レイヴェル・フェニックスにとって、
兄であるライザー・フェニックスは、様々な感情が入り混じる家族である。
まず、女誑しだ。
彼の眷属は全て女性であり、下は見た目が幼女から、上は熟れた女性と種類が多い。
また、子供らしい者もいれば、戦うことしか頭にない困った子もいるし、
レイヴェル自身も舌を巻く戦術を練る者もいる。
もちろん、転生悪魔ではあるが、元が猫娘だったりと種族も異なる。
ようは、色々多すぎなのだ。
ライザー曰く、俺のハーレムだからな!らしい。
だが、妹系ハーレムとして自身を眷属にしたことに対しては、
とりあえず顔面を徹底的に殴ったことで怒りは収めた。
だが、そうしたそんな誑しの面はあれど、眷属同士の中は良好であり、
全てがライザーを慕っていると言ってもいい。
まぁ、全員が兄の寵愛を受けているらしく、時折砂糖菓子を溶かしたように、
各眷属が甘ったるい雰囲気を醸しだしているのに、若干引いてしまう。
また、兄の寝室から聞こえてくる声に、何度か文句を言ったこともある。
兄の女好きに関しては、頭を痛めるも、自身の眷属に対する優しさは、
レイヴェルも兄を評価する一点である。
次に、お調子者である。
レイヴェル自身もそうだが、フェニックスという純血悪魔の一柱にして、
不死というフェニックス特有の力が要因であろう。
ようは、何度死んでも蘇るという、他の悪魔にはない利点をもっているのだ。
ただし、蘇生には精神的苦痛を伴うため、決して無制限とは言い難い。
だが、ライザーと相対した者は、その不死身の前に、精神を折られてしまうのである。
何度殺しても、次の瞬間には蘇生してしまう。
これで心が折れないものはそうそういないだろうが。
結果、ライザーはレーティング・ゲームにおいて、ある種の無敗を築いている。
それによりライザーは、
レーティング・ゲームにおいては絶対の自信を持っていると言ってもいい。
まぁ、無敗という称号に、調子に乗っている面もあり、
レイヴェル自身は素直に賞賛できないのだが。
では、ライザーは能力頼りで勝ってきたか?と言われれば、
レイヴェルは自信をもって「否」と答える。
彼女は知っているのだ、兄がレーティング・ゲームに対し、
並々ならぬ熱意を持って行っていることに。
レーティング・ゲームの試合日が決まれば、彼は眷属を纏め、相手の駒を徹底的に分析し、
それに対する作戦を構築するのだ。それも何度も繰り返して。
それは無敗という称号を維持する意味でもあるだろうが、
何より、フェニックスという家名を背負っているからこそと言える。
自身よりも優秀であるルヴァル兄様という存在がいる故に、
ライザーはその兄になにかしら勝ちたいと必死なのだ。
そしてその兄に対等になれるのが、レーティング・ゲームだったというだけの話だ。
故に、ライザーは一切試合に置いては手を抜くことはない。
何故なら、真剣に取り組んでいるからこそ、それを穢すことを許せないからだ。
ライザーのその姿をレイヴェルだけでなく、家族は知っている。
そして最後は、レイヴェルに優しいということだ。
見た目的には人間界でいうちゃらい男と評される見た目であり、
性格的もお世辞には礼儀正しいというわけではない。
しかし、何かと自分に対しては配慮する兄を、レイヴェルは好いているのだ。
だが、ハーレムにいれようとしたことは許さないらしい。
そうした、正と負の混濁した感情を持っているものの、
兄であるライザーが結婚するということに対して、レイヴェルは素直に喜んだ。
お相手はグレモリー家の長女であるリアス・グレモリーだった。
どうやら、両家が純血悪魔を絶やさないために、縁談が持ち上がったらしい。
兄であるライザーは、リアス・グレモリーと婚約することに乗り気だった。
写真を拝見すると、レイヴェルも嫉妬するほどの胸をお持ちで、
「決め手は胸ですか?」とライザーに問い、彼がうなずいた瞬間に、
自身の拳がライザーの顔にめり込んでいた不可思議現象が起きたのは秘密だ。
しかし、こうした婚約話は、思いもよらぬ展開になった。
相手であるリアス・グレモリーが拒否したのだ。
どうやら、女誑しが気に入らないらしく、婚約について納得いかないらしい。
結果、両者の言い分が平行線となり、
魔王様の提案によりレーティング・ゲームで婚約の扱いを決めることとなった。
期日は10日であったが、ライザーはリアス・グレモリーの眷属を徹底分析し、
