提督は今日も必死に操を守る   作:アイノ

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第4話

「~~~♪」

 

「……はぁ」

 

かたや鼻歌交じり、かたやため息交じりというまさに双極といった体で仕事を進める龍二と叢雲。

龍二がご機嫌な理由は、もちろん建造待ちだからである。

テストの時とは違い、実際に艦娘が誕生するところが見れるというだけで心躍ってしまうのである。

男の子たるもの、未知の技術に興味津々になるのは仕方のない事なのかもしれない。

だからといって、執務室へ戻って5分後には「まだかなまだかな~♪」なんて歌い始めたら、叢雲でなくともため息くらい出るわけである。

 

「ずいぶんと楽しみにしてるみたいじゃない。私の時もそうだったのかしら?」

 

「う…も、もちろんだよ」

 

「絶対ウソね」

 

「だって仕方ないじゃないか!妖精さんにレシピ渡したらすぐに退出させられたんだから。しかもその頃は、まさかその建造でできた艦娘が初期艦になるなんて知らなかったし…」

 

「……はぁぁ」

 

本日何十回目かのため息をつくと、叢雲は前のめりの体制になって龍二を見つめた。

急な接近に龍二も思わずドキッとしてしまう。

 

「いい?アンタが一番最初に建造したのはこの私なの!そこ、忘れるんじゃないわよ」

 

「お、おぅ…」

 

「本当にわかってるんでしょうね?」とでも言いたげな瞳でじっと見つめる叢雲。

本人は気付いていないが見つめている間徐々に接近しており、今やキスの2秒前レベルの距離である。

 

「あ、あの…叢雲さん?」

 

「なによ、なんか文句あるの?」

 

「いやそうじゃなくて…ちょっと近くないっすか?」

 

「近いってなn…っっ!!」

 

龍二の言葉で自分の大胆な行動に気付き、思わず2歩ほど後ずさる。

今回ばかりは頬どころか耳まで真っ赤である。

龍二の方もさすがに堪えたのか、帽子のつばで顔を隠し頬を掻いている。

 

「……」

 

「……」

 

なにやら甘酸っぱい雰囲気に呑まれてしまい、非常に居心地の悪い空間が出来上がってしまった。

これがアニメの世界なら、若干ピンクがかったエフェクトがかかっているはずである。

 

「…とりあえず仕事しようか」

 

「…そうね」

 

このままモジモジしてても仕方ないので、気持ちを切り替えて書類仕事に戻る。

その傍らで龍二に渡す書類を整理しながら、再び叢雲は龍二を見つめる。

 

(こいつ、何気に仕事はできるのよね…)

 

かれこれ1時間近く書類仕事に取り組んでいるが、未だミスらしいミスも無く、書く速度は速いものの文字は丁寧でしかも達筆だった。

もちろんまだ分からない部分も多いようで、その度に書き方を聞いてはくるものの、徐々にその回数も減りつつある。

これで苦手な作業というのだから、得意な作業をさせたらどうなるのか…そもそも、彼が何を得意としてるのかはまだ分からないのだが。

そんな事を考えていると、執務室に備え付けられている電話機が鳴った。

慌てて龍二が取ろうとするが、それよりも早く叢雲が受話器を取る。

受け答えの内容を聞く限り、やはり建造が完了した旨の連絡だったようだ。

 

「お待ちかねの建造完了のお知らせね。すぐ行くんでしょ?」

 

「もちろん!」

 

「はいはい…とりあえず今取り掛かってる書類だけ終わらせちゃいなさい」

 

「任せろ!うおおおおおお!!!」

 

「……はぁ」

 

さっきの甘酸っぱい雰囲気はどこへやら。

もはや頭の中は建造の事でいっぱいであろう龍二の姿を見て、叢雲はまた1つため息をつくのであった。

 

 

 

 

「工廠長さーん、来ましたよー!!」

 

工廠に出戻った龍二と叢雲は工廠長の姿を探す。

奥へ進んでいくと、人が1人入れる位の大きさのカプセルの前で手を振っていた。

 

「これが建造ドックというやつですか…」

 

「ええ。このカプセルの中に、今回建造された艦娘が入っています」

 

「おぉ…何というか、想像してたのよりSFチックですね」

 

「人間には扱えない技術を用いてますからね」

 

映画にでも出てきそうな機材を前に、大はしゃぎする龍二。

男はいつまでたっても子供、とはよく言ったものである。

 

「さぁ、ドックを開けますよ。ちょっと離れててください」

 

「は、はい。すいません」

 

