はい、ガッツリ風邪引きました。そして未だに熱が38度を割りません……orz
一気に寒くなってきましたので、皆さんもお気をつけ下さい。
さて、今回からしばらく、番外編IF「〇〇がMVPを取った場合」シリーズとなります。
映えある1人目は瑞鳳さんですが……熱のせいもあってか結構難産でした。
ふわふわした状態で書いたので、おかしなところや間違いが多々あるかもしれませんが、ご了承のほどお願い致します。
「提督ぅ~、早く行こうよ~!」
「そんな急ぎなさんなって。店は逃げやしないんだから……」
とある休暇日の朝。
通常の休暇日であれば日頃の疲れを取るために昼近くまで寝ているのだが、残念ながら今日はそうもいかないようだ。
先日の合同演習後初の休暇日である今日は、演習で見事MVPに輝く健闘を見せた瑞鳳と街へ繰り出す事になっている。
MVPが決まってからというもの、今日の今日まで「提督とデート♪提督とデートっ♪」などとハートマークをまき散らしながら宣うものだから、その他の艦娘からの恨めしそうな視線が怖かった。
そこで「デートの邪魔をしてやる!」とならない辺り、やはりなんだかんだ言ってもうちの鎮守府の子たちはいい子なのだろう。多分。
とまあ、そんなこんなでデート当日を迎えた今日、早速早めの時間から瑞鳳が部屋に突撃してきたわけである。
「もしかしたら欲しい子が逃げちゃうかもしれないでしょ!ねぇ、早く~」
「わかった、わかったから一旦部屋から出といてくりゃれ。そうしないといつまで経っても着替えられん」
「別に私は気にしないのに……」
「俺が気にするのっ!いいからほら、ハリーハリー!」
「んぅ、残念……二度寝しないでね?」
放っておいたら着替え中の裸体を隅々まで見られそうだったので、背中を押して退室を促す。
瑞鳳に限った話じゃないが、うちの子はもう少し恥じらいと言うものを持ってもらえないだろうか……?
(しかし。最後の最後まで釘を刺していく辺り、外出が嬉しかったのか……)
(外出が嬉しいんじゃなくて、提督とのデートが嬉しいの!)
(こいつ、直接脳内に……)
とまあアホなやり取りをしながら、テキパキと私服に着替えていく。
昨日のうちに準備しておいて良かった……着替え最中に次発装填再突入でもされたらかなわん。
着替えを終え、歯を磨きながら寝癖などをチェックしていく。
この辺りは愛佳とのデートで学んだ……というか、2人で出かける時に身だしなみを疎かにしているとえらくご機嫌斜めになるので、自然と身についたと言ってもいい。
その為、寝癖直し用のスプレーなんかはクセで常備してあるのだ。
「よし……瑞鳳、準備できたぞー!」
「はーい」
待ってましたと言わんばかりの早さで室内に戻ってくる瑞鳳。
そして龍二の姿を一通り見回すと、「ふむ……」と言いながら頷いている。
「どうした?」
「いや、予想以上に準備は早いし、私服もいいセンスだなぁ~って」
「ああ、そういう事か。愛佳に鍛えられたからな……」
「むぅ……デートの時に他の女性の名前を出すのはアウトだよ!」
「他の女も何も、現彼女なんだが……」
「それでもダメなの!」
「さいですか……」
見た目は鍛えられても中身は女性慣れしていない為、妙な所で地雷を踏んでしまった。
一生懸命頬を膨らませてぷんすこ!してはいるものの、チラチラとこちらの様子を伺っている辺り、瑞鳳も本気で怒っているわけでは無いようだ。
「さて、とりあえずそろそろ向かうか」
「……そだね。行こっ、提督♪」
「おいっ、手を引っ張んな~!」
「きこえませ~ん♪」
