ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
地面に叩きつけられた痛みで意識を失いそうにもなるが、俺は残った気力で耐え続けてエンダルゴの方を見る。
ここまで追い詰めたのに負けるわけにはいかない…そう言う思いで、もう一度立ち上がろうとしていく。
「何とか立って、あいつを倒しきらないと…!」
さっきの呪文で自身も大ダメージを受けたものの、エンダルゴはまだ俺たちを睨んで、次なる攻撃を放とうとして来ていた。
だが、先ほどの戦いで受けたダメージもあり、脚にどれだけ力を入れても立ち上がることは出来ない。
ゆきのへたちも全身に深い傷を負っている状態であり、誰1人として戦える状態ではなかった。
爆発からは生き残ったもののそんな状態になってしまった俺たちを見て、エンダルゴはとどめを刺そうとして来る。
「ここまで我を追い詰めることは想定外だったが、所詮は人間だ…闇の力に呑まれて、絶望の中で死んでいくがいい!」
エンダルゴはそう言うと、自身を構成している闇の力を目の前に集中させていく。
今までのどの攻撃よりも大きな闇の力だったが、奴はそれを爆散させるのではなく、俺たちの肉体を侵蝕させようとして来た。
オーレンたちの時と同じで、苦痛の中で死んでいけと思っているのだろう。
このままだと俺だけではなく、ゆきのへたちまで奴に殺されてしまうな…。
「くそっ…また俺のせいで、仲間たちが…」
俺は自身の力不足でルビスを死なせてしまったことを、ずっと悔やみ続けていた。
その償いとして自分の身を危険に晒してまでエンダルゴと戦いに来たのに、また自分の力不足のせいで、仲間たちを死なせてしまうことになる。
それに、俺たちがここで死んでしまったら、必ず生きてラダトーム城に戻るという約束も果たせなくなってしまう。
「何とか…この状況を覆す物はないのか…?」
目の前の仲間を守れず、町で待っている仲間との約束も果たせない罪深いビルダーのまま、俺は死にたくない…何とかして、この状況を覆さなければいけない。
だが、どんな思いがあったとしても、重傷を負った身体が動くようになるということはなかった。
最後まで抵抗を続けたビルダーが動きを止めたことで、エンダルゴは勝利を確信する。
「ビルダーも仲間どもも、やはりもう立ち上がれぬようだな…貴様らに生き残る道はない、これで分かっただろう」
「くそっ、ここでもう終わりなのか…?」
エンダルゴの前に満ちている闇の塊も、だんだん大きくなって来ていた。
絶望の淵に立っている俺の頭の中には、今まで復興させてきた町の人々の顔が浮かんで来る。
彼らのためにも、俺はここで死んでしまうわけにはいかない。
生き残らなければいけないという思いにより、もういないはずのルビスの声が聞こえたような気もした。
「雄也よ…まだ、倒れる時ではありません。さあ、立ち上がりなさい」
絶対に生きてラダトーム城に戻るという強い意志を持ち、俺はこの状況を覆せるものがないかと考えていく。
意志だけではどうにもならないことであっても、何かの道具を使えば状況は変わるかもしれない。
そう思って必死に考えていくと、俺はリムルダールで手に入れた、謎の薬を思い出した。
「これを使えば、もしかして…!」
鍵のかかっていた建物の中の宝箱にあった、聖なるしずくとも清めの光薬とも違う、不思議な光を放つ薬。
どういった薬なのかは分からないが、強力な効果がありそうな見た目をしていた。
これを使っても俺の傷が回復するかは分からない…だが、他に助かる道はないのでこれに賭けるしかなかった。
「頼む…これで立ち上がれるようになってくれ…」
エンダルゴはもうすぐ力を溜め終わる…これでもだめなら、俺もゆきのへたちももう終わりだ。
立ち上がれるようになることを祈って、俺はその謎の薬を飲み干していった。
そうすると、俺の身体中に出来た傷は全て治り、痛みもだんだんと消えていった。
戦いの末に消耗した体力も回復し、戦いが始まった時と同じくらいにまで戻る。
そして、これなら立ち上がれると思い、俺は両腕に武器を構えて立ち上がっていった。