工廠長が「ドック1番・2番開錠!」と高らかに宣言すると、夥しい量の煙とともにドックが解放される。

しばらく煙で何も見えなかったが、徐々に人の形をした影が見え隠れする。

そして完全に煙が晴れたドック内には、2人の少女が眠っていた。

しばらくそのまま待っていると、2人のうち背の高い少女の方が先に目を覚まし、自らの足でドックから出てくる。

そのまま龍二の前まで来ると、少し自信なさげに俯きながら口を開く。

 

「はじめまして。軽巡洋艦「神通」と申します…」

 

「神通だね、初めまして。昨日着任したばかりの新米提督だけど、これから宜しくね」

 

「は、はい…よろしくお願い致します…」

 

挨拶を済ませた後、龍二は改めて神通の姿を確認する。

栗色の髪を長めに伸ばし、橙色のセーラー服を着ている。

装備している艤装も、やはり駆逐艦のそれよりも立派に見える。

挨拶の時からずっと俯いており、自信無さげな受け答えが少し気にはなるが…。

 

「うちでは初の軽巡洋艦になるから期待してるよ。でもあまり気負わないようにね?」

 

「ありがとうございます…ご期待に沿えるよう、頑張ります」

 

安心させるよう優しく伝え、神通に微笑みかける。

期待してると言われ、神通は一瞬顔を上げたがすぐにまた俯いてしまう。

この固さを取り除くいい方法は無いものかと考える龍二だが、この時神通が真っ赤な顔を隠すために俯いたことには気付いていない。

 

「あんまり新人さんをいぢめるんじゃないわよ…。初めまして神通さん、初期艦兼秘書艦の叢雲よ」

 

「あっ、初めまして…よろしくお願い致します」

 

「俺!?俺のせいなのか!?」

 

叢雲の冗談を真に受けて慌てる龍二。そして龍二を必死にフォローする神通。

神通自身、元々あまり自信の持てない性格ではあるのだが、今回の場合龍二のせいというのもあながち嘘ではない辺りタチが悪い。

そんなすったもんだ劇場を3人で繰り広げていると、もう1人の艦娘がゆっくりと目を覚ました。

神通とは正反対に元気よくドックを飛び出してきた彼女は、提督の周りをぐるぐると回る。

なにやら小声で「(゚∀゚)キタコレ!!」などと言っているが、今どきのネット事情に疎い龍二にはちんぷんかんぷんである。

 

「え、えーと…」

 

「…はっ!!これは失礼しました!」

 

困惑顔の龍二を見て、あわてて彼の正面へ移動する。

そしてビシッと敬礼をしたまま、改めて口を開いた。

 

「綾波型駆逐艦「漣」です。よろしくお願いしますね、ご主人さま♪」

 

「うん、よろしk…ご主人さま!?」

 

「はい!提督ということは私のマスター、ということはご主人さまとお呼びしてもおかしくはないですよね?」

 

「いや、えーと…どうなんだろう?」

 

「お嫌ですか…?」

 

「い、嫌ってわけではないけど…」

 

龍二より遥かに背の低い漣は、上目遣い+うるうる目攻撃を敢行する。

思わずたじろぐ龍二の隣で、「またずいぶんとキャラの濃い子が来たわね…」とぼやく叢雲。

神通は遠巻きに苦笑していた。

 

「じゃあやっぱりご主人さまで!改めて、よろしくお願いします♪」

 

「うん、よろしく…」

 

龍二の右手を両手で掴むと、ブンブンと大げさに上下させる漣。

先ほどのうるうる目はどこへやら、すがすがしい位の笑顔である。

 

「君でうちの艦娘は3人目なんだ。明石と間宮さんを入れれば5人だけど」

 

「あらら…ということは、これから頑張らねばなりませんね!」

 

「うん。期待してるよ?」

 

「ほいさっさ~♪」

 

たまに独特な言い回しをするものの、元気いっぱいでいい子そうだ。

叢雲と神通に挨拶をしている漣を眺めながらそんな事を考えている隣で、工廠長が「やはり即堕ちか…」と呟いていたが、龍二の耳には入らなかった。

 

「とりあえずこれで艦娘は3人になったわけだけど…」

 

「そうね…とりあえず1度出撃してみましょうか。このメンバーなら初陣でも、鎮守府近海の哨戒位なら問題ないと思うわ」

 

「ついに出撃か…」

 

「無線での指示の仕方なんかは大本営で叩き込まれたんでしょ?大丈夫、自信を持ちなさい」

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

珍しく素直に励ましてくれる叢雲に心強さを感じながら、残り2人に出撃の旨を伝えるため呼び集める。

いざ初陣である。




というわけで、最初の建造艦は神通と漣でした。
今後は基本的にはサイコロの女神さま頼りとなります。

あと、そろそろ話の進むスピードを上げないと、いつまでたってもハーレム状態になりませんね。
どうしたものか…

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