IS戦士電童   作:東風乃扇

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みなさんこんにちは~。

東風乃扇です。
今回は主人公の出番がほぼ無いです。

さて、楽しい学園祭は無事に終わるのか!?

第53話、始めるよっ!


第53話《学園祭の楽しみ方?》

IS学園─普段は世界でも有数の教育の現場として機能しているが今日だけは違う。

IS学園生のみならず沢山の人が廊下を、教室を、中庭を行き来している。

 

「なぁ、北斗~何か食わねぇ?そろそろ腹へったぜ。」

 

「そうだね。時間的にもちょうどいいかな?」

 

北斗は腕時計を確認しながら答える。

時計の針は12時を指そうとしている。

 

「さっきあの辺にたこ焼きとか焼そばとかあったなっ!」

 

そう言うとすぐに銀河は駆け出す。

 

「あっ!銀河っ!いきなり走ると誰かにぶつかるよ!」

 

「へっ!エリスじゃねぇんだから平気、平気!」

 

北斗の注意を無視して走っていく銀河を追うため北斗も少し急ぎながら歩く。

 

「全く、銀河は変わらないなぁ。」

 

「きゃっ!?」

 

角から出てきた人と肩が当たってしまった北斗。

 

「おっと…大丈夫ですか?すみません。」

 

「あ、はい大丈夫です。少し急いでいたので申し訳ありません。」

 

IS学園の生徒だったらしく、そのまますぐに走って行ってしまった。

 

「お~いっ!北斗、早く来いよ~っ!」

 

「うん!すぐ行くよっ!」

 

呼び掛ける銀河の元に行く北斗だった。

 

「ねぇねぇ、今の人、どうだった?」

 

「メッチャイケメン!」

 

「あの人呼んだの誰だろ!?誰かの彼氏!?」

 

「なんでも1組の天野くんが呼んだみたいよ?」

 

「ならワンチャンあるかも!?」

 

実は先程肩が当たった生徒はわざと当てたのだった。

別に難癖付けようとかでは無く、ちょっといい男居ないかなーと言うグループがたまたま北斗に目をつけただけだ。

 

──

 

「ありがとうございました。」

 

俺─天野星夜─は休憩から戻ったあと、先程と同じように接客をしていた。

 

「はい、星夜くんは5分休んだら7番の席にいってね。」

 

「はい。わかりました。で、何の用です?楯無先輩。」

 

先程ふらっと教室に楯無先輩が来て何故か手伝いをしているのだ。

主に指示と調理をしているようだ。

 

「ん~?特にはないわよ?ただ後で一夏くんを貸してほしいからその分の労働力を提供してるのよ。」

 

「そうですか。」

 

クラスメイト達との交渉も終わっているらしく、近くにいた数名が頷いていた。

 

「さっきより楽に感じるのは楯無先輩の指示が的確だからかな?」

 

「そうよ?なんでも急いでやればいいって物じゃないわ。色々と考えないとね。」

 

「6番のテーブルが空いたぞ。次の客を案内してくれ。」

 

ラウラが入ってきて近くの人に報告する。

 

「あ、ラウラちゃんはこのあと廊下で受付の手伝いね。」

 

「了解した。受付に向かう。」

 

楯無先輩の指示を受けてラウラが受付に行く。

 

「じゃあ、自分も7番に行きます。」

 

「はい、行ってらっしゃ~い。」

 

気持ちを切り替えて席に向かう。

でも…一夏を使って何するんだ?楯無先輩は……。

 

──

 

「かぁ~っ!やっぱりここはすげぇなっ!」

 

「うん、なかなか見ることの無い物もあるしね。」

 

学園内を周り、休憩所として開放されている図書館で休みながら話す北斗と銀河。

 

「でもよ、なんか落ち着かねぇな。」

 

「まぁ、ここは女子校見たいな物だし僕達位の男子が居るのは珍しいんじゃない?」

 

「そうだな。すれ違った奴の中でも俺達と同じくらい奴なんて殆ど居なかったもんな。」

 

銀河が思い出せる範囲で数えるが指折り数える程しか居なかった。

 

