ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
大きな傷を受けて追い詰められているはずの闇の戦士だが、まだ俺に勝てることを確証しているような余裕の顔は変わらない。
人間を守るためには使われなかったものだが、奴は俺にはない勇者としての力を持っているからだろう。
今度は何をして来るのかと思っていると、闇の戦士は俺を睨みつけながら呪文を唱えてきた。
「お前がただの人間だと言うことが、まだ分からないみたいだな!目を眩ませよ、レミーラ!」
闇の戦士がそう叫んだ瞬間、辺りに眩しい光が溢れ出し、奴の姿が見えにくくなる。
確かレミーラはドラクエ1に登場した、光を放って暗い洞窟を探索しやすくするための呪文だ。
空の光が全く当たらない場所すらも明るくする魔法なので、強大な魔力を持つ存在である今の闇の戦士が使えば周囲の様子が分からなくなるほどの光になるのか。
モンハンの閃光玉を使った時のような光がずっと続いている状態であり、俺は目を開けているのがやっとだが、目を閉じれば奴の攻撃が見えなくなってしまう。
目に負担がかかりそうだが、俺は目を開け続けて奴の攻撃を警戒した。
「この光の中で、あいつはいつ仕掛けて来るんだ?」
目を開けていても奴の動きを目視するのは困難であり、どの方向から攻撃して来るかは分からない。
俺はどこから攻撃が来てもいいように、全方向に気をつける。
そうしていると、突然まわりに青色の円のような物が現れ、俺は戦闘の途中だというのに眠気に襲われ、目を閉じてしまいそうになる。
「ラリホーの呪文も効いたか。そのまま永遠の眠りにつきな!」
俺は剣で攻撃して来るのだと思って警戒していたが、敵を眠らせる呪文、ラリホーを使ったのか。
ラリホーもレミーラと同じく、ドラクエ1の勇者が覚えることの出来る呪文だ。
ガライヤにいるガーゴイルもこの呪文を使っていたが、闇の戦士は非常に短い詠唱時間で発動させている。
本当にこのまま眠らされてしまえば奴の剣で斬り刻まれてしまうだろうから、俺は何とか眠気に抵抗して、両腕の剣で攻撃を受け止めようとする。
「そんな呪文くらいで、戦闘中に寝られるかよ…!」
強制的に意識を奪われるような感覚になり、俺は腕に力が入らなくなってくる。
だが、直撃さえ避けられれば死ぬことはないだろうから、俺は残った意識で両腕に持つ武器を奴の剣に叩きつけた。
おうじゃのけんとビルダーハンマーは俺の手から弾き飛ばされ、俺自身も数メートル後ろに突き飛ばされる。
再び体に強い痛みが走ったが、俺はすぐに立ち上がり落とした武器を回収しに行こうとした。
「眠気には耐えたみたいだが、無駄な努力だったな!武器も落としたお前にもう勝ち目はない!」
しかし、俺の行動を妨害しようと、闇の戦士は飛び上がって剣に力を溜めて回転斬りを放って来ようとする。
回転斬りは範囲が広いので、走って避けるのは不可能だと思い、俺は大きくジャンプをしてかわす。
その時、武器を回収するため俺はおうじゃのけんが落ちたと思われる場所に向かって飛んだ。
レミーラの効果が続いていて遠くから正確な位置を確認することは出来なかったが、着地した地点の近くでおうじゃのけんを見つけることが出来た。
今の闇の戦士でも回転斬りの後の隙は少しあるので、俺はその間におうじゃのけんを拾い、闇の戦士との距離をとった。
「おうじゃのけんは回収出来たけど、このままだと本当に勝ち目がないな…」
俺も闇の戦士も大きなダメージを受けているが、闇の戦士は呪文を使えるので優勢になっている。
攻撃力、魔力、素早さの全てが強力である奴に確実に大ダメージを与えられる方法を見つけなければ、逆転するのは難しいな。
俺は闇の戦士との距離をとった後、またラリホーの呪文を受けないように動きながらそんなことを考える。
そこで俺は、レミーラの呪文によって視界が悪くなっている状況を利用する方法を思いついた。
