提督は今日も必死に操を守る   作:アイノ

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久しぶりに小説情報を見たら、UA15000、お気に入り300突破…
リアルで「( Д ) ゚ ゚」状態になりました。
正直UAは1000行ったら御の字、お気に入りも10くらい行けばいいなと思ってただけに…なにこれこわい。
今後も皆さんに楽しんでいただける作品になるよう、改めて気合を入れなおしました。


第7話

「提督、お荷物が届いてますよ」

 

「荷物…?はて、どこからだろう?」

 

「須藤昭文と書いてありますが…ご親戚でしょうか?」

 

「ああ、うちのじいちゃんだ。何を送ってくれたんだろう?」

 

大淀から荷物を受け取ると、机の中からカッターナイフを取り出し箱を開封する。

クール便ということもあり、恐らく中身はアレだろう。

 

先の初戦から約2週間、なんとか鎮守府の運営にも慣れてきた。

地道に建造や出撃を行い仲間もそこそこ増えてきた。ここにいる大淀型一番艦の大淀も、新しく加わった仲間の1人である。

先日、突然大本営から呼び出しがかかった時は何事かと思ったが、要は「提督補佐」として大淀の建造を許可するというものだった。

なぜ許可が必要なのかというと、明石や間宮と同じように特別な方法でしか建造できず、その為大本営まで出頭して建造を行ってきたのだ。

提督補佐というだけあって書類仕事などに明るく、また提督不在の際には提督代理として執務を行うこともできるスーパーウーマンである。

…正直なところ「俺いらなくね?」と思ったことは1度や2度ではない。

ちなみに秘書艦制度はそのままで、本日の秘書艦である漣は工廠で開発の指示を出してもらっている。

 

「提督のご祖父様ですか」

 

「うん。中身は多分…やっぱり、自宅でとれた野菜とかだね」

 

「わぁ、どの野菜もすごく立派ですね」

 

「うちの畑、もはや家庭菜園のレベルを遥かに超えてるからね…うぉ、山菜も入ってる」

 

「山菜…ですか」

 

「艦娘のみんなには、もしかすると馴染みがないかもしれないね」

 

「そうですね…どれも初めて見るものばかりです」

 

「とりあえずここに置いといても仕方ないし、間宮さんの所に持っていこう」

 

「分かりました。お手伝いしますね」

 

野菜や山菜がぎっしり詰まった段ボール4箱を、大淀と2箱ずつ食堂へ運ぶ。

かなりの重さに途中で腰が悲鳴を上げるが、大淀の前で弱音を吐くわけにはいかない。

ほうほうの体で食堂まで運び終えた龍二は、すこし身体を鍛えなおさなきゃいけないなと身をもって実感した。

 

 

 

 

「あら提督に大淀さん、こんな時間にどうなさいました?」

 

「いや、実家から野菜や山菜が届いたので、とりあえずこっちに持ってきたんですよ」

 

時刻は一六四〇。

夕飯の下ごしらえを始めようとしていた間宮は、思わぬ来客に驚いた顔を見せる。

龍二が段ボールの中の新鮮な野菜達を見せると、間宮は目を輝かせながら野菜を手に取って確認しはじめた。

新鮮な野菜を前に思わず笑顔になるあたり、流石は給糧艦といったところか。

 

「キャベツにかぶ、ジャガイモに筍、ブロッコリー…見事な春野菜ばかりですね」

 

「実家の自慢の野菜達です。あとこっちが山菜ですね」

 

「これが…。タラの芽とかはかろうじて分かりますが、他は見た事ないものばかりですね」

 

「ありゃ、間宮さんでも分からないか。どうしようかな…」

 

「力及ばず…申し訳ありません」

 

「いやいや、気にしないでください。さっき大淀にも言いましたが、多分艦娘の皆さんには馴染みがないだろうなぁとは思っていたので」

 

しかし、そうなるとこの山菜達をどうするか…

ふととある事を思いつき、傍らに控えていた大淀に確認を取る。

 

「今日中に終わらせなきゃいけない書類って何かあったっけ?」

 

「いえ、今は急ぎの書類はなかったと思いますが…」

 

「ふむ…。間宮さん、よかったらこれから厨房の一部をお借りしてもいいですか?」

 