「このあとはどうしようか?一通り見たけど。」

 

「ん~。星夜は忙しそうだしな~。でも帰るのも勿体ねぇしなぁ~。」

 

「あの、少しよろしいでしょうか?」

 

2人で話をしていると声をかけられた。

 

「ん?あっ!さっきの眼鏡のねぇちゃんじゃん。」

 

「布仏さん、どうかしましたか?」

 

手にファイルを持った虚が2人の所に近づく。

 

「この学園に同年代の男性が来るのは珍しいのでアンケートにご協力頂けないでしょうか?」

 

持っていたファイルを開き、中からA4サイズのプリントを出して2人の前に置く。

 

「えぇ、それくらいでしたら。」

 

「あぁ、いいぜ。」

 

「ありがとうございます。」

 

虚からペンを受けとり、アンケートに書き込む2人。

 

「そういや北斗はこのねぇちゃんと仲いいけど何処かであったのか?」

 

「うん、前に星夜が友人達と『ポラール』に来てね。それから何回か来てくれてるんだよ。」

 

「えぇ、あの辺りに用事があるときによらせていただいています。」

 

「へぇ~。アンケート終わったぜ。」

 

「僕も。」

 

「はい、確かに。ありがとうございました。」

 

2人からアンケートを受けとりファイルにしまう。

 

「あっ一つ聞いていい?」

 

「なんでしょうか?出雲くん?」

 

「学生から見てオススメって何?」

 

「そうですね…今なら第三アリーナでラファールと打鉄を使った模擬戦を行いますからそちらはどうでしょうか?動いているISを間近で見る機会はなかなか無いと思いますし。」

 

「おっそりゃいいな!北斗、行こうぜ!」

 

「そうだね。ありがとうございます。」

 

「はい、お楽しみ下さい。」

 

軽く頭を下げ、見送る虚。

 

「さて、そろそろあちらの準備ですね。」

 

虚も図書館を出て行く。

 

──

 

「うぅ、折角の学園祭なのに星夜さんと回れないとわ…。」

 

「休憩の時間はクジで決まったのだから仕方あるまい。」

 

「げ、元気出してセシリア。ほ、ほらこの後はあれがあるから!」

 

一夏、箒さん、シャルが休憩から帰ってきてからも未だに減らない客の対応をしていると聞き逃せない言葉が聞こえた気がした。

 

「シャル、あれって?」

 

「えっ!?い、いやっ!こっちの話!こっちの!」

 

なんか露骨に拒否されたな。

 

「そうか、なら言及しないで置く。」

 

「そうよ~。女の子の秘密を聞こうなんてデリカシーの無い真似はダメよ?」

 

こちらを見ながら楯無先輩の扇子に《デリカシー》と書いてある。

 

「そろそろ一夏くん借りてくからね~。」

 

「わかりました。」

 

「えっ?おれっ!?」

 

この後に自分が貸し出される事を本人は知らなかったようだ。

楯無先輩に捕まり引きずられる一夏を見送る。

 

「あれ?皆も?」

 

「う、うん。ちょっとね。」

 

「すまない、極秘指令だ。」

 

「では皆、後を頼むぞ。」

 

「行って参りますわ。」

 

その後に続くようにセシリアさん、ラウラ、シャル、箒さんの4人が教室から出ていく。

 

「あっ天野くん。もう終わりでいいよっ!」

 

「相川さん?どうして?」

 

「いや~、あんだけ仕入れたのに全部在庫が無くなったのよ…。」

 

後ろでは空になった箱を潰しているクラスメイト達。

 

「そ、そんなにか。」

 

「うん、だから1組はもうこれで閉店。片付けは明日があるから今日は軽めの掃除だけ。」

 

「そっか、じゃあ残り後少しだけど先に行かせてもらうよ。」

 

「うん。おつかれ~。」

 

受付の所に終了の貼紙をして、廊下へ。

 

「えっと…今やってるのは…。」

 

パンフレットを取り出して体育館で行われてる劇やアリーナを使った演物の確認をする。

 

「んん?…生徒会の劇…しかも参加型…?一夏はこれに引っ張られたのか。」

 

しかし、何も詳細が書かれて無いんだよなぁ。

俺に何も言わなかったのは一夏にばれないようにかな?

