ドラゴンクエストビルダーズ メタルギアファンの復興日記 作:seven river
こんな大した内容も文章力もない作品を最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
俺は魔物の楽園を後にして、ラダトーム城に戻るために積み上げたブロックを降りていく。
戦いで俺の体力はほとんど残っていないので、落ちないように慎重に進んでいった。
しばらくしてサンデルジュの砦の跡地にまで降りて来ると、俺は旅のとびらに向かって歩いていく。
「すごい高い場所だったけど、何とか降りて来られたか…旅のとびらからラダトーム城に戻ろう」
草原をうろついている魔物の数はさっきと同じで少なく、俺は腕輪の力もあって素早く歩いて進むことが出来た。
アレフが死んだとしても奴らとの戦いは終わらないだろうが、復興の意志と強力な設備を持った俺たちなら、これからも勝ち続けるだろう。
俺はそう思いながら、疲れた足を動かしていく。
「ラダトーム城に着いたら、宴の続きを楽しまないとな」
ラダトーム城では、俺の勝利を確信したラスタンたちが宴の準備をしていることだろう。
エンダルゴを倒した時の宴はあまり長く続かなかったが、今回は明け方まで楽しもう。
10分ほど歩いて旅のとびらにたどり着くと、それを抜けてラダトーム城に戻っていった。
ラダトーム城に戻って来ると、俺は旅のとびらが置いてある部屋から出て、希望のはたのところに向かっていく。
すると、そこには不安そうな顔をした、ピリンたちが集まっていた。
俺の勝利を祈ってはいたが、どうしても心配な気持ちを隠しきれないのだろう。
そこで、俺はみんなを安心させるために、アレフを倒して生きて帰って来たことを大声で伝えた。
「みんな!無事にアレフを倒して、ここに帰って来たぞ!」
俺の声を聞くと、ラダトーム城の全員がこちらの方を向く。
そして、不安げだった顔が消えて一気に笑顔になり、それぞれが俺に声をかけてきた。
「無事だったんだね、雄也…!」
「思ったより遅いから心配してたが、本当に良かったぜ」
「キミなら、絶対に生きて帰ってくるって信じてたぞ!」
アレフが闇の力を暴走させてアレフ・ガルデスになるという不測の事態も起きてしまい、ずいぶんと時間がかかったが、こうして生きて戻って来ることが出来た。
ピリンとゆきのへ、ヘイザンは俺が希望のはたのところに来るまで待ちきれず、嬉しそうな顔のまま走って近づいて来る。
3人の後ろにいるチョビたちも、俺の勝利を讃え、無事の生還を喜んでいた。
「さすがデス、雄也ドロル!」
「どんな強い敵だとしても、心配は無用だったみたいだね」
「ボクも雄也が戻って来てよかったよ…!」
俺も、ラダトーム城に戻り、みんなの笑顔を再び見ることが出来て本当に良かった。
ローラ姫たちも俺の帰還を喜んでいるだろうが、彼女らの声を聞く前にピリンに話しかけられる。
「生きて戻って来てくれて、本当に嬉しいよ…!これで、大きな用事はみんな終わったんだね…!」
「ひとまずのところはな。でも、しばらくの間は大きな用事は出来ないと思うから、ピクニックに行けると思うぜ」
アレフとの戦いの前も、この用事が終わったら二人でピクニックに行こうと言っていたな。
もう世界に平和が戻ることはない…また大きな用事が、厳しい戦いが幾度となく待ち受けているかもしれないが、しばらくの間は大丈夫なはずだ。
二人でのピクニックにも、きっと行けることだろう。
「それなら、私が雄也のために美味しい料理を作ってくるから、楽しみに待っててね」
その時には、さっき言っていたモモガキの実だけでなく、ピリンの手料理も食べられそうだ。
最初は料理とは思えない謎の物体しか作れなかったピリンだが、2度目のメルキドの復興の中で彼女が作ったハンバーガーは、とても美味しかった。
「ああ、すごく楽しみだぜ」
二人で一緒に手料理を食べるのが、今から楽しみだ…俺はピリンにそう返事をした。
