ハイスクールD×D 和平ってなんですか?   作:SINSOU

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H ERO

兵藤一誠は激怒していた。当たり前である。

姉だか何だか知らないが、目の前の修道女は、アーシアを今まで放置していたというのに、

今更になって迎えに来たというのだ。

 

一誠は知っている。

教会が、アーシアを望んでもいない聖女として祭り上げ、

ただ悪魔を癒したというだけで、彼女の優しさを否定した挙句、

散々聖女と崇めていたというのに、魔女と貶めて追放したことを。

 

一誠は知っている。

信じるものに裏切られても、決して誰も恨まず、ただ信仰が足りなかったと自分を責め、

神の試練だと話す、優しく、哀しいアーシアの顔を。

 

一誠は知っている。

ハンバーガーに驚き、見るもの触れるもの全てに感謝していた、

聖女ではない、ただの少女として生きていたアーシアという少女の姿を。

 

一誠は知っている。

助けることが出来ず、ただ死んでほしくなかった故に、

勝手に悪魔に転生させたというのに、それでも笑ってくれたアーシアの顔を。

 

だから一誠は決めたのだ。

アーシアを、いや俺の家族を傷つける奴は、誰であろうと許さない。

今度こそアーシアを守ってみせる、と。

 

故に、一誠はアーリィを睨みつける。

その目は、アーリィを射殺すほどの力がこもっていた。

 

「アーシアの姉だか知らないけど、アーシアを迎えに来たってどういうことだよ。

 勝手にアーシアを魔女として追放しておいて、今更アーシアを迎えに来た?ふざけるな!」

 

「い、イッセーさん!?」

 

一誠の豹変に、アーシアは困惑し、

リアスは止めようとするアーシアを手で制し、眷属たちは事を見守るままだ。

ただ、ギャスパーは完全にダンボールに籠ってガタガタ震えている。

一誠に睨まれたアーリィは、何も語らず黙ったままである。

 

「アーシアは泣いていたんだ!

 信じる教会に裏切られて、魔女と罵られて、一人でこの町に来て、

 それでもがんばろうと必死だった。

 そんなアーシアが泣いていたんだぞ!悲しんでいたんだぞ!

 一人で泣いていたアーシアの傍にいなかったのに、何が姉だよ!

 アーシアを助けなかったくせに!

 それともアンタは、教会の命令だったら簡単にアーシアを見捨てて、

 教会の命令だったら、平気な顔でアーシアの前に立てるのかよ!!」

 

「イッセーさん!!」

 

とどまらない一誠の言葉は、悲痛なアーシアの叫びで中断された。

 

「もう・・・止めて・・・止めてください・・・」

 

一誠は、今にも泣きそうなアーシアの顔を見て、冷水を浴びたように頭が冷えた。

 

 

「ええ、その通りです」

 

今まで黙っていたアーリィの声に、一誠もアーシアも顔を向けた。

彼女の顔は黒のヴェールで覆われており、表情は読めない。

 

「私はアーシアを守れなかった。まったくその通りです。

 あなたの言う通り、私にはアーシアの姉である資格はないでしょう。

 アーシアが泣いていると解っていて、私は傍にいてあげられなかったのですから。

 だからこそ、せめてアーシアの言われ無き魔女という名前だけでも、

 消し去ってあげたいのです。

 もう誰からも指を指されないように、悪評に苦しまないように。

 そして私は、姉としてアーシアを助けたいと思っています。」

 

「アーリィ姉さま・・・」

「アーリィ・・・」

 

アーリィの言葉に、アーシアは目を伏せ、ゼノヴィアは顔を曇らせる。

一誠は、アーリィの言葉に顔を逸らした。

 

「でしたら、アーシアに決めてもらうのはどうでしょうか?」

 

事の成り行きを見つめていたリアスが声を上げた。

 

「アーシアも急な話で混乱してると思いますし、彼女の考えもあります。

 ですから、アーシアの意見を尊重するべきですわ」

 

「わ、私がですか・・・!?」

 

リアスの言葉にアーシアは驚くも、アーリィは納得したようにうなずく。

 

「そうですね、少しことを急ぎすぎました。

 これはアーシアが決める事であって、私が言うことではありませんね」

 

 

そういうと、アーリィはソファから腰を上げ、自身の荷物である大きな鞄を手に取った。

 

「私は、近くのホテルに数日間滞在する予定です。その後、改めてアーシアの本心を聞きます。

 もしアーシアが断るのなら、私は素直に帰ります」

 

そういうと、アーリィは出口へと足を運ぶ。

その途中で、彼女はアーシアの傍で立ち止まる。

 