 

「アリーナの方でも行くか。銀河と北斗ならそっちに行きそうだし。」

 

とりあえずアリーナに向かうことにした。

 

──

 

「すっげぇなぁ。」

 

「やっぱり生で見ると違うね。」

 

アリーナ内でラファールと打鉄の模擬戦を見る2人。

テレビでやってる中継位しかISを見る事が無い人々にとっては間近で飛び回るISはそれだけで見物である。

 

「本当に空中を滑るように動くんだな。」

 

「急な方向転換も慣性が無いからすごく速い。」

 

ちなみにこの模擬戦は一般の人でもしっかり見れるように速度を抑えて行われている。

 

「本当ならこの戦いが数倍の速度で進んでるんだよね。」

 

「いつもこんな戦いしてるのか…星夜は…。」

 

地に足を着けての格闘技をやるぶんには自信がある。

ただ、目の前で繰り広げられているのは広大な空を使った高機動戦闘。

前提条件が違い過ぎるがそれを見て何処かで敗北感を感じる銀河。

 

「大丈夫だよ。」

 

「北斗?」

 

「星夜はISが使えるからって『銀河じゃ相手に成らない。』なんて言わないよ。」

 

北斗に今の気持ちを言い当てられてポカンとする銀河。

 

「あれ?違うことだったかな?」

 

「いや、合ってるけどよぉ。なんでわかんだよ?」

 

「あんなに怖い目で見てればわかるよ。僕達なら。」

 

「それもそうか。俺達だしな。」

 

2人で笑ってから再びアリーナに目を向ける。

 

その直後、アリーナに大きな爆発が起きた。

 

──

 

体育館にて。

織斑一夏が王子の格好をして舞台の上に立っていた。

沢山のスポットライトが一夏を浮かび上がらせる。

 

『昔々ある国に1人の王子様が居ました。』

 

楯無の声によるナレーションが始まる。

台本も無く、全てアドリブだと言われたが舞台の設定すら聞いてないので一夏も楯無によるナレーションを聞き逃せない。

 

『その世界はは不思議な力で溢れていました。特に王族は聖なる獣の守護により大きな力を持っていました。』

 

楯無のナレーションに合わせ一夏の頭上に輝刃がエイリアス体で出てくる。

 

『人々はその力を欲しました。』

 

気がつくと一夏の周りには人が立っていた。

ライトは一夏のみを照らしているため周りに居るのが誰かまでは解らない。

ただ、わかることは皆、綺麗なガラスの靴を履いていることくらいか。

 

『そして、その時は偶然にもこの王子を除いて全ての国は王女しか産まれなかったのです!そうすれば当然、たった1人の王子に多数の求婚者が集まります。』

 

少し照明が明るくなり、周りに立っている人の服装がドレスであることがわかる。

ナレーションからしてウェディングドレスを意識した物だろう。

 

『その国の王は言いました。「我が国の王子と結婚したければ力を示せ。獣の力を宿す王冠を手にした者に結婚を認めよう」と。』

 

ナレーションが終わると同時に一夏に集中していたスポットライトが分散し、それぞれを照らす。

 

「王子!その王冠を頂くっ!」

 

「王冠寄越せっ!」

 

「私が頂きますわっ!」

 

「王冠…貰うよっ!」

 

「さぁ!王冠を渡してもらおうかっ!」

 

「お願い!王冠ちょうだい!」

 

一夏を囲んでいたのは一年生の専用機持ちだった。

ラウラ、鈴、セシリア、簪、箒、シャルロットが一斉に踏み出す。

 

『「いかなる手段でも構わない。全てをもって挑むが良い!」王子は自らが望まずとも戦いの中に放り込まれたのです!』

 

「なんだってぇっ!?」

 

この瞬間、一夏は理解した。

今、この6人は自分の王冠を狙っているのだと。

飛び掛かってくる6人を避けるため、後ろに下がる一夏。

気がつけば輝刃は白式の中に入ったようだ。

 

