提督は今日も必死に操を守る   作:アイノ

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かなり遅くなりましたが、投稿を再開します。
予定通り火曜日に上げようと思ったのですが、なかなか執筆が進まず1日遅れに……
申し訳ありませんでした。


第22話

不知火と響に(性的な意味で)襲われた日の翌日。

龍二はいつも通り書類仕事をしつつ、本日の秘書艦である神通の帰りを心待ちにしていた。

不知火の次に建造していた艦娘が完成したと工廠から連絡があり、しかも今度はバッチリ潜水艦の艦娘が建造出来たとの事なので、喜々として工廠に向かおうとした矢先に大本営からの電話である。

しかも内容はこちらの近況を報告せよというもの。

日報やら何やらは毎日送ってるのに何の意味が……とも思ったが、どうせ大本営のお歴々方は日報なんかいちいち目を通してはいないだろうし、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。下っ端の辛い所である。

そういう訳で、代わりに神通に迎えをお願いした次第だ。

 

(潜水艦の艦娘か……どんな子だろうか?)

 

潜水艦=隠密行動が得意=ニンジャ=アイエエエェ!?という意味不明な方程式が頭の中で展開されている時、ふいに執務室のドアをノックする音が聞こえた。

音が小さめで3回……神通だな。

最近は、ノックの仕方や音で誰が来たのかが大分分かるようになってきたが、その中でも神通は特に分かりやすい。

他にも、強めに2回叩く叢雲や、トントトトントンとリズム良く叩く漣等も分かりやすい。

 

「提督、新しい方をお連れしました」

 

「どうぞー」

 

予想通り神通の声が聞こえて来たので入室を促すと、神通とその後ろから1人の艦娘がついてきた。

 

「はじめまして……って、すごい服装だな」

 

「初めまして司令官!伊168です。呼び難かったらイムヤって呼んでください!あとこの服装は……潜水艦だから、かな?」

 

赤いポニーテールを揺らしながら、イムヤが首を傾げる。

本人もイマイチ理由がはっきりしていないようだが、彼女の服装はスクール水着に上だけセーラー服を着ているという、なんというかその筋のフェチズムを詰め込んだような恰好だった。

初めて潜水艦の艦娘を目の前にしたら、恐らく誰しもが龍二と同じ反応をしただろう。

 

「すまん、初めての潜水艦だったので面食らってしまった。改めてイムヤ、当鎮守府へようこそ。この鎮守府で提督をやってる須藤龍二だ。よろしくな」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

「まだまだ人数の少ない鎮守府で、提督である俺はまだまだ駆け出し、しかも潜水艦はイムヤが初めてという状態だから、間違った指示を出してしまうかもしれない。そういう時は遠慮せずに言ってくれ」

 

「了解です!」

 

「じゃあ神通、イムヤに鎮守府の説明をしてやって欲しいんだが」

 

「了解いたしました。ではイムヤさん、行きましょうか」

 

「はーい」

 

こちらに手を振りながら執務室を後にするイムヤに手を振り返し、ドアが閉まるのとほぼ同時に腰を下ろす龍二。

潜水艦は特殊な艦だとは聞いていたが、まさか服装まで特殊だったとは……

 

(あの服装のチョイス……まさか大本営の意向、なんてことは無いよな?)

 

先ほどのタイミングの悪い電話の恨みも乗せつつそんな事を考えるが、もちろん冗談である。

そんな事ができるのならば、わざわざ妖精の見える一般人を探して、強制的に提督業へと就かせる必要もないだろう。

まあ要するに、冗談でも言いたくなる位には衝撃的な服装だった、という事だ。

 

「さて、今夜の準備に取り掛かりますか」

 

最近何かと宴会を開いている気がするが、仲間が増えた時位はいいだろう。

もちろんこの前のような惨事にならないよう、酒の持ち込みは死守するが。

艦娘達からブーイングが飛びそうではあるが、貞操の為なら仕方あるまい。

それに、どうせ宴会後に適当にバラけて、それぞれ別の部屋で2次会でも開くだろう。その時に好きに飲んでもらえばいい。

ここに居たままあーだこーだと考えてても始まらないので、とりあえず食堂へと向かう事にする。

目指せ非酒三原則である。

 

