ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
しばらく待っていると、10歳くらいの少女がこちらに向かってきた。おそらく、体験版で住民となったピリンだろう。まさか現実で会えるとは思っていなかった。もしかしたら、ロロンドやロッシとも会えるだろうか。
「さっそく、人間がやって来ましたね。彼女とともに、メルキドの復興を始めるのです。」
ルビスの言うとおり、まずは仲間が必要だ。頼りになるか分からないが、協力しないといけないな。
少女は、旗が気になったのか、旗の刺してある台座に登った。
「なんだろう、この旗。それにここ、とっても暖かい」
少女もこの場所は暖かく感じるようだ。やはり、光の範囲の中は気温が高いらしい。
俺はまず、その少女に話しかけた。
「こんにちは。君は誰だ?」
言葉が通じるか不安だったが、それは大丈夫だった。
「わたしはピリン!そっちこそ、だあれ?それに、このはたはなあに?」
やはりピリンだったか。先に名前を名乗るのが礼儀だが、それが気になって先に聞いてしまった。
「俺は影山雄也。普段は雄也って呼んでくれ。あと、この旗は俺が立てた」
「雄也って言うんだ!あなたは何処から来たの?ここで何をしてるの?」
さすがに日本から転送させられたなんて言っても分からないだろうから、精霊の声に導かれて来たとでも言っておこう。
「何かよくわからんが、精霊の声に導かれてここまで来たんだ」
そう言うと、ピリンは不思議そうな顔をした。
「精霊の声が聞こえるなんて、何だかものすごく怪しい感じだけど···」
それくらいしか返す言葉がないんだから仕方ないだろ。まあ、実際俺も精霊の声が聞こえるなんて言う奴がいたら、怪しく思うが。
「おかしいことは分かってるよ。でも俺は怪しいことをしている訳じゃない。ここで町を作ろうと思っているんだ。」
「町を、作っている?」
「それでだな、一緒に町を作って、一緒に暮らす仲間を探しているんだ。」
「じゃあわたし、ここに住んでみようかな?ここ、暖かくて気持ちがいいし」
やった!さっそく仲間になってくれる人がいた。このまま一人だったらどうしようかと思っていた。
そして、俺はあらためてピリンに挨拶をした。
「これからよろしくな、ピリン!」
「よろしくね、雄也!」
挨拶を済ませた後、ピリンはメルキドの跡地を見て回った。まわりは廃墟すらないので、この
ような場所が珍しいのだろう。
一通り見て回ると、ピリンは俺のところに戻って来た。
「ねえ、雄也。ここに住みたいけど、みんな壊れていて、使えそうな部屋がないの。なんとか修理できればいんだけど···。」
そういえば、寝室などの部屋について考えてなかった。自分で直せないのか?と思ったが、この世界の人々は物を作る力だけでなく、ブロックを置く、壊す力もないようだ。
すると、またルビスの声が聞こえてきた。
「物を作ることのできない人々のかわりに、あなたが家を修理してあげましょう。土ブロックで、旗の北西にある白い家を修理するのです」
ゲームではここで、土ブロックをどれだけ持っていても新たに5個貰えるのだが、現実では貰えなかった。
どっちが北西か分からないが、廃墟にひときわ目立つ白い家があった。これからはその家を基準に方角を覚えておこう。
「あの家だな」
その家は、ゲームと同じで壁が高さ2メートルしかなく、天井もない。そして、その家の壁には、5ブロック分の穴が空いていた。
これを塞げと言うことだな。ゲームでも思ったが、白い家の壁を土で直すのは違和感を感じる。リアルなら尚更だ。
俺は、土ブロックでまず一つ、穴を埋めた。
「素晴らしい。その調子で全ての穴を埋めるのです。」
俺が何をしているか気になったようで、ピリンは修理中の家に入ってきた。
「ねえ雄也?なにをしてるの?」
「この家を修理しているんだ。」
「え!?あなたは壊れた家を修理できるの!?」
ピリンはとても驚いたようだ。こんな世界で生きてきたのだから、無理はないが。
「すごい力を持っているんだね。どうしてそんなことが出来るの?」
「出来るのが普通なはずだぞ。そっちが力を失っているんだ。」
「力がないって言うか、どうやってブロックをあつかったりするのかが分からないの」
それを聞いて、ふと思った。俺がピリンにブロックの置き方を教えれば、手伝えるようになるんじゃないか?
