ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記   作:seven river

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Episode176 救いなき世界

ゲンローワが倒れた日、エルは夜遅くまで薬の開発を続けていた。

その間にもノリンたちは邪毒に蝕まれ、衰弱が進んでいく。

しかし、やはり一日では薬を作ることはできず、みんなが耐え抜くことを祈るしかなかった。

俺も大きな不安の中、夜を明かすことになる。

 

そして、ゲンローワが倒れた翌日、リムルダールに戻って来てから7日目の朝、俺はノリンたちの様子を見に病室に入った。

すると、マロアたち6人は昨日の食べ物のおかげか、容態は安定していた。

しかし、ノリンたち4人はもう限界のようで、少しも体を動かさない。

息もほとんどしておらず、人間の体に詳しくない俺から見ても、もう長くないことは明らかだった。

 

「くそっ、何とか助けられないのか…?」

 

俺は4人の様子を見て、思わずそうつぶやく。

ひかりのたまとルビスの加護の消滅、それがこんな事態まで招いてしまうとはな。

エルが薬を完成させるまで、とてもじゃないが耐えられないだろう。

何か方法はないかと考えていると、ノリンは僅かに口を動かして、もう助けは必要ないと言う。

 

「もういい…雄也。オレはもともと、あいつの後を追うつもりだったんだ…。欲を言えばもう一度、美味い魚を食べたかったんだけどな…」

 

「それなら何とか、薬が出来るまで頑張ってくれ…!病気が治ったらまた一緒に釣りにいって、みんなと一緒に美味い魚を食べよう。釣り名人の分も、偉大な釣り人を目指そうぜ!」

 

昨日も思ったが、またノリンと一緒に釣りに行って、みんなで魚を食べたい。

昔のような明るいノリンに戻れば、リムルダールの町も盛り上がるだろう。

諦めないでくれと、俺はノリンに声をかけ続けた。

だが、ノリンは釣り名人のいない世界で偉大な釣り人にはなれないと、俺に別れを告げる。

 

「でも、やっぱりオレはあいつなしで、偉大な釣り人にはなれねえ…。もう息が出来ない…さよならだ、雄也…。今いくよ、釣り名人…」

 

俺は声をかけ続けようとするが、ノリンはそう言った後、全く動かなくなった。

呼吸ももうなく、呼びかけても反応しない。

町の大切な仲間であるノリンを、こんなところで失いたくはない…。

俺は大声で、ノリンの名前を呼び続けた。

 

「おい、ノリン…!起きるんだ…、ノリン…!ノリンっ…!」

 

だが、どれだけ呼びかけても、ノリンはもう返事をしない。

俺の大声を聞いて、エルたちも病室の中に駆けつけて来た。

病人を救うことを第一に考えて来たエルは、慌てた口調で何があったのか聞いてくる。

 

「雄也様…!ノリン様に、何があったのですか…!?」

 

「息をしなくなって、呼びかけても返事をしないんだ…!」

 

俺も焦った口調で、ノリンの状態をエルに説明した。

俺の話を聞いて、エルもノリンに駆け寄り、必死に声をかけていく。

 

「そんな…!ノリン様…しっかりしてください…!」

 

俺もノリンが息を吹き返すのを、エルと共に祈っていた。

だが、いくら声をかけても祈り続けても、ノリンはもう動かず、言葉も発さない。

数分間脈も呼吸もなく、もう回復は絶望的であった。

 

「ノリン様っ…!」

 

「助けられなかったか…」

 

…ノリンは、死んだ…。

エルは息絶えた彼の体をまださすり続け、涙を流していた。

必ずみんなでリムルダールの2度目の復興を達成したいと思っていたのに、もうその願いが叶うことはない。

俺たちの後ろにいるミノリたちも暗い顔になり、病室全体が悲しみに包まれていた。

 

だが、悲しみに包まれていた俺たちに、さらなる悲劇が襲いかかって来る。

セリューナとザッコも、自分の死を悟り、最期の言葉を告げて来たのだ。

 

「アタシも…もうダメみたいです…今マデありがとう…雄也さん、エルさん…」

 

「イルマ…みんな…すまねえべ…。最後にこの町に戻って来ることが出来て、良かったべ…」

 

ノリンだけでなく、この二人まで…。

薬が出来るまで耐えられる可能性は低いとは分かっているが、それでも諦めることは出来なかった。

俺とエルは何とか頑張ってくれと、セリューナたちにも声をかける。

 

「セリューナ様、ザッコ様…諦めないでください…!」

 

「もう少しだけ頑張ってくれ…きっと薬は出来るはずだ」

 

これ以上目の前で、大切な仲間を失いたくはない。

イルマもザッコに向かって、死なないでくれと願い続けていた。

 

「ザッコ…おれとあんたは、小さい頃から友達だったじゃないか…。おれを残して、死なないでくれ…!」

 

声をかけながらも、何とか俺はセリューナたちを助けられる方法がないか考えていた。

しかし、俺では何も思いつくことは出来ず、二人を看取ることしか出来ない。

そして、ザッコは親友のイルマにもう一度謝った後、力尽きてしまった。

 

「本当に…すまねえべ…イルマ…」

 

「頼む、生きてくれ…!ザッコ…!」

 

目の前で動かなくなった親友の体を、イルマはゆすり続ける。

ザッコも昔のリムルダールで、イルマを必ず助けてくれと言っていたし、それだけ仲が良かったのだろう。

イルマは普段は考えられないような暗い顔になり、ザッコの前で泣きだす。

そんなイルマの姿を、俺もエルも見ていることしか出来なかった。

何も出来ない俺たちの前で、リリパットのセリューナも息を引き取ろうとする。

 

