ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

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回想3

目の前でママは死んだ。パパは悪魔によって殺された。

私は、目の前で起きたことが理解できなかった。

なんでママが死んでるの?なんでパパはいないの?

周りは炎によって赤く染まり、聞こえてくるのは人々の嘆きと断末魔。

ここは地獄だ。どうしてこうなったの?

 

そうだ、これは夢だ。ほっぺたを抓る。痛い。あ、夢じゃないんだ。

私は目の前の光景をもう一度見る。ママが死んでいる。悪魔と共に。

ああ、死んでるんだ。私は現実に戻された。

私の心は壊れかけるも、ママの言葉を思い出す。

 

そうだ、リーシャを探さなきゃ。私の大切な妹。

確かクリスと一緒だっけ?そうだ、見つけたら一緒に逃げよう。

もうこんなところにはいたくない。

そう思い、私は二人を探す。ふと、遠くの方で二人を見つけた。

よかった無事みたいだ。でも、二人は必死に走っている。

後を見ると、紫色の髪をした悪魔が、ゆっくりと二人を追っていた。

悪魔の服装は、この町には場違いなほど、豪華で煌びやかなドレスだった。

二人は教会の方へ走って行った。なら私は追いかけるしかない。

私には、ただそれだけしかなかった。

 

 

道に広がる崩れた瓦礫と赤い液体に足を取られながら、私は教会に向かう。

速く!速く!動いてよ私の足!もう嫌なの!もう・・・。

教会にたどり着いた時、声が聞こえた。

 

「彼女を離せ、悪魔め!」

 

クリスが、剣を両手に持って悪魔に向かっていた。

でも、彼の剣の腕はどうみても素人であり、その上恐怖に支配されているのが解る。

それを知っているのか、目の前の悪魔は面白そうに嗤い、

片手を振るって彼を吹き飛ばす。傷つきながらクリスは立ち上がり、また吹き飛ばされる。

それを何度も繰り返していた。

まるで、捕まえたネズミを弄ぶ猫のように。

 

悪魔の片手はリーシャの腰にまわり、

リーシャが必死に足掻くも、決してその腕が緩むことはない。

 

「リーシャ!クリス!」

 

私は叫んだ。

傷だらけのクリスと、悪魔に捕まったリーシャ、そしてリーシャを捉えた悪魔が私を見る。

 

「おねえちゃん!」

「アーリィ!来ちゃだめだ!」

 

二人は叫ぶも、私はクリスに駆け寄り、彼の身体を支える。

 

「あら?どうやらこの子のお姉さんの登場かしら。うん、結構かわいいじゃない。

 姉妹揃って、私好みね」

 

目の前の悪魔が舌なめずりをする。さっきの悪魔と同じように気持ち悪い。

私はクリスを支えつつも、悪魔を睨みつける。

 

「あなた一体何なのよ!この状況は何なのよ!」

「顔が怖いですわよ?折角の御顔が台無しですわ。そうね、自己紹介をしましょうか」

 

そういうと、悪魔は仰々しく片手を広げ、お辞儀をした。

優雅に見えるも、滲み出る黒さに顔を背けた。見ていたくない。

 

「私は純血の悪魔の一人にしてシャックス家の次女、ローゼリア・シャックスですわ。

 趣味は美しいものを奪うこと。美の蒐集家ですの。そして、」

 

ローゼリアと名乗った悪魔は、リーシャの顔に舌をはわせた。

 

「この子、リーシャですか?この子の笑顔が太陽のようにかわいいと聞きまして。

 でしたら、この私のものにしなきゃいけないと思い、こうして足を運びました。

 ほら、私は美の蒐集家ですから」

「じゃあ、なんで町をめちゃめちゃにしたのよ!」

「ああ、だってこの子が私と行きたくないと言いましてね?

 ですから、彼女の憂いを断って差し上げようと思いまして」

 

そういうと、ローゼリアはさも当然のように言った。

目の前の存在が何を言っているのか解らない。そんなことのために死んだの?

