ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode137 放棄の決断

サンデルジュの4回目の防衛戦の3日後、俺がサンデルジュに来てから23日目、砦の魔物に壊された部分は、みんなの協力のおかげでほとんど修理することが出来ていた。

だが、この砦を守る今まで以上に強力な兵器は、誰も思いつくことが出来ていない。

サンデルジュの砦を捨てたくはないが、奇跡というのはおきないものだな…。

 

「どうしたら、この砦を守れるようになるんだ…?」

 

それでも諦めきれず、俺は寝室の中で何か新しい兵器が作れないか考え続けた。

しかし、何も思いつくものはなく、時間だけが過ぎていく。

みんなもサンデルジュの砦を捨てたくはないだろうが、何も出来ることはなかった。

そしてそんな中で、今まで以上の規模の魔物の軍勢が攻めてきたと、ルミーラの声が聞こえた。

 

「みんな来て!今までにないほどたくさんの魔物が近づいて来てる!」

 

魔物の活動はさらに激化してきているが、今回はどんな魔物が来てしまったのだろうか…?

魔物の種類によっては勝てるかもしれない…俺はそんなことを思って、いつものようにおうじゃのけんとビルダーハンマーを持って、魔物の様子を見に行く。

ゆきのへとバルダスも、それぞれの武器を持って砦の外に飛び出して来ていた。

 

「もう魔物は来ないでくれと願っていたが、そんな奇跡は起きねえか…」

 

「まだ新しい兵器を作れてないのに、大変なことになった…」

 

俺はゆきのへたちと一緒に、サンデルジュの砦を襲いに来た魔物たちの姿を見下ろした。

するとそこには、ボストロールやエビルトレント、キースドラゴンなどの魔物がたくさんおり、合計すると100体以上の魔物がいるように見える。

中には、ラダトーム地方の魔物であるしにがみのきしもいた。

この前の襲撃で苦戦したトロルキングも、4体いるのが見えた。

 

「強敵だらけだし、数も100体を超えているな…」

 

俺たちにとっては、絶望的な状況だ…。

恐らく魔物たちも俺たちが追い詰められているのを知って、とどめをさしに来たのだろう。

まともに戦えば、砦を破壊されるどころかみんなの命が危なそうだな…。

ゆきのへとバルダスも同じことを考えているようで、暗い顔で魔物たちの方を見ていた。

 

「生き残れるか分からないけど、戦う?…それとも、この前言っていたみたいに、この砦を捨てる?」

 

暗い顔をした俺たちを見て、ルミーラはそんなことを聞いてくる。

ここで魔物たちが来る前にサンデルジュの砦を捨てて、ラダトームに向かえば、みんなの命は助かる。

ラダトーム城の兵士と協力すれば、100体を超える魔物の軍勢に勝てるようになるかもしれない。

ゆきのへは、もう砦を放棄するのもやむを得ないと言い出した。

 

「ワシもこの砦を捨てたくはない…だが、今の状態であの軍勢に挑んでも勝てるとは思えねえ…。…今すぐにこの砦を捨てて、ラダトームに逃げたほうがいいと思うぜ」

 

この状況を見ると、俺ももうサンデルジュの砦を捨てるしかないと思っている。

俺たちは戦う力があるので生き残れる可能性はあるが、戦闘力を持たないピリンたちは助からないだろう。

だが、やはりみんなと共に作り上げてきたサンデルジュの砦を捨てるというのは、どうしても躊躇ってしまう。

 

「俺もみんなが戦いを生き残れるとは思えない…でも、やっぱりこの砦を捨てるのはな…」

 

ルミーラとバルダスは何も言わないが、俺と同じで砦を捨てたくないという気持ちがあるのだろう。

俺はどうしようかと考えるが、そうしているうちにも魔物たちはサンデルジュの砦に近づいてくる。

先頭にいるしにがみのきしたちは、もう砦のある高台に登り始めていた。

 

「人間ども!今日こそお前たちの終わりの時だ!」

 

「一人残らず斬り裂いてくれよう!」

 

その後ろにいる、コスモアイやブラバニクイーンと言った魔物たちも、次々に砦に攻め込もうとしている。

 

「くそっ、もう時間がないな…。どうしたらいいんだ…?」

 

もう時間はなく、悩み続けている俺やバルダスたちを見て、ゆきのへはこんなことを言ってきた。

 

「ワシも大事なこの砦を諦めたくはねえ。だが、ここで死んじまったら、平和な世界を見ることも作ることも出来なくなっちまう。…世界に平和が戻ったら、またここに砦を作りに来ようぜ」

 

