ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

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会いたい人に会えた者と


再会

少女にとって、それは初めてのお出かけだった。

忙しかった両親が、自分の誕生日のために休みを取ってくれた。

楽しみにしていた遊園地にも一緒に行って、家族仲良く美味しいごはんを食べた。

両親が、自分に内緒で買ってくれた、大好きなお人形さんをプレゼントしてくれた。

少女にとって、それは忘れられない一日だった。

 

でも、それはただの理不尽であっけなく終わる。

 

今の少女に写る光景は、

血を流して倒れている両親と、自分を食べようとする怪物だった。

 

それは突然起こった。

家に帰る途中、気が付けば廃墟にいたのだ。

決して横道にそれたわけでもなく、まっすぐ家に帰っていたのに。

 

「あら、人間が網にかかるなんて、今日はラッキーね」

 

人気のない廃墟なのに、ねっとりとした女の声が響く。

廃墟の隅、薄暗くて見えない場所に、きらりと2つの光が見えた。

ズルリ、ズルリと、何かが這う音も聞こえる。

そして、ゆっくりと天井の隙間から光がこぼれ、大きな怪物が姿を現した。

それは、女性の上半身に、蛇の下半身をくっ付けた化け物だった。

 

その後は、少女の父親が勇敢にも怪物の気を逸らして少女と母親を助けようとするも、

怪物の尾に弾かれ、壁に叩きつけられて動かなくなった。

母親が少女の手を引いて必死に外に出ようとするも、

怪物に爪に背中を裂かれ、血を流して動かなくなった。

少女は、今の光景に呆然とするだけの、ただのか弱い存在に堕ちた。

 

怪物は子供が大好きだった。もちろん、喰べるという意味でだ。

自分は住処の廃墟に身を隠し、そこらの道に転移用の魔法陣を置いておく。

あとは、獲物が廃墟に転移されるのを待つだけで、

後は勝手に餌がやってくるだけの簡単な仕掛けだ。

怪物、悪魔であるラライは、これで既に多くの獲物を喰ってきたのだ。

大抵は野良犬といった拙いもので、時には大人がかかることもあった。

一番のごちそうは子供で、柔らかく骨ばった感じもなく、素晴らしかった。

あの味は忘れられそうもない。

ラライは、少女にゆっくりと近づき、逃げられないように囲み、

大きな口を開けて少女を呑みこもうとした。

 

突如、横から何かが迫り、ラライの顔を思いっきり殴りつけた。

 

「ギィエアァァァァァァ!?」

 

醜く汚らわしい叫び声をあげ、ラライは壁にぶち当たった。

ラライはすぐさま体制を立て直し、お楽しみの邪魔をした侵入者を睨みつけた。

 

侵入者は修道女だった。何故か顔をヴェールで覆っていた。

 

「きさまぁ!私の愉しみの邪魔をしやがって!

 その身体を、万力のように締め上げて砕いた後、少しずつ齧ってじわじわと殺す!

 すぐに死ねると思うなよこのメスがぁ!」

 

そう言うやいなや、ラライは体を縮こませ、一気に修道女に飛びかかった。

修道女は、少女を抱えて走り、間一髪のところを避ける。

 

「逃がすかぁ!」

 

ラライは自分の尾を振るい、少女もろとも叩き潰そうとする。

だが、それが当たることはなかった。

ブチリ、と何かが裂ける音が聞こえ、何かが地面に落ちた。

それはラライの尾だった。

 

「アガガガガガガガ」

 

尾を斬られた痛みに、ラライは声を上げて全身を震わせた。

その間に、修道女は少女の父親と母親も抱え、一か所に纏める。

すぐさま父親と母親の傷を見て、一安心する。

大した傷ではなく、二人とも気を失っているだけだ。

修道女、アーリィは二人の傷口に手をかざし、治癒の魔法を使う。

呆然とする少女を抱きしめ、呟く。

 

「ごめんね・・・」

 

アーリィは少女に催眠の魔法をかけて横にした後、3人を守護魔方陣で覆う。

魔方陣で覆った後、アーリィは尾を斬られ激昂しているラライに向き直す。

ラライはもはや正気ではなかった。

 

「グギィアレェェエァァァァ!」

 

アーリィは、突進してきたラライを3人から引き離そうと走る。

もはやアーリィしか見えていないラライは、それを追いかける。

部屋の隅に追い込まれたアーリィを、ラライは歪んだ顔で笑った。

 

