IS戦士電童   作:東風乃扇

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どうも皆さんこんにちわ!
東風乃扇です!

学園祭が終わり、日常に戻ります。

では、第55話!やっちゃるぜ!


第55話《後片付け》

道を歩く1人の女性がいる。

ツカツカと音を立てながら歩く姿は、どこか怒りを感じる。

スーツを着ているので周りから見ると「何か仕事であったのかな?」と思える。

 

(くそ、くそ、くっそおぉぉっ!)

 

この女性とはIS学園から何とか逃げ出したオータムだ。

周りに気付かれないように表面上は平静を保っているが、内心は怒りで満ちていた。

 

(こんなはずじゃ無かった!全部あいつのせいだ!)

 

今回の作戦は元々織斑一夏が1人の時に襲撃する予定だった。

だが最近になって寮に同居人…現ロシア代表、更識楯無が一緒に居た。

その為、夜間の襲撃は成功率が低いので今日行う事になったのだ。

 

(それにあのリムーバー…遠隔コールが出来るなんて聞いてねぇ。)

 

今まで組織内で何度か使用していたがその様な報告はなかった。

 

(これじゃぁ今後あれは使ってられねぇな…。)

 

考えながら歩いていると、公園に着いた。

周りを見渡すと無人のようだ。

 

(ちょうどいい、あそこで水を……。)

 

近くの水飲み場に近づき、蛇口から水を飲む。

生温いがそんなことを気にする今のオータムではない。

 

(あの女だ!あいつは絶対に殺す!スコールがなんと言おうとな!)

 

ドス黒い感情がオータムを支配する。

どの様な手段でやれば無様な命乞いをするだろうか。

そんな考えは異常を感じ、すぐに終わる。

 

「ん?」

 

今、自分の喉を潤していた水が止まったのだ。

 

(壊れてるのか?)

 

不思議に思い、蛇口を見るとあり得ない事が起きていた。

蛇口から出ている水がそこに透明な壁でもあるのか、遮られているのだ。

 

(AICか!?)

 

オータムの頭の中でこの様な現象を起こせる物を思いだし、その場からすぐに飛び退く。

 

「ぐっ!」

 

だが、時すでに遅く、AICで足を捕まれたらしい。

空中で足が止まり、慣性に従い背中から地面に叩きつけられる。

 

「捕まえたぞ、亡国機業。合同演習では世話になったな。」

 

「ドイツのISか…。」

 

「動くなよ、狙撃手がお前の眉間に狙いを定めている。」

 

冷たい威圧感を放ち、ラウラはゆっくりとオータムに近づく。

 

「貴様のIS…アメリカの第二世代型だったな。どこで入手した?」

 

「そんなんで言うと思ってるのか?だとしたら目出度い頭だな。」

 

こんな状況でも笑うオータム。

 

「まぁ、そうだろうな。安心しろ、尋問の心得もある。長い付き合いになるな。」

 

当然、答えると思っていなかったラウラはオータムを確保するために近づこうとする。

 

『ラウラさん!敵です!』

 

セシリアからラウラに通信が入る。

即座にレーダーの有効範囲を拡げるが敵を認識すると同時に肩を撃ち抜かれる。

 

「ぐぅっ!」

 

ラウラは即座に左目の眼帯を外し、ヴォーダン・オージェを発動する。

追撃のレーザーを何とか避けるラウラ。

 

『ラウラさん。下がって!』

 

セシリアは弾道から敵の位置を割り出し、照準を向ける。

 

「やはり…!サイレント・ゼフィルス!」

 

スコープに写し出されるのはかつて目の前で奪われた、サイレント・ゼフィルスだった。

 

「これで!」

 

即座に狙いを定め、レーザーが放たれる。

だが、サイレント・ゼフィルスはシールドビットを展開し防いでしまった。

 

「くっ!」

 

即座にセシリアもビットを射出。

4つのビットを制御し、サイレント・ゼフィルスを撃とうとするが、直後にビットが破壊される。

 

「あの高機動でこの精度の射撃をっ!」

 

前に対峙した時に相手の方がビットの制御、格闘戦能力で勝っているのはわかっていたが、狙撃能力までも勝っているようだ。

 

『セシリア!狙われているぞ!動け!』

 

驚愕するセシリアにラウラが通信を送る。

 

「くぅっ!」

 

相手のビットがこちらを狙い、放たれる。

6本ものレーザーを何とか避けるセシリア。

ラウラに向かってライフルによる牽制も行われる。

 

(なら!これで!)

