ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
1章を書いてた1年半前が懐かしい。
5段くらい白い岩の階段を登っていくと、俺は長老の家の入り口があるところまでたどり着く。
白い岩の階段も壊されているところはなく、長老は無事の可能性が高いな。
「案内所のおおきづちも、無事であってくれ…」
俺は案内所のおおきづちもここに逃げ延びていると祈って、俺は長老の家に入っていった。
中に入るとやはり長老は生きており、久しぶりに会った俺を見て驚く。
「お主は…もしやビルダー…!?このような時にここを訪れるとは、何かあったのか?」
俺からしても、おおきづちの長老と会うのは数ヶ月ぶりだな。
だが、長老は生きていたが、家にいるのは彼と3体のおおきづちだけであり、案内所のおおきづちは見かけられなかった。
「久しぶりだな、長老。あんたに頼みたいことがあって来たんだ」
「こんな状況の時だ…我々に出来ることなら、何でもしよう」
今回もおおきづちの長老は、協力的な口調で話しかけてくる。
これならラダトームに連れて行き、城を守れる可能性を上げることが出来そうだ。
でも、俺はラダトームに来て欲しいと言う前に、他のおおきづちたちがどうなったのか確かめようとした。
「頼み事の前に聞きたいんだけど、案内所や他のおおきづちたちはどうしたんだ?」
彼らが生きているのであれば、今すぐに助けに向かわないといけないからな。
しかし、それを聞くと長老は悲しい顔をして答えてくる。
「…ここにいる者を除けば、おおきづちの里は全滅した。みな外をうろつく魔物どもに、殺されてしまったのだ…」
…長老の家にいないことから嫌な予感が強まってはいたが、案内所のおおきづちも、他のおおきづちたちも、みんなもう殺されてしまっていたのか…。
ラダトームのおおきづちももういないので、長老たちがアレフガルド最後のおおきづちとなっているのだろう。
長老がそう言うと、長老の後ろにいた小さなおおきづちも俺に話しかけて来た。
「ボクは外の怖い魔物から逃れるために、2体の仲間と一緒に隠れてたんだ。でも、少し前ボクたちがいた家ごと壊されて、2体の仲間は殺されちゃった…。抵抗しようともしていたけど、木槌を簡単に折られちゃったよ…」
おおきづちはあくまのきしなどに比べれば弱い魔物なので、抵抗することも出来なかったのか…。
長老はメルキドの山岳地帯には、庭園や墓と言った物を作っていたおおきづちもいたと言う。
「庭園を作る者、亡くなった人間のために墓を作る者、崖を上り下りするためのはしごを作ろうとする者…この地にはさまざまなおおきづちが住んでいた。だが、みんな志半ばで死んでしまった…」
昔メルキドを復興させている時は案内所のおおきづちと長老くらいにしか会わなかったが、そんなことをしていたおおきづちもいたんだな…。
庭園や人間の墓、はしごを完成させることができず、とても無念だったのだろう…。
…エンダルゴは人間の味方だと言うだけで、弱い魔物も容赦なく殺そうとする。
闇の戦士がエンダルゴを生み出したのにも理由はあるが、俺は絶対にエンダルゴを倒したいという気持ちを強めた。
俺は辛いことを聞いてしまったので、長老や後ろのおおきづちに謝る。
「辛いことを聞いてしまってごめんな…。おおきづちの里がそんなことになっていたなんて…」
「気にしなくてもよい。さっき言っていた、頼みたいことと言うのは、何なのだ?」
おおきづちたちが死んでいることは覚悟していたが、実際に聞くとやはり悲しくなるな…。
だが、悲しんでばかりいられないので、俺はラダトーム城に来て欲しいと長老に言った。
「ラダトーム城の防衛を手伝って欲しいんだ。俺たちはアレフガルド各地を巡って、かつての王都ラダトームも復興させた。そのラダトーム城が今手薄になっていてな、防衛のためにあんたたちの力を借りたい」
俺の話を聞いて、おおきづちの長老はうなずいてくれる。
「力になれるかは分からんが、もちろん協力するぞ。…我も魔物である故に、人間が増えすぎるのも困ることだと思っている。しかし、今は竜王様がおられた頃よりも世界の調和が失われておる。エンダルゴという者の仕業らしいが、我は魔物のみが支配する世界を望んではおらぬ」
おおきづちの長老も竜王が倒され、エンダルゴが現れたことを知っているようだ。
そう言えば、数ヶ月前最初に出会った時も、長老は人間が増えすぎても困ると言っていたな。
だが、ルビスの言っていたような光と闇のバランスも気にしているようなので、エンダルゴや闇の戦士が作ろうとしている魔物だけが支配する世界も望んではいないのだろう。
竜王がいた頃の光と闇のバランスが2:8くらいだとすると、今の光と闇のバランスは1:99か、それより光が少ないという状況だ。
