東風乃扇です!
さて、欧州に渡った星夜!
一体何が起こるのか。
それでは第44話オープンアップ!
欧州合同IS演習初日。
俺─天野星夜─はGEARのブースにて準備をしていた。
「よっと!これでラスト!」
「後は開始時間を待つだけだ。」
準備が終わり、ブース内を見渡す。
やはり、あれに目が行くな…。
「しかし、GEAR製EOSの見た目が電童と全く同じなんてビックリですよ。」
「中身は電童と全然違うけどね。」
GEAR製EOS…見た目はそのまんま電童だ。
多少の違いはあるがそれこそ誤差の範囲だ。
「ここにあるプロトタイプは簡易型ハイパープラズマドライブが載ってるけどコストがかかるから採用しないんだって、だから腕と足はもう少しスマートになると思うよ。」
「へぇ~。」
展示用のEOSを見る。色は白に明るめの赤。
「この色だと救急車見たいですね。」
「そうだね。人命救助等に使われる予定だからあながち間違ってないかもね。」
「なるほど。」
これが火災現場とかで使われるのか。
「で、これがスペックね。」
──
名称:GEAR Extended Operation Seeker
略称:GEOS(ゼオス)
主動力:HDDシステム
主装備:HPDシステム(試作機のみ搭載)
他、一部IS用装備を使用可能
装甲材:特殊チタン合金
備考:電子格納技術対応予定
参考稼働可能時間
パワーアシスト有:約2時間
パワーアシスト無:約4.5時間
──
「HDDシステム?」
「そうさ。これがGEOSの要。これは電童にも関わってくる技術さ。」
HDD…なんの略だろ。
「じゃあ井上さんからの説明を待つだけですね。」
「そうだね。今は専用のトレーラーかコンテナで運んでるけど最終的には電子格納してISみたいに即座に展開、格納できるようにするらしいよ。」
吉良国さんがGEOSの後ろに展示してあるトレーラーとコンテナを指差しながら言う。
「へぇ~。確かにそれなら救助活動なんかでも使えそうですね。」
「空を飛んだりとかは出来ないけど、生命維持装置のお陰で少しなら海の中でも活動出来るからね。これは良いものだよ。」
そんな風に話してると開催の合図であるチャイムと放送が入った。
「さぁ、ついに始まったぞ。ここにはこのGEOSを見に来る人が沢山いるから頑張って対応しないとね。」
「最初は混みそうですし自分もいますね。」
「あぁ、頼むよ星夜くん。電童はそこのメンテナンスベッドに展開して、展示しておいてね。」
「了解です。」
入り口の方から沢山の人が来るのを見て、パンフレットなどを用意するスタッフと一緒に作業を進めた。
──
ドイツエリアのとあるブース。
ここにはシュヴァルツェア・レーゲンとその姉妹機シュヴァルツェア・ツヴァイクを中心に様々な展示がされている。
先程まで各企業や政府の偉い人が挨拶に来ていたのでそれの対応をしていたラウラの姿があった。
「ふぅ…。見られるだけ…と言うのもなかなか疲れるものだな。」
「隊長、お疲れ様です。少し休憩でもお取りになられたどうでしょうか?」
「クラリッサ、私が居なくても大丈夫なのか?」
ラウラが近くの椅子に腰を降ろすと副官のクラリッサが休憩を提案してきた。
「はい、シュヴァルツェア・レーゲンが展示してあればパイロットが不在でも特に問題はないと思われます。先程まで来賓の対応をされていましたし、明日からのデモンストレーション等を考慮すれば本日は可能な限り休憩をとるべきです。」
「なるほど。明日に備えて無駄な疲労は溜め無い方がいいな。」
「それと、先程各ブースを回ってきた隊員の報告によりますとGEARのブースに電童が展示してあったとのことです。」
「なに?星夜が来ているのか?」
「姿は確認してないようですが搭乗者本人が来ているのは確実です。」
「そういえばGEARが独自のEOSを作ったと聞いた。それを確認するのもかねて行ってみるか。」
ラウラが立ち上がる。
「では、後の事は我々にお任せください。」
「頼むぞ。定期的に連絡はいれる。何かあれば呼んでくれ。」
「了解。」
ラウラはGEARのブース方面に向かって歩いていく。
「む、もしかすると明日からのデモンストレーションでは星夜もいるのか…。なかなか強敵だな。」
「あっ!おーい!ラウラ~!」
ラウラが歩いていると声をかけられた。
そちらを向くとそこはフランスエリアのデュノア社ブースでシャルロットが手を振っていた。
