やっと原作5巻に入ります。
星夜達の学園祭はどうなるのか?
ではでは第50話、走り出せ!
9月、長い夏休みが終わり新学期が始まる。
俺─天野星夜─はアリーナで模擬戦を行う一夏と鈴を見ていた。
この模擬戦は近接戦闘の必要な物を確認する為の物だ。
自分達だけではなく1組と2組のクラスメイト全員が見ている。
「うーん。得意分野をとことん伸ばしたら欠点も同じ位伸びたか…。」
「あぁ、白式・雪羅に振り回れているな。」
「今まででも燃費の悪さがネックだったのが更にひどくなったからねぇ。」
「今までと同じ扱い方では半分の時間も持たないようですし…。」
「燃費が悪いのは私の紅椿もなのだが…それよりも酷くないか?」
模擬戦を見ながらそれぞれ思ったことを言う。
アリーナの中を所狭しと動き続ける2機であるが誰の目から見ても鈴が優勢なのは明白だ。
「箒さんは絢爛舞踏だっけ?あれが安定して発動出来れば改善できるけどね。」
「そのはずなのだがあれ以来発動出来ていないのがな…。」
「しかし、鈴の牽制もうまいな。」
「弾丸が不可視なのをうまく利用してプレッシャーをかけていますわね。」
「この場合一夏は衝撃砲の射程外からの荷電粒子砲か零距離の雪片の2択。やりづらいだろうね。」
近づこうとする一夏に対して青龍刀を振りかぶりながら腕部衝撃砲で攻撃して体勢を崩し即座に離脱する鈴。
距離を取ろうとすれば肩の衝撃砲が遠慮なく撃ち込まれ退路を絶たれる。
「一夏はあれだな。開始直後に零落白夜で決めようとする癖を無くさせないとな。」
「機体特性的には間違ってはいないのだがな…。」
「そうだね。もう少し選択肢は増やした方がいいよね。」
「荷電粒子砲関連の習熟も必要ですわね。」
「む、決着のようだな。」
鈴の両手にもった青龍刀が白式をXの字に切り裂き試合終了のアラームが鳴る。
「くっそおぉぉっ!負けたぁ!」
「イェーイ!勝った!」
ピットに戻るなりそれぞれ叫びを上げる。
「一夏はもう少し消費を抑えて動けるようにしないとな。」
「瞬時加速にしてももう少し減らせるはずだ。」
俺とラウラで一夏にアドバイスを言う。
「鈴は最初に引き離すか近づくか決めておいた方が素早く出来ると思うよ?」
「相手に合わせる必要はありませんし、鈴さんのペースで動けると思いますわ。」
シャルとセシリアさんは鈴にアドバイス。
「ん~そうね。確かに相手のペースを壊してやるためにも先に決めないと行けないわね。」
「ん~どうすれば瞬時加速を減らせるかなぁ…。」
ギャラリーからの感想を受けてそれぞれ考える。
「箒さんはどう?さっきの戦闘で気になるところあった?」
まだ専用機に慣れてない箒さんに声を掛ける。
「やはり、私はしばらく一夏の戦術を基本にアレンジしていく方がいいか。」
「同じ近接型だからね。ただ、箒さんの方が出来ることは多いから頑張らないとね。」
「あぁ。」
「よし、午前の授業はここまで、午後は各グループに別れての実習だ。遅れないように。」
織斑先生が全体に声をかけて授業は終わる。
──
「ふっ悪いわね!一夏!」
「くそ、次は負けねぇ!」
食堂にて一夏が鈴に奢っていた。
なんでも模擬戦前に約束したそうだ。
「一夏…お前の勝率でその賭けは無謀だぞ…。」
「無謀な賭け事は破滅を呼ぶぞ。」
「うぐ…。」
俺とラウラに言われて何も言えない一夏。
ちなみに今の俺達、専用機持ちの勝率はラウラとシャルがほぼ同率で首位タイ、俺と鈴がほぼ同じ位でその下にセシリアさんと簪さんで、一夏と箒さんが最下位争いをしている感じだ。
「あぁ~うまい!とくにおごりって所が!」
「パワーアップしてるはずなのになんで勝てないんだろ…。」
見せつけるように食べる鈴と勝てない事に悩む一夏。
「どう見たって燃費でしょ。あんたの機体の燃費が悪すぎ、正直引くわ。」
「星夜ぁ、あの電池を使えるようにしてくれ~!」
「俺にそれ言っても無駄だろ。GEARと倉持技研に交渉しろ。」
無理難題を言ってくる一夏に突っこみを入れる。
