ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

34 / 41
悪魔

「さて、静かになったところで、私からご提案があるんですが、良いでしょうか?」

 

額から血を流しながら、足元に一誠が転がっている状態で、

アーリィはリアスたちへと顔を向けた。

額から垂れる血を拭いもせず、彼女は笑顔で問う。

だが、リアスたちからすれば、一誠のことが気になり、彼女の言葉が耳に入らない。

 

「あ、もしかして兵藤さんを気にしているのですか?

 なら安心してください。無力化しただけですか、別に命に問題はありません。

 それでも心配なら、今すぐ彼を治癒しましょうか?」

 

リアスたちの視線と表情から、アーリィは倒れている一誠に手を翳そうとし、 

 

「一誠から離れなさい!」

 

リアスの声で手を止められた。

 

「解ったわ。

 どういった提案なのか解らないけど、先に一誠から離れて!

 これ以上、一誠に何かしたら、私は貴女を許さないわ」

 

「分かりました。じゃあ、私は退きますね」

 

アーリィは、ゆっくりと一誠から離れようとした・・・・・・・・突き刺した剣と一緒に。

途端、一誠の叫び声が木霊する。

 

「何をしてるの!?」

 

「いえ、自分の物を回収しようとしているだけですが?

 駄目です。あげませんよ。これ(フランベルク)結構、値が張るんですから。

 それに、道具は大切にしないとダメと教わらなかったのですか?」

 

そう言いながらも、アーリィは剣を抜こうとする。

剣の傷口からは血が迸り、一誠の悲鳴が聞こえる。

 

「分かったわ!その場から動かないで!私の一誠を苦しめないで!

 お願いだから・・・!」

 

「離れろと言ったり、動くなと言ったり、一体どっちなんですか?」

 

首を傾げるアーリィだが、

剣から手を離し、気を取り直してリアスと向かい合って咳払い。

 

「では、私のお願いですが、内容は大体同じです。

 ですが、少し付け足しさせてくれませんか。

 二人に世界を見て回ってもいいという自由、これは同じです。 

 追加するのは、2つ。

 1つ、『悪魔側から二人にとって害ある行動を取らせない』

 これは、悪魔側から狙われているアーシアやゼノヴィアさんを保護するため。

 理由は、さっき言いましたからいいですね。

 そしてもう1つは、『1年後のアーシア達の考えを認めること』それだけです」

 

「それだけ・・・?」

 

リアスはアーリィの条件に、少し意味が解らないといった表情をする。

 

「ええ、それだけですが。

 どうしたのですか?そんな表情をなさって。

 もしかして、もっと酷いお願いをすると思っていたのですか?

 酷いですね、私もそこまで押し付けがましいことはしませんよ」

 

リアスの反応に怒るアーリィ。

 

「あ、でしたらこれはどうでしょうか?

 もしも、アーシアがあなた方の元へ帰りたいと願うのであれば、

 1年経たずともすぐに帰ります。

 彼女たちが決めたとはいえ、無理を言ったのは私ですからね。

 それと、私たちが知った情報をそちらにお渡しすることも約束しますよ。

 情報共有は、大切なことですからね」  

 

リアスはアーリィの提案に困惑していた。

 

教会を無理やり黙らせた彼女の行動からすれば、いま彼女が示した提案はあまりに優しいのだ。

そして彼女からの条件も、事と次第によっては、直ぐにでも二人が帰ってくる可能性がある。

 

もしかしたら、自分の考えが及ばない裏があるのかもしれない。

リアスの頭は、簡単に条件を呑むには危険すぎる、という考えが浮かぶ。

だが、もしも断れば、彼女はより恐ろしい要求をする可能性もある、という考えもある。

なにせ、彼女の足元には、自分の大切な存在、一誠という人質がいるのだから。

下手に彼女を怒らせれば、一誠に危害が及ぶ可能性がある。

彼女を取り押さえようとも、彼女が一誠を傷つける方が速い。

 

結局自分たちは、彼女の提案を呑むしかないのだ。

 

リアスは考える。

今の条件を考えると、最初に約束した内容とほとんど同じといってもいい。

ただ2つの条件が追加されただけだ。

だったら、提案が酷くなる前に決めるべきではないか。

それに、一誠が心配で心配で仕方がない。

今も目の前で、苦痛に顔を歪めている一誠が映り、リアスは気が気でないのだ。

 

「・・・解ったわ。あなたの提案を呑みます。

 だから早く消えて!もう一誠を傷つけないで!」

 

「ありがとうございます。

 心配でしたが、『ちゃんと』約束が出来て本当に良かったです。

 できれば、2度とこんなことが無いようにお願いしたいです。

 また同じようなことが起きたら、私でも何を仕出かすか分かりませんから」

 

アーリィは、胸を撫で下ろした。

 

「仮に『また』私が約束を破った、なんてふざけたことを抜かしましたら、

 こちらには『証拠』がありますから、言い訳させませんのでそのつもりで」

 