「ありがとうな、長老。さっそくメルキドから、ラダトームに向かおう」
「少し待って欲しい…我は今すぐにでも行きたいのだが、みんなはどうするのだ?」
俺が感謝の言葉を言って、長老をメルキドに連れて行こうとすると、彼は小さな3体のおおきづちの方を見てそんなことを言う。
確かにここに置いていけば、この3体はまわりの魔物たちに殺されてしまうだろうな。
メルキドはまだ立て直していないので、長老と一緒にラダトームで暮らしてもらうのがいいかもしれない。
「あんたと一緒に、ラダトーム城で暮らすといいと思うぜ。ラダトーム城になら、整った部屋もたくさんある」
「分かった。お主たち、我と共にラダトーム城へと行こう」
俺の話を聞くと、おおきづちの長老は3体の小さなおおきづちにそう言う。
彼もおおきづちたちをラダトーム城に連れていけば、安全だと思ったみたいだな。
さっき長老の後ろにいたおおきづちは、話を聞いて長老に着いていこうとした。
だが、長老の左と右にいたおおきづちたちは、長老の話に不満を持っているようで抗議して来る。
それどころか、エンダルゴの手下になるべきだとも言い出した。
「長老、いい加減にしましょう!人間なんて、百害あって一利なし!あんな奴ら放っておいて、エンダルゴ様の手下となりましょう!」
数ヶ月前も今も長老の左のおおきづちとは話したことはなかったが、おおきづちの中にも人間をよく思っていない者もいるみたいだな。
エンダルゴの手下にならなかったせいで、仲間が殺されてしまったことの影響もあるのかもしれない。
右のおおきづちは、人間の町に言ってもいじめられるのではないかと言ってくる。
「人間は魔物たちをいじめてたって聞いたよ。例え人間の町に行ったとしても、ボクたちはいじめられるんじゃないか?」
人間と魔物は本来敵対しているので、そう思っても仕方ないだろう。
だが、ラダトーム城には魔物であるチョビやルミーラ、バルダスも暮らしているので、きっと歓迎されるはずだ。
俺は右のおおきづちに、その事を伝えようとした。
「それは大丈夫だ。ラダトーム城には魔物の仲間もいるけど、みんな仲良く暮らしているぞ」
俺がそう言った後、長老は左のおおきづちも説得しようとする。
「確かに人間には悪いところもあるが、魔物しかいない世界も良くないのだ。どうか我らと共に、ラダトームに向かって欲しい」
2体のおおきづちは俺たちの言葉をなかなか信じてくれなかった。
だが、長老は2体のことも大事な仲間と思っているようで、説得を続けようとする。
しかし、俺たちが説得している間、背後から鎧を来た者が歩いて来る音が聞こえた。
俺と長老はすぐに音に気づき、家の入り口の方を向く。
するとそこには、斧を構えた4体のあくまのきしがおり、長老の家を破壊しに来たようだった。
「まだ生きていたようだが、おおきづちの里は今日で終わりだ…我らの斧で叩き斬ってやる!」
「人間どもに味方したことを後悔しろ!」
こいつらを倒さなければ、おおきづちを助けてラダトーム城に連れて行くことは出来なさそうだな。
俺は一度説得を止めて、あくまのきしたちに武器を構える。
あくまのきしは強力な魔物だが、長老も大きな木槌で立ち向かおうとしていた。
「こんな時に魔物が来やがったか…何とかして迎え撃たないとな」
「我も戦うぞ。みんなを守って、ラダトーム城へと向かおう」
長老が戦っているのは初めて見るが、どのくらいの力なのだろうか。
あくまのきしに恐れずに立ち向かえると言うことは、やはり他のおおきづちよりもかなり強いのだろう。
ラダトーム城への援軍として、間違っていなかったようだな。
魔物たちはビルダーがラダトームにいると思っており、あくまのきしたちは俺の顔を直接見たことがないようで、俺がビルダーだとは気づいていなかった。
「人間も一緒にいたか!共に仕留めてやろう!」
2体のおおきづちが人間の味方になってくれるかもしれないし、俺も精一杯戦わないとな。
あくまのきしたちは、俺の方にも斧を振り下ろしてくる。
おおきづちの里の、生き残ったおおきづちを守るための戦いが始まった。
俺と長老は、あくまのきしを2体ずつ相手していくことになる。
奴らの斧を避けながら、俺は鎧を貫こうとおうじゃのけんを振り下ろした。
奴らの上位種であるしにがみのきしとも戦ったことがあるので、戦うのはそんなに難しくはない。
「まだ避け続けるか…人間!」
あくまのきしたちもさまざまな角度で攻撃をしてくるが、俺はジャンプも使って回避を続けていった。
奴らの攻撃を受けないようにしながら、俺は攻撃の後の隙に、何度も両腕の武器を叩きつけていく。
おうじゃのけんもビルダーハンマーも攻撃力が高いので、何度か攻撃を当てると、あくまのきしたちにかなりのダメージを与えることができていた。
「あくまのきしは強力だけど…この武器があれば苦戦しないぜ」