「シャルロットか、私はこれからGEARのブースに行くところだ。」
「そうなの?ちょうど僕も休み時間だから行こうかな。」
「部下の報告によると星夜が来ているらしい。」
「えっ!?そうなの!?」
「あぁ、直接確認はしてないが電童が展示されていたそうだ。」
「なるほど~。ちょっと待ってて、すぐに支度するから。」
「あぁ、わかった。」
1分もしないうちに出てきたシャルロット。
2人はならんで歩き出す。
「2週間ぶりだけどドイツはどうだった?」
「あぁ、以前はただ機械のように訓練を繰り返すだけで人間関係等は最悪だったのだが、今では積極的にコミュニケーションを図って部隊内の雰囲気が良くなった。」
「そ、そうなんだ。」
シャルロットはIS学園に来た頃のラウラを思い出す、確かにあの性格だとギスギスしそうだ。
「臨海学校の時も福音を探すのを手伝ってもらったしな。」
「そういえばそうだったね。後でお礼を言っておかないと。」
「むしろその前にドイツ軍が迷惑をかけている。あれはそのお詫びみたいなものだ。だから大丈夫だぞ。それにあの直後に織斑教か…織斑先生が礼の電話をしたそうだ。」
「こうゆうのは気持ちが大事なんだよ。」
「そうか。なら後でドイツエリアに来てくれ。隊の者を紹介する。」
「うん。わかったよ。」
「ところでシャルロットもどうなのだ?問題は無かったか?」
「ぼ、僕?特に問題は…無かったよ。ただ、しっかりと父さんと話すのが初めてだったから少し緊張したけど。今では普通に話せるし、僕の知らない母さんの事も色々と聞けたし。」
「なるほど。お互い良い方向に進んでいるな。」
「ふふ、そうだね。」
2人が自然と笑顔になる。
「えっと、GEARのブースは…。」
「こっちだな。やはり、注目度が高いのか人も沢山集まってるな。」
「噂の男性操縦者も居れば当然だよね。」
GEARのブースに近づくにつれ、人が増える。
人の流れに従い、2人は先へ進む。
──
イギリスエリアのとあるブース。
ここにはブルー・ティアーズとその2号機にあたるサイレント・ゼフィルスが展示されていた。
そこではセシリアが他の専用機持ちと同じように来賓の対応に追われていた。
しかし、両親が他界してからオルコット家を守ってきたセシリアにとってさほど難しいことではなかった。
「お嬢様、お疲れ様です。」
「あら、ありがとう、チェルシー。」
幼なじみであり、専属のメイドであるチェルシーから飲み物を受け取る。
「お嬢様、この後は休憩時間だそうです。」
「あら、そうですの、以外と時間が経つのは早いものですわね。折角ですから後学の為にも色々と見て回りますわ。」
「かしこまりました。そういえばお嬢様、先程興味深い話を聞きました。」
「なんですの?」
「お嬢様の想い人である天野様がGEARのブースにいらしているそうですよ。」
「えぇっ!?それは本当ですの!?」
思いがけない情報にチェルシーの方を向くセシリア。
「はい、その話を聞き確認に向かいましたが人が多く直接見てはおりませんが、専用機である電童が展示されておりました。」
「ありがとう、チェルシー。すぐに向かいますわ。」
セシリアはすぐに手持ちの鏡で自分の顔と髪を確認し、GEARのブース方面に向けて歩き出す。
「はい、お伴いたします。」
セシリアの3歩後ろを歩くチェルシー。
「星夜さん、居られるのであれば明日からのデモンストレーション、なおのこと負けられませんわね。」
「そうですね。天野様に良い所を見せられるといいですね。」
ちなみにチェルシーにはセシリアが星夜に惚れたことを速攻で見抜かれた。
どのタイミングかと言うとクラス代表決定戦の後だ。
その日のことをチェルシーに電話で話していたら『惚れましたね?』と見抜かれた。
チェルシー曰くセシリアをずっと見ていたからわかったそうだ。
「やはり、人が多いですわね。」
「GEARは元々注目されていましたし、あの男性操縦者を見れるとなれば当然でしょう。」
GEARのブースの前には人垣が出来ていた。
「どうしましょう。」
「お嬢様、あちらに居られるのはご学友の方では?」
「あら?ラウラさんにシャルロットさん、お二人も星夜さんに会いに?」
チェルシーが指した先にはラウラとシャルロットが居た。
「うむ、部下に電童が展示してあったと聞いてな。」
「僕はそれをラウラに聞いてね。それで来たんだけど…。そちらの方は?」