 

セシリアはミサイルビットを自分の影になるように射出。

相手の死角に潜り込ませる様に、制御する。

 

「甘いな。」

 

サイレント・ゼフィルスを駆るMが微笑を浮かべる。

 

「そ!そんなっ!?」

 

次の瞬間、サイレント・ゼフィルスが放ったレーザーが曲がり、セシリアのミサイルビットを貫く。

 

(偏光制御射撃!?)

 

その光景を目にしてセシリアは固まってしまう。

 

(なぜっ!?私がBT適正最高値のはずっ!?なのに!なんであちらはこうも容易く!?)

 

「なんだ?的が希望か?なら撃たせてもらう。」

 

「馬鹿者っ!戦場で止まるなっ!」

 

セシリアの隙を逃さず撃とうとするM。

ラウラは咄嗟にセシリアを突き飛ばす。

 

「ぐああぁぁぁっ!」

 

「ラ、ラウラさん!」

 

セシリアの代わりにレーザーを受け、ダメージによって苦痛の声を上げるラウラ。

その声を聞き、セシリアはやっと我に返る。

 

「迎えに来たぞ、オータム。」

 

「呼び捨てにするんじゃねぇ!」

 

Mはセシリアとラウラにビットで牽制を続け、その内にオータムをAICによる拘束から救出する。

 

「データウェポンがなければこの程度か…ラゴウ。」

 

Mはラゴウを召喚、その背にオータムが乗る。

 

「さらばだ。次は少し位楽しませてくれよ?」

 

Mはラゴウと共に来た方向へと飛び去った。

しばらくラウラとセシリアを足止めしていたビットが、最後の役目として目眩ましを兼ねて自爆する。

 

「追跡しますっ!」

 

「やめろ!あのまま素直に飛んでいったとは思えん。仮に追い付いても我々だけでは…負けるぞ。」

 

「…………。」

 

セシリアは悔しさに唇をぎゅぅっと噛み締める。

合同演習に続き、証拠を残さず去っていく。

2人は見えないが、確実に巨大な組織の存在を感じていた。

 

──

 

俺─天野星夜─はアリーナのピットで話をしていた。

 

「アルテアさんがGEOSを…?」

 

「うん。」

 

「俺達用だって。」

 

銀河と北斗がGEOSの待機形態にあたる〈G─コマンダー〉を出しながら答える。

 

「夏休みに見たときはまだ電子格納は出来ないって言われたのに…もう出来たのか…。」

 

「ISコアが無いのはメリットとデメリットがありますね。」

 

虚先輩が言う。

 

「コアが無いデメリットは何となく解るけどメリット?」

 

「だってISより弱いんだろ?」

 

「確かにそうですね。」

 

銀河と北斗が虚先輩の言葉に反応する。

 

「個々の戦闘力では劣りますが、生産性はこちらが上回ります。ISはコアの数以上に作れません。」

 

「確か500個も無いんだっけ?」

 

「また、特殊事例を除き、女性しか使えません。」

 

「星夜と織斑一夏くんですね。」

 

「今、2人のGEOS見せて貰ったけど、こいつ飛べるぞ。」

 

「マジで!?」

 

「ISコア由来の能力である、粒子格納、シールドエネルギー、絶対防御、自己修復、自己進化。この辺りが使えないだけですね。」

 

「PICとかもしっかり載ってるから燃費は悪いけど一通り出来るな。」

 

ピットにあったホワイトボードにまとめながら話をする。

 

「自己修復に関しては、大きなダメージを負えば部品を換えた方が早いのでそこまで大きな利点にはなりにくいですね。」

 

「エネルギーの自然回復も遅いから連続で使うときは補給する。GEOSもあまり変わらないな。」

 

こうして箇条書きにすると本当に大差無いな…。

 

「これ、本当に持ってていいのかな?」

 

「なんで俺達用なんだろうな。」

 

