ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode121 裏切りの追憶

俺が闇の戦士のいる巨大な空間に入っていくと、奴は偽物と思われるロトのつるぎとロトの盾を持ち、俺を睨みつけて来た。

そして、覆面に筋肉だらけという姿からは想像出来ない、若い青年のような声を話しかけてきた。

 

「ついに来たのか…影山雄也。オレが壊したアレフガルドを復興させるために忌まわしき精霊、ルビスが遣わした男…いや、連れてきたと行った方が正しいか?」

 

いきなりルビスが連れてきた男などと言われて、俺はかなり困惑してしまう。

もしかしてこいつは、俺がアレフガルドの人間ではなく、地球という名の異世界から連れてこられたと言うことを知っているのか?

 

「あんた…何で俺がアレフガルドの人間じゃないことを知っているんだ?」

 

「やはりそうだったのか。オレは勇者として持て囃されていた頃、嫌気が指すほど人間の顔を見ていた…オレに向かって、『竜王を倒して、世界を救ってください』としか言えなかった奴らだ。今のアレフガルドの人間の顔も、そいつらと同じような物だろう。だが、お前はそいつらとは全く違って、この世界の者とは思えない不思議な感じの顔だ」

 

確かに地球人である俺の顔と、アレフガルドで出会った人々の顔には違う特徴があった。

田舎臭いだの、とぼけた顔だのと言われたのも、それが原因かもしれない。

また、夢で見たアレフガルド人の顔と、現在のアレフガルド人の顔は奴の言う通りそこまで違いはなかった。

だが、顔だけで俺が異世界の人間だと分かるとは思っていなかったぜ。魔物の王である竜王でさえ、恐ろしい顔だとしか言っていなかったからな。

そんなことを考えていると、闇の戦士は俺を哀れんでいるような目で見てきた。

 

「そう考えると、お前は自分の人生を奪った精霊のために戦っているのか?愚かすぎる奴だな…」

 

確かに最初はいきなり連れてこられて、俺はルビスに腹を立てていたな。

だが、彼女が俺をここに連れてきて、ビルダーの力を与えてくれたからこそ、ピリンやロロンドたちに出会えたし、協力して物や町を作ることの楽しさも知ることが出来た。

だから、ルビスには感謝しているし、人生を奪われたとは思っていない。

 

「人生を奪われたとは思っていない。ルビスのおかげでこの世界のみんなに出会えたからな。あいつのためにも、アレフガルドに生きる人々のためにも戦っているんだ」

 

「そんな奴らのために、今日はオレを倒しに来たと言うのか。ルビスに導かれた者同士だから分かり合えるとも思ったが、残念だな…魔物たちの魔力が満ち、新たな王が現れる前に、お前を始末しよう」

 

俺の精霊ルビスや人々への思いを伝えると、闇の戦士は残念な顔をした後、偽物のロトのつるぎを構えようとする。

このまま戦いになりそうだが、姫に闇の戦士を説得してほしいと言われたし、夢で大体検討はついているもののどうして世界を裏切ったのか聞きたいので、俺はもう少し話をしないかと提案する。

 

「待てって。同じ精霊ルビスに導かれた者だと言うのなら、どうしてあんたはこんなことになったんだ?何で竜王の誘いに乗って、世界を裏切ったんだ?あんたなら、あれが罠だと言うことが分かっていたはずだ」

 

「お前にそのことを話しても、理解してくれるとは思えないな。だが、冥土の土産だ、どうして世界を滅ぼしたのか、何故お前とここで対峙しているのか、教えてやるか」

 

俺がそう言うと、闇の戦士は提案に乗って偽物のロトのつるぎをしまう。

冥土の土産と言っているので、まだ奴は俺を殺す気なのだろうが、話の途中で説得出来る機会があるかもしれない。

俺がそんなことを考えている内に、闇の戦士はさっそく話を始めていく。

 