「あっぶ……なぁっ!?」

 

次の瞬間、6人はそれぞれの獲物を取り出していた。

刀、ナイフ、短剣はまだわかるがライフルやショットガン、薙刀はどこにしまっていたのか、一夏は疑問に思うがそれを口にしてる余裕はない。

 

「こちらの目的は王冠だ。それさえ渡せば命の保証はしよう!」

 

ナイフを構え、先陣を切ったのはラウラだ。

 

「ちょっ!まてっ!」

 

一夏は回避に専念する。

 

「隙だらけよ!貰ったぁ!」

 

ラウラの格闘を縫うように一夏の足元にめがけて鈴が短剣を投げる。

 

「うぉっと!!」

 

格闘の最中に横から狙われては対処出来ずバランスを崩す一夏。

 

「「貰ったぁ!!」」

 

倒れた一夏の頭にある王冠を狙い鈴とラウラが飛びかかろうとする。

 

「っ!」

 

次の瞬間、鈴とラウラの間にセシリアがライフルを放つ。

 

「邪魔をするなっ!」

 

「あんたから潰すわよっ!?セシリア!」

 

どう見ても妨害の為に放たれた弾丸に怒りを覚える2人。

そのままセシリアとの戦闘を開始する。

一夏はその隙に体勢を立て直す。

 

「ふっ!」

 

「たぁっ!!」

 

そこを簪の薙刀と箒の刀が狙う。

 

「やらせないよっ!」

 

一夏の前に立ち、ショットガンを簪と箒に向けて放つシャルロット。

 

「一夏、大丈夫!?」

 

「あ、ありがとう。シャル。」

 

こんな時でも自分を守ってくれるシャルロットに感謝する一夏。

 

「邪魔立てするならそちらから倒させて貰うっ!」

 

「一夏はやらせないよ!」

 

「よし、2人が争ってる内に…。」

 

箒とシャルロットがにらみ合い、その横を簪が行こうとする。

 

「簪も!行かせないよ!」

 

「その程度で出し抜けると思ったか!?」

 

気が付くと一夏を放り出して2つの戦闘が行われる。

高校生とは思えない身体能力を駆使した戦いは見ている人たちが「これ、なんの劇なんだ?」と言う疑問を消し飛ばす程だった。

 

「…………。」

 

一夏はその戦いから距離を取るようにゆっくりと下がる。

 

『当然、求婚者は隣国の王女だけではありません。国中の貴族達も自慢の花嫁を王子の元に送り込んだのですっ!』

 

楯無のナレーションと共に舞台の両脇から大量のドレスを着た生徒達が飛び出してくる。

 

「王冠だっ!」

 

「王冠っ!王冠っ!」

 

「王冠置いてけぇっ!」

 

「王冠を寄越せぇっ!」

 

「うっ!うわあぁぁぁぁっ!」

 

その迫力は何度かの実戦を積んだ一夏でも恐怖を覚える程だった。

 

「一体俺が何をしたあぁぁっ!?」

 

一夏は吠えながらも必死に逃げ回るしかなかった。

…一夏は知らないがこの劇で一夏の持つ王冠を手にいれた者は一夏、星夜のどちらかと同室になれると楯無から言われ、全員が二つ返事で引き受けている。

 

「ど、どうすりゃいいんだ……。」

 

いくら大きな舞台だとしてもこの人数が参加すれば逃げ場は無い。

一夏はとりあえずセットの裏に隠れるように移動する。

 

「ここも時間の……「こっちです。付いてきて下さい。」うわぁっ!?」

 

舞台の下から足を捕まれ、引きずり込まれた一夏。

だが、言葉からしてこちらを助けてくれるようだ。

目の前に見えるスーツ姿の女性を追いかける。

 

「ここまで来れば大丈夫でしょう。」

 

「はぁ…はぁ…ありがとう……ございます。」

 

舞台の下にある通路を通り、更衣室へとたどり着く。

一夏は息を整え、ここまで誘導してくれた人物にお礼を言いながら顔を確認する。

 