確かに、世界が平和になれば、もう一度ここに砦を作りに来ることが出来る。

それは今俺たちが作りあげてきた砦ではないが、そう考えれば少しは希望があるかもしれないな。

そして、もう魔物たちが目の前に迫ってきており、まだためらう気持ちはあるものの、俺はサンデルジュの砦の放棄を決断する。

 

「…分かった。俺たちは、生きて平和な世界を作らないといけないからな…。この地を捨てて、ラダトームに逃げよう…」

 

「ワシは、ピリンたちにそのことを知らせてくる…。裏から逃げるから、一度砦の中に入ってくれ」

 

ゆきのへはピリンたちにも砦を放棄することを伝えるために、中に入っていく。

ルミーラとバルダスは、暗い顔のまま彼についていった。

俺も砦の前にあるアローインプ式大弓と大砲を回収してから、砦の中に入った。

これらの兵器があれば、ラダトームでの戦いでも役に立つだろうからな。

 

砦の中に入ると、ピリンたちは寝室でゆきのへたちの話を聞いていた。

ルミーラとバルダスは、万能作業台や調合ツボ、マシンメーカーといった作業台を集めている。

ピリンは砦を放棄するという話を聞いて、この前のように泣きそうな顔をしていた。

 

「もっとみんなと一緒にこの砦を作りたかったのに…、魔物に壊されちゃうんだね…」

 

ピリンは俺たちの中でも一番幼いし、みんなと楽しく暮らすことが夢なので、彼女にとってこの砦を捨てることは、俺たち以上に辛いことだろう。

 

「確かに捨てることにはなるが…世界が平和になったらもう一度砦を作りに来るぜ」

 

ゆきのへは、さっき俺に言ったことと同じようなことをピリンにも言った。

ピリンはその話を聞いてもまだ暗い顔をしていたが、そんな時、しにがみのきしが斧を砦のカベに叩きつける音が聞こえてくる。

 

「中に逃げ込んでも無駄だ!このくらいの砦、すぐに破壊してくれる!」

 

「貴様らは追い詰められている!何をしても我らには勝てないぞ!」

 

しにがみのきしはかなり攻撃力が高いので、じきに壁は破壊されてしまうはずだ。

その音を聞くと、ピリンもこの砦に残りたいとは言えなくなっていた。

辛いことながらも、生き残るためには砦を捨てるしかないと思い始めたのだろう

ゆきのへとピリンの会話を見ていると、ルミーラとバルダスも作業台を回収し終えて、寝室に集まってくる。

 

「作業台は集めてきた。…わたしもこの砦に残りたいけど、仕方ないね…」

 

「もうすぐ壁が打ち破られる…。心残りはあるけど、出発するんだ!」

 

みんなが寝室に集まり、サンデルジュの砦から逃げ出す準備は整った。

バルダスの言う通り、もうすぐ壁が破壊されてしまうだろうから、俺は寝室の奥に穴を開けて、砦の裏側に出る。

砦の裏側に出ると、魔物に見つからないように森を抜けて、ラダトームに繋がる旅のとびらへと歩いていった。

 

「みんな、絶対に…絶対に平和を取り戻して、もう一度砦を作りに来ような」

 

ゆっくり考える時間もなくサンデルジュの砦を放棄するという選択をし、みんな暗い表情のまま歩いていく。

捨てられたサンデルジュの砦とその中心に立っている銀色の希望のはたは、100体を超える魔物たちに壊されていくだろう。

世界が平和になったらもう一度砦を作りに来れるという希望はあるが、砦の方からこんなしにがみのきしの声が聞こえてきた。

 

「人間どもは逃げたか…だが、もう無駄なことだ。世界の光を消し去り、人間の繁栄を永久に終わらせる計画が、もうすぐ行われる」

 

光を消し去り、人間の繁栄を終わらせる…何をするのかは分からないが、魔物たちがそんな計画を立てているのか。

そんな話を聞くと、世界に平和を取り戻せるかどうかも不安になってしまうな。

だが、物を作る力を持つビルダーとして、何があっても諦める訳にはいかない、俺はそう思いながらラダトーム城へと歩いていった。

 

アローインプやキースドラゴンなど、森に住む魔物たちから隠れながら、俺たちは30分ほどかけて、ラダトーム城に続く旅のとびらにたどり着く。

みんなは魔物から隠れて歩いたことがないので、見つかりそうになることもあったが、木や草に隠れることで何とかやり過ごすことが出来ていた。

旅のとびらを抜けてラダトーム城に入ると、見回りをしていたラスタンが俺たちに気づく。

 

「5日ぶりだな、雄也。みんなも来ているようだが、何かあったのか?」

 