「オレは昔、アレフガルドに生きる一人の普通の人間として生きていた…あの日、精霊ルビスに導かれ、国王に呼び出されるまではな。ロトの血筋だと言うことも、気にせずに生きてきたんだ」

 

闇の戦士も元々普通に生きていた人間だったからこそ、突然ルビスから勇者に選ばれて驚いたのだろうな。

さすがに、勇者ロトの子孫であるという理由だけで勇者に選ばれるとは思っていなかったのだろう。

ルビスに導かれる前の話をした後、今度は闇の戦士は俺が夢で見ていた光景について話し始める。

 

「でも、オレが勇者に選ばれたということは、瞬く間にアレフガルド全域に広がって、オレは持て囃されることになった。人々に話しかけても、『竜王を倒して平和を取り戻してください』だの、『竜王を倒すのがあなたの使命』だのとしか言われなくなった。普通に暮らしたいと言っても、『あなたは特別な人間なんです』『あなたは選ばれた勇者です』と言われてしまったんだ。それで、一つの自由も与えられなかったオレはだんだん精神的に追い詰められていった。人が見ていないところで悪口もたくさん言ったさ」

 

確かに夢でも人々のことを「気持ちを分かってくれないクソ野郎」と怒っている所があったな。

俺はそんなに過剰なまでの期待を受けてはいないので分からないが、奴からしたら相当辛かったのであろう。

そして、追い詰められた勇者が最後にどうしたかと言うことで、今度は竜王の誘いに乗った時のことを話し始める。

 

「それで、人々の勝手な期待に押されて、オレは結局旅を続けて、竜王の住まう城に向かった。オレも最初は竜王を倒して、先祖のような伝説の勇者になるんだと思っていたさ。でもそんな時、竜王があの問いかけをして来たんだ」

 

「それで、自分を追い詰めた人間たちに復讐しようと、竜王の誘いに乗ったのか?」

 

竜王の問いかけを受けた時の気持ちについても俺は聞いてみたが、闇の戦士は最初はそんなつもりはなかったと答えた。

 

「いや、最初は勇者になってから初めて与えられた選択肢…自由に対する好奇心だったんだろう…世界を滅ぼそうなんて思ってもいなかったさ。でもさ、竜王の誘いに乗った後、不思議なことに全く後悔する気持ちは生まれなかったんだ。多分オレはその時から、心の底で自分から自由を奪った人間たちに救う価値なんてないと思っていたんだろうね」

 

確かにただの好奇心だけで世界を滅ぼす選択をしてしまったなら、普通ならもの凄く後悔することになるだろう。

最初は好奇心だったが、その後に俺が言ったような感情が生まれたみたいだな。

その通りだったようで、闇の戦士は後悔しないどころか、世界を裏切る選択をして良かったと思っていたと話し出した。

 

「それだけじゃない、竜王は『お前の選択によって滅んでいく世界を見るがいい』と言って滅んでいく町や死んでいく人間の様子をオレに見せつけたんだ。竜王はオレを後悔させようとしたんだろうが、オレの中にはは逆に喜びの気持ちが生まれてしまった。『勇者様、どうして裏切ったのですか!?』『世界を救う責務を忘れたのか!』とか言いながら死んでいく人間を見る度、笑いが止まらなかったさ。そこで俺は自分の気持ちに気づいた…勝手な期待を押し付け、自由を奪っていく人間たちなど救う必要なんてない、むしろ邪魔な存在だと思う気持ちにな」

 

元々は狂った人間ではないはずの勇者がそんなことを考えるようになるなんて、人々の過剰な期待は俺が今聞いた物や夢でみたもの以外にもたくさんあったのだろうな。

俺もみんなに「ビルダー様」などと言われ、過剰な期待をかけられていたら、同じような考えに陥ってしまったのかもしれない。

同じ精霊ルビスに導かれた人間でもここまで違う結果になってしまうのか…闇の戦士も同じことを考えているようで、こんなことを言い出す。

 