俺は手を止めて、ピリンに言った。
「俺がお前にブロックの置き方を教える。それならば手伝えるんじゃないか?まずはこれを持ってくれ。」
俺はブロックを取りだし、ピリンに渡した。手本を見せる為、俺の分も取り出す。
「まず、そのブロックを持ち上げ、家の穴の空いている所に置くんだ。」
俺が置いたのを真似して、ピリンも土ブロックを穴にはめる。ピリンの置いたブロックも、俺の置いたブロックと同じように、まわりの白いブロックとくっついた。一度くっつくと、攻撃して再びアイテム化しないと持ち運ぶことは出来ない。
「これで、修理できたの?」
「バッチリだぞ。残りの穴も埋めてしまおう」
ピリンと俺は、一つずつ穴を埋め、白い家の修復を終えた。この家が、俺たちの寝室になるだろう。
「家が直ったね!雄也、今日からここで暮らそうね!」
自分たちの力で復興させていくのは、やはり達成感があるな。だけど、天井がないのはやはり気になる。
「この家、天井がないけど大丈夫なのか」
そうつぶやくと、ルビスが答えてくれた。
「この地方では雨が降らないので、無くても大丈夫です。」
そういえば、ドラクエでは全く雨が降らない場所ってあるけど、本当にそうなのか。でも、雨が降る地域もあるだろうから、その時は必要だな。
俺が精霊と話していると、心配そうなピリンの声が耳に入った。
「ねえ、雄也?」
「ピリン、どうしたんだ?」
「大丈夫?ぼおっとして、口が半開きになっていたんだけど」
え!?俺はそんな状態になっていたのか?ぼおっとして口が半開きとか、頭のおかしい人に思われてしまいそうだ。どうやらルビスと話している時はそんな表情になるらしい。なるべくルビスには話しかけないようにしよう。
「大丈夫だ。たまにこうなるかもしれないけど気にしないでくれ」
「分かった。それより雄也!せっかく家が直ったんだけど、真っ暗な夜を照らす、明かりが必要だと思うの」
それを言いに来たとき、俺のおかしい表情が見えたってことか。確かに、昼間でさえ地球より暗いのに、さらに夜になったら何も見えなくなるほど暗いだろう。
「この辺にたいまつは落ちてないよね。なんとかならないかな?」
たいまつが落ちてるとかあり得ないと思うが。それにしても、この世界の人はたいまつのような簡単な道具も作れないのか。深刻だな。
「ここらにあるもので、たいまつを作れたらいいんだけどな」
それを聞いて、ピリンがとんでもないことを言った。
「ものを、つくる?つくるってなあに?」
そういえば、ゲームでも言っていたけど、この世界の人々はものをつくることが出来ないのではなくものをつくることの記憶もないんだったか。
俺が実際に作って見せれば、ピリンも分かってくれるかもしれない。
確かたいまつは太い枝と青い油、一つずつ必要だったな。
「じゃあ、俺がお前にものをつくるということを教える。ちょっと待っててくれ」
俺が素材を調達しに行こうとすると、またしてもルビスの声が聞こえた。
「この世界の人々は、ものをつくることの概念の記憶もないのです。この太い枝と青い油を使い、たいまつを作り、彼女に見せてあげましょう。」
目の前に太い枝と青い油が落ちてきた。分かっていることばかり話していたが、素材をくれる
のはありがたい。ピリンが見ていないところなので、頭のおかしい人にも見られなかっただろう。
俺はメルキドの跡地にある石の作業台に太い枝と青い油を乗せた。このポーチは青い油のような液体も入れられるらしい。俺はたいまつになるよう、二つの素材に念をかけた。すると傷薬を作ったときのように勝手にたいまつができあがる。しかも火のついた状態のものが5個も出来た。
「魔法の力って本当にスゴいな」
これが便利すぎて、日本に帰りたくなくなってしまう。そういえば、もの作りの魔法はピリン
