ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
ラダトーム城の西 エンダルゴの城…
エンダルゴは魔物たちが生み出した闇の力を吸収し、ラダトーム城に向けて放った後、大勢の手下の魔物と共に、最深部の玉座の間にいた。
あれほどの闇の力を放てば、ラダトーム城もそこに住む者もただでは済まない。
ようやく人間の城に大きなダメージを与えられただろうと、魔物たちは喜びあっている。
エンダルゴも、何人かの人間や人間に味方する魔物に、強い闇の力が当たったと確信した。
「エンダルゴ様のおかげで、ついにあの忌々しき城に打撃を与えることが出来ました。今頃何人かの人間は、闇の力に蝕まれていることでしょう」
「ああ…さっそく人間どもの苦しみが伝わって来る。体を侵食される痛みが、このまま死ぬのではないかという恐怖が、我らに抗うことの出来ない悔しさがな」
痛み、恐怖、悔しさ、絶望といった闇に属する負の感情…闇の力の集合体であるエンダルゴは、人間のそういった感情からも力を得ることが出来る。
闇を降らせる時にはエンダルゴの体内にある闇の力もかなり消耗したが、再び力が満ち始めていた。
魔物たちの魔力と人間たちの絶望を受けて、これからもエンダルゴは力を増していく。
そう思っている中1体の魔物が、人間が闇の侵食に耐えきる可能性はないのかとエンダルゴに聞いた。
「エンダルゴ様。人間どもが闇の侵食に耐えきる可能性はないのでしょうか?」
「それは気にするな。どんな魔物でも耐えられないほどの闇の力だ…人間ごときが、生き残れるはずがない」
あの黒い流星が直撃すれば、隊長のしにがみのきしやメルキドのドラゴンを変異させた時の数倍の闇の力に体が蝕まれることになる。
人間や人間に味方する魔物が生き残る可能性は、限りなくゼロに近いだろう。
「それなら安心でございます。人間どもの数が減れば、我らが勝てる可能性が高まるでしょう」
エンダルゴの話を聞いて、手下の魔物は安心していた。
人間側の戦力を一人でも減らせたら、エンダルゴの軍勢は有利になるだろう。
だが、喜び合っている魔物たちとエンダルゴのところに、ある悪い知らせが届いてしまう。
エンダルゴの玉座の間に、一体のあくまのきしが走って駆け込んで来る。
「エンダルゴ様。大変でございます!」
「やけに急いでいるようだが、何があったのだ?」
そのあくまのきしはメルキドの魔物であり、エンダルゴが会うのは初めてだった。
あんな遠方の魔物がわざわざ知らせに来るとは、一体何があったのだろうか?
「実は、メルキドの町を破壊した悠久の竜が3体とも人間どもに倒されたのです。魔法で硬化させたはずのオリハルコンも、採掘された形跡がありました」
「悠久の竜が倒されたなど、本当なのか!?それに、あれほどの硬度にしたはずのオリハルコンが採掘されただと!?」
悠久の竜が倒されたのはおとといなのだが、メルキドは遠方故に報告が遅れていた。
エンダルゴはまさか悠久の竜が倒されるとは思ってはおらず、動揺を隠せない。
ダークハルコンが採掘されてしまうのも、想定外の事態であった。
「我も信じられなかったのですが、悠久の竜は人間との戦いの後いつまで経っても戻って来ず、オリハルコンの鉱脈は何度見ても人間の手で砕かれていました」
「こんなことがあるとは…ビルダーの奴め、まだ抵抗を諦めないとはな…」
悠久の竜が倒されたのも、ダークハルコンが採掘されたのも、間違いなくビルダーの仕業だ。
硬化させた金属が採掘されたとなれば、人間はますます強力な兵器を作り出すことだろう。
「せっかくラダトーム城を破壊出来たのに…まずいことになったな」
「人間ども…思った以上にやるな」
人間の城を破壊出来たと喜んでいた魔物たちは、不安になってしまう。
だがエンダルゴは、動揺を受けたものの、まだ人間側に勝ち目があるとは思っていなかった。