「オレとお前…同じように精霊ルビスに導かれた存在なのに、どうしてここまで違う結果になったんだろうな…?」

 

「人との関わり方しだいってことじゃないか?あんたも俺みたいに人々と協力することが出来ていれば、今のようなことにはなっていなかったはずだぜ」

 

そう答えると、闇の戦士は寂しそうであり、羨ましそうな目で俺を見てきた。

 

「お前のいう通りなんだろうな…。人々との絆というものがあれば、オレは竜王を倒して、伝説の勇者となっていた」

 

だが、すぐに闇の戦士はその表情から、再び俺を睨みつけるような表情に戻してしまう。

 

「でも、今さらそんなことを言っても仕方ないか…。お前の言ったようなことにはならず、オレは世界を裏切り、魔物になったからな。では、世界を裏切った後オレはどうなったか、何故今ここにいるのかを話そう」

 

確かに人間に絶望して世界を裏切り、今は魔物として世界を滅ぼそうとしているので、やはり今さら戻るつもりは無いようだな。

ここでローラ姫はあんたを今でも信じている、今からでも遅くない、と言おうとしたが、奴は世界を裏切ってから今に至るまでの話を始めてしまう。

俺はとりあえずその話を聞いてから、ローラ姫のことについて話すことにした。

 

「世界が滅んでいく様子を見た後、オレは竜王の魔法でこの醜い姿に変えられて、あの小さな城に閉じ込められたんだ。もちろんお前の言う通り、竜王が本当に世界の半分をくれるとは思っていなかったが、あんな場所に閉じ込められるとは思っていなかった。それで、気の遠くなるほどの長い時間あの中に閉じ込められて、外部からの刺激がなかったからだろう、オレは自分が誰かも分からなくなり、精神が崩壊したまま何百年も過ごしていたんだ」

 

この覆面に筋肉だらけという姿は、やはり竜王の魔法が原因だったのか。

精神が崩壊してこの前の時のように変な言動をするようになってしまったのも、何百年も狭い空間に閉じ込められていたのだから仕方ないだろう。

だが、醜い姿に変えられた事も、狭い空間に閉じ込められていたことも、少しも苦痛だとは感じていなかったとも話し始めた。

 

「でも、その空間に閉じ込められていた時、オレは大きな幸せを感じた。今までオレに勇者様、勇者様と言っていた人間が消えたことによる、責務からの解放というものだろう。竜王から見たら邪魔者を騙して排除しただけなんだろうけど、オレは竜王に、人間から解放してくれたことに対する感謝の気持ちを持ち始めていた。精神がおかしくなったあとも、その2つの気持ちだけは忘れなかったさ」

 

竜王に対する感謝か…闇の戦士が竜王を倒した俺を殺そうとしたり、竜王を含めた多くの魔物の魂に魔力を捧げて最強の存在を作ろうとしたりしているのは、それが原因みたいだな。

そして、次に闇の戦士はいよいよ、俺がアレフガルドに現れた時の話を始めた。

 

「だが、それから数百年経って、突然その幸せも、それをくれた竜王も消えてしまうことになる。お前のせいだ、物を作る力を持つ者…影山雄也」

 

そう言った瞬間、闇の戦士がより強く俺を睨んでくる。

でも、まずは闇の戦士との一度目の戦いや竜王との戦いのことではなく、リムルダールやラダトームの仮拠点で聞こえた謎の声について言い出す。

 

「精神が狂っていながらも希望を振り撒く者の存在を感じ取ったオレは『ダレガ、ココニ、キボウヲフリマイテイル…』、『オレの世界に光はいらない!』などと狂ったまま叫んでいたさ。お前にも聞こえたかもしれないな」

 

希望を振り撒く者が現れた時点で、自分自身の幸せが壊されたり、竜王が倒されたりする可能性があることを、狂っていながらも分かったようだな。

俺の行動によって、それは本当のことになっているし。

 