ピリンとの話の後、ゆきのへとヘイザンも改めてアレフへの勝利を喜んで、感謝の言葉も言ってくる。
「本当に見事だぜ…雄也。お前さんのおかげでワシはアレフガルド中を巡り、鍛冶屋としての腕をさらに高めることが出来た。弟子のヘイザンも一人前になったし、感謝してるぜ」
「ワタシからも言うが、本当にありがとう、雄也」
「こっちこそ、今までアレフガルドの復興を手伝ってくれてありがとう。二人の応援、戦いの時の支援、考えてくれた武器…それらがなければ、俺は厳しい戦いを生き延びられなかった」
アレフガルドの復興を通してゆきのへ自身の腕も成長し、ヘイザンは伝説の鍛冶屋を継ぐにふさわしい一人前になった。
俺も鍛冶屋の二人のおかげで、ここまで勝ち残ることが出来た…いくら感謝しても、しきることは出来ない。
これからのアレフガルドの復興でも、彼らと協力して物を作り続けていこう。
そう思っていると、ゆきのへはそろそろ鍛冶屋を引退しようかとも言ってきた。
「そうだ、雄也。ワシももうかなりの年だ…ひとまずの厳しい戦いも終わったことだし、そろそろ鍛冶屋を引退しようと思う」
「そんな話もしていたな…引退した後は、リムルダールで農業をして暮らすのか?」
そう言えば今までもゆきのへは、そろそろ鍛冶屋を引退して、リムルダールで農業をして暮らしたいという話をしていた。
確かな希望など何も無い世界ではあるが、幸せな余生を過ごせるといいな。
「ああ。ワシの家系の技術も、ヘイザンが受け継いでくれるからな…農業をしながら、ゆっくり過ごそうと思うぜ」
「親方から一人前の鍛冶屋としては認められたけど、さらなる高みを目指して、これからもワタシは修行をしていくぞ」
ヘイザンの鍛冶屋の腕も、これからさらに上がっていくだろう。
また新たな武器が必要になった時には、ヘイザンのところに相談しに行こう。
「ヘイザンなら、きっと最強の鍛冶屋になれると思うぜ」
俺はヘイザンにそう言うと、希望のはたのところに立っているローラ姫のところに向かう。
アレフの悲劇をもう繰り返さないようにみんなに言ってから、勝利を祝う宴を楽しもう。
ローラ姫やムツヘタも、近づいて来た俺の勝利を祝っていた。
「私からも言いますが、アレフと決着をつけて下さってありがとうございます…最後まであのお方を連れ戻せなかったのは残念でしたが、とても感謝しています」
「宴の準備はもう出来ておる…今夜は、朝日が登るまで楽しむのじゃ」
みんなのおかげで、宴の準備ももう出来ているみたいだな。
ローラ姫にとっては結局アレフを助けられなかったのも心残りのようだが、これで人々の脅威は去ったと喜んでもいる。
勝利の喜びに満ちているラダトーム城のみんなに、俺は頼み事をした。
「宴を始める前に、一つ頼みたいことがある。みんな、聞いてくれるか?」
「どうしたのですか、雄也様?」
勇者の伝説というものがある以上、これからも勇者として導かれる者が現れる可能性がある。
そうなれば、またその勇者もアレフと同様に、苦しみの果てに世界を裏切ってしまうかもしれない。
その悲劇を生まないためには、勇者の伝説をなくしてしまう他ないだろう。
「アレフは勇者に選ばれたことで、人々から世界を救うための存在としか見られなくなり、人々に嫌気がさして竜王に寝返った。俺たちは、このようなことを繰り返さないようにしなければいけない…でも、俺たちの時代は大丈夫でも、未来の世代はまた誰かを勇者として持て囃してしまうかもしれない。…だから、勇者とビルダーの伝説をなくして欲しいんだ」
これから生まれて来るであろう次の世代に勇者の伝説を語り継がず、俺たちの世代で消し去ってしまう。
勇者の伝説がなくなれば、もう2度と勇者として選ばれる人間はいなくなるはずだ。
「確かに勇者の伝説が消えれば、アレフ様のような方はもう現れないでしょう。ですが、ビルダーの伝説もですか?」
「ああ。俺はみんなと仲良く協力しながらアレフガルドを復興出来たけど、次の世代はどうなるか分からない」