「痛みも消えたし、力も戻ってきた…これなら勝てるぜ!」
「馬鹿な…ここまでの傷を負って、なぜ立つことが出来る…!」
俺たちを後少しのところまで追い詰めたところで予想外の出来事が起こり、エンダルゴは驚く。
奴は俺の飲み干した薬の容器を見て、俺も聞いたことのない薬の名前を言った。
「それは世界樹の葉から作られたという、せかいじゅの薬…まさか、この時代に現存していたとは…」
せかいじゅの薬か…まだ聖なるほこらの跡地に世界樹があった時代の人々が、後世の人々のために作り、あの建物に隠したみたいだな。
何かの役に立つと思ってずっととってきていたあの薬が、こんなところで俺を助けてくれるとはな。
この薬を残してくれた古代の人々に、感謝しなくてはならなさそうだ。
俺は体勢を立て直すと、武器を構えてエンダルゴに近づいていった。
「一時はどうなるかと思ったけど、ここから逆転してやるぜ」
「せかいじゅの薬が現存していたことは予想外だが、回復したところで無駄だ。闇の力に蝕まれ、死んでいくがいい!」
エンダルゴも溜まり切った闇の力の塊を放ち、俺たちを侵蝕して来ようとして来る。
それを見てすぐに俺はポーチから砦のカベをいくつも取り出し、エンダルゴと自分の間に置いていった。
闇の力の塊にぶつかって砦のカベは壊れるが、それによって俺たちのところまで攻撃が届くことはなかった。
「これ以上あんたの闇の力で、みんなを死なせたくはない。今度こそあんたを倒して、ラダトーム城のみんなのところに戻るぞ!」
「もう少しのところだったが、防がれてしまったか…。だが、起き上がったのは貴様のみ…我の残った力でも始末できよう!」
エンダルゴは両腕を振り上げ、俺たちのところに届かなかった闇の力を回収していく。
俺はその隙に腕輪の力を使って一気に近づき、両腕の武器を叩きつけていった。
エンダルゴの前脚を叩き潰し、深く貫いていく。
一度攻撃した後もすぐに剣とハンマーを振り上げて、連続で攻撃していった。
「こいつもかなり弱っていそうだし、このまま攻撃を続けて倒してやるぜ」
「何度でも近づいてくるか…どこまでも厄介な存在だ、ルビスが残したビルダーというのは!」
エンダルゴもそう言って、爪や剣を振り回して、俺を攻撃して来ようとして来る。
だが、傷が癒えて体力も戻った今の俺なら、回避しながら攻撃を叩き込むことが出来ていた。
エンダルゴは俺たちの攻撃で追い詰められている上に、さっきの大爆発でさらなるダメージも負っている。
連続で攻撃を与えると、瀕死の状態にまで追い込むことが出来ていた。
「エンダルゴを構成している闇の力も、残り僅かになっているな…」
エンダルゴを構成する膨大な闇の力…一度は人間の力では決して勝てないと思っていたものを、自らの手で消し去っていく。
身体を構成する闇の力が減ったことにより、エンダルゴの攻撃速度はかなり落ちて来ていた。
そこでさらに俺は攻撃の手を強めていき、エンダルゴの残った力を削りとっていく。
そうしていくとついにエンダルゴは立ち上がるほどの魔力もなくなり、その場に倒れ込んだ。
「おのれ、ビルダーめ…!数百年の闇の力を持ってしても、貴様を殺すことが出来ぬとは…!」
「厳しい戦いだったけど、ようやく勝ちが見えて来たな。これで終わらせてるぜ!」
本当に厳しい戦いだったが、みんなの支援と諦めずに戦い続ける心、そして古代の人々が残してくれた薬のおかげで、ここまで来ることが出来た。
これでエンダルゴに倒して、城の外で待っているルミーラたちと、後ろで待っているゆきのへたちと一緒に、ラダトーム城に戻ろう。
俺はそう思って全身の力を溜めて大きく飛び上がり、垂直に両腕の武器を思い切り叩きつけていった。
「飛天斬り!」
ふめつのつるぎから生み出された紅色の巨大な光の刃が、エンダルゴの身体を引き裂いていく。
ビルダーズハンマーのダメージも加わり、奴の前脚やドラゴンの頭の部分は原型を留めないほどに破壊されていた。
だが、それでも闇の力の集合体であるエンダルゴは普通の魔物のようには消えず、最後にこう言い残した。