ラスタンに会うのは、ラダトームに監視塔を作った日以来になるな。

みんながラダトーム城に戻ってきたのはかなり久しぶりなので、何があったか聞いてくる。

ラスタンが俺たちに話しかけているのを見て、監視塔で魔物の様子を見ているチョビ以外のみんなも集まってきた。

 

「みなさんがいらっしゃるというのは、あなた方がサンデルジュに向かった以来ですね」

 

「雄也の名前が聞こえたと思ったが、やはり来ておったか。新たに仲間とした魔物も来ておるようじゃが、サンデルジュの砦はどうしたのじゃ?」

 

「辛そうな顔をしておられますが、どうなさったのでしょう」

 

ムツヘタはルミーラやバルダスも俺たちと共に来ていることを見て、サンデルジュの砦に誰もいなくなったことに気づいたようだった。

ローラ姫は、俺たちが暗い顔をしていることについて聞いてくる。

みんなが集まったのを見て、俺は三日前の戦いから今日までのことについて話し始めた。

 

「三日前、サンデルジュに強力な魔物がたくさん来てな、砦が大きな被害を受けて、戦う力のないピリンたちも危ない目にあった。その時は何とか魔物を倒すことが出来たんだけど、これ以上強力な魔物が来たら、俺たちだけでは倒しきれないだろうと考えるようになったんだ。そうするためには、みんなと共に作り上げてきたサンデルジュの砦を放棄して、ラダトームのみんなと共に戦うしかないということになった」

 

「それで、サンデルジュの砦を捨てたと言うことか…。サンデルジュの魔物が強いことは分かっていたが、そんな事態になるとは…」

 

ムツヘタは、俺の話を聞いてそう言ってくる。

俺も最初サンデルジュに砦を作りに行った時には、放棄することになるとは思ってはいなかったな。

エンダルゴが現れてからも、サンデルジュの砦で戦い続け、世界に平和を取り戻すのだと思っていた。

そんなことを思いながら、俺は話の続きをしていった。

 

「俺たちも本当はサンデルジュの砦を捨てたくはなかった…。でも、さっき100体を超える強大な魔物が砦に押し寄せてきてな、戦ったら命が危ないってことになってな…」

 

100体を超える強力な魔物が来たということを話すと、戦いになれた兵士であるオーレンも、戦っても勝てなかっただろうと言った。

 

「確かに100体となれば、少ない人数でどうにか出来るとは思えませんね…」

 

「私たちも魔物には苦戦しているし、共に戦うと言うのは正しいだろう…」

 

ラダトームもこの前訪れた時かなりの被害を受けていたが、その時でも100体を超える魔物は来ていなかっただろうな。

ラスタンも、共にラダトームで戦うという決断は正しかったと言う。

でも、そのためにサンデルジュの砦を捨てたことも、悲しいことだと話した。

 

「だが、それでもサンデルジュの砦が失われてしまったと言うのは、悲しいことだな…」

 

「ああ…、でもどうすることも出来なかった…。エンダルゴを倒せば世界に平和が戻って、もう一度サンデルジュに砦を作ることが出来る…それを信じて、ここに逃げてきた」

 

悲しいことではあるが、アレフガルドに平和が訪れればまた砦に行くことが出来るという希望はある。

いつになるのかは分からないが、平和が戻ったら必ずサンデルジュに向かうつもりだ。

平和になれば魔物の様子を監視する必要はなくなるし、ラスタンたちにも手伝ってもらえるだろう。

だが、ムツヘタはもう世界に平和は戻らないかもしれないと言ってくる。

 

「平和になれば、また砦を作りに行ける…確かにそうじゃが、もうすぐ世界に平和が訪れる可能性自体が、消えてしまうかもしれないのじゃ」

 

ムツヘタは予言者だし、また恐ろしい事が起きることを予知しているのだろう。

さっきしにがみのきしがもうすぐ人間の繁栄を終わらせる計画を行うと言ってしたし、そのことなのかもしれない。

平和が戻ったら、砦を再建しようと思っているみんなは、それを聞いて今まで以上に暗い顔になってしまった。

 

「…どう言うことだ?」

 

「何が起こるかは、ワシにも分からぬ。じゃが、とてつもなく嫌な予感がするのじゃ」

 

ゆきのへは聞くが、エンダルゴを生み出す計画の時と同じで、具体的に何が起こるかはまでは分からないみたいだな。

今回は、どこで魔物の計画が行われるかも分かっていないようだ。

しかし、それを防がなければ平和を取り戻して、サンデルジュの砦が再建することが出来なくなるかもしれない。

 