レミーラの呪文は辺りを明るくするという効果なので、呪文を発動させた本人である闇の戦士も俺の姿が見えにくくなっているはずである。
今、奴が俺を狙えているのは俺の足音から居場所を特定しているからの可能性が高い。
「足音をたてずに動いて、闇の戦士の背後にまわるしかないな…」
奴を背後から攻撃し、もし心臓を突き刺すことが出来ればここで戦いを終わらせることが出来る。
さまざまな場所に潜入してきた俺にとって、足音をたてずに動くことは慣れていることなので、成功する可能性もあるだろう。
俺も闇の戦士の足音に耳をすませて、奴から十分な距離をとってから、足音をたてずに奴の背後にまわろうとする。
すると、闇の戦士はさっき俺が足音を立てて移動した場所までは向かってきたが、無音で動く俺を見つけることは出来ていないようだった。
だが、俺が音をたてずに動いていることも、奴にすぐに気づかれてしまった。
「お前、この眩しさを利用しているのか。なら、レミーラを解除してやるさ!」
闇の戦士はそう言った後、もう一度呪文を唱える。
すると、辺りを包んでいた眩しい光が消えていき、視界が普通に戻っていこうとする。
俺はまだ闇の戦士の後ろにまわりきれていなかったが、このままでは奴に攻撃を防がれてしまうな。
少しでも大きな傷を与えなければ勝ち目は薄れるので、俺はすぐに動きを変えて、奴の側面から攻撃を行う。
一瞬でも早く突き刺さるようにと、俺は飛びながら右腕を延ばして、闇の戦士の筋肉だらけの横腹に思いきりおうじゃのけんを突き刺した。
「ぐはあっ!」
光がまだ消えていないうちだったので、闇の戦士は俺の攻撃に気づけず、鋭い剣で再び体を貫かれる。
剣が突き刺さった瞬間、闇の戦士はあまりの痛みに叫び声をあげて怯んだ。
俺が強い力でとても素早く攻撃したため、おうじゃのけんは闇の戦士の体に根本まで刺さっている。
「ついにこいつが怯んだな。今のうちにさらに追撃するか!」
今まで何度斬りつけても怯まなかった闇の戦士がついに動きを止めたので、俺はさらに大きなダメージを与えようと腕に力をためた。
回転斬りを使って体内を斬り裂けば、闇の戦士でも瀕死に追い詰められるだろう。
俺が力を溜めている間、闇の戦士は何とか体勢を立て直そうとするが、体を貫かれた痛みが原因で時間がかかっていた。
普通の人間なら確実に死ぬはずであるほどの重傷なので、勇者であったころも経験したことがないのだろう。
そして、闇の戦士が体勢を整えようとしている途中で腕に限界まで力が溜まり、俺は力を解放して奴の体内を斬り裂いていく。
「行くぞ、回転斬り!」
外見は筋肉だらけの強靭な肉体である闇の戦士も、体内を斬り裂かれればただでは済まず、さっきより大きな叫び声をあげた。
それと同時に、立ち直ろうとしていた奴の体が再び倒れ込む。
今までの攻撃のダメージもあるので、闇の戦士はもう瀕死の状態だろう。
だが、回転斬りの後は隙ができてしまうので、もう一度攻撃することは出来なかった。
痛みに耐えて起き上がった闇の戦士は、一旦俺から離れようと後ろに飛ぶ。
「お前…ただの人間のくせにここまでオレに攻撃出来るのか。思っていた以上の力と素早さだな…」
そして、追い詰められた奴は俺を鋭く睨みつけ、強力な魔法で攻撃をしようとしてきた。
「でもさ、どうせお前に平和な世界を作ることは出来ないんだよ!燃え尽くせ、ベギラゴン!」
ドラクエ1の勇者はベギラマまでしか覚えなかったが、今の闇の戦士はその上位の呪文であるベギラゴンも使えるようになっているのか。
ベギラゴンは強力な炎の呪文なので詠唱時間がかなり長いはずなので、回転斬りを終えて体勢を立て直した俺は詠唱時間の間に攻撃を行い、呪文を阻止しようとする。
「強力な呪文だけど詠唱時間も長い。今のうちに攻撃するぜ!」
しかし、闇の戦士は俺が接近する前にベギラゴンの呪文を唱え終わり、巨大な炎で辺りを焼き尽くそうとした。