 

 

 

龍二の挨拶、不知火とイムヤの自己紹介と続き、乾杯の合図で宴会が始まった。

結論から言えば、予想に反して皆からの反発は少なく、あっさりと酒無しの宴会が始まった。

龍二が無意識に言い放った「酒が持ち込まれたら即帰る」の一言があったからなのだが、当の本人は全く気付いていない。

 

「司令、ウーロン茶ですがお注ぎします」

 

「ありがとう不知火。どうだ、馴染めそうか?」

 

「お気遣いありがとうございます。皆さん親切にしてくれますし、問題ありません」

 

「そうか、それなら良かったよ。私生活でも任務の時でも、もし気になる事があればどんどん言ってくれ。俺だけだと気付ける部分が限られちゃうからな」

 

「分かりました……司令は本当に私達を気遣ってくださるのですね」

 

「ん、そうか?」

 

「昨日、今日といろいろな方のお話を聞いて、司令がどれだけ皆の事を思っているか、そしてどれだけ皆から好かれているかが実感できました。不知火はこの鎮守府で建造されて幸せです」

 

「そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ。ただし、昨日みたいなのはもう勘弁な?」

 

「……善処します」

 

「前半の間が気になるが……頼んだぞ?」

 

そう言いながら、無意識のうちに不知火の頭を撫でていた。

流石に「急に頭を撫でたりしたら怒られるか?」と思ったが、そんな様子は微塵も無かった。

なにせ頬を染めたまま俯き、「ぬぃ……」とか言ってるし。

なんだよ「ぬぃ……」って、新種の生き物か?……とりあえず本人は嫌がって無いようだし、まあ良しとしよう。

……周りからの視線が痛いのは、恐らく気のせいではないだろうが。

 

適度な所で話を切り上げ、もう1人の主役を探す。

本人は神通達初期組と談笑しており、早くも打ち解けたようで安心した。

漣あたりは複雑な顔をしているが、何故だろうか?

 

「やあイムヤ、早速打ち解けてるみたいだな」

 

「あ、司令官!ここの人達はみんな親切ね。あっという間に仲良くなっちゃった」

 

「神通に案内を頼んだのは正解だったようだな。ありがとう、神通」

 

「い、いえ……出来ることをやっただけですから、そんな……」

 

「そこまで謙遜しなくても……それにしても、なんで漣は不機嫌なんだ?」

 

「不機嫌と言うよりは、どう接していいか分からないみたいよ。あの子、敵の潜水艦からの攻撃で沈んでるから」

 

「ああ、そういう事か」

 

叢雲曰く軍艦としての漣は、米軍のアルバコアという潜水艦により沈められているらしい。

少なくとも本人に悪気は無いのだろうが、こういう感情的な話は自分ではどうにもならないものである。

とりあえず漣と会話する為に彼女に歩み寄る。

これから仲間としてやっていく以上、わだかまりは消しておきたい。

 

「叢雲に聞いたよ。やっぱり気になるか?」

 

「ご主人さま……すいません、味方だとは分かっていますし、あの潜水艦でない事も分かってはいるのですが、どうにも感情がついてこなくて……」

 

「漣……」

 

「ま、大丈夫です!艦隊に所属する以上、いずれは通る道でしょうし。なるべく早く克服して見せますよ!」

 

「そうか……漣は強いな」

 

「な、ナデナデktkr!!」

 

普段は見る機会のない漣のしおらしい姿を見たからか、思わず頭を撫でていた。

撫でた矢先からぶわわっとキラキラし始めたのだが……なんだこれ。

 

(べ、別に羨ましくなんてないんだから!)