「だ、大丈夫だ一夏!私の絢爛舞踏があればエネルギーなどすぐに回復できる!」
「僕が援護すれば零落白夜もちゃんと当てれるから安心して!」
弱気になる一夏に対して救いの手を差しのべてアピールする箒さんとシャル。
「おおっ!そうだな。2人とも頼むな!」
「あんた1人でやるときの問題がそのままになってるわよ。」
2人に励まされて明るくなった一夏の雰囲気をすぐに鈴が叩き落とす。
そのままそれぞれ一夏と組む場合はどうすれば良いかを話していると昼休みは過ぎていった。
──
午後になり実習の為アリーナにて専用機持ちをリーダーとした各グループに別れて並んで居るのだが一夏が来ない。
「天野、お前は何か聞いているか?」
「いえ、特には聞いてません。」
こうなると当然俺に聞かれる訳で。
「更衣室には居たのか?」
「はい、自分が着替え終わって出るときに入れ違いで入ったので間に合うと思ったんですが。」
ちなみに今、授業開始のチャイムが鳴った。
一夏は遅刻っと…。
「お、遅れました~。」
必死の形相でこちらに来る一夏。
「織斑、なぜ遅れた?」
その一夏の前に立ちふさがる織斑先生。
「えっと…それが…。」
一夏が言うには着替えが終わり、更衣室を出ようとしたところで楯無先輩に捕まった為、だそうだ。
楯無先輩が一夏に用があるなんて珍しいな。
「つまり、お前は特に理由も無く、話をしていて遅れたと言うわけだな?」
「え、え~とそうなります…。」
一夏の言葉が終わると同時に出席簿が垂直に落ちた。
「では、各グループ毎に実習を開始!リーダーはしっかりと指導するように!」
痛がる一夏を尻目に実習が始まった。
「じゃ、始めますか。」
専用機持ちはそれぞれ愛機を展開し、メンバーと向き合う。
今日の実習内容は格闘戦における距離の取り方。
「天野くん!こっちはいつでもいいよ。」
「オッケー。」
打鉄を装備したクラスメイトと向かい合う。
「たぁっ!」
数mはあった距離を一瞬で詰めて右拳を相手の目の前で止める。
「は、はやいねえ…。」
「いくらハイパーセンサーがあっても使っているのは人だからね。油断してるとすぐに相手の距離になるから気を付けてね。」
お互いにISをつけているから反応出来ると思っていたのか予想以上の速さについていけなかったようだ。
「よし、次はそっちが打ち込んでみよう。好きなタイミングでやっていいよ。」
「わかった。」
打鉄の刀を展開し、構える。
「やぁっ!」
「よっ!」
相手が打ち込むのに合わせて一歩下がる。
そうすれば相手の刀は空を切る。
「うそぉ、これでダメなの~。」
「ただ振り下ろすだけじゃ駄目だよ。しっかりと集中して。」
こんな感じで4、5回繰り返したら次の人に替わって続ける。
「天野、お前の所はどうだ?問題は無いか?」
「いえ、特にありません。順調ですよ?」
各グループを見回っている織斑先生が声をかけてきた。
「そうか、後でお前とボーデヴィッヒで模擬戦を行う。」
「わかりました。」
そのまま授業が進み、俺とラウラの模擬戦だ。
「皆が見ているのだ、手本となる戦いをしなければな。」
「そんなに難しく考えないで全力で戦えばいいんじゃないかな?」
「そうだな。織斑先生、準備完了です。」
「こっちも大丈夫です。」
『了解した。では今日の授業の〆だ、しっかりやれよ。試合、開始っ!』
試合開始の合図と同時に飛び込む。
ラウラも同じように飛び込んでくる。
「はあぁぁっ!」
「うおぉぉぉっ!」
それぞれ右腕を構えている。
この状態で使えるラウラの武装は…。
ナイフとプラズマ手刀か。
なら相手の左側面に回り込む。
「読み通りだ!」
こちらが左側面に回り込むのを予測していたらしく即座に左脚の蹴りを放つ。
「こっちもな!」
ラウラが簡単に側面をとらせる訳がないと踏んでいた俺は放たれた蹴りを利用して左脚を掴む。
「ぐっ!」
「そりゃぁ!」
そのまま自分を軸に一回転してラウラを投げる。
「やるな!」