たちは使えるのだろうか。今は一人なので、ルビスに聞くことにした。
「ビルダーの魔法って、みんなが使えるのか?」
「いいえ。ですが、もの作りの力を取り戻せば、手動で物を作ることはできます。」
一応、作ることはできるのか。俺はたいまつをさっそく一本を家に置き、ピリンに残りのたいまつを見せることにした。
「おいピリン。たいまつを用意できたぞ」
「どこから持ってきたの?」
やはり、作ったということは考えていないようだ。
「持ってきたんじゃない。俺が太い枝と青い油を素材にして作ったんだ」
「雄也が、つくった···?」
ピリンは、しばらく考えたあと、何か分かったようだ。
「そっか。素材を使って、新しい物を生み出す。それが物を作るってことなんだね」
「よく分かったな、ピリン。お前も出来そうか?」
「うん。わたし、頑張ってみるね!」
ピリンは、もの作りの概念を覚え、同時にもの作りの力も取り戻したようだ。こうやって、もの作りの力を復活させて行けと言うことか。
「それと、もう家の中にたいまつを置いた。これで夜も明るくなるだろう」
「やったね。夜を照らす明かりが出来たし、次は寝る場所が必要だよね」
せっかくたいまつを置いたと思ったら、まだ寝室に必要なものが無かった。ゲームではわらベッドという物があったが、緑色の草が急に干し草になるのはあり得ないので、魔法の力がないと作れなさそうだ。
俺は廃墟に生えている緑色の草、じょうぶな草を6つ拾い、作業台に乗せ魔法をかけた。
そして、わらベッド2つに変化した。
「わらベッドを2つ作って来たぞ。これで二人で寝られる。」
「この辺りにわらなんてあったっけ?」
ピリンには、ビルダーの魔法のことは教えていなかったな。
「俺はもの作りの魔法が使えるらしいんだ。それを使ったら、草が急に干し草に変化したんだ」
「え、雄也って魔法も使えるんだ!スゴいね!でも、魔法がないと作れないの?」
わらベッドはそうだろうが、緑色のベッドなら手動でも作れそうだ。草を編みあわせてベッドの形にすれば、草のベッドが作れるだろう。
「わらベッドじゃないけど、緑色のベッドなら、ピリンでも作れるよ。もし他の人が来たら作ってあげてみたらいいんじゃないか?」
「分かった!今度作って見るね」
ピリンなら出来るだろう。俺たちはその後、完成した寝室で休んでいた。夕方になると、俺は腹が減って来た。
「今日は大変な1日だったね。雄也と出会ったり。ものを作ることを教えてもらったり。それでね、忙しかったから、お腹がすいて来ちゃった」
ピリンも、同じことを考えていたようだ。
「実は俺も腹が減っているんだ。」
「この辺の木の下に、モモガキの実って言う木の実がなってるの。一緒に取りに行かない?」
もう夕方だが、夜になるまでは時間がある。
「取りに行こう。だけど、夜になる前に戻るぞ」
俺たちは、拠点の近くの木の下を探した。そこには、ピンク色の柿が3つ落ちていた。桃色の柿だからモモガキと言うのか。
「これがモモガキの実だよ。わたしは一つで良いから、雄也は2つ食べてね」
ピリンも腹が減っているはずなのに譲るとか、いい子だなあ。俺だったら自分が多いほうを選ぶ。
俺はそのモモガキの実を食べてみた。小さいので大して満腹にはならないが、かなりうまい。
「これはあまりお腹いっぱいにならないけど、とっても甘くておいしい実なんだ」
俺たちは仲良くモモガキの実を食べた。俺は女の子と一緒に食事をするのは初めてだ。疲れた時に女の子と一緒に食べたので、より美味しく感じられた。
「美味しかったね!もうすぐ夜になるから、家に入らない?」
「ああ、そろそろ戻ろう」
モモガキの実を食べ終えた頃にはもう暗くなってきていた。俺たちは部屋に戻り、ベッドに横になった。
「お休み、雄也」
「また明日、がんばろうな」
疲れていた俺たちは、すぐに眠りに入った。