ペルソナR~Roll~   作:竜音(ドラオン)

1 / 2
 




「聞いたか? また、行方不明者が出たらしいぞ」
「またかよ。最近多いよな」


 平和な町に似つかわしくない話題を学生らしき二人組が歩きながら話している。
 周囲を見れば似たような話題をしている人がかなりいるようだ。


「怖いわね。ちょっと目を離したらいつのにかいなくなってるんでしょう?」
「らしいわね。誘拐とかだったら怖くて子供を外に出せないわね」

「なんか、『俺の目の前でいきなり消えたんだ』って騒いでる奴がいるらしーよ」
「はあ? おおかた彼女にフラレて自棄になってるだけでしょ。かんけーないない」

「行方不明って聞いてるけど家出とかじゃないのか?」
「違うらしいよ。何故かいなくなった場所から足取りが全く掴めないみたいだし」


 平和なはずの町の中で起きる明らかに異質な事件。
 それはここ最近で特に多くなってきているようだ。
 何故、行方不明者が何人もいるのか。
 何故、足取りが全く掴めないのか。
 それは誰にも分からない。
 分かるとすれば、それは――――――










 ――――――〝覚悟〟をした人間だけだろう……。








4/5(木)

 

 

 

────???

 

 

「ようこそ、『ベルベットルーム』へ」

 

 

 眼を開けると俺は不思議な空間にいた。

 空間と言っても部屋の中であり、別段おかしいと言うわけではない。

 ()()()()()()()()()と言うこと以外は。

 ここはどこなのだろうか?

 そんなことを思いながら俺は部屋の中を見渡す。

 と、ここで俺はソファーに座る鼻が特徴的な老人と、その側に立つ青い服に身を包む女性がいることに気がついた。

 

 

「ふむ、どうやら数奇な運命をお持ちの方がいらしたようだ」

 

 

 老人は興味深そうに俺を見てきた。

 何故だろうか、何かを見透かされている気がする。

 

 

(わたくし)の名は『イゴール』。お初にお目にかかります」

「どうも……」

 

 

 老人、イゴールが笑みを浮かべ挨拶をしてきたので俺も言葉を返す。

 

 

「ここは夢と現実、精神と物質の狭間にある場所……。本来は、何かの形で〝契約〟を果たされた方のみが訪れる部屋でございます。貴方には、近くそうした未来が待ち受けているのやも知れませんな」

 

 

 イゴールの言葉の中に現れた単語に俺は首を傾げる。

 契約を果たされた方?

 俺が何かしらの契約をすると言うことか?

 

 

「そうですね……。まずはお名前を伺うと致しましょうか。貴方様の名は、何と申されるのですかな?」

(いぬ)(かみ)(とき)(や )……」

 

 

 イゴールの問いに何故か俺はあっさりと答えてしまった。

 

 

「『狗守刻夜』様……。ふむ、それでは貴方様の未来を少しばかり覗いてみると致しましょう」

「は……?」

 

 

 そう言ってイゴールは何やらカードを取り出した。

 どこから取り出したのだろうか?

 

 

「〝占い〟は信じられますかな?」

「ん……ああ。信じるかな」

 

 

 そう答えるとイゴールは満足そうに頷きカードを並べていった。

 

 

「常に同じにカードを操っておるはずが、まみえる結果はそのつど変わる。フフ、まさに人生のようでございますな」

 

 

 言いながら、イゴールは1枚のカードを表にする。

 

 

「ほう……、近い未来を示すのは〝月〟の正位置。どうやら〝迷い〟そして〝謎〟を被られるようだ」

「迷いと謎?」

 

 

 ううむ、1枚目から不吉な感じだな。

 少しばかり俺は不安になった。

 

 

「そして、その先の未来を示しますのは……〝死神〟の正位置。〝終焉〟と〝結末〟を示すカード。……実に興味深い」

「結果……」

「どうやら貴方は、これから先の未来にて迷いと謎を被り、〝結末〟へと導く事を課せられるようだ。近く、貴方は何らかの〝契約〟を果たされ、再びこちらへおいでになる事でしょう。今年、運命は節目にあり、もし謎が解かれねば……貴方の未来は、閉ざされてしまうやも知れません」

 

 

 契約、迷い、謎、結末……

 あまりにも実感しがたい単語に俺は曖昧な表情を浮かべているはずだ。

 

 

「私の役目は、お客人がそうならぬよう手助けをさせて頂く事でございます」

 

 

 イゴールが左手を振るうと、カードが消えた。

 どうやったのだろうか?

 

 

「おっと、ご紹介が遅れましたな。こちらは、『ガルデニア』。同じくここの住人でございます」

「お客様の旅のお供を務めて参ります、ガルデニアと申します」

「あ、ああ……」

 

 

 イゴールはうっかりといった風に手を叩き、先程から無言で立っていた女性を紹介してきた。

 すると女性、ガルデニアは1歩前に出て頭を下げた。

 なんと言うか、綺麗なんだがどこか人形みたいな感じの人だ。

 

 

「詳しくは追々に致しましょう」

「え……?」

「ではその時まで、ごきげんよう……」

「な、ちょっ──」

 

 

 イゴールがそう言うやいなや辺りの景色が徐々にボヤけていく。

 そして、俺の意識は途切れた。

 

 

──────────

 

 

────────

 

 

──────

 

 