「それは構いませんが…もしや提督が調理なさるのですか?」

 

「ええ、これでも田舎育ちですからね。実家仕込みの山菜料理を夕飯にどうかな~と」

 

「私としては、提督と一緒に料理ができるので願ったり叶ったりですが…」

 

「よし、決まりですね!大淀もそれでいいかな?」

 

「問題ありません。こちらで対応できそうな物は終わらせておきますね」

 

「ありがとう。あとで埋め合わせするから」

 

「いえいえ、お気になさらないでください。その分夕飯の山菜料理に期待させてもらいますから♪」

 

「むむ、そう来るか…。これは頑張らなくちゃいけないな」

 

大淀の言葉に気合を入れなおすと、改めて届いた数々の山菜を確認するのだった。

 

 

 

 

「さて、それじゃあ調理開始と行きましょうか」

 

厨房の片隅に山菜を広げると、1つ1つ調理方法を確認していく。

届いた山菜はタラの芽、コシアブラ、シオデ、山椒。

この時期だとワラビやゼンマイ等が有名だが、どちらも調理が非常に面倒なのであえて送ってこなかったのだろう。

 

「タラの芽とコシアブラは天ぷら、シオデは茹でてマヨネーズ和えがいいかな。山椒は…山椒味噌でも作るか」

 

とりあえずの調理方法が決まったので、必要な調理器具を用意する。

ふと間宮がこちらをじっと見ていることに気が付いた。

 

「間宮さん、どうしました?」

 

「…はっ!?すいません…提督って本当に料理できるんだなぁと思いまして」

 

「むむ、信じてくれてなかったんですね…ヨヨヨ」

 

「いえ、その、そういうわけじゃないんですが」

 

大げさな泣き真似をすると、いつもの落ち着いた雰囲気はどこへやら、あたふたしながら弁解する間宮。

普段は見られない姿を垣間見て、龍二は思わず吹き出してしまう。

 

「冗談、冗談ですよ。間宮さんもそんな風に慌てることがあるんですね」

 

「もう、からかってたんですか?意地悪なんですから…」

 

「慌ててる間宮さんもかわいかったですよ♪」

 

「かわっ…!?もうっ、知りません!」

 

ぷくっと頬を膨らませてそっぽを向く間宮。

そんな間宮の姿もまた可愛いなと思ってしまう龍二だった。

 

 

 

 

時刻は一八三〇。

お腹を空かせた艦娘達が一同に食堂へと集結する。

 

「お腹すいた~!…あれ、なんか今日はいつもと雰囲気が違う?」

 

最後に食堂に入ってきた漣が違和感に気付く。

今日は金曜日なのでカレーの日。

通常なら各々既に食べ始めててもおかしくないのだが、今日に限ってはテーブルに何も置いていない。

 

「すまんすまん。すぐに用意するから、とりあえず座ってくれ」

 

「なになに?何が始まるんです?」

 

「さぁ?とりあえず座りなさいな」

 

漣は頭上に?マークを大量に出しながら、叢雲の隣に座る。

他のみんなもよく分かっていないようで、総じてポカンとしていると、間宮と龍二が厨房から料理を運んでくる。

 

「昼間にうちの実家から春野菜と山菜が届いたんだけど、みんな山菜料理は食べた事なさそうだったから、夕飯に出そうと思って料理してみたんだ」

 

「春野菜は私がカレーに、山菜は全て提督が料理してくれました」

 

「別に全員揃うまで待つ必要もなかったんだけど…量に限りがあるのと、できれば皆に山菜ってものを食べてもらいたいなと思ってね」

 

そう説明しながら、みんなの前に春野菜カレーと山菜料理が置かれていく。

提督が料理出来ることを知らない艦娘は驚いた顔をしていたが、目の前に置かれていく山菜料理に次第に視線が釘付けになる。

 

「天ぷらはタラの芽とコシアブラ。天つゆでも塩でも好きなのを付けて食べてくれ。次にマヨネーズと和えてあるのが「山アスパラ」とも呼ばれるシオデ。あとは味噌と和えてあるのが山椒だけど、これはクセが強いから最初は少しだけ食べてみるといい」

 