少しでも早く店に行きたいのか、龍二の手を引いていきながら部屋を出ていく瑞鳳。
だが、いくら小柄でも艦娘は艦娘。
人間とはかけ離れた馬力で引っ張られると腕が千切れそうになるのだが、どうやら聞く耳をもってくれないようだ……
とりあえず、腕が無事なうちに目的地に着くことを祈る龍二だった。
◇
「とうちゃ~く!」
「あ~、やっと解放された……まだ腕がしびれてるぞ」
「ごめんなさ~い」(てへぺろ☆)
(悪びれる様子はない……というか可愛いなこいつ……)
下を出して誤魔化す瑞鳳を見ながら、そんな事が頭に浮かぶ龍二。
いかんいかん、最近はほぼ常に艦娘に囲まれているような生活だからか、頭が緩くなっている気がする。
気をそらす為に頬をパチンと叩くつもりで雑念を払拭することにする。
実際にやると痛いので、つもりで済ますヘタレだが……
「さあ提督、中に入ろっ」
「お、おう……」
ワクワクを抑えられない様子の瑞鳳に続き、店の中へと入っていく。
店の名前は「津久田模型店」、つまりプラモデル屋さんである。
意外に思うかもしれないが、瑞鳳は軍事兵器関係の造形やら何やらに人並みならぬ知識と熱意を持っている。
とりわけ艦載機の造形にはうるさく、本人曰く「九九艦爆の足が最高に可愛くて好き」との事だ。
最初は空母だからかとも思ったが、姉の祥鳳はそれほど思い入れは無いようなので、青葉のカメラへ向ける情熱と同じような物だろう。
そんな瑞鳳なのだが、先日テレビでやっていたジオラマ特集に心を打たれたらしく、プラモデルが欲しい!と迫ってくる瑞鳳をここへ連れて来たという訳だ。
本人はデートデートと浮かれてはいるが、どう考えてもデートコースにはそぐわない店であることぐらいは龍二にも分かっていたが、本人の嬉しそうな笑顔を見たらそんな杞憂も吹っ飛んでしまっていた。
「うわぁ~、いろんなプラモデルがいっぱい!」
「プラモデルと言ったらロボットのイメージが強いけど、いろいろあるんだな……うわ、お城なんてのもあるのか」
「でもやっぱり艦載機が欲しいなぁ……どこだろ?」
「時間はあるんだ、ゆっくり探すといい」
「はーい♪」
元気よく返事をすると、瑞鳳は店の奥へと進んでいった。
正直ロボット関係には興味なかったが、城やら軍艦やらが描かれた箱を目の前にすると、何となく自分も欲しくなってくるから不思議だ。
これが男の子のサガという訳か……もちろん塗装などはできないので、買うとしたら塗装済みの商品に絞られるわけだが。
「しかし塗装済みってのは殆ど無いんだな……ん?」
ふと目に着いた箱を2つ手に取ってみると、両方ともタイトル横に「塗装済み」の文字。
どうやら同じシリーズの商品のようだ。
そして商品のタイトルは、何の因果か「祥鳳」と「瑞鳳」であった。
(偶然にしては出来過ぎな気もするけど……いいな、これ)
箱に記載されている説明を見る限り初心者向けのキットのようで、塗装済みの上制作もあまり難しくはないようだ。
今日は別としても休暇日は終日部屋で暇している事も多いので、暇つぶしがてら作ってみるのも一興か。
そうと決まれば、瑞鳳が戻ってくる前に買っておこう。
いずれはバレる気もするが、流石にここで本人に見つかるのは恥ずかしいものがある。
レジへ持っていき、予想以上に安い値段に驚きつつも何とかミッションコンプリート。
そしてそのまま瑞鳳を探そうとすると、棚の向こうからこちらに歩いてくる姿を発見した。
見れば数箱のプラモデルとは別に、ニッパーやら塗料やらもまとめてカゴに入れられていた。
