘しい思いに駆られ黒仁は独り言つ。誰に答えを求めるでもない付加疑問文だ。なるほどこれが明晰夢と言う物なのか、彼は靄のかかった世界の一端を理解した気になっていた。
代わり映えのない景色は突然に移り変わった。奇術師も