提督は今日も必死に操を守る   作:アイノ

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だいぶ遅くなりましたが、投稿再開します。
龍二や艦娘の性格が違う!等あるかと思いますが、ブランクのせいという事で1つ……


第17話 その2

若干足取りは重いながらも、会場となる食堂前までやってきた。

時間は一九一〇。予定より10分ほど遅れてしまった。

ふと扉の前に視線を向けると、壁に寄りかかりながら立っている少女が1人。

 

「やあ司令官、やっと来たね」

 

「響か。わざわざ外で待ってなくてもよかったのに」

 

「なに、待つことには慣れてるから大丈夫。それに主役が来ない事には宴会も始まらないからね」

 

「あー、ちなみにここで言う主役って……」

 

「もちろん司令官のことさ」

 

首を傾げながら「何を今さら」とでも言いたげな表情を向けてくる響。

おかしいな、一応表向きは「艦娘同士の交流を深める」為の宴会の筈なのだが、いつの間にか主役にされていたでござるの巻。

 

「さあ、早く入ろうか。みんな待ってるよ」

 

「あ、ああ……」

 

そう言いながら自然に手を繋ぎ、食堂へと引っ張られる。

帽子を深々と被り直してはいるが、少し頬が赤くなっているのが隠しきれていない。

意識しないようにとは思うのだが、こういうクールな子が見せる照れ顔等のギャップは破壊力が高く、どうしても意識してしまう。

これがギャップ萌えというやつか……

 

そんな事を考えながら食堂の扉を開くと、宴会の開始を今か今かと待ちわびている艦娘たちの視線が一斉にこちらに集まる。

……響と繋いでいる手あたりに一部の艦娘から強烈な視線を浴びている気がするが、きっと気のせいだろう。

 

「すまない、遅くなった」

 

「待ちわびましたよご主人さま~!もうお腹ペコちゃんです」

 

「全く……上に立つ人間が時間にルーズでどうするのよ」

 

「悪かったって……」

 

「提督もお忙しい中来てくれたのですし、そろそろその辺で…」

 

食堂に入るなり叢雲に叱責され若干凹むも、神通のフォローでなんとか持ち直した。

自身も待ちわびたはずなのに、こちらを気遣ってくれる辺り心根の優しい子である。

もちろん漣や叢雲が本気で怒っている訳ではない事も分かっている。

 

(こんな良い子たちを邪険に扱うのはやっぱり良くないよな……)

 

最近のみんなへの態度を振り返りつつ、独りごちる。

いつまでも逃げて回っては駄目だ。命を懸けて戦いに出てくれている皆に申し訳が立たない。

 

(罪滅ぼしという訳じゃないけど、今日は今までの分もみんなと接しよう。)

 

そう1人決心すると、自分用に準備されていた席へと移動する。

席についたと同時に、いつの間にかスタンバっていた青葉が宴会の開始を告げる。

 

「ではでは、新参者で恐縮ですが司会進行を務めさせていただきます!」

 

どうやら今回の宴会は、青葉が司会進行を務めるようだ。

普段から記者のような振る舞いを見せているだけに、こういった役も様になっている。

 

「早速乾杯の音頭を……司令官、お願いします!」

 

「お、俺か?まあいいけど……」

 

いつの間にか注がれていたビールを手に取り、みんなの前へと向かう。

こういう事に慣れていない為、みんなの視線にさらされ一瞬気後れするが、情けない姿を晒さぬよう何とか立ちなおす。

 

「えー、堅苦しいのもアレなので手短に……」

 

一度言葉を止め、息を吸い直す。

 

「運営が始まったばかりの鎮守府、そして経験乏しい新米提督という事でいろいろと迷惑をかけているけど、みんなの頑張りのお蔭でやっと安定した運営が出来るようになった。本当にありがとう」

 

「今日は無礼講という事で、普段あまり接することのできない子達とも積極的に接していきたいと思う。今後もみんな一丸となって作戦に臨めるように、今夜はお互いの親睦を深めていこう!では…乾杯!!」

 

「「「乾杯!」」」

 

宴会の開始を告げ、掲げたコップのビールを勢いよく飲む。

炭酸の爽快な刺激と、爽やかな苦みが喉を満たしていく。

久しぶりに飲んだビールは、今まで飲んだビールより美味しく感じられた。

 

 

 

 

「でだ……どうしてこうなった?」

 

「さぁ提督……次発装填済みですよ♪」

 

「ねぇあんた……こっちむきなさいよ……んふふ♪」

 

「漣は悪い子なんです……だからお仕置きしてください、ご主人さま♪」

 

「と、とりあえずみんな1回離れようか……」

 

ねっとりと纏わりついてくる彼女達をやんわりと引き剥がしつつ、龍二はため息を吐いた。

今日ほど酒の力が怖いと思った事は無い。

 

「あん……♪そんなに乱暴にしたら、艦載機が発進できないですよ……?」

 

「ねぇ提督ぅ~……卵焼きだけじゃなくて、瑞鳳の事たべりゅ?」

 

「おーさすが司令官。いい絵が撮れますね~!」

 

「祥鳳、艦載機は発進させなくていい。しまっておいてくれ……。瑞鳳、俺はもうたらふく食べちゃったから遠慮しておくよ。あと青葉はネガよこせ!」

 

普段は大人しい子なんかもだいぶ豹変している。

一部シラフっぽい子もいるが……

でも一応これでも落ち着いた方ではあるのだ。

 

先ほどまでは、響がウォッカの押し売りをしながら皆に絡んでいたり、榛名が「榛名は大丈夫です!」と言いながら服を脱ぎ始めたりとそれはも大変な事になっていた。

 

「ほら、敷波も司令官に甘えて来たら?」

 

「べ、別に甘えたくなんか……」

 

「ほんに主様はモテモテじゃのう。じゃがもう少しわらわにも構ってくれてよいのじゃぞ?」

 

「てーとく、あたし的にももっと構ってくれないとOKじゃないです!」

 

「顔が真っ赤だよ司令官!照れてるのかい?かわいいね!」

 

思わず「お前の方が可愛いよ!」と言いたくなるのをグッとこらえる。

言ったら言ったで絶対面倒なことになるにきまってる。

 

「ええい、1回はなれてくれ~!!」

 

そんな叫びも空しく、さらに艦娘達にもみくちゃにされていく龍二。

そんな彼を遠くから見つめる視線が3つ。

 

「さすが提督、好かれ方が尋常じゃないですね…」

 

「間宮さん、このままだと提督取られちゃいますよ!?」

 

「まあまあ、落ち着いて明石さん。夜はまだまだ長いんですから…♪」

 

比較的余裕を見せているのは、鎮守府内でも大人な方である大淀、明石、間宮である。

 

「駆逐艦の子達はそのうち疲れて寝ちゃうでしょうし……そこからが大人組の腕の見せ所ですよ♪」

 

「さ、さすが間宮さん……」

 

「私達も乗っかるしかありませんね、明石さん」

 

そんな彼女たちの目の前で響き渡るは、みんなの誘惑に慌てふためく龍二の悲鳴。

各々いろいろな思惑が重なりながら、夜はふけていく……

 




2話で終わらなかったので、3話構成になりました。
今後も1日1話は無理そうかもしれません。

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