「あっ巻紙さんだったんですね。」

 

「はい。」

 

一夏に言われ、にこにこと笑顔で答える巻紙。

先程、休憩中に出会った人で当社のIS装備を使ってくれないかと頼んできた。

白式は新しい武装の追加はコアが全く受け付け無いので丁寧に断ったのを一夏は覚えている。

さっき名刺を貰ったのだが何処の会社か確認するのを忘れていた。

 

「ひとつ、お願いがあるのですが…。」

 

「えっと出来ることなら…。」

 

助けて貰ったのだからその分の礼はしないといけない。

一夏はそう思いながら答える。

 

「白式を譲っていただきます。」

 

「えっ?」

 

笑顔のまま急に距離を詰めながら言われた言葉を理解できず一瞬固まる一夏。

 

「貰ったあぁっ!」

 

先程までの安心感を与えるやさしい笑顔から、恐怖を煽る禍禍しい笑顔に変わる。

 

「っ!?」

 

恐怖のお陰か反射的に後ろに飛び下がる一夏。

 

「ちっ、ガキの癖に勘がいいじゃねぇか。」

 

「お前…何者だ!?」

 

一夏は睨み付ける。

 

「威勢がいいな…今時の男にしちゃぁマシな反応だ。」

 

ISを展開しながら言葉を続ける。

 

「いいぜ教えてやるよ…『亡国機業』のオータム様だ。覚えておきな!行くぜ!アラクネっ!」

 

一夏はその瞬間、前に聞いた話を思い出す。

 

「欧州でISを奪った奴の1人か!」

 

シャルロットとラウラが同時に戦い、データウェポンを駆使してやっと対等だった人物。

その人物が今、自分と白式を狙っている。

白式を展開し、雪片を構える。

 

「オラオラオラっ!」

 

「くっ!?なんて手数だっ!」

 

本人の四肢のみならず多数の装甲脚が一夏を倒さんとラッシュをかけてくる。

たった一本の雪片で防ぎきれる訳もなく、装甲脚のジャブを喰らいそのままオータムの右ストレートを貰う。

 

「がっはぁっ!」

 

「おいおい、こんなもんかよ…。」

 

吹き飛ばされ、後ろにあったいくつかのロッカーをグシャグシャに変型させる。

オータムはつまらなそうにゆっくりと近づいてくる。

 

「ぐっまだだっ!」

 

一夏はすぐに立ちあがり距離を取る。

 

「お前…近距離型だろうが!」

 

すぐにオータムは全部の装甲脚を射撃モードに変更、一夏に狙いをつける。

 

「くっ!」

 

すぐに横に飛び、射撃を避ける。

最近教わったPIC制御を駆使してロッカーの間をすり抜ける。

 

(こいつ相手に1人は危険だ…。)

 

一夏は冷静に考える。

この敵はどう考えても自分より場数を踏んでいるだろう。

技量の差は圧倒的だ。

それにこちらは周りの被害を考えて攻撃しなければならない。

こんなところで荷電粒子砲を使えばどんな被害がでるかわかったものでもない。

 

(時間を稼げば誰か来るか?)

 

わざわざ学園に潜入してまで白式を奪う敵がその事を考慮してないとは思えない。

 

「それそれっ!当たっちまうぞ!」

 

「くぅ。せめてもう1人いれば…。」

 

一夏が呟くと同時に思い出す。

 

(そうだ!さっきの劇のどさくさで輝刃が居るじゃないか!)

 

力強い味方が居ることを。

 

「うおおぉぉぉっ!」

 

「やっとその気になったか!」

 

一気に加速して距離を詰める一夏、それと同時に輝刃を召喚する。

 

「喰らえぇっ!」

 

「甘いんだよっ!」

 

輝刃と同時に斬りかかる。

…が輝刃は装甲脚からの射撃で止められ、一夏は真剣白羽取りで雪片を止められてしまう。

 

「なっ!」

 

「喰らいなっ!」

 

装甲脚から至近距離で射撃を叩きこまれる。

シールドエネルギーがあるので体がに傷はつかないが、衝撃は内部にしっかりと伝わるため、苦痛である。

 