「お初にお目にかかります。私、セシリアお嬢様にお仕えしておりますメイドのチェルシー・ブランケットです。以後お見知りおきを。お二人の事はお嬢様からお伺いしております。デュノア様とボーデヴィッヒ様ですね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「よろしく頼む。しかし、この状況どうしたものか…。」
4人の視線はGEARブースの方に向けられるが余りにも沢山の人が居るため様子を伺う事も出来そうにない。
「そうだ、星夜に電話してみようよ。」
シャルロットが携帯をとり出す。
それぞれのISは展開状態でブースに展示しているのでコアネットワークを使った連絡は出来ない。
「この状況で星夜は電話に出れるのか?」
「だよね…。」
ラウラの指摘の通り、外でこの状態だ。恐らくブース内は芋を洗うような混雑だろう。
「メールを送っておくか?」
「それがいいと思いますわ。」
ラウラの提案にセシリアが頷く。
「じゃあ、僕が送っておくよ。」
シャルロットが手に持った携帯を操作し、メールを打ち込む。
メールを送信する直前に携帯からエイリアス体のブルが出てきた。
「あっ、ブルだ。今、星夜は忙しいよね?」
シャルロットの問いにブルが動く。
シャルロット達を誘導するように飛ぶ。
「こっちか。」
「裏から入って良いのでしょうか?」
「いいからブルが来たんじゃない?」
「スタッフ用の入り口ですね。」
ついていくとスタッフ用の入り口が見えた。
──
まさかの大盛況にスタッフ総出で対応しているGEARブース。
元々GEOSの注目度が高い上に俺がいるせいで予定以上の人が来ているそうだ。
最初はそこそこの数だったが俺がいる事が口伝えに広まりこんなに来てしまったようだ。
「はぁ、これじゃ外は出れないな。」
速攻で囲まれて終わるな。
「そうだね。まさかこれほどの人が集まるなんて。」
吉良国さんも苦笑している。
「考えてみれば入学した直後の状態をイメージすれば良かった…。」
学園中の生徒が来てたもんな。
「窮屈な思いさせちゃうけど裏で休憩してなよ。なんだったらスタッフ用の入り口から友達呼んでいいよ。」
「いいんですか?」
「他の所に迷惑をかけるわけにもいかないしね。あの娘達なら問題ないよ。」
「ありがとうございます。ブル、皆を呼んできてもらっていい?」
この騒ぎだし皆俺がいる事は知ってるだろう。
きっと纏まってそうだし一体で十分だろう。
すぐにスタッフ用の入り口に向かう。
するとセシリアさん、ラウラ、シャル、メイド服の人が歩いてくるのが見えた。
メイド服の人は前にセシリアさんが言ってたチェルシーさんだろうか?
「やっぱり集まってたんだ。久しぶり、元気そうで良かった。」
「星夜さん、お久しぶりです、ごきげんよう。」
「こちらも特に問題はない。心配なら無用だ。」
「久しぶり、こっちは大変そうだね。」
セシリアさん、ラウラ、シャルが挨拶を返してくれた。
「えーと、あなたは…。」
「はい、お初にお目にかかります、天野様、セシリアお嬢様にお仕えしておりますチェルシー・ブランケットです。以後お見知りおきを。」
丁寧なお辞儀をしながら挨拶をする。
やっぱりこの人がチェルシーさんか。
「はじめまして、天野星夜です。チェルシーさんの事はセシリアさんから聞いてます。皆、こっちに。」
このまま立ち話もあれなので中の休憩用のテントに入ってもらう。
「いや、見積もりが甘かった…。これほど人が集まるなんて…。」
「あぁ、これほど集まってるのは確実に星夜の影響だな。」
「まず、お目にかかる事がないと思ってた男性操縦者が見れるかもって皆期待してるんだよ。」
「入学した直後もこのような感じでしたわね。」
「皆様、お茶が入りました。」
休憩用のテントで皆と話をしようとテーブルに着いたらチェルシーさんがお茶をいれてくれた。
「あっすみませんチェルシーさん。お客さんにお茶いれて貰ってしまって。」
「皆様はお嬢様と対等の立場、なら私が御奉仕することはなんの不思議もございません。天野様も私の事は使用人と思っていただいて結構です。」
流石にそこまでは無理だな。
この感じだと絶対に椅子には座らないな。
「流石にそこまではできませんよ。」
「そうですか。天野様にご無礼を承知でひとつ伺いたいのですが、お嬢様は私の事をなんと?」