奴はラリホーの呪文を素早く発動させていたが、ベギラゴンのような強力な呪文でもそれが可能なのか。
俺はすぐに呪文が発動したのに気付き、とても大きくジャンプして回避しようとする。
だが、ベギラゴンの炎は思った以上に広範囲であり、直撃は避けられたものの俺は足を焼かれ、火傷を負ってしまった。
「くそっ、詠唱時間も短い上に、範囲もこんなに広いのか…」
さらに、足の痛みに耐えて起き上がろうとしている俺のところに、闇の戦士は剣を叩きつけてくる。
「人間を守るためには決して使うことのなかった、勇者としての力だ!竜王を超えたお前もこれは超えられない」
重傷を負っているはずの闇の戦士だが、攻撃の威力は一向に下がっている様子はなかった。
おうじゃのけんしか持っていない今、飛び上がっての叩きつけを防ぐことは両手を使っても不可能だろう。
仮に受け止められたとしても、反撃することが出来ずに押し切られてしまうな。
俺は火傷を負った足を動かして叩きつけを避けることは出来たが、闇の戦士はさっきのように続けて連続攻撃を放ってくる。
「追い詰められているはずなのに、まだ連続攻撃を放てるのか…!?」
痛む足はそのスピードについて行くことが出来ず、俺は体をそらすなどして攻撃を避けて行くが、体力の限界が近づいてきてだんだん動きが遅くなっていった。
それを見た闇の戦士は、そろそろとどめを刺そうかと俺の頭に剣を振り上げる。
「終わらせてやる、影山雄也!」
奴の剣であれば頭蓋骨も容易に斬り裂かれるだろうから、俺は痛む足に力をこめて後ろに飛ぶ。
だが、足の火傷と体力の消耗のせいで思ったように体が動かず、俺は致命傷は負わなかったものの背中に大きな傷を負ってしまう。
闇の戦士は未だ素早く動いており、今度こそ殺されてしまうかもしれない。
闇の戦士から少し離れた俺は、何とか奴の攻撃を防ぎ状況を逆転出来る方法がないか考える。
「ビルダーハンマーもない…何を使えば状況を逆転出来るんだ?」
「仕留め損なったか…だが、いくら攻撃をかわしても無駄だ!」
その間にも闇の戦士は再び剣を構えて、俺を叩き斬ろうとして来る。
だがその時、俺はラダトーム復興の際に作ってから、1度も使うことなくポーチに入っている伝説の防具を思い出した。
俺は防具を使うのが好きではないし使ったことがないが、そうしなければこのまま闇の戦士に殺されてしまう。
「もうこれを使うしかないか…」
そして、闇の戦士の剣が叩きつけられる直前にポーチから伝説の盾であるゆうしゃのたてを取り出し、俺はそれを左手に持って奴の攻撃を受け止める。
武器である剣より防具である盾の方が攻撃を受け止めやすく、左腕に非常に強い衝撃が走ったが、奴の強大な一撃を受け止めることが出来た。
「お前…伝説の剣だけでなく伝説の盾も持っていたのか!?」
闇の戦士は俺がゆうしゃのたてを取り出したことに驚いたが、すぐにそれを叩き割ろうと剣に力を溜めていく。
「だが、そんなのは無駄な抵抗でしかない!」
左腕にかかる衝撃で突き飛ばされそうになるが、攻撃のチャンスは今しかない。
俺は左手にの力をこめて闇の戦士の攻撃に耐え抜き、その間に右腕のおうじゃのけんを奴の体内に再び突き刺す。
俺の攻撃を弾くのに集中していた闇の戦士は俺の渾身の突き攻撃に気づくのに遅れ、再び腹に大きな傷を負った。
「くっ、まだ攻撃して来る力が残っているのか…!」
防ぐことは出来なかったが、闇の戦士は俺の腕に盾を叩きつけて攻撃を止めようとして来る。
左腕だけでなく右腕にも激痛が起こり、力を弱めそうになるが、ここで怯ませれば勝てる可能性も上がるので、俺は両腕に全身の全ての力をこめて奴の攻撃を防ぎ、体内をえぐった。
「ここであんたに勝って、世界に平和を取り戻してやる!」
闇の戦士の体内を再び斬り裂いた瞬間、奴もさらなる大きなダメージを負って倒れ込み、俺も力尽きてその場で動けなくなった。