そう言いつつ、アーリィは剣に手を触れる。

 

「では、これを回収したらここを去りますね」

 

アーリィの手が一誠に刺さっている剣に触れると、一瞬で剣が霧散した。

 

「私は今から二人を見つけないといけませんので、これで失礼しますね。

 では、また1年後にお会いしましょう」

 

「貴女は・・・人間じゃない・・・!」

 

「悪魔に言われるのは慣れてます」

 

アーリィは、リアスたちに頭を下げると、足元の鞄を拾い上げ、教会の出口へと歩む。

アーリィが一誠から離れると同時に、リアスたちは一誠に駆け寄っていった。

 

うしろで、一誠!しっかりして一誠!と叫ぶ声を聞きながら、アーリィは歩く。

 

リアスが、彼女の眷属たちが、自分を見ていた眼を、アーリィは知っている。

家族を、大切な存在が傷つけられ、奪われた者が宿す、そんな眼だ。

大切なモノを傷つける存在を許さない、そんな目だ。

 

リアスから感じたのは、大切な存在を守りたいと、大切にしたいと思う姿。

他の子たちも、そうした気持ちであると解った。

それは誰もが持っているはずの感情。

こうなってしまったのは、その思いが暴走した結果なのかもしれない。

リアスたちがアーシアやゼノヴィアさんを思う気持ちは、本当なのだろう。

自分も、彼女たちと同じように、二人のことを思っている。

 

危険を解っていて、それを無理やりにでも止めようとした彼女たちと、

危険と解っていて、それを認めた自分。

どちらも、同じ人たちのことを思っての行動だ。

 

だが、彼女たちの行動は、鳥かごの鳥を愛でるのとどう違う。

羽ばたきたいと願った鳥を、危ないからと閉じ込めるのが正しいのだろうか。

アーリィには、それが絶対に正しいとは思いたくない。

鳥かごの世界で安全に飼われて生きるよりも、

厳しくも世界を知りたいと願ったことを、間違いと否定をしたくはない。

 

この考えの違いは、きっと最後まで平行線なのかもしれない。

 

 

ふと、兵藤一誠の言葉を思い出した。

 

『今は憎しみ合っていても、互いに手を取りあえる未来が来る』

 

和平?手を取り合える未来?おかしな話だ。

そもそも、互いに手を取り合うならば、それは対等であってこそだと、アーリィは思う。

一方だけが搾取し、一方が搾取される、それが『正しい平和』であるはずがない。

互いが互いを思ってこそ、互いを理解できてこそ、手が結べるのではないのか。

人間を下等と見下し、気まぐれに、そして理不尽に何もかもを奪う悪魔と、

力なく、ただ蹂躙され、憎しみと悲しみに沈む人たち。

その事実から目を逸らして、一体どうして、互いに手を取り合えると言えるのか。

 

悪魔だって、人だって、お互いに大切なモノを守りたいと思うのは同じなのに。

それを勝手な都合で奪うことなど、アーリィには許せるはずがない。

あの時のようなことを、ただの悲劇で終わらせて良いはずがない。

絶対に出来ない。

 

リアスたちが、必死に兵藤一誠に声をかけるのが聞こえる。

ああ、彼女たちにとって、彼はとても大切な存在なのだろう。

大切にしたい、守りたいと思うのだろう。

 

アーリィは教会の扉の前で止まり、

 

「なぜあなた達は、その気持ちを他へも向けてくれないのですか」

 

そう呟いて、教会を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、咄嗟に頭突きをしましたが、額が切れるなんてどういう石頭をしていたんですか」

 

アーリィは、額をハンカチで拭うと、治癒術をかける。

刺繍が入ったハンカチは、真っ赤に染まった。

 

「ああ!?このハンカチ、結構好きでしたのに・・・」

 

ハンカチの惨状に、アーリィは溜息を吐く。

 

「それにしても、二人はどこへ行ってしまったのですか。

 探そうにも、私がそういったことに長けていないのは、二人とも解っているでしょうに」

 

考え込むアーリィに、ふと声が響く。

 

「ゼノヴィアさんですか?

 え、アーシアを保護した?本当ですか!?ありがとうございます!

 ゼノヴィアさん、お疲れさまです。

 それでアーシアですが・・・やはりそうですか・・・」

 

アーリィは感謝の言葉を告げ、ゼノヴィアの言葉に顔を曇らせる。

 

「こっちですか?ええ大丈夫です。ちゃんと話をつけましたから。

 私がそういったことが得意だって、知っているでしょうに。

 それで、二人とも今どこですか?

 え、お部屋ですか?ええ、大丈夫です。ちゃんと道は解りますから」

 

アーリィは、息を整え、両脚にに力を入れ、そして、

 

「アーシアぁぁぁぁぁぁぁ!

 お姉ちゃんが今行きますから、待っててくださいねぇぇぇぇぇぇ!!」

 

走った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。