「もう逃げられないぞ、このメスがぁ!苦しんで死ねぇ!」

 

そう言い、先ほどと同じように飛びかかったラライ。

だが、アーリィにたどり着く前に、その身体は地面に墜ちた。

それに、下半身の感覚が無いのだ。

 

「あ?」

 

ふとラライが後ろを見ると、そこには血を迸らせている蛇の下半身があった。

ということは、今の自分は・・・。

その考えを肯定するように、身体に走った痛みにラライは叫んだ。

 

「あ?あああ?ああああああ!?下半身!私の身体!?いや、いやぁぁぁ!」

 

アーリィは、叫び声を上げるラライに駈け寄り、その両手に白木の杭を突き刺す。

女性悪魔の磔(地面)の一丁上がりだ。

アーリィは、もう一本の白木の杭を取り出し、ラライの胸に添える。

ラライは、自らの死をどうにか回避しようと考える。

すると先日、魔王様からの言葉を思い出した。

 

「待って!待ってよ!あなた知らないの!?和平よ、和平!!

 悪魔と天使と堕天使が和平を結んだの!争っちゃだめなの!

 ね?解るでしょ!?私たちは仲間、友達、天使の言う愛する隣人なの!

 だから、ほら!もう私はこんなことしないから、ね?

 あたしたちお友達!ね、だから友達を助けると思って!」

 

ラライはなりふり構わす叫んだ。だが冷静な思考も働かせた。

人間というのは上からの命令を遵守する愚かな生き物だ。

故に、敬虔な信徒であるならば、天使の言うことを聞くしかない。

今この場から逃げ出せれば、今度はもう少し慎重になればいい。

ラライは、アーリィが自分を逃がすのを内心ほくそ笑んだ。

 

「不思議なんですよね」

「?」

 

アーリィの言葉に、ラライは面食らった。

何をしているんだ、早く杭を外せ!

 

「私が出会った皆さん、誰もがそんなことを言うんですよ」

 

杭が上がる

 

「和平だ、友達だ、隣人だって。そんな嘘をついて逃げようとするんです」

 

少しずつ上がる

 

「でも、正直に言うとですね」

 

杭が上がりきる

 

「隣人を食べる隣人なんて、こっちから願い下げですよ」

 

杭が振り下ろされた。

 

 

 

アーリィは、目の前のゴミを見下し、ほっと溜息をつく。

山道を歩いて人里に出たは良いものの、相も変わらず迷ってしまい、

とりあえず第六感を信じて歩いてみれば、

まさに少女が食べられかけた光景に出くわしたというわけだ。

 

「さてさて、とりあえずこの場を浄化した後、民間人を病院に運ばなくてはいけませんね

 記憶の改修は・・・気が引けますけどしないとダメですよね」

 

アーリィは、人の記憶を弄るのが好きではないものの、

こうしなければ民間人を巻き込んでしまうというわけだ。

 

悶々と考えて、内心が少し暗くなりかけた時、地面に突如魔法陣が描かれる。

咄嗟に魔法陣から退避すると、多くの人影が現れた。

 

「はぐれ悪魔ラライ!大公の命によりあなたを処罰します!」

 

色んなところが大きな、赤い髪をした女性が現れるなり叫んだ。

 

「よっしゃ!今日も部長にいいとこ見せてやるぜ!でもって・・・ぐへへへへ」

「変態」

「あははははは・・・」

「あらあら」

「イ、イッセーさんが良いというのでしたら!わ、私が!」

「なんだ子作りか!?ならば私も混ぜろ!」

 

茶髪の男の子が何やら邪なオーラを発し、周りの男女が苦笑する。

 

「さぁ!観念しなさ・・・って、あら?」

 

どうやら先ほどのゴミを討伐するために現れたらしいのだが、

目の前にいるのは、杭が突き刺さった怪物と、血まみれの修道女である。

意気揚々と声を上げた赤髪さんは、目の前の光景に面食らう。

 

「はぐれ悪魔が死んでる・・・って、貴女は誰!?」

「あ、どうもすみません。私、尋ね人を探してい「「アーリィ(姉さま)!?」」

 

アーリィは、自分の名前を呼ばれて声の方を向くと、

そこには白い修道服を着た金色の髪の女の子、

手に大きな剣を携えた青い髪の女の子がいたのだった。




会いたくない人に会った者
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