勝手に欲しいと現れて、言うことを聞かないから滅茶苦茶にした?フザケルナ

 

「ふざけないで!そんな勝手な話で、私たちの町を壊したというの!?」

「何を言っていますの?私たち悪魔に奉仕するのが、人間ではないのですか?」

 

彼女の言葉に、私は理解した。ああ、彼女を理解することは出来ないと。

私の質問をうっとうしく思ったのか、ローゼリアは顔を顰めて、手を向けた。

 

「まったく、人間との会話は疲れますわ。面倒ですので、もう殺しましょう」

 

ローゼリアは退屈そうに言うと、自身の右手を私たちに向けた。

彼女の手のひらに黒い球体が浮かぶ。

 

「解りました!解りましたから!あなたに着いて行きます。眷属になります!

 ですから、お姉ちゃんとクリスを見逃してください!」

「リーシャ!何を言っているんだ!」

「リーシャ!何を言ってるの!?」

 

私と傷だらけのクリスが叫ぶも、リーシャは泣きながら言う。

 

「お願いです、どうか二人を見逃してください・・・」

「ようやく素直になったわね。では契約成立ですわ」

 

そう言うと、ローゼリアは胸から何かを取り出し、リーシャに埋め込んだ。

その瞬間、リーシャの体が震え、彼女の絶叫が響く。

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

「リーシャに何をしたんだ!」

 

リーシャの異変にクリスは叫び、ローゼリアは笑顔で答えた。

 

「彼女を私と同じ悪魔にしますの。私の大事な大事な眷属ちゃんに。

 悪魔の駒と言いましてね、契約した相手を悪魔に転生しますの」

 

彼女が話し終えると、リーシャの震えと叫びが止まった。

そして、リーシャの背中からコウモリの翼が生えた。

 

「ご機嫌麗しゅうございます、ローゼリア様。貴女の愛しき下僕、リーシャです」

「あらあら、嬉しい言葉ですわ」

 

先ほどまで逃げようとしていたリーシャが、目の前の悪魔にお辞儀をした。

輝かしいまでに美しかった笑顔は、退廃と色欲に歪んで見えた。

 

私の中で何かが壊れた。

クリスも、リーシャを見て呆然としていた。

 

私たちの方へ顔を向け、ローゼリアは考え込む。

 

「では、人間だった彼女との約束で、私は見逃して差し上げますわ。

 私、約束には律儀ですの。ですから、」

 

ローゼリアの顔が歪む。

 

「リーシャ、この二人を殺しなさい。出来たら、あとで可愛がってあげますわ」

「はい!喜んで!」

 

そして、支えていたクリスが倒れた。目を向けると、彼の胸に深々と手が刺さっていた。

その手はリーシャだった。

 

「リーシャ・・・?何してるの・・・?クリスだよ?恋人のクリスだよ?」

「この人間が恋人?ふざけないでください。こんな汚らわしい人間が、私の恋人?

 私はローゼリア様の寵愛を受ける眷属の一人。

 さて、あなたもローゼリア様のために死んでください」

「何を・・・言ってるの・・・?」

 

頭が真っ白になった私に、ローゼリアは嗤う。

 

「悪魔に転生した存在は、身も心も悪魔に変わりますの。

 たとえ心が変わらなくても、徐々に悪魔にしてくれる優れものです。

 その子はただの人間ですから、一気に悪魔になったんですのね」

 

もう何が何だか解らない。

ママも死んだ、パパも死んだ、

そして大好きなリーシャは、悪魔になって恋人のクリスを殺した。

そしてクリスを殺した真っ赤な手を見せながら、今度は私に向かって歩いてくる。

 

どうしてこうなったのかな?どうしてこうなっちゃうのかな?

