駒王学園のオカルト研究部の部屋。
床に敷かれた魔方陣が描かれたカーペットに、
壁に掛けられた、色々と禍々しいオーラを纏ったオブジェクトの数々。
2つのソファと1つのテーブルに、理事長先生が使うような大きな机が一つ、
そしてなぜかあるシャワー設備。
オカルト研究部の部屋は、部室というにはあまりに広く、
むしろ理事長室や校長室よりも広いのではないだろうか。
そんな部屋で、テーブルを挿んでリアス・グレモリーとアーリィは対峙していた。
リアスの方には眷属たちが並び、アーリィは扉を背にして座っている。
リアスはいつものように駒王学園の制服を纏い、
アーリィは出会った時と同じように黒い修道服を纏い、黒いヴェールで顔を覆っている。
一誠たちも駒王学園の制服を着ており、幾人かは緊張で身体が強張っている。
両者の目の前には、紅茶の入ったティーカップが置かれるが、
アーリィは以前とは違い、決して手を付けようとはしない。
リアスもアーリィも、見た目や雰囲気は微笑ましいというのに、
一誠たちは、まるで極寒の中にいるような寒気を感じていた。
足元のダンボール箱は、
「ヒィィィィィィィィィィ」と唸り声をあげてガタガタと振動している。
アーリィの愉しい昔話を聞いた日から明後日、
つまり、今日はリアス等とアーリィにとっての運命の日となる。
そう、アーシアがどちらを選ぶのか?という日なのだ。
以前と同じようにリアス等と仲良く暮らすのか?それともアーリィに着いて行くのか?
それが今日、決まるのだ。
アーシアはまだいない。何故かゼノヴィアもいないが。
一誠の両親等と楽しい朝食には出てきたが、まだ決心がつかないのか、
その顔は明るくも昏く、一誠のお母様から心配されていた。
時間になっても部屋から出てこず、リアスがアーシアを心配で確認しに行ったら、
ゼノヴィアからまだ悩んでいるので遅れる、と言われた。
直ぐに行くので、少し待っていてほしいとも。
リアスは少し首を傾げたものの、別段気にすることもなく、
「待っているからね」とだけ伝えた。
魔方陣で部室に移動した後、約束の時間よりも少し早くアーリィが到着した。
彼女は、大きなボストンバックを2つ持って入ってきた。
どうやら、昨日はお土産用として色々と駒王町を回りながら購入したらしく、
持ち込んで来た鞄一つでは入りきらなくなり、泣く泣く新しいのを買ったとか。
そんなことを笑いながら語られ、つられて笑いながら相槌をうった。
約束の時間になりつつも、まだアーシアは来ない。
ただ待つだけでは時間を持て余してしまうので、リアスはアーリィと語らうことにした。
「ところでアーリィさん、この町はどうでしたか?」
「ええ、とても愉しい町ですね。多くの人々が活気に溢れ、本当に素晴らしい町です。
誰もが今を必死に生き、そしてそのために行動する。
商店街の賑やかさは私の励みになりましたし、
アーシアやゼノヴィアさんと買い物なんて夢みたいでした。
学び舎も、若き学生たちがその身を削って命を輝かせている。
ええ、本当に素晴らしい町で『した』」
アーリィの言葉にリアスは笑みを零す。それは当然です、というドヤ顔をして。
「それでアーシアの件ですが、私たちは『アーシアを信じ、彼女の決めたことに従う』、
それが約束でしたわね?」
「ええ、彼女の決めたことですから。私はその意見を尊重したいと思います。
ですので、私は約束を守りますよ」
「私も同じです。可愛い妹のアーシアが決めたことですもの。
私も約束を守りますわ」
互いに約束を交わし、それから少しの会話を続けて場が和んだ時、
部室の扉をたたく音が聞こえた。
「部長、ゼノヴィアです。ようやくアーシアが決意をしたみたいで、ただ今連れてきました」
「あら、もう少しかかると思っていたけれど。どうぞ入りなさい」
リアスがそう言うと、扉が開いてゼノヴィアが入ってきた。
その後ろを、白い修道服を纏ったアーシアが入る。
相当に葛藤と苦悩をしたのだろう。アーシアの顔は陰り、疲れているように見えた。
だが、その目は何よりも強い光を携えていた。
「あ、あの!す、すみません。
私、ずっと考えても決められなくて、こんなにも時間をかけてしまい、ごめんなさい」
「気にすることはないですよ、アーシア。私が無理に言いだしたことですから」
「ええ、アーシアは悪くないわ。悪いのは私たちですもの」
謝るアーシアを和やかに窘め、3人は互いに笑みを零す。
「それでアーシア、ようやく決まったのね?」
「はい!」
リアスの問いにアーシアは答える。
それは彼女の決意の証なのか、それとも別の何かか、その声には強い意志を感じた。
「アーシアが来る前に、私とアーリィさんで話をしていたのだけれど、
私も彼女も、貴女の決めたことには何も言わない。
これを互いに約束したの。
だから、私たちのことは気にせず、貴女は自分に正直になりなさい」
「アーシア、私は貴女の意志を尊重しますよ。
たとえ茨の道を歩むとしても、貴女が決めたのならば、私は何も言いません。
私にはそれを止める権利はないのですから。
ですが、貴女と一緒に歩むことは出来ます。
だから、貴女の意志を話してください。私は貴女と共にありますから」
リアスとアーリィの言葉を受け、アーシアは心を決めた。
「私は・・・!」