「それは君達を守るためだ。」

 

ピットの扉が開き、アルテアさんと織斑先生が入って来た。

 

「「アルテアさん!」」

 

「織斑先生も!」

 

「天野、状況は聞いた。無駄に騒ぎを広げずに良くやった。出雲と草薙だったな、協力ありがとう。」

 

「僕達はやりたいことをやっただけです。」

 

「そうそう。」

 

織斑先生が銀河と北斗に礼を言う。

 

「で、GEOSを2人に渡した目的を教えてくれますか?アルテアさん。」

 

「あぁ。単純な事で星夜くんに近い人物として、亡国機業のターゲットにされる可能性はゼロでは無い。」

 

「だから自衛手段を与えるために?」

 

「そう言うことだ。」

 

確かに、俺と仲の良かった奴なんて調べれば簡単に出てくるだろう。

亡国機業に人質にされるかもしれない。

 

「我々は2人ならそれを悪用するような事は無いと、信じている。」

 

「だってさ、銀河。調子に乗って、見せびらかせたりしたら駄目だよ?」

 

「そ、そんなことしねぇよっ!!」

 

アルテアさんに言われ、銀河を北斗が軽く茶化す。

 

「さて、今回の件については箝口令が敷かれる。くれぐれも他言無用にな。」

 

「「はいっ!」」

 

確認の意味を込めて銀河と北斗に織斑先生が話しかける。

 

「学園祭はこれで終わりだ。2人はこのままアルクトスについて行くといい。本来ならもう一般客は居ないはずだからな。」

 

「GEARも片付けをしている。トラックになるが自宅まで送ろう。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

頭を下げる銀河と北斗。

 

「2人ともお疲れ。」

 

「おう!何かあれば呼べよ?このGEOSで助けてやっからよ!」

 

「まったく銀河は…。星夜、今日は招待してくれてありがとう。楽しかったよ。」

 

「あぁ、呼んで良かったよ。それに助かった。」

 

「草薙くん、出雲くん。ありがとうございました。お気をつけてお帰りください。」

 

「はい、布仏さんもありがとうございます。」

 

「じゃ、またなっ!」

 

挨拶をして銀河と北斗を見送る。

 

「天野、報告書は早めに頼むぞ。今日は部屋に戻って休め。」

 

「はい。織斑先生、虚先輩もお疲れ様です。」

 

「では、私はこれで。」

 

織斑先生、虚先輩と挨拶をしてアリーナを後にした。

 

──

 

その日の夜。

一夏の部屋に俺は居た。

理由は楯無先輩に呼ばれたからだ。

そして、今回の騒動に関しての説明を受けている。

 

「つまり、楯無先輩は一夏を護衛する為に同室になったんですね?」

 

「えぇ、そうよ。」

 

「いや、星夜も普通に会話してるけど楯無さんって何者なんですか?」

 

「ん?IS学園生徒会長よ?」

 

一夏がいれたお茶を飲みながら楯無先輩が答える。

 

「茶化さないで下さい!」

 

「そうねぇ、更識家は裏工作とかを担当してるの。対暗部用暗部。すごいでしょ。」

 

自分だけが知らないことに少し苛立つ一夏に楯無先輩が答える。

 

「いや~。これで当面の危機は去ったと思うわ。肩の荷が降りたわ~。」

 

楯無先輩は背伸びをし、頬笑む。

 

「今回は白式を狙ってたみたいですけど、あいつらの目的って何ですかね?」

 

「組織の存在は確かなんだけど、目的に関しては全くわからないのよね。」

 

「基本的にはIS関係で色々やってるイメージがあるくらいか?」

 

「そうなのか…。」

 

一夏はお茶を飲み、気を落ち着かせる。

 

「じゃあ、部屋割は戻すんですか?」

 

「残念、王冠ゲットでもう少し一緒よ。」

 

「うぐっ!?そうだった。」

 

「あぁ、参加型ってそう言う…。」

 

どうやら劇で一夏を使ったのは一夏を餌にするためだったようだ。

 

「2人はこれからも色々と巻き込まれると思うから気を付けなさいよ?」

 

「えぇ、わかってますよ。」

 

「そう何度もやられないですって。」

 