「ぐあぁぁっ!」

 

「へっ!」

 

装甲の少ない部分を的確に狙い撃ち込まれた射撃。

身体中を襲う痛みの中、一夏は痛みをこらえ、左腕を振るう。

雪羅をクローモードにし、オータムの油断を狙う。

 

「なにっ!?」

 

オータムはこの状況で反撃をするとは思わなかったため、反応が遅れた。

だが、射撃を受けながらと言う無理な体勢からの反撃のため、与えたダメージは装甲脚の一つを無力化するだけで終わった。

 

「てめぇっ!」

 

オータムが一夏を蹴り飛ばす。

 

「輝刃っ!」

 

一夏に集中している瞬間を狙い、背後から一撃を入れる輝刃。

 

「ざっけんなっ!てめぇもまとめて貰ってやるっ!」

 

オータムの傷はまだまだ浅い。

それに比べ一夏はすでに大きなダメージをもらっている。

幸い、白式の生命線たる加速力と攻撃力はまだ健在だ。

 

「簡単にやられるかよっ!」

 

「あの時のガキが偉くなったじゃねぇか!?」

 

「なんだとっ!?」

 

オータムとは初対面だと思っていた一夏は予想外の言葉を聞かされる。

 

「あぁ、そうかぁ。知らなかったのかぁ…。」

 

オータムは不気味に笑う。

 

「まぁそうだよなぁ…。モンド・クロッソの時に誘拐されてぇ…」

 

オータムの言葉に一夏の中にある何かが揺さぶられる。

 

「大事な大事な…おねぇちゃんの晴れ舞台を台無しにしたときの事なんて覚えてたく無いよなぁ!?」

 

「お前、まさか!?」

 

ここまで言われればこのあと何を言う気かは大体予想がつく。

 

「そうだよ!あん時にお前を捕まえて廃墟に押し込んだのは私さぁっ!!」

 

「──!!」

 

一夏の脳裏にあの日の記憶が鮮明に呼び起こされ、感情が渦巻く。

 

右も左もわからない国でいきなり襲われて、気がつけば廃墟の中、孤独と恐怖に怯え、そこに来てくれた姉…。

 

「うがあぁぁぁぁっ!」

 

次の瞬間、何も考えず全力で目の前の敵に突っ込んでいた。

 

「お前は蜘蛛の巣に飛び込む虫だっ!そらよっ!」

 

オータムは右手を一夏に向けてかざす。

手の平からエネルギーワイヤーが射出され、目の前で弾け網となる。

 

「なっ!?けどエネルギーならっ!!」

 

雪羅と雪片を使い、エネルギーの網を切り刻む。

 

「甘ぇっ!」

 

「ええっ!?」

 

エネルギーは切った端からすぐに伸び、まるで生き物かの様に一夏に絡み付いていく。

 

「なっなんだ?動けない……。」

 

「これが蜘蛛の糸だよ…。さて、まずはお前だっ!」

 

動けなくなった一夏を無視して、輝刃に狙うオータム。

装甲脚から放たれる弾幕で動きを制限され、手に持ったマシンガンでダメージを与える。

 

「輝刃っ!!」

 

「へっ!あっちを気にする余裕なんかあるはずねぇんだけどな?」

 

弾幕で輝刃を行動不能まで追い込んだオータムは一夏に向き直る。

 

「こんだけ時間があったんだ。お別れはすんだよな?」

 

「な──」

 

一夏の言葉を待たずにオータムは新たに取り出した装置を一夏に向ける。

 

「お前の…愛機とだよ!」

 

オータムが取り出した装置は先の方が開き、虫の脚のようになる。

そのまま一夏の胸に押し当てると脚が閉じ、胴体に固定される。

 

「ぐぅっ─ぐあぁぁっ!」

 

大量の電流が一夏に流れる。

 

「よし、終わったか。」

 

オータムは装置を一夏から離す。

一夏は同時に自分を縛り付けていた物が無くなったことを感じると、すぐに反撃のため拳を振るった。

 