即座に体勢を整えるラウラ。
その隙を逃さす捕らえる。
「剛腕!大裂斬!」
腕のプラズマドライブを稼働させ、叩きつける。
「ちぃっ!」
ラウラは咄嗟に腕を交差させて防御する。
「でりゃあっ!」
「がぁっ!?」
その状態から左脚の蹴りを入れる。
「ぐっ!だがっ!」
蹴りによって距離が開くと同時にラウラはワイヤーブレードを射出する。
4つの内、3つは弾く事が出来たが1つが脇腹にあたる。
「捌ききれない!流石だな!」
「2つは当たると踏んでいたのだがな!」
しばらくはそのまま着かず離れずの距離での攻防が続く。
ラウラのワイヤーブレードに対して俺はヨーヨーで応戦。
ラウラは手数が勝るがこちらはその分一撃の威力がある。
ヨーヨーを回してブレードを弾いたり強引に一直線に飛ばしたり。
気がつくと授業の時間もそろそろ終わりだ。
「ラウラ、そろそろ時間だ。決めさせてもらう!」
「いいだろう!来い!」
そのまま続けると時間切れで引き分けになるのだがここは専用機持ちとして決着を着ける事にした。
エネルギーを多めにヨーヨーに送り、エネルギーが溢れバチバチと音をたてる。
「それ!」
ヨーヨーをラウラに向かい放り投げる。
「甘いぞ!星夜!」
ラウラはAICを使い、ヨーヨーを受け止める。
「貰った!」
その隙に展開した新たな武装を使う。
「な、なに!なんだそれは!?」
ビュッと勢い良く降った腕から伸びるワイヤー、その先から放たれたもの…。
「ベガさん直伝、ベーゴマだ!」
ヨーヨーよりも小さいベーゴマがラウラの近くに飛んでいき、爆発。
『ダメージレベルオーバー、試合終了。勝者、天野星夜。』
「くっ…ヨーヨーが囮なのはわかっていたのだが…。」
「でも、次は通じない…だろ?」
「ふっその通りだ。」
ラウラとピットに戻りISを解除してクラスの元へ。
「今日の実習レポートは明後日の朝までだHRで回収するからそれまでに仕上げるように。」
最後にまとめとして軽めの座学を行い授業終了。
「あぁ、天野は少し残れ。」
「え?はい、わかりました。」
アリーナ内の講義室から出ようとする際、織斑先生に呼び止められた。
「少し気になるものがあってな、簡単な確認だ、そう身構えるな。」
「確認…ですか?」
「あのベーゴマ、アルクトスのものか?」
「はい、織斑先生ってベガさんと知りあい何ですか?」
まさかベーゴマに関して聞かれるとは。
「あぁ、私が現役時代に何度か会う機会があってな。あの武器を見て少し気になっただけだ。」
「今はGEARジャパンに居るのでいつでも会えますよ。」
「そうか、今度アルクトスにたまには会いに来いと言っておいてくれ。」
「はい、わかりました。」
「あぁ、もう行っていいぞ。時間を取らせた。」
「いえいえ、では失礼します。」
ベガさんと織斑先生は知りあいだったか~。
──
放課後、生徒会室に向かう。
明日行う全校集会の準備の為だ。
「じゃ、明日の流れはこんな感じで♪」
「一夏に接触した理由ってこの為ですか?」
「そうね。今まで星夜くん経由で何度か会ってたけどちゃんと話した事も無かったから。」
「遅刻するタイミングは狙いました?」
「い~え、偶然よ♪話しかけやすいタイミングがそこだっただけよ。」
あ、これ絶対狙って話しかけた。
「明日から学園祭に向けた事が色々と始まりますので天野くんにも手伝って貰う事もあると思いますのでよろしくお願いしますね。」
「はい、わかりました。」
「本音、あなたはもう少ししっかりしなさい。」
「うにゅう~。」
俺と会話しながらも本音さんを起こそうとする虚先輩。
「あ、そう言えば星夜くんは知ってるかしら?学園祭の時にはいくつか外部の企業が展示とか行うのは。」
「はい、知ってますよ。その内の一つがGEARですし。」
専門学校とかの文化祭とかって関連企業が来て、自社アピールとか良くするもんな~。
就職先の候補選びの1助にはなるだろうし。
「この担当責任者のアルテア・アルクトスってどんな人?」