────

 

 

────4/5(木)・体育館

 

 

「──生の本分を忘れぬように、3年生はハッキリとした目標を見つけ進みましょう」

「ん……」

 

 

 眼が醒めた。

 それと同時に校長の挨拶が終わる。

 変な夢だったな。

 悪夢のようなものではないが何故か頭から離れない。

 

 

〔それでは、『(ほし)()(はら)高等学校』始業式を終わります。3年生から順番に体育館を出てください〕

 

 

 マイクによって拡声された男性教諭の言葉に後ろの方の椅子が動く音がする。

 俺の所属しているクラスは2年3組。

 よって移動は次だ。

 

 

「よう、ワンコ。挨拶中に熟睡か?」

「みたいだ。気がついたら挨拶が終わってたからな」

 

 

 出そうになった欠伸を噛み殺していると隣の椅子に座る生徒が話しかけてきた。

 生徒の名は『(うき)(ぐも)(れい)』。

 気さくで話しやすく仲間思いなのでクラスメイトからは人気を集めており、俺の一番の友達だ。

 (ゆえ)に澪が俺に話しかけたことによって視線が集まる。

 

 

「ははは、お前がこんなところで寝るなんて珍しいな。普段なら俺か自分の部屋くらいでしか寝ないってのに」

「自分でもそう思うよ。と言うか明らかに誤解を生む発言をするな」

 

 

 笑いながら言う澪の頭に軽くチョップを食らわせ俺は答えた。

 顔も良いだけにかなりの奴がこいつに恋愛感情を抱いていると言うのに……

 澪の発言によって強まった視線に俺は溜め息を吐く。

 

 

「ん、どうやら俺らの番みたいだな。行くぞ、ワンコ」

「はいはい」

 

 

 後ろの3年生がいなくなったことを確認し澪は立ち上がる。

 それに続くように俺も立ち上がり体育館を後にした。

 

 

   ‡   †   ‡

 

 

────2年3組教室

 

 

「今日は始業式のため午前中で学校は終わりだ。それではH(ホーム)R(ルーム)を終わりにする」

 

 

 担任のありがたい言葉に俺は席を立つ。

 と、そんな俺の姿に気がついたのか澪が歩いてくる。

 

 

「これからどうするよ?」

「とりあえず、どっかで昼飯にするかな」

「おー、じゃあ『()()()』で食うか」

「だな」

 

 

 どこで昼飯を食うかが決まり俺と澪は教室を後にする。

 下駄箱に着くと何やら1人の生徒が立っていた。

 

 

「あ、あの……」

「澪、またお前に客だ」

「はぁ…分かったよ。先に行っていてくれ」

 

 

 またか……

 澪とともに歩いて行く生徒を見て、俺は内心呆れながら靴を取り出す。

 このように澪が呼び出されることは少なくはない。

 男女問わずに人気があるために付き合いたいと思っている人間が後を絶たないのだ。

 まぁ、俺自身に被害がないなら構わないがな。

 そんなことを考えながら俺は学校を後にした。

 

 

   ‡   †   ‡

 

 

────月丘市ショッピングモール

 

 

「待たせたな、ワンコ」

「お、終わったのか」

 

 

 八頭蛇に向かって歩いている俺の近くに澪が走ってくる。

 だいぶ先に来ていたとは思うがこいつの足なら容易いのだろう。

 

 

「にしても。1人ってことはまたフッたのか」

「ああ。一応は礼儀だから受けているが、あまり知らない奴だったからな」

 

 

 俺の問いに澪は頷き肯定する。

 

 

「ちなみに聞くが。何て言って断った?」

「〝ごめん。俺は君のことをよく知らないから〟だが?」

「それで簡単に引き下がるのか?」

「いいや、もちろん引き下がらなかったぞ」

「だろうな」

 

 

 一応と言った感じで俺は澪に問う。

 過去にこれで何度か被害を(こうむ)ったことがあるからな。

 

 

「〝やっぱり狗守なんですか〟とか言ってきたな」

「そこで何で俺が出るかなぁ……」

 

 

 学校や寮でよく一緒にいるからだろうけど。

 

 

「だから俺は言ってやった」

「おお、言ってやったか。俺とお前がただの友達だと」

「いや、〝ワンコは俺が一番好きな友達だ〟と!」

「大馬鹿野郎だよ、お前はッ!」

 

 

 胸を張って答える澪に俺は頭を抱えて叫んだ。

 チクショウ、こいつに期待した俺が馬鹿だった!

 明日から絶対に他の生徒達から睨まれまくるじゃねえか!

 

 

「何か間違ったことを言ったか? 俺は思っていることを伝えただけだ」

「嬉しいには嬉しいが発言の内容を考えてくれ!」

 

 

 キョトンとしながら澪は尋ねてくる。

 駄目だ、こいつ理解していない。

 なんでこんな奴が毎回毎回テストでTop10に入ってるんだよ。

 

 

「はぁ……。もう良い、八頭蛇に行くぞ」

「ああ、腹も減ったしな」

 

 

 なんだか疲れてしまった俺は項垂れながら八頭蛇へと歩みを向ける。

 その隣を澪は楽しそうに歩いていた。

 そして昼飯を食い終えてから俺は(なか)()()になりながらゲームセンター、『雪白』で澪と様々なゲームをした。

 明日からの日々が軽く不安だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。