「アーシア」

「は、はい」

「貴女が自分で決めなさい。私は、貴女の気持ちが知りたいのです」

「わ、私は・・・」

 

黙り込むアーシアを優しげに見つめた後、アーリィは出口へと向かう。

 

「そういえば皆さん、少し聞いても良いですか?」

 

だが、ふとアーリィが扉の前で足を止め、くるりと向き直った。

 

「人に平気で刃を向けることは出来ますか?」

「命令ならば、何でも出来ますか?」

『自分を殺すことが出来ますか?』

 

「「「「「!?」」」」」

 

彼女の言葉に他の全てが驚いた。彼女は何をいっているのか、と。

 

「では、ごきげんよう」

 

そういうと、アーリィはオカ研から出て行った。

出口の扉が閉まる音が聞こえ、リアス他、全てが息を吐いた。

 

 

「一体、今のは何だったのかしら?」

「わ、わかりませんわ。なにか、変なことを言っていましたが」

 

リアスの問いに朱乃は訳が解らないことを答えた。

 

「それにしても一誠!さっきのは言い過ぎよ。私、見ていられなかったわ」

「す、すみません部長!俺、あの人の言葉に我慢できなくて・・・」

「終わってしまったことは仕方ありませんわ。でも、少し爽快でしたわね」

 

怒るリアスに謝る一誠、そしてご満悦な朱乃である。

 

「しかし、いったいなんだったんだ、あのアーリィって人は。

 今更アーシアを迎えに来たって言ってさ」

「そうだね、彼女、アーシアさんの悪評を払拭する、って言ってたけど」

 

アーリィの意図が掴めず、混乱する一誠と考え込む木場。

だが、考えたところで結論が出ることはなった。

問題は、アーシアがどちらを選ぶか、という話だ。

 

「それで、アーシアはどっちを選ぶつもりなんだ?」

「え、えっと私は、その・・・」

 

話を振られたアーシアは、まだ混乱の渦中でしどろもどろになる。

 

「君のお姉さんだか知らないけど、アーシアを追放した教会に戻ることはないんだ。

 俺はアーシアが悲しむことはないと思ってる。

 それに、俺たちは家族じゃないか!だろ、みんな!」

 

一誠の言葉に皆うなづく

 

「そうよ、アーシアがわざわざ貴女が犠牲になることはないの。

 貴女は私の眷属であり、可愛い下僕であり、そして大切な家族なの。

 私の愛する妹が、苦しむ姿なんて見たくないわ。

 それに、今更迎えに来たあっちの方が悪いもの。だから私は信じているわ」

 

一誠とリアスの言葉に、アーシアは顔を曇らせる。

すると、先ほどから黙っていたゼノヴィアが口を挿んだ。

 

「部長、一誠、アーシアはまだ状況が掴めていない上に混乱もしている。

 少しアーシアに休息を取らせてほしい。さ、いくぞアーシア」

「あ、はい。ありがとうございます、ゼノヴィアさん」

「なに、少し見ていられなくてね。それに、ここにいたくはなかったから・・・」

 

アーシアは、ゼノヴィアが唇をギュッと結んでいることに気が付いたが、

何も言わずにゼノヴィアと共に部屋へと戻っていった。

 

「いけね。俺、仕事が入っていたんだっけ!それじゃあ部長、お仕事行ってきます!

「僕も行ってきますね」

「イッセー先輩、待ってください」

「ぼ、僕もお仕事で部屋に戻りますぅぅぅぅぅぅぅ」(ダンボール)

 

アーシアとゼノヴィアが部屋に戻ったのを皮切りに、

一誠等も自身の契約のお仕事の為、オカ研を飛び出して行った。

そして、部屋に残ったのはリアスと朱乃だけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「朱乃、彼女に監視はつけてる?」

「ええ、もちろん」

 

リアスの言葉に、朱乃は然もありなんと答え、その有能さにリアスは笑みをこぼす。

リアスは、机に置かれたコップのお茶を一口飲むと、ニコリと口を歪める。

 

「私の下僕を横取りしようなんて、気に入らないわね。

 まぁ、アーシアが私を選んでくれることは解っているから、勝負にもならないけど」

「あらあら、リアス。慢心はいけませんわ。

 事がどう転ぶかなんて、誰にもわからないのよ?」

 

リアスの言葉に、朱乃は小言を言うも、その目は結果の悦びに歪んでいる。

 

「それもそうね。でも安心のために監視を続けてちょうだい」

「解りましたわ」

 

そうして一人になったオカ研で、リアスは一人嗤う。

 

「悪魔に転生したアーシアが、教会に戻れるはずがないんですもの」

 

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