一夏と一緒に力強く返事をする。

 

「うんうん。頼もしいわね。それでこそ男の子♪」

 

満足そうな楯無先輩。

 

「おっと、もうこんな時間か…楯無先輩、一夏、そろそろ部屋に戻ります。」

 

「おっそうだな。おやすみ星夜。」

 

「星夜くん、一人寝が寂しければおねーさんが一緒に寝て上げるわよ♪」

 

「残念ですが俺の部屋はいつも頼れる仲間達でいっぱいなので、寂しくなんかないですよ。」

 

「ちぇー、残念。」

 

2人に挨拶して部屋を出る。

亡国機業…何者かは解らないが向かってくるなら、全力で立ち向かうだけだ。

 

──

 

「おいっ!あれはどう言うことだっ!」

 

オータムはアジトに着くなり、ISを解除したMを捕まえ、声を荒たげる。

 

「なんの話だ?」

 

オータムとは対照的に極めて冷静に返すM。

 

「あれだよ!リムーバーだっ!」

 

「リムーバーが起動しなかったか?」

 

Mはリムーバーに不調があったと思い聞き返す。

 

「違うっ!耐性の事だっ!」

 

「耐性…あぁ、2度使えないと言うやつか。」

 

「使えない所か、遠隔起動するじゃねぇか!知ってたんだろっ!?」

 

「ほう…そうなのか。」

 

「とぼけんじゃねぇっ!」

 

オータムは右手を振り上げ、Mを殴ろうとする。

 

「そこまでだ。」

 

オータムの腕を横から来た男が掴む。

 

「A!邪魔すんじゃねぇっ!」

 

「仮に遠隔起動出来たところで奪った時に殺して置けば問題なかったはずだ。お前のミスだオータム。」

 

「んだとっ!」

 

オータムは腕を振り払う。

 

「オータム、お疲れ様。その件は誰のせいでも無いわ。」

 

スコールがオータムの前に立つ。

 

「スコール!お前は知ってたのか!?」

 

「知っていら、ちゃんと話してるわ。貴方が無事に帰ってきて良かったわ。」

 

オータムを優しく抱き締めるスコール。

オータムは顔を赤くしながらも幸せそうに抱き返す。

 

「下らん。」

 

「M、サイレント・ゼフィルスはあっちに回しておいて、まだ調整が完璧には出来てないでしょ?」

 

「わかった。」

 

「A、あれの修理が終わったわ。受け取ってきなさい。次の作戦で使うから、慣らしておきなさい。」

 

「了解。行くぞ、マドカ。」

 

「あぁ、アマツ…。」

 

M…マドカとA…アマツは並んで歩いて行く。

 

「さぁ、オータム。シャワーでも浴びてきなさい。食事を用意しておくわ。」

 

「あぁ、頼むスコール。」

 

スコールとオータムも歩き出す。

 

──

 

翌日。

 

「あ~片付けって憂鬱~。」

 

「準備とかは楽しみがあるけどね~。」

 

「ほらほら、手を動かす。」

 

今日は片付けだ。

各クラスの教室、模擬店で使用した教室、各種機材、クラス毎に割り振られた共用エリア。

そんな感じで班別けをして、分担して清掃等をしている。

ちなみに俺は教室の班だ。

 

「ねぇねぇ、天野くん。」

 

「ん?何ですか?」

 

掃除しながら相川さんが話しかけてきた。

 

「凰さんとどこまで行ったの!?」

 

「何もない。」

 

「嘘だ!」

 

何故か全力で否定された。

 

「だって2人で回ったんでしょ?」

 

「その前に俺の友人来て、鈴はクラスに呼び出されたよ。」

 

「ちっ、残念。」

 

「何が残念なのか…。」

 

「だってここって実質女子校じゃん?」

 

「うん、そうだね。」

 

「だから、そう言う話題に飢えてるのよ!」

 

訳が判らん。

 

「だったら、シャルか箒さんを焚き付けて一夏にアタックさせれば?」

 

「ん~それはな~。」

 

「何?相川さんが落とす?」

 

「難易度高いよ~。」

 

雑談を交えながら掃除をしているとドアが開く。

 

「お前達、しっかりとやってるか?」

 