「当たるかよ!ISも無い奴の拳が!」

 

「ごふっ!?」

 

だが逆に腹を思いっきり殴られる。

体がくの字に曲がり、ロッカーに当たるまで飛ばされる。

痛みをこらえ、体を起こしながら一夏は気がついた。

先程まで纏っていたはずの白式が無いことに。

 

「白式!?一体何がっ!?」

 

雪片だけではなく、装甲の欠片も残っていない。

自分の姿が信じられない一夏にオータムが笑いながら答える。

 

「それはここにあるからさっ!」

 

オータムが菱形の結晶体を見せつける。

一夏は初めて見るそれが白式、それのコアだと確信する。

 

「どうだ?《リムーバー》の力はっ!?ISを強制解除出来る秘密兵器さ。」

 

リムーバー、先程の装置の事だろう。

今はそんなことより大事な事がある。

 

「か、返せぇっ!!」

 

走ってオータムの元まで行き、結晶体を奪おうとする一夏。

当然、ISに生身で勝てるはずは無く。

 

「うっせぇ!」

 

強力な蹴りを喰らう。

 

「おっと次はあれだな。」

 

オータムは一夏にもう用は無いとばかりに倒れてる輝刃に近付く。

 

「輝刃っ!逃げろぉっ!」

 

一夏は輝刃に向かって叫びながらオータムを止めようと再び殴りかかる。

 

「邪魔だっての!」

 

装甲脚で殴られ、捕まる。

そのまま一夏を壁に押し当てる。

 

「折角このまま帰ってやるかと思ったが、五月蝿ぇからお前…殺すわ。」

 

先程までと代わり一切笑わずに告げるオータム。

手に持ったマシンガンを一夏の腹に押し当てる。

 

「あら、それは困るわね。」

 

「誰だっ!?」

 

「た…楯無さ…ん。」

 

場違いな程軽い口調で声をかけてきたのは楯無だった。

 

「お前は…ロシアの代表か……。」

 

「あら?知ってるなら話は速いわね。」

 

楯無に向けて装甲脚の内、二つを楯無へ向ける。

 

「動くな。こっちにゃ人質が居るぜ?」

 

「えぇ、そうみたいね。」

 

いつものように口許を扇子で隠しつつオータムと会話を続ける。

 

「あなたを逃がすわけにはいかないし、一夏くんも白式も輝刃もあげないわよ。」

 

「状況がわかってるのか?」

 

「えぇ、悪い人が逆転劇でこれから負けるのよ。」

 

楯無の言葉が終わると同時にオータムが楯無に向けて発砲する。

放たれた弾丸が楯無に当たると、楯無の体は一瞬で霧となり、部屋中を満たす。

 

「なっ!?これは…。」

 

オータムは壁に押し付けていた一夏を盾にする為、動こうとする。

 

「そこよっ!」

 

その瞬間を狙い、一夏を捕まえていた装甲脚にいくつか光線が当たる。

装甲脚は制御を失って一夏を放してしまう。

 

「逃がすかよっ!」

 

「やらせないわっ!」

 

一夏を捕まえようと腕を伸ばすオータムだったが横から突き出された槍によって弾かれる。

 

「ちっ!」

 

「一夏くん。大丈夫?」

 

「な、なんとか…助かりました。」

 

距離を取るオータム。

楯無は一夏の目の前に立つ。

 

「この間のドラゴンも居やがったか…。」

 

「そうよ、これであなたの装甲脚は半分封じたわ。」

 

楯無は左脚に装備したドラゴンをパンパンと叩きアピールする。

 

「一夏くん、あなたは願いなさい。」

 

「えっ?」

 

一夏にそれだけ告げると楯無はオータムに向かって飛び込む。

 

「はああぁぁっ!」

 

「ちぃっ!」

 

槍をもって飛び込んでくる楯無に対してオータムはカタールを持って応戦する。

 

「ここに来るだけあってなかなかの手練れね。」

 

「オータム様を舐めるなぁっ!」

 

数回打ち合うがすぐにオータムは後ろに飛び距離を取る。

 

