ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

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修羅

アーリィの突然の豹変に驚く一誠たちだが、相手の敵意を肌で感じ取りすぐさま戦闘準備を行う。

 

一誠は左腕に『赤龍帝の籠手』を出現させ、

木場は『魔剣創造』によって剣を構築し、小猫は己の拳を構える。

ギャスパーは震えながらダンボールを頭から外し、『停止世界の魔眼』の準備を始める。

朱乃は嗜虐的な笑みを強め、リアスは優雅にアーリィを見据える。

 

「どうして戦わなくちゃいけないんだよ!

 あんたが悪魔に酷い事をされて、憎んでいるのも解る!

 でも俺たちと手を取り合うことも出来るはずだ!

 こんなことをして、アーシアとゼノヴィアを悲しませたいのかよ!」

 

「・・・」

 

一誠の必死の言葉にアーリィは喋らない。

もう一度呼びかけようとするも、それをリアスが手で制し、首を横に振る。

 

「部長!?」

 

「無駄よ一誠。彼女は今、憎しみに囚われているの。

 だから、何を言っても聞いてくれないわ」

 

「そんな!」

 

リアスの言葉に一誠は反論をしようとするも、言葉が出ない。

 

「だから彼女を止めるわよ。

 一誠も言ったじゃない。話し合えば誰でも手を繋げられるって

 そのための第一歩よ。

 大丈夫、私たちが全力でサポートするわ。良いわね!」

 

「「「「はい!」」」」

 

リアスの言葉を受け、それぞれが笑顔で頷く。

その言葉に一誠は胸を熱くし、心が熱い思いで満たされる。

 

「行くわよ皆!」

 

主の掛け声と共に、臣下たちは動き出した。

 

だが聖なる結界の中にいるせいか、先ほどから身体が酷く重い。

翼を展開して上空へと上がることが出来ない。

また各臣下たちにも、多少なりと影響がみられる。

 

『騎士』である祐斗の持ち味は速さだが、普段よりも遅く見える。

『戦車』の小猫は耐久性と膂力がウリだが、それでもこの不調には不安が残る。

『女王』の朱乃に関しては、上空へ移動できないせいで、固定砲台へと役割を変える。

『僧侶』のギャスパーは、悪魔と吸血鬼のハーフ故か、自分たちよりも顔色が悪い。

かくいうリアス自身も、この結界での長時間戦闘はきついとみていい。

唯一、赤龍帝の一誠は、他と比べるとその影響はないように見える。

戦闘経験が少ないものの、頼れる一誠を中心に据えて行動させるべきだろう。

 

多少なりとハンデを受けているものの、

こちらは数が圧倒的に有利であり、自分たちは難敵と戦い、そして勝利してきた。

その事実が、リアスだけでなく一誠たちに背中を押す。

 

だが彼女たちは失念していた。

アーリィが、かつて『ゼノヴィアと共にいた彼女』が、一体どういう存在なのかということを。

 

 

「ギャスパー!」

 

「はい!」

 

リアスの掛け声を聞いたギャスパーは、即座に『停止世界の魔眼』を発動。

対象はアーリィだ。

いくら悪魔殲滅者であろうと、魔眼に囚われてしまえば何も出来ない。

 

だが、アーリィは咄嗟に台に置かれていた敷物を引っ張り、自身の目の前へ投げるように広げた。

敷物は彼女の壁になるよう広がり、ギャスパーの視界に入った敷物が空中で停止する。

結果として、アーリィを魔眼で捉えることは出来ないどころか、

敷物によって自分たちの視界を遮断されてしまった。

 

「そんな!?」

 

驚くリアスだが、アーリィの方から何かが転がり、

突如、噴煙と爆音と閃光が教会で満たされた。

爆音により耳が一時麻痺し、閃光により目の前が真っ白に染まり、

噴煙によって自分たちの姿が視界から遮断される。

それに、どうやらミントといった香草の匂いを感じ、息を吸う度に気分が悪くなる。

 

「クソ!卑怯だぞ!姿を現しやがれ!」

 

叫ぶ一誠だが、何も返答はない。

 

「みんな無事!?」

 

「大丈夫です!(問題ありません)(無事です)(こちらは大丈夫ですわ)」

眷属の状況を確認しようとするリアスは、聞こえてくる眷属の声に安心する。

 

だが突然、自分の後方から叫び声が響く。確か、自分の後ろにいたのは・・・!

 

「ギャスパー!?」

 

リアスの叫びも空しく、ギャスパーからの返答はない。

だが駆け寄ろうにも、粉塵のせいでギャスパーの姿が見えない。

 

「祐斗!この邪魔なものを払いなさい!」

「解りました!」

 

リアスの命令を聞き、木場は風の魔剣を作りだして、一気に粉塵を吹き飛ばす。

すると、リアスの前には両目を押えているギャスパーが現れた。

 

「ギャスパー!」

 

リアスたちがギャスパーにかけより、

木場と子猫と一誠が前を、朱乃が後方を守るように警戒する。

ギャスパーは掠れるような声で、「目が痛いですぅ・・・」とこぼす。

その姿に、リアスはギャスパーを抱きしめた。

 

「魔眼が厄介と思いまして、真っ先に潰させてもらいました。

 本来だったら抉り取るのですが、数日ほどで回復する程度にしましたからご安心を」

 

粉塵が晴れて、アーリィは一誠たちの目の前に現れた。

剣は左手に握られて鈍い銀色を放ち、彼女の右手には空になった小瓶が握られている。

どうやら、それでギャスパーの目に何かしたらしい。

その言葉にリアスは怒りの感情を宿す。もちろん、一誠たちもだ。

 

「よくも私の可愛いギャスパーを!絶対に許さない!」

「てめぇきたねぇぞ!正々堂々と勝負しやがれ!」

 

「卑怯というなら、私(人間)を6人で襲うあなた(悪魔)たちも卑怯じゃないですか?