織斑先生が教室に入って来た。

 

「はい、ゴミの分別も終わって後はゴミを集積場所に持っていくだけです。」

 

「そうか、私は他の所を見てくる。頼むぞ。」

 

一通り見て織斑先生は踵を返して歩いていった。

 

「これ、誰が持ってく~?」

 

「あぁ、ゴミはこっちで持っていくから、後よろしく。」

 

「えっ?いいの?天野くん?けっこう量あるよ?」

 

「データウェポン達が居るからね。」

 

「なるほど、じゃあよろしくっ!」

 

積まれたごみ袋を持ち、データウェポン達と一緒に運ぶ。

こう言うときに1回ですむのは便利だ。

 

──

 

片付けが終わり、体育館にて全校集会が行われる。

学園祭で行われた投票結果の発表が主な題目。

というか生徒達の関心はこれにしか無いと言っていい。

 

「学園祭、投票結果第1位は─」

 

俺は檀上の端にて全生徒に向かい話している。

全生徒は固唾を飲んで続く言葉を待っている。

 

「生徒会主催、生徒参加型活劇『超武闘会!明日のルームメイトは彼だっ!』です。」

 

沈黙が続く…。

 

『「えええええぇぇぇぇぇっ!!!!」』

 

直後、全生徒の大合唱が響き渡る。

 

「なんでっ!なんで生徒会なのよっ!」

 

「インチキだっ!改竄だっ!」

 

「こんなの絶対おかしいよっ!」

 

「第三者機関による調査を求めるっ!」

 

まぁ、大体の想像通り『生徒会が不正した』と思ってるようだ。

 

「皆さん!静かに!」

 

檀上の中央で楯無先輩が声をあげる。

 

「劇の参加条件に『生徒会に投票』と事前に公開した通りです。その皆さんの投票なのですから、これは公正ですよ?」

 

楯無先輩に言われ、多くの生徒が口を紡ぐ。

そう言えば投票してた…。と今になって気づく。

 

「そして、織斑一夏くんに関してですが、彼は生徒会から各部活動の補助要員として貸し出しを考えております。」

 

考えてもいなかった事に全生徒がざわめく。

 

「詳細は後程、書面で各部活動に配りますが、早ければ今月中から織斑一夏くんの貸し出しを開始しようと思います。」

 

文化系の部活は兎も角、学園祭で上位入賞など難しい運動部にとっては棚から牡丹餅と言ったところか。

これならどの部活も平等に一夏と会える。

 

「やったー!」

 

「ぜひっ!ぜひっ!料理部に!」

 

「テニヌ部!いや、テニス部に!」

 

「お静かに、皆さん、納得されましたね?」

 

楯無先輩の言葉に肯定の沈黙が続く。

 

「では、生徒会からは以上です。」

 

楯無先輩が檀上から下り、代わりに先生が登り、全校集会は続いた。

 

──

 

全校集会が終わり、放課後。

生徒会室に集まっていた。

 

「織斑一夏くん、副生徒会長着任おめでとう♪」

 

「と、言う名の生贄じゃないですか。」

 

楯無先輩、虚先輩、本音さん、一夏、俺。

いつものように皆でテーブルを囲み、お茶会となっている。

 

「……なぜ……こんなことに……。」

 

出されたケーキとお茶に手を出さず、項垂れる一夏。

 

「そりゃあ、一夏くんがどこにも所属しないからよ~。」

 

「下手にどこかの部活に入ると、引抜き合戦があるだろうからな。」

 

「今後の事を考えて、今回の措置となりました。」

 

「おりむ~。頑張ってね~。」

 

一通りの言葉を聞き、何を言っても変わらないと悟ったのか、肩をガックリと落とす一夏。

 

「俺の意志が無視されてる…。」

 

「なによ~。美女を3人も侍らせてまだ不満なの~?」

 

「そうだぞ~。美女だぞ~。」

 

「美女かどうかはさておき、ここでの体験は無駄にはならないと思いますよ?」

 

一夏はこっちを見てくる。

 

「一夏、お前の意志がどうこうって言うんならどこか入りたい所があったのか?」

 

「えっと…。出来れば…」

 

一夏の表情から読めたので言葉を被せる形で発言する。

 