俺はアレフのようにはならなかったにしろ、ビルダーも人々の希望を背負わされた存在というのは変わらない。
ビルダーの伝説も、勇者の伝説と一緒になくしてしまった方が確実だろう。
伝説のビルダーとして語り継がれたいという思いもなくはないが、未来の世代の人々の方が大事だ。
「勇者もビルダーも、もう現れない世界か…ワシも、どのような世界になるか想像がつかぬな」
伝説をなくすという話を聞いて、ムツヘタはそんなことを言う。
人々の希望を背負った存在がいなくなるというのは、不安なところもあるかもしれない。
だが、人々が力を合わせて戦い続け、物を作っていけば、勇者やビルダーがいなくても、きっとこのアレフガルドの大地を守っていくことが出来るだろう。
「確かに不安はあるかもしれないけど、人々が力を合わせて戦えば、どんな敵が来ても負けはしないと思うぜ」
「私もかつては世界を救うのは勇者の役目だと思っていたが、今回の戦いを通じて、誰であっても強大な敵を倒せる可能性があることを思い知った。私もアレフを追い詰めた1人として悲劇を繰り返さぬようにしなければならぬし、雄也の意見に賛成だ」
勇者でなくても竜王やエンダルゴを倒すことは出来たし、ビルダーの俺がいない間もラダトーム城のみんなは城を壊されるとその度に作り直し、戦い続けることが出来ていた。
ローラ姫も言っていたが、勇者だから何かを成すのではなく、何かを成したから勇者である…これからは、そんな時代を作っていこう。
姫やラスタンは俺の意見に賛成であり、みんなにも異論はないか聞いた。
「私もアレフ様のような方をもう出したくないので、雄也様の意見に賛成します。皆さんはどうですか?」
「もうこんな悲劇は起こしたくねえし、もちろん賛成だ。みんなもそうだろ?」
すると、まず最初にゆきのへがそう言って、それに続いてみんなもうなずく。
最も勇者やビルダーの責務にこだわっていたムツヘタも、反対することはなかった。
「若干の不安はあるが、ワシもお主たちがいくつもの強大な敵を倒して来たのを見た…勇者やビルダーがいなくても、大丈夫だと思うのじゃ」
これでみんなが賛成したことだし、勇者とビルダーの伝説はもう語り継がれないことになる。
これから先は誰かに厳しい戦いを押し付けるのではなく、1人1人が力を出し切って戦いを挑む世界へと変わっていくだろう。
アレフガルドを復興し続けて、勇者やビルダーがもう2度と現れない世界を作るなんて、思ってもいなかったな。
俺の頼みを聞き入れた後、みんなはいよいよアレフを倒したことを祝う宴を始めようとする。
「どうやら、皆さんも賛成ですね。勇者やビルダーがいなくても素敵な世界は作れると、私は信じております。…一つの大きな戦いは終わりましたが、この先もいくつもの厳しい戦いが待ち受けていることでしょう。その戦いに備えるためにも、今日は宴を楽しみましょう」
「昨日の宴は早く終わっちゃったから、今日は夜遅くまで楽しまないとね」
ローラ姫に続いて、ピリンもそう言った。
勇者とビルダーの伝説をなくすこと以外にもしなければいけないことはたくさんあるが、まずは今日の宴で戦いの疲れを癒そう。
「これからのことは明日考えるとして、俺もたくさん盛り上がるぜ」
今まで通りあまり大規模な宴は出来なかったが、俺たちはたくさん会話をして、用意された料理を食べた。
ひとまず人々の脅威となる存在はいなくなり、みんなも傷が癒えて来ているので、昨日よりも盛り上がっている。
エンダルゴやアレフがいなくなったところで、この世界に確かな希望はない…だが、みんなとの楽しい時間が、それを少しは忘れさせてくれていた。
その勢いは深夜になっても衰えず、翌朝になるまで勝利の宴は続く。
宴がお開きになった後はこれからのアレフガルドの復興を考えながら、俺たちは眠りに着いた。
先ほどローラ姫が言っていた通り、これからも俺たちは厳しい戦いを生きぬかなればいけないだろう。
激しい戦いの中で、せっかく作った町や城がまた壊されてしまうことがあるかもしれない。