「えっと、報告会で数回見てると思いますけど、和服っぽいの服を着た人ですね。責任感の強いいい人ですよ?」
「そう、もしかしたらGEAR関係の対応は星夜くんに頼むかも知れないから覚えておいてね。」
「わかりました。」
しかし、この内容ってすごいなぁ…。
「本来学園祭では生徒や来場客による投票で上位を取った部活とかには特別予算が分配されていたのよ。」
「その代わり今回は一夏をその部に入部させると…。」
「これなら平等よね~。」
楯無先輩の手にはいつもの扇子があり《争奪戦》と書いてある。
「天野くん、しばらくは運動部に注意してくださいね?」
「えっ?」
虚先輩に言われ、一瞬首をかしげる。
「学園祭で1位になれる望みの薄い運動部が会長の座を奪う為に襲撃してくると予想されますから。」
「あぁ~、なるほど。IS学園の生徒会長は生徒最強じゃないといけないんですもんね。」
「そう、その関係で生徒会役員で専用機持ちの君を襲う可能性もあるからね?」
そう言いながら扇子を閉じて開くと《実力主義》と書いてあった。
「わかりました。気を付けておきます。」
「少し、話が変わりますが。天野くんは誰を呼ぶかちゃんと考えていますか?」
虚先輩が聞いてくる。
「呼ぶ?」
「天野くんはご存知ありませんでしたか。学園祭の時には生徒1人につき1枚招待券が渡されるんですよ。」
「なるほど。1人か、中々悩みますね。」
銀河、北斗、エリス……など頭の中で誰を呼べば良いか軽く考える。
「折角の機会ですからよく考えて下さいね?」
「はい、わざわざありがとうございます。」
とりあえず皆の予定とか聞いてみるか…。
──
翌日、全校集会が行われる。
「あれ?一夏、星夜は?」
「シャルか、なんかいないんだよな。もう始まるのにどこ行ったんだ?」
「先程、織斑先生に何かを言っていたようだから無断では無いだろう。」
クラス毎に集まりつつある体育館にて星夜が居ないことに気がついたシャルロットは一夏に尋ねたが知らなかったようだ。
「星夜さんが抜ける理由、何でしょうか。」
「織斑教官が許可したのなら問題は無いのではないか?」
特に心配することでもないと全員がそれぞれしっかりと列に並ぶ。
「では、全校集会を始めます。」
壇上にて司会を勤めるのは本音の姉、虚。
一夏達は彼女が生徒会役員であることをこの場で初めて知った。
「あの人ってのほほんさんのお姉さんだよな?」
「虚先輩だな。」
「生徒会だったんだね。」
「真面目そうな方ですし、ぴったりですわね。」
「しっ、静かに。教官がこちらを見ている。」
知りあいが生徒会役員だったのでつい小声で喋っていたため、軽く千冬に睨まれる一同。
「では、生徒会長からのお話です。」
(生徒会長か、そう言えば今まで見たこと無かったな。)
一夏、いや今年の1年生達は1学期の間、生徒会長を見たことがなかったのでどんな人物かとイメージしながら壇上を見る。
すると壇上に来たのは一夏達には何度か見たことのある人物だった。
「皆さん、おはよう。今年はゴタゴタが続いてて中々挨拶ができなくてごめんなさい。私は2年生の更識楯無。あなた達生徒の長、生徒会長よ。よろしくね♪」
陽気に挨拶をする楯無に一夏達は驚きを隠せなかった。
「さて、1人紹介するわ。生徒会の新役員、会計補佐に就任する天野星夜くんよ。」
楯無に紹介されると同時に星夜は壇上に上がり、楯無の横に並ぶ。
「え~。只今紹介に預かりました天野星夜です。会計補佐として今後は様々な行事に関わって参りますのでよろしくお願いします。」
簡単に挨拶をし、頭を下げる星夜。
一夏達には再度衝撃がはしる。
「さて、皆さんが言いたいこともあるかも知れませんが、それは後に質疑応答の時間でお願いするわね?」
ざわめいていた生徒達が少し、静かになる。
「皆さんご存知だと思いますが今年は非常に多くの、特に1年生が関わる行事に何らかのトラブルが起き、中断や縮小と言ったことが起きています。」