「…俺もサンデルジュの砦から逃げる途中、しにがみのきしがもうすぐ光を消し去って、人間の繁栄を終わらせる計画が行われると言っていたのを聞いた。何が行われるかは分からないけど、必ず止めないと世界の危機だな…」

 

砦を再建出来なくなるだけでなく、アレフガルド中が危機に陥る恐れもある。

計画の内容はまだ分かっていないが、必ず止めなければいけないな。

 

「魔物の計画を突き止められないか、試してはみる。そなたらも、何が起きてもいいように備えておいてくれ…」

 

ムツヘタも、魔物の計画を止められるように試してはみると言った。

だが、みんなは世界に平和が戻らなくなる可能性を聞き、暗い気持ちのままラダトーム城で過ごすことになってしまう。

みんなを安心させるために、必ず魔物を止めないといけないな。

まだ俺もムツヘタも、世界の光が消えるまで、もう少し時間はあるだろうと思っていた。

 

 

 

ラダトーム城の西 エンダルゴの城…

 

雄也たちがサンデルジュの砦を放棄し、ラダトーム城に逃れた日の翌日の朝、玉座の間にいるエンダルゴの間に、多くのラダトーム地方の魔物が集まっていた。

魔物たちの先頭には、世界を裏切った勇者、闇の戦士も立っている。

 

「報告は聞いた…サンデルジュの砦の破壊には成功したが、ビルダーどもはラダトームの城に逃れたそうだな」

 

エンダルゴはサンデルジュの砦に襲撃した魔物から聞いて、雄也たちが砦を放棄して逃げ出したということは知っていた。

雄也たちがラダトーム城にたどり着いたことも、ラダトーム地方の魔物の報告で聞いている。

エンダルゴはサンデルジュの砦を滅ぼせたことはもちろん嬉しく思っているが、ビルダーである雄也が生きていては、意味がないと思っていた。

ビルダーと城の人々の協力によって、また強力な兵器が作られる可能性があるからだ。

 

「サンデルジュの砦を落としたことは良かったが、ビルダーや人間どもが生きていてば、また強力な兵器を作って来る可能性がある」

 

新たな兵器が作られる前にビルダーを殺さなければいけない…エンダルゴはそう思っていた。

そこで、魔物たちにラダトーム城を襲撃して、ビルダーを殺すようにと命令を出す。

ラダトーム城を破壊したら、もう逃げ場はないだろう。

 

「そこでだ、貴様らには新たな兵器が作られる前に、ラダトーム城も破壊してもらう!あの城を失えば、もう人間どもに逃げ場はない…。攻めるならなるべく早いほうが良い、今すぐに向かえ!」

 

エンダルゴの命令を受けて、サンデルジュから戻ってきて休んでいたしにがみのきしたちも、再び出発していく。

ラダトームに向かった魔物たちにはサンデルジュを襲った魔物より弱い者もいるが、数は150体ほどにもなっていた。

闇の戦士には別の用がり、この場に残っている。

魔物たちが玉座の間を去っていくと、エンダルゴは闇の戦士に言う。

闇の戦士はエンダルゴを生み出すのに最も貢献していた者なので、エンダルゴも命令口調ではなかった。

 

「魔物たちは行ったな…そなたには、魔物がラダトーム城を襲っている間に、ルビスを殺し、ひかりのたまを破壊してほしい。かつて魔物の王であった、ゾーマや竜王でさえも、成しえなかったことだ」

 

精霊であるルビスがいる限り、ビルダーを殺しても新たなビルダーが生み出される可能性があり、エンダルゴを倒すための勇者が生み出される可能性もある。

エンダルゴや闇の戦士は、その可能性を潰して起きたかった。

また、ひかりのたまを消して、二度と魔物の封印を不可能にしようとも思っている。

これが、光を消し去り、人間の繁栄を永久に終わらせる計画だった。

これは今まで世界を闇に落としたゾーマや竜王ですらも出来なかったことだが、ルビスへの強い恨みがあり、絶大な闇の力を持っている闇の戦士ならば出来るとエンダルゴは思っている。

 

「今まで誰も出来なかったとしても、オレはやってやる。ルビスめ…ついに数百年続いた恨みを晴らす時が来たようだな…」

 

闇の戦士も断ることはなく、精霊ルビスを殺しに行こうとする。

宝玉が抜かれたロトのつるぎとロトのたてを持ち、立ち上がった。

 

「ここで光を消し去って、魔物の世界を作って見せるさ」

 

闇の戦士のルビスへの恨みは、とてつもなくなく強い。

ルビスを殺したいと強く思いながら、闇の戦士はエンダルゴの城を出ていった。

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