どういった作戦を用いるかを熱心に試行錯誤していた。
一方で、リアス・グレモリーの方は、学校を休んで山籠もりをしたという噂が聞こえた。
そうした噂を耳にし、リアス・グレモリーの心構えに対し、レイヴェルは失望した。
結果としては、兄の勝ちだった。
それも、リアス・グレモリーによるサレンダー宣言によってだ。
その行為に対しても、レイヴェルは失望の念を抱いた。
リアス・グレモリーは、主の願いを叶えようとした眷属の想いを裏切ったのだ。
それも、眷属が傷ついて欲しくないという理由で。
ならばなぜ、レーティング・ゲームを行ったというのだ。
レイヴェルは、リアス・グレモリーのゲームに対する行動に腸が煮えくり返った。
真剣に取り組んでいた兄を、真っ向から侮辱したのだ。
到底許せるものではなかった。
だが、ここでもまた、予想もつかない展開へと物語は動いた。
結婚式当日、リアス・グレモリーの眷属である赤龍帝が式場に乗り込んできたのだ。
そのうえ、魔王であるサーゼクス・ルシファーが、それを擁護する形で、
ライザーと赤龍帝の戦いによる婚約解消試合が行われたのである。
結果は、聖水や十字架による致命傷と赤龍の力による攻撃によって、ライザーの敗北となり、
両家の婚約は解消となったのである。
レイヴェルにとって、それは理解しがたい事だった。
魔王様の提案による試合に勝利した兄が、魔王様の提案による追加試合によって負けたのだ。
それにより、ライザーはリアス・グレモリーに敗北し、無敗の称号も消え去った。
また、赤龍帝による攻撃は、ライザーに大きな傷跡を残したと言えるのだった・・・。
大きな廊下を、レイヴェル・フェニックスは一人歩く。
目指すは、兄、ライザーの部屋だ。
兄の寝室の向かうと、扉の前では誰かいた。彼女は兄の『女王』ユーベルーナだろうか。
まるで扉を守るように立っている彼女に、レイヴェルは頭を垂れた。
ユーベルーナも、レイヴェルに気付き、慌てて頭を垂れる。
そうした挨拶もそこそこに、レイヴェルは彼女に問う。
「お兄様の様子は?」
「依然・・・変わりありません・・・」
「そうですか・・・」
レイヴェルは、その会話からライザーの様子を察した。
赤龍帝との敗北により、ライザーの心は砕け散った。
それまで築き上げてきた誇りも、何もかもが塵になったのだ。
今まで彼を持ち上げてきた者たちは、彼の敗北により掌を返すように罵倒へと変わった。
また、くだらないゴシップは彼の敗北を面白おかしく書き立てた。
逆に、リアス・グレモリーに対する評価は全て肯定的だ。
「赤龍帝を従える紅髪の滅殺姫」「無敗を打ち破った新たな新人」等々、
彼女は一躍世間を賑わす有名人となったのでる。
その他にも、ライザーの傷跡は深かった。
赤龍帝の敗北によって、彼は龍へのトラウマが発症したのだ。
眷属の話によれば、夢にまで現れるらしく、半ば発狂に近いという。
そうした精神的な傷痕が、彼を引きこもりへと変えてしまったのだ。
決して手放しでほめられた兄ではなかったが、
それでもレイヴェルにとっては誇らしい兄であった。
それが、今では見るも無残な姿になってしまったのである。
「リアス・グレモリーィィィィィ・・・」
故に、レイヴェルは憎む。
彼女自身、それは八つ当たりであると理解している。
だが、自分の兄をこんな姿に変えた元凶が、
世間をから認められていることに、彼女は許せないのだ。
そして、兄をこんな姿に変えた赤龍帝もまた、彼女の許せない存在へとなった。
だが、レイヴェルは決して闇討ちをする愚行はしない。
レーティング・ゲームによる因縁は、レーティング・ゲームで晴らすべきなのだ。
それは兄の考えを侮辱するかもしれない。
だが、レイヴェルはそれでも、兄への屈辱を晴らさなければならないと考える。
「ユーベルーナ、兄の眷属を全て私の部屋に呼んでください」
ユーベルーナは、主の妹であるレイヴェルの言葉に戸惑う。
「私もレーティング・ゲームに参加したくなりました。
しかし、私は何も知らない素人。ですから、あなた達にご教授を願いたいのです」
「し、しかしレイヴェル様。いったいなぜ急にそんな・・・」
「なぜ・・・ですか?」
ユーベルーナの言葉に、レイヴェルは不思議そうな顔で振り向いた。
そんな理由など、解っているではないか、と。
「リアス・グレモリーを潰します。倒すのでなく、潰すためですわ」
レイヴェル・フェニックスの氷のような笑顔は、ユーベルーナを戦慄させた。