だが、その度に俺たちは復興の意思を持ってブロックを積み上げ、アレフガルドの発展を続けていく。
破壊と再生を繰り返しつつ、この世界はこれからもずっと生き続けるはずだ。
確信を持つことは出来ないが、俺はそう強く信じ続けていた。
アレフとの決着から数日後…メルキドの町近くの岩山の上
アレフとの戦いの疲れも癒えて、俺とピリンはゆきのへとヘイザンをリムルダールに送った後、メルキドの町に戻って来ていた。
そして、宴の前の約束通り、二人でピクニックに来ている。
「うわあ、こんな眺めのいい場所があったんだ。ここからならメルキドの町も森も見えるし、美味しく食べられそうだよ!」
「俺もここに来るのは初めてだけど、確かにいい眺めだな」
岩山の上からメルキドの町やその周りの町を眺めて、ピリンはそう言う。
この岩山はメルキドの町の東にありながらも来るのは初めてだが、こんなに景色がいいとはな。
メルキドの町はロロンドたちのおかげでさらに大きくなり、ゴーレムの力で魔物たちから守られている。
発展したメルキドの町を見ていると、ピリンは嬉しそうだが、少し不安そうでもある顔になった。
「メルキドのみんなが仲良くなって、町も大きくなって本当に良かったよ。…でも、怖い魔物はまだたくさんいるし、また大きな戦いがあるかもしれないんだよね…」
「まあ、それは避けられないな」
メルキドの町の周りにはまだドラゴンがいるし、魔物との戦いは終わることはない。
ピリンも俺と同様に、これからの世界がどうなるか心配しているみたいだな。
みんなが楽しく暮らせる世界を追い求め続けるピリンだが、その夢が叶うという保証はない。
「雄也…わたし、これからもみんなが仲良く暮らせる町を作れるのかな?」
「俺にも分からない…でも、俺たちとピリンならきっとうまくいくと思うぞ」
でも、世界から光が消えた後でも希望を捨てず、仲良く町を作り続けて来た俺たちなら、必ず作り続けられるはずだ。
発展したメルキドの町を見ると、そういった思いが強くなって来ていた。
ピリンも不安な気持ちを振り払い、持って来た食べ物を俺と一緒に食べようとする。
「そうだといいね。…それじゃあ、持って来たハンバーガーを一緒に食べよっか!」
「ああ、そうしよう」
今日持って来たのはいくつかのモモガキの実と、ピリンの手作りのうさまめバーガーだ。
うさまめバーガーはメルキドの2度目の復興の時も作ってくれていたが、あの時よりもピリンの料理の腕前は上がっているだろう。
俺はピリンのハンバーガーを手に取って、景色を眺めながら食べ始める。
すると、以前よりも肉の食感が柔らかくなっており、パンもとても食べやすい形になっていた。
料理が上手くなったことで味もさらに良くなり、一口食べただけで口の中に美味しさが広がっていた。
肉と一緒に俺の好物である枝豆も食べることができ、このピクニックに来ることが出来て本当に良かった思えるほどだ。
「どう、美味しい、雄也?」
「ああ。この前のうさまめバーガーも美味しかったけど、もっと上手になってるぜ」
感想を聞いてきたピリンに、俺はそう答える。
ピリンのハンバーガーと一緒に、俺は持って来たモモガキの実も食べていった。
モモガキの実は小さくてお腹はふくれないが、甘くて美味しい木の実だ。
メルキドの町を眺めながら食べていると、これからもアレフガルドの復興を頑張らなければならないという気持ちが強くなる。
「本当に美味いな…。これで元気をつけて、また世界を作り続けないとな」
ルビスが死んでしまった以上、俺は生涯アレフガルドで暮らしていくしかない。
だが、この世界にはたくさんの仲間たちがいる…元の世界に帰るという選択肢があったとしても、俺はこちらに残り続けていただろう。
みんなの笑顔を見るために、そして、世界の光を守れなかった罪を償い続けるために、出来る限りの物作りをしていく。
世界は、ブロックで出来ていた。
さあ、アレフガルドを創りなおす冒険へ旅立とう!