楯無の言葉に一夏をはじめとする1年生の専用機持ちはギクリとする。
「次の行事は学園祭、学園をあげて行われる行事。当然外部の方々も多数お越しになられます。よって!今まで以上に盛り上げっ!中断や中止になった行事の分まで!楽しもうではありませんか!」
楯無が声を大きくする。
一体どうやって学園祭を盛り上げるのか全校生徒の視線は期待に満ちていく。
「その名も!『部活動対抗!織斑一夏争奪戦!』」
いつの間にか起動していた大型スクリーンには一夏の顔写真が映し出されていた。
「なっ──」
「『なっんっだって───────!!!』」
一夏の驚きはその他の全ての生徒の大合唱によって消された。
「生徒の皆さんならご存知の筈ですが!本来全生徒は何らかの部活動等に参加しなければなりません。ですが織斑くんは未だに所属もありません。このまま各部活動が織斑くんに勧誘を行えば彼の学業に影響が出るのは明らかそれでは学生として本末転倒、ですので一番平和でかつ、公平に決めようと思ったのです!」
ざわざわと騒ぎ出す生徒達。
「毎年学園祭では生徒、教師、来場者からアンケートをとり、その上位の部活動等に対して特別金の配布を行っておりました。しかし、今回はその1位の部活動もしくは委員会には織斑くんが入ります!」
楯無が宣言すると同時に生徒達は喝采を上げる。
また、一夏は未だに状況が把握できずポカンとしていた。
「いっ、一体どう言う事だよ……。」
そのまま全校集会が終わって生徒が各々教室に向かう中、やっと一夏の口から出た言葉はこれしかなかった。
──
教室に戻った各クラスは学園祭での演し物を決めるためのLHRが開かれていた。
「え~、一度皆さんから出た意見をまとめると─」
クラス代表として一夏は意見をまとめる為、黒板を背にクラスを見渡して。
「全部却下だっ!」
バッサリと切り捨てた。
クラスからは大ブーイングの嵐だ。
ちなみに今まで出た意見は『一夏のホストクラブ』『一夏とツイスター』『一夏とポッキーゲーム』『一夏と王様ゲーム』等…………。
『星✖鈴のイチャラブ観察』って提案したの誰だ!
匿名の用紙提案だからって調子に乗りやがって!
筆跡鑑定して犯人を追い詰めるか!?
そもそも鈴は2組だろうが!
「そもそもこんなのやって誰が嬉しいんだ!」
「最低でも私は嬉しい!」
「私もだ!」
「ぼっ僕もっ!」
一夏と女子連合軍による演し物論争はずっとこれの繰り返しだ。
ちなみに織斑先生はすでに職員室に居るので山田先生に頼るしかないのだが残念な事に山田先生も連合側だ。
「星夜っ!お前もっ!何か有るだろ!?」
「俺か……。」
流石にこのままでは先に進まないと判断した一夏はこちらに話を降ってきた。
「ん~。俺と一夏がこのクラスの強みなのは間違いでは無いけどそれだけだと活かす方向が違うよね?」
「えぇ~だって私たち織斑くんや天野くんと触れあいたいよ~。」
「そうだそうだ~。」
欲望に忠実過ぎるだろ、このクラス。
「なら、メイド喫茶はどうだ?」
席から立ちあがり、周りにしっかりと聞こえる声で提案したのは……ラウラだった。
「メ、メイド喫茶…。」
「ラウラ、意味わかって言ってるよな?」
まさかラウラからこのような提案が出るとは思わず、俺と一夏で聞き返してしまった。
「あぁ、店員が給仕の服を着て、来店客に接客するのだろ?」
「あぁ、間違ってないな。」
「我々はメイド服を、星夜と一夏には執事服を用意して着れば対等だ。それに他のクラスだけでなく様々な人が来るだろう。そうすれば収益も悪くないはずだ。」
スラスラと喋るラウラ。
「星夜と一夏が交互に休憩を取れば『噂の1年1組に来たのに男性操縦者に会えなかった』と言うクレームが来ることも無いだろう?」
「執事服を着た織斑くん達に『お嬢様』って呼んでもらえる…。」
「これなら確かにふれあえる…。」
周りもそれぞれこの意見に賛成のようだ。
「他の意見も無いし、1年1組の学園祭の演し物は喫茶店で──」
「「「意義な~し!!」」」