「まぁ、やることやったし帰らせて貰うぜ。」

 

「折角の学園祭なんだから、もう少し楽しみなさいっ!」

 

楯無が飛び込むがそこを狙ってオータムはエネルギーの網を射出する。

 

「楯無さんっ!危ないっ!」

 

一夏が叫ぶ、楯無は水の防壁でエネルギーの網を防ぐが、防壁を迂回し身体中に巻き付く。

先程の一夏の様に身動きがとれなくなる。

 

「ふんっ!見積りが甘かったなっ!」

 

「貴方がねっ!」

 

オータムが勝利を確信する瞬間を狙い、楯無は指を鳴らす。

すると、オータムの周辺に霧として漂っていたアクアナノマシンが大爆発を起こす。

 

「があぁぁぁっ!」

 

「どう?これがミステリアス・レイディのクリアパッションよ。」

 

一夏や周りに無駄な被害を出さないようにオータムだけを狙った攻撃。

 

「ぐうっ!まだだぁっ!」

 

機体のダメージを確認しながら立ち上がるオータム。

 

「いいえ、もう終わりよっ!一夏くん!」

 

「来いっ!白式いぃぃっ!」

 

一夏の叫びに答えるようにオータムが持った白式が強い光を放つ。

光が収まるとオータムが持っていたはずの白式を一夏は纏っていた。

 

「なっなんだとぉっ!?」

 

「うおおぉぉぉっ!お返しだぁっ!」

 

オータムが動揺している隙を突き、急接近する一夏。

雪片を振りかぶる。

 

「でりゃあぁ!」

 

「うおぉっ!」

 

反応が遅れたオータム、咄嗟に残りの装甲脚を盾にするが、すべて零落白夜の刃で切り捨てられる。

 

「喰らえっ!」

 

オータムは雪片を振り切った一夏にエネルギーの網を射出、再び拘束する。

 

「輝刃っ!」

 

「ぐおっ!」

 

一夏が叫ぶと同時にオータムの後ろから輝刃スピナーが突撃する。

 

「これでっ!終わりだぁっ!」

 

一夏は輝刃をブレイカーモードにし、全力で振り抜く。

吹き飛ばされ、壁にぶつかるオータム。

 

「一夏くんっ!捕まえるわよっ!」

 

「はいっ!」

 

オータムを捕まえるため、2人で飛び込む。

 

「簡単に捕まるかよっ!」

 

後ろの壁に出来た亀裂を殴り、穴を開けて外に出ると同時にアラクネを乗り捨てる。

 

「逃がすかよっ!」

 

「一夏くん!ふせて!」

 

そのまま一夏は追おうとするが、すぐに相手の目的に気付いた楯無が止める。

直後に残されたアラクネが爆発する。

 

「一体何がっ!?」

 

「ISのコアだけを抜いて装備を自爆させたのよ。私たちから逃れるためにね。」

 

水の防壁を出していた楯無が一夏の疑問に答える。

 

「あのタイミング、下手すれば自分も巻き込むかも知れないのによくやるわ。」

 

「追わないんですか?」

 

「ここまでやった相手なら追撃を逃れる為に仲間を用意しているはずよ。この状態で追っても危ないわ。」

 

b荒れ果てた更衣室で2人は敵が居ないことを確認し、ISを解除する。

 

「一夏くん。まだ終わりじゃないわ、ついてきて。」

 

「は、はい!」

 

真剣な眼差しで楯無に言われ、一夏はそれに従うように付いていくのであった。




はい、今回はここまで。

一夏の方は終わったけど銀河、北斗がどうなったのか!?
次回はオリジナルな話になりますっ!

ご意見、ご感想はお気軽にどうぞ!

────

銀「こ、これってどうゆう事だよ!?」
北「僕もわかないよっ!」
銀「このままじゃ、やべぇんじゃねぇか?」
北「でも、何が出来るのさ!?」
銀「バッカ野郎!出来るかじゃなくてやるんだよ!」
北「わかったよ!」

次回!IS戦士電童

第54話《学園祭の裏事情》

銀・北「「困難は打ち砕くっ!」」
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