「あれ?提督も買ったの?」
「ああ、面白そうなのがあったから思わずね……そういう瑞鳳は、プラモデル以外もいろいろ買うんだな」
「もちろん!最終的には臨場感溢れるジオラマを作るのが目標だし、塗装なんかも覚えないと」
「ああ、なるほどな」
「それでそれで、提督は何買ったの?お城?ロボット?」
「ん~……秘密」
「え~、なんで!?不公平だよ~」
「気が向いたら後で見せてやるから……とりあえず買ってきちゃいなさいな」
「ぶ~……約束だよ?」
「はいはい」
そう言うと、ぶーたれたままの表情でレジへと向かう瑞鳳。
少しかわいそうな気もするが、さすがにここは譲れない。
「お前を買ったのさ(意味深)」なんて口が裂けても言える訳ないのだ。
◇
店から出ると、これからの予定を一切考えていなかったことを思い出す。
瑞鳳も瑞鳳で「これからどうするの?」的な視線でこちらを見ているが……さてどうしたものか。
と、そこで狙ったかのようなタイミングで合唱を始める龍二のお腹。そこで今朝から何も食べていない事を思い出す。
時間的にはほんの少し早いが、昼食へ向かうのもいいかも知れない。
「なあ瑞鳳、ちょっとばかし早いけどお昼にしないか?」
「あ、やっぱり今の音は提督のお腹だったんだ……」
「誰かさんが朝飯も食べさせてくれなかったもんでな」
「う……ごめんなさい」
「冗談冗談。あの時間まで寝てた俺が悪いんだ、気にするな。……んで、どこの店に入ろうか?」
「それなんだけど……あの」
「ん?」
「お弁当作ってきたんだけど、食べてくれる?」
そう言いながら、抱えていたバッグから包みを見せる瑞鳳。
本人がデートだ何だと浮かれていたのは知っていたが、まさか手作りのお弁当まで作ってくれていたとは思わなかった。
「ダメ…かな?」
「……ハッ!?、あまりの驚きで固まってたわ……もちろん頂くよ」
「はぁ、よかったぁ……でもあんまり自信ないから期待はしないでね?」
あまり料理が得意ではないのか、おずおずといった感じで包みを手渡してくる。
何この子、いじらしいじゃないの……
とりあえず包みを受け取るが、予想以上に大きかった……というか重箱じゃないですかコレ。しかも2段重ね……
「なあ瑞鳳?いくら男でもこの量は……」
「あ、それで2人分なの。ご飯はおにぎりにしてあるから」
「ああ、なるほどね。じゃあ飲み物は俺が……」
「一応、水筒に麦茶入れて来たから、これでよければ……」
「なんだなんだ、至れり尽くせりじゃないか……ありがとうな?」
「で、デートだしこの位は……ね?」
ウィンクなんてしながら若干おちゃらけて言う瑞鳳だったが、後々から恥ずかしくなって来たのか顔を真っ赤にしている。
言ったあと急に恥ずかしくなるパターン、あると思います。
このままいじるのも面白そうだったが、手作りの弁当を持ってきてくれたこともあり、あえて話題を逸らして助け舟を出す。
「とりあえずどこで食べようか……あの公園のベンチとかでもいいか?」
「う、うん」
たまたま目に着いた小さな公園を指さして提案する。
まだ顔は赤いままだが、さっきの件に触れなければそのうち戻るだろう。
「ん、ちょうど木陰になってて涼しいな」
「ほんとだ……今日も暑いから丁度いいね」
「そうだな……して瑞鳳さんや、お箸はいずこへ?」
「え、えっと……」
はて、何やら嫌な予感がしてきたぞ……?
「お箸1膳しか持ってきてないから、た、食べさせてあげるね?」
「え”!?」
なるほど、手作りの弁当を用意した理由の一つにこれがあったのだろう。
瑞鳳、恐ろしい子っ!