「チェルシーさんはとても気が回るし、優秀で、姉のような存在だって。」
「そうですか、ありがとうございます。」
綺麗な笑みを浮かべ、丁寧にお辞儀をするチェルシーさん。
「星夜さん、私達が居ない間、何かございましたか?」
ずっとチェルシーさんと話していたからか少し不機嫌なセシリアさん。
「ん~。特に変わった事は無いかな、寮がいつもより静かな位だよ。」
「そうですの。」
「あっそういえば、夏休み中に皆で何かやろうって話、良いのがあったよ。」
「どんなの?」
シャルが聞き返してきた。
「星見町の花火大会がちょうど8月の末にあってね。その時、近くの河で昼にバーベキューでもしてさ、そのまま花火を見るのってどう?」
「それはいいな。」
「うん、僕もいいと思う。」
「河で花火を見る。それは風情があって良さそうですわね。」
うん、なかなか好印象だ。
「よし、じゃあそれに関してはそんな感じで準備しておくよ。皆は7月の間にどんなことやってたか教えてよ。」
「よし、私からやらせてもらおう。」
俺のリクエストにラウラが嬉々としてドイツに帰ってからの事を事細かに話してくれた。
そのままセシリアさん、シャルと話していると。
どこからともなく爆音と衝撃、そしてサイレンの音が響き渡った。
「いきなりなんだ!?」
「クラリッサ!聞こえるか!?状況を知らせろ!何…爆発!?」
「まさか…襲撃!?」
「一体何が目的で!?」
「皆様!大丈夫ですか!?」
いきなりの事態に驚くがそれぞれすぐに携帯などをとり出し状況を確認する。
「星夜くん!大丈夫か!!今、会場内の複数箇所から爆発が!」
外から吉良国さんが駆け込んで来る。
「やっぱり襲撃!」
「皆はすぐにそれぞれのブースに急ぐんだ!ISを置いてきてるよね!?」
吉良国さんの言う通りだ。
俺は同じブース内だが皆は距離がある。その間に何かあっても対応が出来ない。
「ユニコーンとレオはセシリア、バイパーとドラゴンはラウラ、ブルとボアはシャルについていって!」
俺の携帯の中に待機していたデータウェポンを呼び出し、それぞれに指示を出す。
「チェルシーはすぐに避難を!私はブルー・ティアーズを取りに戻りますわ!」
「かしこまりました。お気をつけて。」
「ごめんね、星夜、少し借りるよ!」
「一般入場者が混乱してないか?場合に寄っては障害になりかねん。」
「ラウラちゃん言う通りだ、客がパニックを起こしていてとてもじゃないが動けそうに無い、データウェポンを使って飛んだ方がいい。」
テントの外に出ると吉良国さんの言う通り観客達がパニックを起こしていた。
全員が逃げようとしているがどこに逃げればわからずあちこちでぶつかったりしている。
転んだ人を気にかける余裕もなく、蹴ったり踏んだりしてしまっている。
GEARの職員達が頑張って声をかけているが焼け石に水だ。
同じブース内の電童を取りに行くどころか1m進むだけでも困難を極めるだろう。
「皆!気をつけて!頼むぞ!輝刃!」
俺は輝刃を呼び出し、背中に乗る。
「星夜さんもお気をつけて下さいまし!頼みますわよ!ユニコーンさん!レオさん!」
「バイパー!ドラゴン!頼む!」
「ブル!ボア!行くよ!」
セシリアさんはユニコーンの、ラウラはドラゴンの、シャルはブルの背中にそれぞれ乗る。
「皆様のご無事をお祈りします。」
「吉良国さん!チェルシーさんをお願いします。」
「わかった!皆も気をつけて!何が何の目的で来てるかわからないからね!」
チェルシーさんと吉良国さんに見送られ、それぞれの方向へ飛ぶ。
輝刃の背から展示台に飛び乗り、素早く電童を装着する。
「一体何が起こってるんだ……。」
ハイパーセンサーを頼りに周囲の情報を広いながらあちこちから上がる黒煙を見て、俺は呟いた。
はい、今回はここまで。
演習とかやる前に事件発生です。
一体誰が何の為に!?
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ラ「クラリッサ!すぐに戻る!」
ク「了解です!ラウラ隊長!」
ラ「敵影はいくつだ!?」
ク「現在は確認されておりません!」
ラ「何!?」
ク「ただ、パニックによって状況の把握が困難なのは確かです!」
ラ「了解した!可能な限りパニックの収集と市民の避難に努めろ!」
ク「了解!」
次回!IS戦士電童
第45話《強奪》
ラ・ク「「何が来ようとも必ず守る!」」