「さあ、とどめを刺すがいい、ビルダー。我は闇の集合体…この世界に闇がある限り、我もまた蘇る」
確かにまだ闇の元凶であるアレフが生きているので、再び闇の力が満ちてきたらエンダルゴも復活することがあるかもしれない。
だが、俺がアレフの奴と決着をつけるので、そんなことにはならない。
「アレフの奴も俺が倒すから、あんたが復活することはない。みんなと一緒に、これからも楽しい世界を作っていくぜ」
俺は必ずアレフも倒すと言って、エンダルゴにとどめをさすために…数百年世界を支配し続けていた闇の力を祓うために、ポーチからまほうの光玉を取り出していった。
そして、エンダルゴの両翼と胴体を爆破して、跡形もなく消し去っていく。
エンダルゴが消滅したことを確認すると、俺は両腕の武器をポーチにしまっていった。
「長い戦いだったけど…終わったんだな」
エンダルゴが消えたことにより、この空間に満ちていた禍々しい気配も消えていた。
一度は絶対に勝てないと思っていた全ての闇の集合体…エンダルゴを、ついに倒すことが出来たんだな。
俺はまだ実感が湧かないが、エンダルゴを倒したのを見ていたゆきのへたちも、話しかけてくる。
「ついにやったんだな…!本当によくやったぜ、雄也!」
「最後まで援護出来なかったのは心残りだが…見事だぞ、雄也!」
「竜王様ヲ倒すダケでナク、闇ノ集合体スラ消しテしまうトは、本当に恐ろシクテ、素晴らシイお方デスね!」
重傷を負っていたゆきのへたちだが、今は何とか立ち上がれるようになっていた。
最後に俺だけでエンダルゴに立ち向かっていった時、奴の攻撃がみんなに届かないかも心配だったが、それも大丈夫だった。
みんなと一緒にこの城から出て、みんなの待つラダトーム城に戻っていこう。
「みんなの助けがあったおかげで勝てた…本当にありがとう。ピリンたちが待ってるし、早く元気な顔をラダトーム城に見せに行こう」
「ああ、一緒に行くぜ」
エンダルゴの玉座の間に、長居している理由はない。
俺はゆきのへたちに改めて感謝の言葉を言うと、来た道を引き返してエンダルゴの城から出ていく。
エンダルゴの城はかなりの大きさだが、魔物の姿はないので俺たちはすぐに外に出ることが出来た。
エンダルゴの城から外に出ると、俺たちの視界は眩しい光に包まれて来る。
「空に…光が…!」
エンダルゴが世界中の闇の力を吸収したことで、空を覆っていた闇も消え去ったようだった。
もちろん世界を創った精霊を失った空なので、かつてのような青空が戻ってくることはもうない。
だが、俺たちが見上げるこの空は、間違いなく美しく輝いていた。
ひかりのたまとルビスを失い、俺たちに光をもたらす物は何一つ存在しなくなってしまった。
魔物たちの攻撃によってせっかく作った町も破壊され、みんな悲しみに沈んでいた。
だが、そんな状況の中でも俺たちは決して諦めないことで、みんなが楽しく暮らせる世界を作り直すことが出来た。
壊れた町は何度でも作り直せる…大事なのは、そこに暮らす人間だ。
全てが無駄になったとしても…何も救えなかったとしても…世界は何度でもやり直せる、人間の復興の意志がある限り。
精霊の加護はもうない…平和が訪れることももう決してない…だが、それでも俺の目に映るアレフガルドの大地は、確かに生き続けていた。
ドラゴンクエストビルダーズ…アレフガルドの復興のための、長く苦しい戦い。
永遠に終わることがないであろうその戦いも、一つの節目を迎えようとしていた。
俺が輝く空を見て様々なことを考えていると、ゆきのへが船に乗ってラダトーム城に戻ろうと言ってくる。
「空の光が戻ったのは嬉しいが、いつまでも見とれてちゃいられねえぜ。戻るぜ、ラダトーム城に」
「ああ、もちろんだ」
俺は小舟でエンダルゴと戦いに来たので、ゆきのへたちがどこに船を止めたかは知らない。
俺はゆきのへにそう言うと、ルミーラたちの待っている船のところまで歩いていった。
ラダトーム城に戻って戦いの疲れを癒し、アレフとの最後の決戦に備えよう。
次回からいよいよ最終章に入っていきます。