昔メルキドで戦った隊長のあくまのきしほどの力もなく、このまま倒すことが出来そうだ。
奴らが弱ったところで、俺はおうじゃのけんを思いきり突き刺す。
「くそっ…人間め…!」
だが、剣を突き刺されてもあくまのきしは死なず、さらに斧を振り下ろそうとしてきた。
でも、奴の動きは遅くなっているので、俺はもう一度攻撃を避けて、鎧をビルダーハンマーでも殴りつける。
ハンマーでの攻撃も受けると、あくまのきしは生命力が尽きて、光を放って消えていった。
おおきづちの長老も、巨大な木槌を使ってあくまのきしたちにダメージを与えられている。
「長老も苦戦していないみたいだな…今のうちに、もう一体も倒すぜ」
長老が苦戦していないのを見て、俺も残り1体のあくまのきしを倒そうとした。
もう一体も動きは遅くなっており、すぐにとどめをさせられそうだ。
奴も盾を使って防御しようとしたが、俺はおうじゃのけんを使って盾ごと貫こうとする。
あくまのきしの盾はかなり硬かったが、俺は右腕に全身の力をこめていった。
しばらく力を加え続けていると、ついに盾は突き破られて、あくまのきしの体もおうじゃのけんに貫かれる。
「結構硬い盾だったけど、こいつも倒すことができたな」
そこで俺と戦っていたあくまのきしは2体とも倒れ、俺はおおきづちの長老を助けに行こうとする。
長老はあまり動きが早くないので何度か攻撃をくらいそうになっていたが、まだ無傷だ。
彼が怪我をする前にあくまのきしを倒そうと、俺は奴らの後ろに回った。
「後ろから突き刺せば、こいつもすぐに倒せるだろうな」
そして、あくまのきしがこちらに振り向く前に、俺は心臓を目掛けておうじゃのけんを突き刺す。
奴らは俺に気づいていたが反応が間に合わず、刺されたあくまのきしはその場に倒れこんだ。
残り1体になったあくまのきしも、長老に思い切り殴られて怯む。
「これ以上、我々の里の者を傷つけはさせん」
里の仲間をこれ以上殺されたくない長老は、怯んだあくまのきしを木槌で攻撃し続けていった。
俺もあくまのきしにとどめをさそうと、ビルダーハンマーで鎧を殴りつける。
俺と長老に何度もハンマーで殴られ、奴は鎧や盾が大きく変形した状態で死んでいった。
4体のあくまのきしを倒すと、おおきづちの長老は一安心したような顔になる。
「助かったぞ、人の子よ。お主がいなければ、我もみんなも殺されていただろう」
しかし外を見ると、多くの他のビッグハンマーやあくまのきしたちが、この長老の家に向かっているのが見えた。
俺は苦戦しないかもしれないが、ここで戦っていたら後ろの小さなおおきづちたちが危ないな。
「ああ…でも、他にも多くの魔物がここに向かっているみたいだぞ」
「戦っていてもキリがない数だと思えるが、どうするのだ?」
奴らが来る前にこの家を離脱して、メルキドの町に向かうしかないだろう。
だが、ルビスが死んだことで希望のはたの力が失われてしまい、キメラのつばさを使って町に戻ることは出来なさそうだ。
魔物から逃げながら、走って旅のとびらに向かうしかなさそうだな。
今すぐにこの家を出れば、魔物たちと戦わずに向かうことが出来るかもしれない。
「奴らがこの家に来る前にこの家から逃げ出して、メルキドの町に繋がる旅のとびらに向かう。今すぐに出れば、みんな助かるはずだ」
俺がそう言うと、おおきづちの長老もそれしか方法がないと思ったようで、みんなに指示を出そうとした。
「分かった。多くの魔物が迫っているから、ビルダーと我は人間の町に逃げる。みんなもついて来てくれ」
さっきから長老と共にラダトームに行こうとしていた後ろのおおきづちは、もちろん指示を聞いて長老の家から出る。
説得に応じなかった右のおおきづちも俺とあくまのきしとの戦いを見て、人間の町に行くことを決めたようだ。
「人間はボクたちをいじめるって聞いてたけど、その人は助けてくれた…ここで死にたくないし、ボクもついて行くよ」
左のほうにいたおおきづちも人間と協力する気はまだないようだが、魔物に囲まれている状態なので、仕方なく俺たちについて行こうとする。
「あっしは人間なんかと住みたくはないが…仕方ないな」
おおきづちが3体ともついて来ると、俺と長老を先頭にメルキドの町に続く旅のとびらに向かっていった。
一部のビッグハンマーはもう長老の家のすぐ近くにも来ていたが、俺たちは攻撃を避けながら走っていく。
ゆっくり進んでいたら15分かかる距離だが、走っていくと数分で旅のとびらにたどり着くことが出来た。
旅のとびらにたどり着くと、俺たちはすぐに飛び込んでメルキドの町に向かう。
説得が中断されたので、左のおおきづちは仕方なくついて来ているが、何とか生き残ったおおきづち全員を連れて来ることが出来たぜ。
あのおおきづちも何とか、俺たちに協力してくれるといいな。