「校則にもあるから『入らない』は無いぞ。どこに入っても毎日他の部活動から勧誘を受けまくるだけだ。」

 

「そうよ~。それに、ここなら私も居るから訓練もやり易いし、どの部活も均等に機会があるから勧誘(物理)もないし。」

 

「うぅ、わかりました。……放課後はここに集合ですか?」

 

「当面はそうなりますね。派遣に関して細かいところが決まったらすぐにお伝えしますから、それに従って下さい。」

 

「はい、わかりました。」

 

虚先輩の説明に頷く一夏。

 

「さて!一夏くんが納得したところで!お茶会を始めますか!」

 

楯無先輩の一言でいつも通りのお茶会が始まった。

 

──

 

「久しぶりだな、スバル。」

 

「あぁ、久しぶりだな星夜。」

 

学園祭から数日たったある日。

GEAR本社にて新装備の受領をしに来た。

ついでにスバルとメールをして、食堂でお茶をしている。

 

「なかなか会う機会がなかったな。」

 

「そうだな。僕もなかなかタイミングが合わせなくて、ごめん。」

 

「いやいや、スバルのせいじゃないでしょ。」

 

「兄さん達から話は聞いてたんだけど。GEOS関連の事で忙しくてな。」

 

「へぇ、GEOSの初期スタッフなのか?」

 

「あぁ、最初は歩くだけでも大変だった。」

 

やっぱり、アルテアさんやベガさんの弟だけあって色々とやってるみたいだな。

 

「じゃあ、スバルも専用のGEOSを?」

 

「あぁ、内緒だぞ?」

 

「わかってるよ。」

 

2人で軽く談笑している。

 

「星夜、今日受領した装備とはなんだ?」

 

「あぁ、それはな。」

 

電童を操作し、仮想ディスプレイを展開する。

 

「こんど行われる『キャノンボール・ファスト』用の装備だ。」

 

「なるほど、大型ブースターか。」

 

「ブースターとミサイル。複合型の兵装だな。」

 

「キャノンボール・ファストは一般公開されるし、僕たちも応援に行こう。」

 

「あぁ、見ててくれ、音速のレースを。」

 

「楽しみにしてる。…あとひとつ聞いていいか?」

 

スバルは俺の横にある箱に視線を移す。

 

「この箱だろ?これはクラスメイトの本音さんが考えたペットロボだ。井上さんが暇つぶしに作ってくれてね。」

 

「なるほど、納得だ。あの人ならやるな。」

 

箱を開けて中を見せながら話す。

 

「ふむ、これは…恐竜か。」

 

「そ、まだ名前は決まってない。」

 

「考えた人がいるなら当然だな。」

 

所謂ティラノサウルス的な形のペットロボ。

色は黒で塗られている。

 

「しかし、女性が考えたにしては攻撃的な印象だな。」

 

「データウェポン達を参考にしたって言ってたからな~。」

 

箱を閉めて袋に入れる。

 

「IS学園の事は判らないが、メールの相手ならいつでもやるぞ。」

 

「あぁ、その時は頼むよ。」

 

ただ友達と軽い世間話をするのも悪くない。

 

──

 

IS学園のアリーナにて、日曜日だが多くの生徒達が自主訓練をしている。

専用機を持たない多くの生徒は数少ないISを使い回すため、割り振られた日程で行うしかないのだ。

学園祭の次は『キャノンボール・ファスト』と呼ばれるISを使ったレースが行われる。

全生徒が参加する市内のアリーナを使ったイベントであり、テレビなどのメディアに取り上げられるかもしれないとなると、一層の努力をしているのだ。

 

「はぁ…はぁ…。」

 

そんなアリーナの中で1人で、一心不乱に訓練をするセシリア。

 

(私が…最もBT兵器の適正があるはずなのに…!)

 

ビットを飛ばし、標的のドローンとは全く違う方向にビットからレーザーを放つ。

 

(曲がれ!曲がれ!)