「それで、闇に包まれた死の世界になったラダトームに来たお前によってついに、オレが閉じ込められていた城のカギは開けられてしまった。そこで精神が狂っていたオレは、『オレは王様だぞ!』などと叫んで、兎に角幸せを壊されないようにと、ひたすらお前を攻撃した。でも、オレはお前に追い詰められて、生き延びなければ幸せは訪れないと言うことで、建物の外に飛び出した。そこから先はあまり記憶がなくて、気づいたらラダトームの空は晴れ渡っていて、竜王が死んだことを理解したんだ。そして、狭い空間から解放されて精神が戻ったオレは、人間のいない闇の世界の幸せをもう一度得るために動き始めたんだ。その途中で、先祖の勇者ロトが倒した大魔王の話を思い出して、竜王を最強の存在にして蘇らせる方法も思いついた」

 

そして、この前の闇の戦士や竜王との戦いの話をした後、奴はやはり人間を滅ぼすつもりだと言い始める。

それに、竜王や倒された魔物たちの魂に魔力を捧げて最強の存在を作り出すと言うのも、先祖から聞いたであろう、大魔王ゾーマが死者の怨念の集合体であるという話から思いついたみたいだな。

闇の戦士はそれから、アレフガルドの秘境であるサンデルジュに着いてからの話もした。

 

「幸いなことに、オレの強い闇の力によって、ひかりのたまは本来の力を発揮することが出来ず、魔物たちは消えずに済んだ。だから、オレはそいつらと組んでアレフガルド各地を回り人間の影響を受けず、魔物を強大にするための訓練を行える場所がないか探したんだ。それがここ、サンデルジュと呼ばれる地だ」

 

今のアレフガルドは海面が上昇しているので歩いて移動することは出来ないので、闇の戦士が移動用の魔法、ルーラを使って探したり、魔物を移動させたりしたんだろうな。

サンデルジュに来た経緯を話すと、闇の戦士は俺たちが竜王を倒したことで平和が戻ったと思わず、サンデルジュにまで拠点を作ったからこそ、ここまで早く再び世界が危機に陥ったと話し始める。

 

「元々オレたちは人間が絶対に勝てないほどの魔物になるまで訓練してから、竜王たちの魂に魔力を捧げたり、人間の町を侵攻したりする予定だった。でも、お前たちがサンデルジュに来たからこそ、オレたちは計画を早めたんだ。お前が竜王を倒したところで世界が平和になったと思っていれば、少なくとも数年は平和に暮らせたんだよ」

 

確かに地球で発売されているドラクエビルダーズのゲームでは、竜王を倒せばエンディングになったのかもしれないし、俺がいる実際のアレフガルドでも、闇の戦士のいう通りサンデルジュまで来てなければ、しばらくの間は平和だったかもしれない。

でも、人々は一時の平和ではなく、完全な平和、完全な光を求めていた。

だからこそ俺はサンデルジュへ行き、アレフガルド復興の第5章を始めたのであり、今の闇の戦士の言葉を聞いても第4章で終われば良かったとは思わない。

 

「たとえそうだったとしても、俺は後悔してないぜ。その計画が成功する前に、完全な平和を取り戻すつもりだからな」

 

そんなことを考えて言うと、闇の戦士は最後に、計画を急いでから現在に至るまでの話をした。

 

「竜王たちの魂から最強の魔物を生み出す計画を早めたオレたちは、ラダトーム城の西の岩山に城を作り、そこで不眠不休で魔力を捧げ続けた。お前たちのせいで魔物たちを鍛える時間がなかったからそれぞれの魔力が少なく、当初の予定よりも何倍も時間がかかったけど、今まで計画は順調に進んでいた。計画達成の目前にして、お前に邪魔されるまではな」

 

闇の戦士とは一度詳しく話をしてみたいと思っていたが、それが叶い、現在に至るまでの奴の行動についても知ることが出来たな。

自分の過去について全て語り終えた闇の戦士は、そろそろ俺を殺そうとしているのか、再び剣を構えた。

 

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