 

(漣さんいいな……私も提督に……はうぅ)

 

「あはは……ホント明るくて賑やかな鎮守府ね……」

 

「まあ退屈はしないと思うよ、うん。それにイムヤはうちの初潜水艦だからいろいろ頑張ってもらう事も多いかも知れない」

 

「任せてよ司令官!司令官の為なら単艦でオリョクルだってこなして見せるわ!」

 

「(オリョクル?)あ、ああ。頼りにしてるよ」

 

何やら聞きなれない単語も出てきたが、何となく知ってはいけない単語の様な気がして聞き返さなかった。

イムヤとの会話後も様々な艦娘達と過ごし(ほぼ絡まれる形だったが……)、気付けばすでにいい時間になっていた。

青葉が「この時間を待っていました!」と言わんばかりに前へ出てくる。

 

「皆さん、ここらで1つ記念撮影なんてどうでしょうか?」

 

「記念撮影か、たまにはいいかもな」

 

「はい!この時の為に、司令官と買いに行ったメンテナンス用具で準備もバッチリです♪」

 

「お、おい青葉……」

 

「あ……」

 

あれほど内緒だと言ったのに……アオバワレェ。

予想通り、一瞬にして「一緒に買いに行ったってどういう事!?」という空気に包まれる食堂。ほら見た事か。

このままだと非常に面倒な事になりそうなので、なんとかこの場を沈めるしかあるまい。

 

「皆の言いたい事は分かる。でもとりあえず写真を撮ってからにしないか?」

 

「そ、そうですね!さすが司令官!」

 

「普段は哨戒やら遠征やらでなかなか全員集まれないし、ここを逃すと次が何時になるか分からないからな。皆、頼む!」

 

皆に向かって頭を下げながら懇願する龍二。

一応気持ちは届いたのか、皆渋々ながら了承してくれた。

 

「終わったら今の事追及させてもらうから」

 

「……」

 

残念ながら穏便に済むはずも無く、すれ違いざま叢雲に釘を刺されたが。

尚、青葉は青葉で針の筵状態になっているが、自業自得なので仕方ない。

直前にすったもんだがあったものの、撮るとなればそこはそこで本気を出す彼女達。

誰が龍二の隣になるかの口論から始まり、最終的には龍二が先頭最前列、左右に漣と叢雲、後ろに神通、その周りに他の艦娘という構図になった。

さすが初期艦組は格が違った……とはいえ無理矢理ぶんどったポジションという訳ではなく、話し合いの末「もういっそ初期艦組が周りでいいんじゃね?」的な感じに収まっただけなのだが。

 

「では撮りますよ~……綾波さんもっと内側に。あと阿武隈さん、いい加減前髪いじるのやめてもらっていいですか?」

 

「敷波~、ぎゅ~♪」

 

「こ、こら綾波、抱き付くなぁ!」

 

「ふえぇ~、事前に教えてくれれば時間かけて直したのに……」

 

「最後まで騒がしいわね……」

 

「ま、まあそれもこの鎮守府の良い所だと思いますよ……?」

 

「ものは言いようですねぇ……」

 

「ははは……」

 

初期艦組のもっともなツッコミに苦笑しながら、改めてカメラへと向き直る。

この雰囲気を今後壊す事無く、また誰一人欠けることの無いよう気を引き締めながら。

 

「では改めて……皆さん、1+1は?」

 

「「「「「に~♪」」」」」

 

静かに、それでいてハッキリとしたシャッター音が、食堂内に響き渡った。

 

 

ちなみに撮影終了後、青葉との買い物についての追求から逃れようとこっそり逃げ出そうとした龍二だったが、あっさりと捕獲された上に後日各々と1対1で買い物に連れ出される約束をさせられた模様。

そして青葉は1週間カメラ没収の刑となり、さめざめと涙していたらしい。

 




執筆が遅くなった割に中身のない内容となってしまいました……
どうも最近いい妄想が浮かばず、ストーリーが中々思いつきません。

まだやりませんが、いっそ何かネタでも募集するのもアリかも知れませんね。

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