山菜の説明をしている間に、すべての艦娘に料理が行き渡る。

そして誰かが言った「頂きます」を皮切りに、それぞれ思い思いに箸をつけていく。

 

「敷波、この天ぷらおいしいね」

 

「サクサクしてて臭みもないね。綾波が食べてるのがコシアブラだっけ?変な名前だね」

 

「敷波が食べてるのがタラの芽よね?今度はそっち食べてみようかしら」

 

天ぷらに舌鼓を打つのは、綾波型駆逐艦1番艦の綾波と2番艦の敷波である。

彼女たちは、南西諸島沖の警備中に出くわした深海棲艦が落とした艦の記憶から生まれた。

直近の姉妹艦ということもあり2人は非常に仲が良く、非番の日などはよく2人で過ごしているのを見かける。

 

「あら、このシオデのマヨネーズ和えすごく美味しい…阿武隈ちゃんも食べてみて」

 

「…ほんとだ美味しい。確かにちょっとアスパラっぽいかもしれません」

 

「私はこっちの方が好きかも。あんまり筋ばってないし」

 

「あー、アスパラってたまに固いやつありますもんね」

 

のほほんとアスパラ批判をしながらシオデを食べている2人は、大淀と長良型6番艦の阿武隈だ。

大淀は先述の通り大本営での建造で、阿武隈は鎮守府の工廠での建造で仲間入りを果たした。

少し気弱な所のある阿武隈だが、うちの数少ない軽巡洋艦として第一線で戦ってくれている。

 

「ほう、この山椒味噌とやらも美味しいのぅ」

 

「うぇ、ボクは苦手かも…」

 

「確かに独特の香りじゃからの。好き嫌いが分かれそうな料理じゃな」

 

独特な口調で会話をする2人は、初春型1番艦の初春と、睦月型5番艦の皐月だ。

2人とも阿武隈と同じく建造で誕生した。

古風な喋り方をする初春と元気いっぱいなボクっ娘皐月は、一見すると接点が無いような気もするが、皐月は面倒見の良い初春を姉のように慕っている。

思わず本当の姉妹のようにも見えてしまうから不思議だ。

 

「村雨、提督の料理好きだなぁ」

 

「提督って本当に料理もできるんですね…」

 

「ご主人さまスペック高いなぁ…またこれでライバルが増えそうな予感ががががが」

 

「私は初日の夕飯でもアイツの手料理食べたけど…悔しいけどやっぱり上手いわね」

 

「私もスパナじゃなくて包丁握って、女子力あげるべきかしら」

 

村雨、神通、漣、叢雲、明石の古参メンバーも、龍二の山菜料理に驚きを隠せない様子だ。

明石に至っては「それとも女子力を上げる装置を開発した方が早いかしら?」などと意味不明なことを呟いている。

そんなみんなの姿を見て、龍二はホッと胸を撫で下ろす。

 

「山菜料理も概ね好評みたいで…ちょっと安心しました」

 

「私も、提督と料理できて嬉しかったです。今日は提督の料理に主役の座を奪われちゃいましたけど」

 

「物珍しさが勝ってるだけですよ。俺の腕じゃあ逆立ちしても間宮さんには敵いません」

 

「そんな謙遜なさらなくても…。提督の手際も素晴らしかったですよ」

 

「間宮さんにそう言ってもらえると、お世辞でも嬉しいですね」

 

「お世辞じゃないんですが…。とりあえず、私たちも食べちゃいましょうか」

 

「そうですね。さっきから春野菜カレーが楽しみで楽しみで…」

 

「あらあら」

 

緊張が解けた途端に騒ぎだした腹の虫を抑えながら、間宮がよそってくれているカレーを待つ。

食材を送ってくれたじいちゃんとばあちゃんに心の中で感謝しつつ、少し遅めの夕飯にありつくのだった。




はい、少し時間をすっ飛ばしました。
こうでもしないと一向に先に進まなそうなので…
今後もこういうパターンが多くなると思いますが、何卒ご容赦下さい。

そして今回の話で分かる通り、私自身もど田舎シティに住んでおります。
今年は病気のせいで山菜採りに行けなかったので、その悔しさをSSにぶち込みました。
山アスパラ…食べたかったなぁ(´・ω・`)

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