タイトルはゲーム「R-TYPE Tactics2」の副題、「Operation bitter chocolate」から
取ってます。
ビターチョコレートのほろ苦さと恋愛のほろ苦さを掛け合わせる……的な発想だったんだと思います。知らんけど。
個人的に面白くなかったのでボツ。
板チョコレートをひとかじり。
口の中にほんのりとした甘さが広がり次第に苦味が姿を現し始める。しばらく口の中で転がし続けていると塊はやがて唾液と混ざりしつこい甘さだけが口内を満たした。
左手首に巻いた時計を見ると自分がその場にやって来て二十分ほど経過した事が分かった。顔を上げてみるとといつの間にか人が増えていた。どこを見渡してもカップルばかりだ。
「はぁ……ちくしょう、こねぇかなぁ」
十二月も残り一週間を切った今日と言う日、真冬の寒さは手袋を忘れた俺には厳しいものがあった。じんわりと痛みを感じ手の甲を見る。あかぎれのせいで血が滲み出していた。
元々乾燥気味の肌はこの時期になるとより一層荒れてしまう。いくら急いでいたとはいえ保湿クリームを忘れたのは――患部が手だけに――痛手だった。
「やっほ。待った?」
吐息で手を慰めていると上から声が降りかかってくる。ハッとして見上げると、俺の待ち人はやって来ていた。
「……いや、全然」
「嘘。震えてんじゃん」
立ち上がった俺の姿を見て彼女がクスクスと笑う。確かに俺の全身は厚着の上からでも分かるほど震えていた。
ただそれは寒さのせいとは限らないだろう。緊張? 武者震い? 自分でも分からない感情に心臓までもがバクバクと震えている。とにかく、俺の弱さを彼女が勘違いしてくれたのは幸いだ。
「何それ、チョコレート?」
「ああ。ちょっと小腹が空いたもんで、コンビニでな」
「えー? 何でチョコなのさ」
嘘だ。本当は彼女が好きなのを知ってて予め買っておいたものだ。
しかしいきなりポンとチョコレートを渡すのは変だったので自分で食べてしまっていた。
「本当にタツは変わってるね。暖かいものにすれば良かったのに」
「うっさい。お前も一口いるか?」
「んー……ミルク?」
「いや、ビター」
「それじゃあ、ひと欠片(・・・・)」
パキリと、俺は口の付けていない箇所を折って彼女――ユナに渡そうとする。ユナは手袋を外そうとしたが、イタズラな笑顔を浮かべると口を開けた。食べさせろって事かよ。
口元に近づけると白く整った歯でパクリと挟み込む。ニヒヒと笑うユナの笑顔は天使よりも美しい。
「苦ーい」
「ビターだからな」
「うん。この味が好き」
……その言葉、俺に言って欲しいなぁ。
「それで、どこに行こっか?」
「とりあえず、映画でも行こうぜ」
「デートみたいだね」
「デートさ」
「それじゃあ手でも繋ぐ?」
彼女の魅力的な提案に再び心臓が激しく揺れる。だが「なーんてね!」と笑い彼女が距離を取ってしまった。ここは引かずに手を繋ぐ場面でしょうが。
「ホラホラ、早く行こうよ!」
「わーったよ」
「何ふて腐れんのさ」
「そんなんじゃねぇよ」
いいや、ふて腐れていた。
ユナと知り合ったのは中学に入って間もなくだった。お互い一年生の頃にバスケット部に入部し、同じ部と言うことでそれなりの関係が三年間続いた。
男女間で練習メニューが違うとは言え同じ部というだけで恵まれていた。いつもでは無かったが一緒に下校を共にする事もあり、他の同級生に比べれば俺たちは特に仲の良い関係だったはずだ。