私たちの幸せを返してよ。誰が悪いの?ねえ、誰が悪いのよ。

ふと、私を見て嗤っている悪魔が見えた。私を殺しにくる悪魔が見えた。

 

そうか、こいつらが悪いんだ。

 

こいつらがいるから、みんなおかしくなったんだ。

 

じゃぁ、殺さなきゃ。

 

私は、ママから貰ったネックレスの銀十字を引き千切り、

妹だった悪魔に向かって駆け出した。

咄嗟の行動に、一瞬悪魔はたじろぐもすぐに爪を私に向けた。

顔に痛みが走るが、私は手にした銀十字を、悪魔の胸元に突き刺した。

銀は悪魔にとって猛毒であり、心臓に刺されたのなら、それは死を意味する。

 

私は、もたれかかってきた妹の身体を抱きしめた。

 

「ありがとう・・・おねえちゃん・・・」

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

「お帰りなさい、リーシャ」

 

目の前に写るのは、悪魔だった妹、私の大好きな妹。

太陽のように輝かしい笑顔の妹。でも、それを見ることはもう出来ない。

私が殺したからだ。もう見ることはない。

 

すると、なにやらやかましい声が聞こえた。

目を向けると、煌びやかなドレスを纏った、紫髪の悪魔がなにか言っている。

 

「よくも!よくも私の大事なコレクションを!

 いいですわ、もう壊れたモノには興味はありませんし。

 でも、壊してくれたお礼はきっちりしませんと。

 ですから・・・死になさい!」

 

なにかガミガミ言っているが、聞き取れない。

ただうるさい。妹が寝られないじゃないか。

私は妹を横に寝かせ、彼女の手を組ませた。

お休み、リーシャ。

 

そして私は、やかましいスピーカーに向けて、クリスの持っていた剣を投げた。

スピーカーは、難なく剣を手で払うも、その手に傷が付く。

すると、スピーカーは怒りで顔をトマトのように赤く染めた。

 

なら潰さないと。

 

私は散乱していた椅子を手に取り、それを投げつけて走り出す。

スピーカーは、喚きながら手から黒い物体を放つ。

それに触れたものは、一瞬で爆ぜた。ああ、そういうことか。

私は飛んでくるそれに、周りの物を投げつけつつ、飛ばされた剣に向かって走る。

どうやら、剣も十字架と同じように銀製の様だ。

だから傷がつけれたのか。

 

私は落ちていた剣を拾いつつ、やかましい悪魔に目を向ける。

一瞬、ローゼリアの顔に恐怖が走る。

その一瞬を見逃さず、私は彼女に向かって走る。

恐怖に駆られたローゼリアは、頻りに弾を放つも、私にあたることはない。

だが、彼女の弾によって飛んできた破片が身体に突き刺さる。

ああ、痛い。でも気にしない。

そして私は、私に向けた彼女の手を、肘から切り落とした。

 

「あああああああああああああああああ!?」

 

痛みに叫ぶローゼリアを尻目に、

私は次に彼女の右足を落とし、足を払って彼女を転ばす。

次はもう一本の手を落とし、最後に左足を切る。

これで、ローゼリアに出来ることは喋ることだけだ。

 

「まって、待ちなさい!どうかしら、私の護衛になりませんこと!?

 こんなに強いんですもの、私の眷属にして差し上げますわ。

 ああ、止めて!そうよ、私は純血悪魔よ!私を殺したら悪魔が黙っていなくてよ!

 一生、貴女は平穏に生きられない!だったら、私を助けてくれません?

 そうしたら、このことは秘密にして差し上げますわ!

 私が見逃してあげると言っているのよ!?」

 

ああ、うるさい。先ほどから何か喚いてる。

でも、もうどうでもいいかしら。

頭がくらくらするもの。眠たいのよ。

さっきから鳴り響くこのスピーカーがうるさくて寝られないわ。

じゃあ、スピーカーのスイッチをきらなきゃね。

 

「お休みなさい」

 

私は剣を突きたて、そのまま深い眠りについた。

 

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