「だが、悠久の竜を倒したところで、人間どもに勝ち目はない。ラダトーム城の人間どもはまもなく死ぬだろうし、リムルダールとマイラも変異体の魔物によって壊滅しているはずだ。ビルダーも度重なる仲間の死を見れば、希望を失うだろう。ビルダーの絶望は、我のさらなる力となる」
リムルダールとマイラに送った変異体の魔物は、今頃それらの町を壊滅させているだろう。
それぞれの地域でたくさんの仲間を失えば、ビルダーも希望を失うはずだ。
エンダルゴは、ビルダーの絶望をも自分の力とする気でいた。
「貴様らも世界を絶望に叩き落とせるよう、人間どもと戦い続けろ」
魔物たちもエンダルゴの配下であり闇の戦士の仲間である以上、不安であっても戦いを続ける。
魔物軍団の侵攻は、これからも止まる気配を見せなかった。
エンダルゴへの報告を終えた後、メルキドのあくまのきしは闇の戦士のところへ向かう。
闇の戦士がいるのは、アレフガルドに闇の力を振りまくための場所だ。
人間の干渉が困難な場所にあり、エンダルゴや魔物たちからは、魔物の楽園と呼ばれていた。
闇の戦士以外の魔物も、よくその場所を訪れている。
アレフガルドのどこか 魔物の楽園…
魔物の楽園の中で、闇の戦士は人間やルビスへの復讐心から生まれた闇の力を、アレフガルド中に向けて振り撒き続けていた。
エンダルゴを早く強化し、人間たちに青空を見せないために、毎日限界まで闇の魔力を放っていく。
闇の戦士の隣には、かげのきしとメスのだいまどうも1体ずつ立っていた。
彼らも、世界に向けてそれぞれが持つ闇の力を放っている。
そんな3体の魔物のところに、あくまのきしが入って来た。
「アレフ、みんな!先ほどエンダルゴ様には伝えたが、大変なことになってしまった!」
アレフ…かつて闇の戦士が人間だった時、名づけられた物だ。
雄也相手には名乗らなかったが、仲間の魔物たちには名前を教えていた。
彼は魔物の王ではなく、あくまで1体の魔物でありたいため、呼び捨てにさせている。
「ここまで知らせに来るって、何があったんだ?」
「メルキドの町を破壊した3体の悠久の竜が、人間どもに倒された。エンダルゴ様はまだ人間どもに勝ち目はないって仰ったけど、一応知らせに来た」
「雄也の仕業だな、くそっ。ルビスめ、厄介な奴を遺していきやがって」
あくまのきしの報告を聞いて、アレフは怒った口調でそう言った。
忌まわしき精霊が遺したビルダー…雄也を早く倒したいと、彼は改めて思う。
だが、今はアレフガルドを闇に沈め、エンダルゴを強化することを優先しているので、直接戦いに行ったりはしない。
エンダルゴの力が極限まで高まったら、雄也も闇の力の侵食を受けて、苦しみながら死んでいくことになるだろう。
「我らの勝ちは変わりないにしても、リムルダールやマイラまで復興されないか心配だな」
アレフの横に立っていたかげのきしは、そんなことを呟く。
アレフもリムルダールやマイラで何が起きているかは分からないので、何とも言えなかった。
しかしだいまどうは、リムルダールが復興される心配はないと話す。
「それは大丈夫でしょう。リムルダールには私の仲間である、最強のだいまどうの変異体が向かいました。たとえビルダーでも、リムルダールを復興することは不可能です」
リムルダールに向かっただいまどうの強さは、同じだいまどうの中でも指折りの物だった。
彼がさらに闇の力で変異したのであれば、ビルダーですら勝てないほどの力になっているだろうと、魔物の楽園のだいまどうは確信していた。
「これ以上人間の抵抗を許したくはない…そいつが、雄也を返り討ちにしてくれるといいな」
雄也を殺すことは出来なくても、リムルダールの復興を不可能にしてほしい。
世界を闇に閉ざそうとする魔物として、アレフはその変異体のだいまどうを信じていた。