「みんな二見守らレテ死ねるンデス…アタシ、人間ノ味方二なっテ…良かったデス…」

 

「それなら、生きて一緒に町を作って行こう!俺たちと一緒に、これからも町を発展させようぜ」

 

人間の味方になって良かったと思うのなら、共に生きて町を作り、仲良く暮らしていきたい。

セリューナの力もあれば、リリパットの里を復興することも出来るだろう。

だが、その願いはもう叶わないと、セリューナは言う。

 

「それガ叶えバ、嬉しいンですけどネ…もうアタシに、力ハありまセン…本当二残念デス…」

 

リリパットは人間と違い、死んだら死体は残らない。

悔しそうにそう言ったセリューナの体は、青い光に変わって消えていった。

ベッドの上は、最初から誰もいなかったかのようになってしまう。

 

「くそっ、セリューナも…」

 

必ず助けてやると言ったのに、ザッコもセリューナも救うことは出来なかった…。

立て続けに3人の患者が亡くなったのを見て、ケンも絶望に沈んでいる。

 

「僕も頭が壊れそうなほど痛くて、息が出来ないんです…僕も、ここまでのようです…」

 

「耐えてくれ、ケン!これ以上、大事な仲間を失いたくないんだ…」

 

俺がケンと共に過ごした時間は短いが、それでも大切な仲間だ。

だが、ケンはもう少し言葉をかわす力もなくなったようで、うめき声しか上げなくなってしまう。

そうなってからも、俺は生きてくれと言い続けていた。

 

「ケン、生きるんだ…」

 

しかし、光の失われたこの世界で、奇跡という物は起こらなかった。

ケンが目を閉じたと同時に、彼の呼吸は止まり、脈もなくなってしまう。

…俺たちの目の前で、大切な4人の命が失われてしまった。

病室の中でみんな、亡くなったノリンたちを思いながら、涙を流していた。

 

特に、今まで病人を救うことに懸命になっていたエルは、声をあげて泣いている。

 

「私のせいで…皆さんが…。私がもっと早く薬を作っていれば、こんなことにはならなかったのに…」

 

確かにもっと早く薬を作っていれば、ノリンたちは助かっただろう。

だが、エルは薬作りが専門ではないので、時間がかかるのも仕方がない。

エルのせいではないと、俺は彼女に言った。

 

「エルは悪くない…邪毒の病を振りまいた、暗黒魔導のせいだ…」

 

暗黒魔導が邪毒の病を振りまいたせいで、薬師のゲンローワが倒れてしまった。

しかし、その暗黒魔導は、既に倒されている。

苦しみの元凶を倒したとしても、この世界では、全てを救うことは出来ない。

エンダルゴやアレフを倒しても何も変わらないのではないかとも、俺は思ってしまった。

そんなことを考えている間に、まだ生きているマロアとオラフトの、絶望の声も聞こえて来る。

 

「セリューナが、死んだカ…オレも、もうすぐ終わりダナ…」

 

「ワタシももっと…生きたかったんだけどね…」

 

4人の死によって、昨日料理を食べて少しは元気を取り戻した6人も、生きる気力をなくしていた。

俺は絶対に助けてやるといつも通り言いたかったが、その確証も持てない。

悲しみに暮れている俺とエルに向かって、ゲンローワは話しかけてきた。

 

「雄也よ…エルよ…大切な話があるのじゃ…」

 

ゲンローワは病に冒された体を何とか起き上がらせ、俺たちに伝えたいことがあるようだ。

俺とエルは1度立ち上がり、ゲンローワの寝ているベッドに歩いていく。

 

「どうしたのですか…ゲンローワ様?」

 

「暗黒魔導を倒したところで、リムルダールの邪毒は消えなかった…もう薬の開発をやめてわしらを捨て、安全な場所へ逃げてほしいのじゃ…」

 

エルが聞くと、ゲンローワはもう薬の開発をやめるべきだと言ってきた。

まさか昔のようにまた、病にこれ以上抗うべきではないと考え始めたのだろうか。

 

「な、何を言うのです、ゲンローワ様!私は苦しむ患者様がいる限り、治療を諦めたくはありません…」

 

「別にわしは、病に抗うのが間違っているなどと言うつもりはない。…じゃが、このままではお主もみんなも、邪毒にやられてしまうじゃろう」

 

今日の悲劇を見ても、エルにはまだ諦めない心があるようで、ゲンローワに大声で反対する。

だが、ゲンローワの言う通り、リムルダールで薬の開発を続けていれば、エルも邪毒の病に感染してしまう恐れもあるだろう。

自分だけでなく孫娘まで死んでしまうと言う事は、ゲンローワにとって何より辛いことのはずだ。

 

「雄也の小舟に乗って邪毒のない場所まで行き、そこで魔物に抗うと良い」

 

「ですが、私に患者様を見捨てて、この町を捨てることなど…」

 

暗黒魔導が倒れたことでこれ以上邪毒が振り撒かれることはなくなったので、リムルダールを離れれば、もう病にかかることはないだろう。

だが、俺もエルも、邪毒の病の治療を諦めて、リムルダールの町を放棄することなど、絶対にしたくはなかった。

でも、病に冒される危険もあるリムルダールに残るか、この町を放棄するか、どちらのほうがいいのだろうか。

 

「無理にとは言わぬ…少し、考えて見てほしいのじゃ…」

 

「では、少し時間をとらせてください…」

 

エルはそう言うと、今度のことを考えに病室から1度出ていった。

どちらの選択を選んでも、これからも魔物と戦い続け、エンダルゴやアレフとの戦いの準備を進めることになるだろう。

だが、闇の元凶を倒したとしても、もう何も変わらないのではないかとも、俺は考えてしまっていた。

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