ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

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迷えるシスター

ある時間、そしてある空港に、一人の女が日本に降り立った。

 

女は、出入り口のゲートをおっかなびっくり通り過ぎ、

自身の荷物である大きなカバンを四苦八苦に持ち上げ、

荷物に振り回されるように、よたよたと空港を後にした。

 

その間、彼女の不審者のような、おびえる小動物のような姿は、

空港内の客や清掃員、店員など、多くの人々の目に留まった。

だが、それよりも多くの人々の目を捉えたのは、彼女の服装である。

 

彼女は修道服を纏っていたのだ。

 

この日本において、修道服というのは目立ってしょうがない。

八百万の神を謳い、多神教である日本においても、

そうした服装を日常で見ることが珍しいのだ。違う場所なら見そうではあるが。

ましてや、その顔はヴェールで覆われているので、さらに異端的な雰囲気を醸しだしている。

女の顔は黒のヴェールで覆われており、

顔は見えないものの、その間から灰色の髪がのぞいていた。

 

時折、修道女は荷物を降ろし、

カバンから取り出した地図を見ながら、自身の目的地を確認し、

地図をカバンにしまった後、またよたよたと歩く。

これを数回ほど繰り返すので、誰も彼もが彼女を嫌でも見てしまう。

そうした、何とも言えない雰囲気を作り上げた彼女は、

別段気にすることない様子で、去っていったのである。

 

そしてここは空港から離れた山奥

修道女は地図を何度も確認し、何度も道行く親切な人に目的地の行き方を尋ね、

何度も電車を乗り継いだ結果、こんなところに来てしまったのである。

そう、彼女は方向音痴なのだ。

月光に照らされて暗くはなくも、周囲は夜を迎えて黒く染まり、不気味な烏の鳴き声が響く。

そうした状況の中、修道女、アーリィは自身の欠点を嘆いていた。

 

 

ああ、なんということでしょう。

道に迷ってしまいました。

遠路はるばるこの日本という地に、離ればなれになった人を探しにきたのですが、

どうも私には大変です。

何度も確認をしたというのに、一体ココはどこなのでしょう?

地図を見ると、目的地にこれほどの森は無いのですが・・・。

 

アーリィは持ってきた地図に目を落とすと、

確かに山や森が描かれているものの、近くには駅や学校もあり、

こんな魔境のような印象はない。

つまり、彼女は自分が迷ってしまったと嫌でも気付かされたのだ。

その現実に彼女は消沈で蹲るも、すぐに意識を変えた。

 

駄目です!めげてはいけませんよ、私!がんばれ、私!

私はあの子を迎えに行くと約束したのですから!

ああ、主よ!この方向音痴の私を導いてください!

 

真っ暗な夜の小道で月に祈る修道女、職質されそうなほどに不審者である。

 

それにしても、先ほどから妙な視線を浴びますね。

やはり、この服装は目立つのでしょうか・・・。

道行く人に尋ねる時も、一瞬驚いた顔をされましたから。

でも、この服装ではないと、あの子も気付いてくれなさそうですし、

気にするのは止めにしましょう!

それにしても困りました。

野宿は別にいいのですが、せめて雨風凌げる場所を見つけたいですね。

 

そうしたことを悶々と考えていたアーリィだが、突如彼女を照らしていた光が遮られた。

彼女が上を見ると、大きな翼を生やした人が、彼女に向かって来たのだ。

 

ちょうどいいところに人が来ました!やはり主は私を導いてくださるのですね!

あの人に道を尋ねましょう!

 

アーリィは、相手を怖がられないように、安心させるように、

その綺麗な顔をにっこりと笑顔に歪ませた。

 

 

 

 

お願いです、道に迷っているのです!どうか私の話を聞いてくれませんか!

それにしても、どうして空に浮かんでいるのですか?

そんなに離れていてはお互いに声が届きません。ああ、そんなに警戒しないでください。

私、尋ね人を探しに教会から来ました、アーリィとお申します。

え、服を見ればわかる?ああ、どうもすみません。

ところで、変わった格好をなさっていますね、蝙蝠の翼なんて。

え、悪魔ですか!?ひぇぇぇ!こんなところに悪魔が出るなんて!

私を食べる?そんなぁ!せめて、せめてあの子に会えるまで待って貰えませんか!?

あ、駄目?空腹だから喰われろ?ああ、そんな・・・。

ところで、『駒王町』という場所を知りませんか?あ、知りませんか。ああ、そうですか・・・。

 

 

 

 

ならあなたに用はありませんので、ちゃっちゃと死んでくださいね。

 

 

 

 

あ、どうして逃げるんですか?逃げれると思っているんですか?

悪魔を前に教会の使徒が許すとでも?駄目ですねー、来世からやり直してくださいよー。

とりあえず、その翼が邪魔なので引っこ抜きますね。

片翼ではかわいそうなので、もう一方も引っこ抜きます。

ああ、これで私と同じ場所に立てましたね。

でも動かれると面倒なので、身体に(銀製の)針をぶっ射します。

あらあら、まるで昆虫標本のよう。可哀想に、誰がこんなことを!

あ、そうでした。お腹が減っていたようなので、お水はいかがですか?

銀十字を付け込んだ、おいしいおいしい『聖水』です。

お腹がいっぱいになるまで流し込みますね。そぉれ、イッキ!イッキ!

あら、どうしました?満足されました?

あれ・・・うごかない。もしもーし?寝ちゃったんですかー?

 

どうやらお腹いっぱいになったので、ぐっすりと寝てしまったらしい悪魔に、

アーリィは自身の善行を嬉しく思った。

 

さて、だいぶ時間を過ごしてしまいました。

しかし、一体『駒王町』はどこなのでしょう?

取りあえず、このまままっすぐ進んで行きましょう。

大丈夫、主が私を導いてくれますから!

待っててくださいね、『アーシア』ちゃん!

 

 

修道女アーリィは、自身の方向音痴を呪いながら、

『アーシア』が目撃されたという駒王町に向けて、山奥へと進んで行った。

 

 

 

 

 

 

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