「いや、さすがに恥ずかしすぎるぞ、これは……」
「はい提督、瑞鳳の卵焼き……たべりゅ?」
「いや、たべりゅ?じゃなくてだな……」
「……たべりゅ?」
「……たべりゅ」
もはや完熟トマトもビックリな程顔を真っ赤にはしているが、どうやら意地でも引かない模様。
このままだと恥ずかしさ+暑さで、瑞鳳がオーバーヒートしてしまいそうなので、仕方なく折れて差し出された卵焼きを頬張る。
「……(もぐもぐ)」
「ど、どうかな?」
「うん、美味い!」
「ホント!?やったぁ♪」
ふわふわの食感に絶妙な焼き加減。そして龍二好みの甘めの味付け。
甘い卵焼きが好きな事は大っぴらに公言していないので、過去に好みの味付けについて聞きに来た間宮あたりに教わったのだろう。
正直これで料理に自信が無いとか言ったら、その辺の定食屋の店長は裸足で逃げ出すんじゃなかろうか。
「なんだ、自信ないとか言ってた割に料理上手いじゃないか」
「今までは、作っても祥鳳ねぇ位にしか食べてもらった事ないし……」
「それもそうか……でもこれは正直誇れるレベルだぞ。自信持っていい」
「うん、ありがとう♪」
その後もいろいろなおかずを食べたが、やはりどれも非常に美味だった……その中でも卵焼きは別格だった。一番最初に食べさせたという事は、数あるおかずの中でも一番自信があったのだろう。
龍二が食べている間に瑞鳳もちょこちょこと食べ、気付けばあっという間に重箱が空になっていた。
ちなみに、瑞鳳が「間接キス……」と呟いていたのは聞かなかったことにする。
「ふう、美味しかった……ごちそうさまでした」
「お粗末様でした!」
「さて、これからどうするか……瑞鳳はどこか行きたい所あるか?」
「特にはないかなぁ。プラモデル屋だけで頭がいっぱいだったから……」
「そうか……かと言ってまだ戻るには早いし、適当にその辺ぶらつくか」
「うん、さんせー!」
手早く後片付けを済ませると、再度街へと向かって2人で歩き出す。
その後はいろいろな店を冷やかしたり、喫茶店でお茶したり、こっそり買ったプラモデルがバレて2人で顔を真っ赤にしたりといろいろあったが、割と喜んでもらえたのではないだろうか。
本来なら「男がエスコートせぇよ!」という話なのだろうが、女性経験の少ない龍二にそれを求めるのは酷というものだ。
「おーい、そろそろ戻らんと夕飯に間に合わないぞ?」
「わっ、ホントだ……時間が過ぎるのがあっという間だよ~」
「……楽しかったか?」
「うん!また提督と来たいなぁ……?」
「また頑張ってくれたら、な?」
「任せて!頑張っちゃうんだから♪」
ご機嫌な表情でスキップまでして見せる瑞鳳に苦笑を浮かべつつも、楽しんでもらえたようで何よりだ。
こうして1日を終えてみると、ある意味MVPを獲得したのが瑞鳳でよかったのではなかろうか。
失礼な話かもしれないが、これが古参メンバーとかだと常に身の危険(性的な意味で)に怯えながら過ごさなくてはならなかったかもしれないと思うと……
龍二がそんな事を考えているとはつゆ知らず、瑞鳳は既に次の演習でもMVPを取るために気合を入れ直すのだった。
尚、龍二が買った祥鳳・瑞鳳のプラモデルはその日のうちに全艦娘へ知れ渡り、最終的には全員のプラモデルを作る羽目になったのは別の話……
やっぱり短編って難しいですね……予想以上に長くなってしまいました。
こんな感じで数話続けて投稿しようと思いますので、「メインシナリオをはよ進めろや!」という方は今しばらくお待ちくださいませ……
まだ風邪も治りきっていないので、次回の投稿ももしかすると遅くなるかもしれません。
なるべく早く書き上げますので、今しばらくお待ちください。