 

心の中で念じるもレーザーは一直線に進み、アリーナのバリアに当たり強い光を放つ。

 

(未だに同時制御も出来ていないと言うのに…。)

 

セシリア自身、自らの弱点は把握している。

機体とビットの同時制御、近接戦闘の貧弱さ。

日々、鍛練は欠かしていないが成果が出てるとは言い難い。

 

(せめて…せめて…1つくらいは…。)

 

朝から休まずに続けている為、大量の汗が肌を伝う。

 

(星夜さんや一夏さん、それぞれが自らの欠点をうまく潰していると言うのに!!)

 

星夜や一夏はまだ専用機を受け取ってから半年しか経っていないので、欠点はいくらでもある。

それでも1つ1つを確実に潰してメキメキと実力をあげている。

 

(私は…入ってから何も変わってない!)

 

自分の中でいくら考えても、実力が上がった実感がない。

それどころか何処かのテロ組織に実力の差を見せられただけだ。

 

(偏光射撃くらいは…。)

 

何度目の挑戦か…数えるのも馬鹿らしくなるほど、繰り返したが未だに曲がる気配はない。

 

『オルコット!聞こえてるのか!』

 

「はっ!はい!?織斑先生ですか!?」

 

急に入った通信に驚くセシリア。

 

『熱心なのは良いことだが、少しは休め、朝から一度も休んでいないだろ。』

 

「で、ですが…。」

 

アリーナの様子を見ていた先生達が一度も休みを取らないセシリアを不安に思い、千冬が声をかけたようだ。

だが、訓練の内容に納得のいかないセシリアは続けようとする。

 

『貴様が何に焦っているのかは知らないが、そんな状態で繰り返しても得るものは何もないぞ。休め。』

 

「…………はい。わかりました……。」

 

千冬に強めに言われ、渋々とピットに戻るセシリアだった。

 

(……やはり、装備がいけないのでしょうか…………。)

 

いくら努力しても曲がる気配の無い射撃に対して、八つ当たりのような心境になる。

装備に関して本国にいくら掛け合おうと、録に相手にされない。

兎に角、変化を求めているセシリアには、全てが自分を押し潰しに来ているように感じていた。

 

(どうすれば…どうすればいいのでしょうか…。)

 

自分…愛機…本国…。

考えれば考えるほどマイナスの方向に考えている、そんな自分の状態をセシリアは気づいていなかった。

 

──

 

気がつけばセシリアは草原の様なところに居た。

 

『ねぇ、どうして信じてあげないの?』

 

『……えっ?』

 

突然聞こえた声に驚き、振り向くセシリア。

そこには1人の男の子が立っていた。

 

『なんで?』

 

『な、なんのことかしら?』

 

問われ事の意味を理解できず聞き返してしまうセシリア。

 

『あの子達は待ってるよ。だから、信じてあげて……。』

 

『あの子達…?』

 

言われてることが頭の中で理解できず、混乱するセシリア。

 

『ちゃんと、見てあげて…。』

 

男の子は悲しそうな表情でセシリアを見つめていた。

徐々に視界が歪んでいく。

 

「ん………………?」

 

目覚ましが鳴り、体を起こすセシリア。

夢を見ていた気もするが、起きた直後のせいか、ハッキリしない。

 

「あら、ユニコーンさん。おはようございます。」

 

目覚ましの隣に居たユニコーンに挨拶をするセシリア。

 

「今日も一日、いい日になりそうですわ。」

 

そう言った彼女の笑顔は何処か悲しげなものだった。




今回はここまで!
セシリアが大分ボロボロですが、ちゃんと持ち直せるのか!?
お楽しみに!

あ、前回の話で出た大型の敵は〈オービトン〉イメージです、OPにも出てたし、スパロボにも沢山居たからイメージはしやすいかな?


ご意見、ご感想等、お気軽にどうぞ!

────

星「これでよし!」
本「あまの~ん、何してるの?」
星「あ、これ?最近受け取った装備の調整だよ。」
本「高速機動用の?」
星「そうそう。」
本「ちょっと見せて~。」
星「いいよ、ちょっと待ってね。」
本「ねぇねぇ、こことここ、もうちょっと変えるといいと思うよ~。」
星「あ、そうなの?ありがとう。本音さん。」

次回!IS戦士電童
第56話《高速機動訓練》

星「なかなか、難しいな。」
本「バイップしか使ってなかったもんね~。」
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