こうして1年1組の演し物は喫茶店…厳密には『ご奉仕喫茶』に決定した。
ちなみにこの事を織斑先生に報告した際、提案者がラウラと知って大笑いしたそうだ。
──
放課後。
生徒会室で虚先輩と学園祭に向けた書類の準備をしていると一夏を連れて楯無先輩が入って来た。
「楯無先輩お帰りなさい。一夏はいらっしゃい。」
「ええ、ただいま~。織斑くんはそこに座ってすぐにお茶を出すから。」
「は、はぁ。」
言われた通りに席に座る一夏。
「なぁ、星夜はあの人が生徒会長なの知ってたのか?」
「あぁ、初めて会ったときに言われた。」
そもそもこの部屋だったし。
「じゃあなんで教えてくれなかったんだよ。」
「聞かれなかったし、教える必要もなかったしな。」
「てか、星夜はあれの事をいつから知ってた?」
「あれ?あぁ、一夏を景品にした学園祭の事か?昨日だな。」
「なんで俺に相談が無いんだよ!それに俺は部活動なんてやってる余裕が無いのは知ってるだろ!?」
一夏がすごい勢いでこちらに迫ってくる。
「一夏が言いたいことも解るが楯無先輩も言ってただろ?『生徒は部活動等に参加しなければならない』って。未だに何の所属も無いのはお前だけだ。」
「でもよ、どうして学園祭で決めることになるんだよ。」
「お前が何も参加しないせいで各部活動とかから大量の苦情が来ていてな。」
「そ、そうなのか。」
苦情が来てることを知り、少し落ち着く一夏。
「そもそもお前、前にシャルの件で『俺、勤勉だから校則もちゃんと覚えてるぞ』みたいな事言ってたよな?その校則の中に書いてあるぞ。」
「あ…。」
硬直する一夏。
お茶を入れた楯無先輩と虚先輩、そしてさっきまで寝ていたがお茶会と聞いて復活した本音さんがケーキを持ってきた。
「まぁ、織斑くんにも言いたいこともあるでしょうけど、このまま放っておいたらさっきみたいな勧誘があるかも知れないわよ?」
楯無先輩が一夏を脅すような口調で言う。
さっきみたいな、とは一夏を賞品にした学園祭での勝ち目の無い運動部の生徒達が襲撃してきた事を言うらしい
。
「ラウラやシャルだって部活動をやってるんだ。お前だけがやらない訳にはいかないんだよ。」
「わかったかしら?」
「た、たしかにそうかも知れませんが。」
「大丈夫、その代わりに、私が織斑くんの事を鍛えて上げるわ。」
「遠慮します。」
楯無先輩の提案を断る一夏。
「なんで断るのかしら?」
「既に皆から教わってるので。」
「ねぇ星夜くん。」
「なんですか?楯無先輩?」
一夏を見たままこちらに問いかける楯無先輩。
「君はどう思う?」
「楯無先輩の指導ですか?確実に実力は上がると思います。」
「だ、そうよ?」
「星夜は関係ありません。そもそもなんで指導する話になるんですか?」
「それは君達がまだまだ弱いからよ。」
「……そんなに弱くないと思いますが。」
楯無先輩に『弱い』と言われ少しムッとする一夏。
「いいえ、弱いわ。星夜くんもあなたも。だから少しでもマシになるように鍛えてあげるわよ。」
「じゃあ、勝負しましょう!それで負けたらしたがいます!」
一夏は立ちあがり、楯無先輩に挑戦状を叩きつける。
「ええ、いいわよ。」
対する楯無先輩は笑って答えた。
その後、一夏と楯無先輩は勝負の為、部屋を出ていった。
「天野くん、先程の話、あなたも対象になってましたが何も言わないんですね?」
「既に先輩の実力を目の当たりにしてますし、現役の国家代表と専用機貰って半年の人間じゃ月とスッポンも良いところですよ。」
虚先輩と書類仕事をしながら話す。
確かに弱いと言われて気にならない訳では無いが事実なので何も言えない。
「冷静ですね。」
「きっと簪さんと楯無先輩の勝負を見てなければ一夏と同じ反応してましたよ。」
「なるほど。少し話が代わりますがいいですか?」
「なんですか?」
何か虚先輩が俺に聞きたい事があるのか?
「いえ、先日偶然にも天野くんのご友人に会いまして。」
えっと…虚先輩が知ってる友人…北斗かな?