 あ、今は5人でしたか。

 自分たちのことを棚に上げるのは良くありませんよ?」

 

リアスと一誠の罵倒に、アーリィは何を言っているのですか?という風に首を傾げる。

その悪びれもしない姿に、リアスたちはもはや戸惑いを棄てた。

もうアーシアの姉だの、ゼノヴィアの戦友だのどうでもいい。

こいつは自分たちの敵だ!

 

「祐斗!小猫!朱乃!」

「「「了解!」」」

 

以心伝心だろうか、リアスの言葉に二人は同時に動き、アーリィへと襲い掛かる。

速さと魔剣を力とした木場と、力と耐久を主とした小猫。

たとえ結界に力を抑えられようと、彼らの意志の強さを止めることは出来ない。

また、朱乃は後に下がらせたギャスパーを守るように前に立ち、

アーリィへ向けて雷の魔力を溜める。

 

「一誠!」

 

「わっかりました!」

 

一誠は『赤龍帝の籠手』を発動させる。

たとえ一誠自身の力が非力だとしても、『倍加』によってその力は何倍にも膨れ上がるのだ。

人間であるアーリィが、これの力をまともに受ければただでは済まないだろう。

だが、一誠では『倍加』には時間がかかるのだ。

それに、この中(結界)では思うようにできるとは限らない。

ゆえに、裕斗と子猫、そして朱乃は時間稼ぎという役割もある。

もちろん、そのまま倒してしまっても構わない。

 

先に仕掛けたのは木場だった。

彼は別の魔剣を構築しアーリィに斬りかかった。だが、アーリィはそれを剣で受け止める。

その行為こそが木場の狙いだった。

 

「かかったね」

 

そう言うと、木場の持っていた剣から炎が吹き出し、一瞬にしてアーリィを包む。

これが木場の狙いだった。

直接攻撃が当たらなくとも、間接的にダメージを与えることが出来れば、あとは種族の差だ。

人間である彼女に、炎は大きなダメージを与えられる。

だが、魔剣から放たれた炎は木場自身も焼くものだ。

木場は直ぐにアーリィから離れようとするも、なぜか足が動かない。

自分の足を見ると、気付かない内に自分の右脚が鎖で縛られ、彼女の右足に繋がれている。

その上アーリィの足が、動かせないように、地面に縫い付けるように、木場の足を踏んでいる。

炎に包まれながらも、アーリィは木場を逃がそうとしない。

その上、引き剥がそうとするも彼女との距離が近すぎるせいで、剣が思うように振れない。

 

「一緒に、温まりましょう?」

 

木場は、目の前にいるアーリィからその言葉をかけられた。

彼女は炎に包まれているというのに、その声には焦りもなく、本当にただの御誘いに聞こえた。

気付けば、自身の魔剣がこちらに向けられていた。木場とアーリィは炎の塊となった。

 

「木場ぁぁぁぁぁ!?」「祐斗先輩!?」「祐斗!?」「祐斗さん!?」

 

炎に包まれる木場に一誠たちは驚愕の声を上げ、

直ぐに小猫が助けようとするも、炎に包まれているせいか簡単に近づけない。

炎に包まれた二人の姿は何やらもがき、そして時折銀色の光がチラついた。

 

「お返ししますね」

 

その声が聞こえると、炎の中から何かが小猫に向かって飛んできた。

それは木場祐斗だった。

咄嗟に受け止めた小猫だが、勢いを殺せずに地面を転がった。

 

「大丈夫ですか、祐斗先ぱ・・・!?」

 

小猫は木場を見て言葉を失った。

彼の両脚には釘が何本も刺さっており、両掌にも何本か貫通していた。

 

「足が速かったので両脚を、それと剣士みたいだったので両手を潰しました。

 数週間で治る傷ですから、問題ないですよね?」

 

まるで大したことでもないように言ってのけるアーリィは、

懐から液体の入った瓶を取り出し、炎に包まれている自身にその中身をぶっかける。

すると、彼女を包んでいた炎が消え、所々火傷を負った彼女が現れた。

 

「焼かれた時は吃驚しましたが、痛くないんですよ。あの時と較べましたら」

 

炎にまかれていたというのに、痛々しい火傷が見えているというのに、

彼女はさして気にもせずに一誠たちを射抜くように見つめる。

 

「次はどなたが来ますか?」

 

アーリィの修道服は、炎によって焦げているも、彼女を守る役割を果たしている。

だが、ヴェールは形を保っている程度に過ぎず、

焼け焦げたヴェールから覗く彼女の目が、濁った輝きを放っていた。

 

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