「喫茶店に居た北斗ですか?」
「はい、少しお話をしたのですが彼はなかなか博識ですね。」
「そうですね。北斗は文武両道をしっかりと出来る奴ですからね。あと、あいつは面白い特技を持ってるんですよ。」
「あら?なにかしら。」
「スポーツとかで手本を1回見せるとほぼ同じ動きが出来るんです。」
「それはすごいわ。」
北斗の特技を聞き、驚く虚先輩。
「予定が合えば学園祭にも来ますよ。その時に見れるかも。」
「そうですか。それは是非見たいわね。」
そんな会話をしながら書類を2人で片付ける。
ちなみに本音さんはほぼ寝てました。
──
「さてと、学園祭は誰を誘うかな……。」
書類仕事が終わり、部屋に戻って招待状を使って誰を呼ぶか考えていた。
「そろそろ皆からメールの返事も来てるかな?」
友人達に送ったメールの返信を確認する。
「おっ来てるな。」
あくまで1人しか招待できないので5人程しか送ってない。
「ん~。どうするかな。」
2人まで絞れたけどどっち呼ぶかな……。
そんな風に考えているとドアがノックされる。
「星夜、居るか?私だ。」
「ラウラ?どうかしたの?」
珍しくラウラがやって来た。
とりあえず部屋に入れてお茶を出す。
「いや、星夜に提案があってな。」
「提案?」
なんだろうか?学園祭の演し物の事でかな?
「LHRの際に招待状が配られただろう?」
「うん。」
「恥ずかしいことに私には招待する友人がいないのだ。軍の部下達もスケジュール的に厳しくてな。」
ラウラは今日配られた招待状を出して続ける。
「そのまま無駄にするのも勿体ないだろう?だから星夜が使ってくれないか?」
「そう言う事なら喜んで使わせてもらうよ。ありがとうラウラ。」
渡りに舟ってこう言う事かな。
招待状が2枚になったので2人とも誘えるぞ。
「いや、日頃から迷惑をかけているしな。それに余り物みたいな物だ。気にするほどじゃない。」
「いやいや、今2人の内どちらを誘うか考えていた所でね。両方誘えるのはありがたいよ。」
「そうか、なら良かった。」
笑うラウラにこちらも笑顔で返す。
「そうだ、今日の特訓で楯無先輩が来たのだが星夜は知っていたか?」
「あぁ、生徒会室で話してるのは聞いた。」
「やはり、現役の代表はすごいな。」
恐らく一夏と箒さん以外は楯無先輩が現在のロシア代表であることは知ってるだろう。
今日、一夏に対して行っていた指導を見て感じたそうだ。
「今日は指導しているだけだったがその内容でどれだけ実力があるかは解る。」
「生徒会長でロシア代表だからね。ホント、すごいよ。」
「普段の態度からは全く想像がつかなかった。」
「そうだね。今日はどんな事やってたか教えてくれない?」
「あぁ、いいぞ。まずは───」
ラウラからその日の特訓の内容を聞いて復習しておく。
「星夜はPIC制御は出来るか?」
「あぁ、じゃないと出来ない技もあるからね。」
「そうか、なら問題は無いだろう…む、もうこんな時間かそろそろ失礼する。」
「うん、色々ありがとう。また明日ね、おやすみ。」
「うむ、また明日。」
ラウラは部屋を出て、まっすぐに歩いていった。
「あ、招待状の準備してから寝るか。」
ラウラから貰った招待状も合わせて2枚分、発送する用意をしてから俺は眠りに着くのだった。
はい、今回はここまで。
普通に考えて楯無さんは現役の代表なんだから一夏と箒以外は知ってそうな気がするんだけどな代表候補生達……。
なんか普通に知らないような扱いだけど…。
ご意見やご感想等はお気軽にどうぞー!
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鈴「よし!学園祭も中華で決まりね!」
簪「私のクラスは劇。」
鈴「あんたは何かやるの?」
簪「本当は裏方やりたかったけど。クラス代表だからって気がついたら主役に……。」
鈴「へぇ~。ま、頑張りなさい。」
簪「うぅ、恥ずかしいよ…。」
鈴「で?何の劇やるのよ?」
簪「まだ決まってない…。」
次回!IS戦士電童
第51話《学園祭準備中!》
鈴・簪「部活に入るの星夜(くん)じゃダメなのかな?」