東風乃扇です!
来月からニチアサ時間がずれるとか無いわ~。
出勤前にキュウレンジャーすら見れないよ!
素直に録画するしか…。
関係無いことは無視して、第56話!
学園祭が終わり、9月の中頃。
俺─天野星夜─達は、食堂で食事をしていた。
「そう言えば一夏、もう少しであんたの誕生日じゃない。」
「あぁ、そうだな。」
鈴が急に思い出したように一夏に言う。
「えぇ!?一夏の誕生日って近いの!?」
「お、おう。」
それを聞いたシャルが大きな声で反応。
一夏に言い寄る。
「い、いつ!?」
「27日だよ。落ち着けって!」
「う、うん。」
一夏に言われ、椅子に座るシャル。
「へぇ、じゃあ何かプレゼントの1つくらい用意するか。」
「そうですわね。もう少し早く教えてもらえれば、時間を掛けて選ぶのですが…。」
「ご祝儀と言う奴だな。一般男性が喜ぶものか…。」
「何がいいかな…。」
俺、セシリアさん、ラウラ、簪さんで軽く考える。
「そんなに盛大なのじゃ無くていいぞ?」
セシリアさんやラウラの言葉からどんな物が来るか、予想がつかないからか、一夏が声をかける。
「しかし、『キャノンボール・ファスト』の当日だな。」
「そうなんだよ、中学時代の友人達と集まって俺の誕生日パーティーやるって言ってくれてるんだけど、その関係で少し遅くなるな。」
「誕生日パーティーか、よくやったな。北斗の家で。」
あいつの家が喫茶店だったから夕方から貸しきりにして、夜遅くまで騒いだなぁ。
「そうだ。折角だから、皆も来ないか?」
「ほ、本当!?行くっ!行くよ!」
「幼馴染だからな、行ってやろう。」
一夏からの提案に元気よく返事をするシャル、仕方ないな、とか言いながら喜んでるのが丸解りな箒さん。
「久しぶりに弾とかに会うのも良いわね。」
「折角の誘いだ。行かせてもらうとしよう。」
「一応、予定確認してから返事するね。」
鈴、ラウラは行く。
簪さんは行く気はあるみたいだ。
「俺も特に予定は無いし、行くよ。」
「あぁ…ってセシリアは?」
「……。」
「セシリア?」
唯一返事が無いセシリアさんに一夏が聞くが黙ってしまっている。
「セシリアさん。」
「ひゃいっ!?」
肩を叩くとセシリアさんが変な声を上げる。
「大丈夫か?」
「は、はいっ!大丈夫ですっ!……えっと、一夏さんの誕生日パーティーですね?確か予定は入ってなかったと。」
「じゃ、じゃあ、一応全員参加って事でいいよな。」
挙動不審のセシリアさんを横目に、一夏が軽く全員に確認する。
「パーティーって事なら料理の1つくらい持っていくべきか?」
「あ、それは大丈夫だ。近くの弁当屋にオードブル頼むから。」
「そうか?わかった。」
食べ終わった食器をまとめつつ話をする。
「明日から高速機動の実習か…。」
「まぁ、今まで学園祭の関係で座学だけだったもんな。」
「具体的にどんな事やるんだ?皆は知ってるか?」
一夏が全員に聞く。
「今までの座学の内容で予想はつくと思うが、主に高機動用のパッケージのインストールから始まり、高機動時の制御練習が主題になるだろう。」
「と言ってもあんたの白式と箒の紅椿はパッケージが無いから、調整して高機動再現になるんじゃない?」
「そうか。ありがとう。」
ラウラ、鈴からの話を聞き、頷く一夏。
「高機動パッケージって言うと、セシリアの〈ストライク・ガンナー〉だよな。他の皆もそんな感じか?」
「そうね。まだ届いてないけど甲龍用のとびっきりを用意してるわ!」
一夏の言葉に鈴が元気よく返す。
「こちらは姉妹機から高機動ブースターを移して使うことになるな。」
「姉妹機…確かハルフォーフさんが使ってた『シュヴァルツェア・ツヴァイク』だっけ?」
「あぁ、その通りだ。」
俺の言葉にラウラが反応する。
「僕のリヴァイヴは増設ブースターを付ける事になるね。元々ブースターの類は増やしやすいんだよね。疾風の名は伊達じゃないよ。」
「確かにな。」
シャルが自信満々に言い、一夏が頷く。
「私の場合は打鉄のブースターを改修して取り付ける形になるかな。」
「やっぱり同型の機体から借りるのが一番だよな。」
簪さんが呟く感じで言い、俺が相槌をうつ。
「やぱっり星夜はあれか?バイパーでやるのか?」
「まさか、あれだと燃費が悪すぎる。だから、先日GEARに行って受け取ってきたよ。」
一夏の予想に答える。
「まぁ、パッケージじゃなくて、シャルと同じく増設ブースター系だけど。」
「へぇ、電童用に作ったの?」
「あぁ、そうらしい。でも、GEARの方でテストしてるから完成はしてるぞ。」
「じゃあ、後は星夜に合わせるだけだね。」
「そうだな。それが大変そうだけど。」
シャルと簪さんが興味を持って聞いてくる。
「しかし、そうなると一番有利なのはセシリアか~。」
「既に何回か使用してるのは大きいわね。こっちはなにやってんのかしら~。本当は夏休みの時に受け取る予定だったのにな~。」
「訓練はそれなりにやっては居るが、実機に触れているのは大きな利点だな。」
一夏、鈴、ラウラが今のところ誰が有利かを話す。
「シャルは今まで使ったことあるのか?」
「うん、会社でテスターとして何回かね。でも、今回のはそれの新型だから調整とかは必要だよ。」
「打鉄弐式で高速機動はしたこと無いから少し不安だな…。」
俺、シャル、簪さんで心配な所の確認。
「なぁ、セシリア。高機動時の事、教えてくれよ。」
「……申し訳ありません。それはまた今度。ラウラさんも詳しいですわよ。」
「そっか。わかった。ラウラ、教えてくれ。」
「いいだろう。覚悟しておけ。」
一夏に返すセシリアさんの表情が普段とは違う感じだった。
微笑んでこそいたが、全体的に暗さを感じた。
「なぁ、セシリアさん、本当に大丈夫か?」
「えっ?私がどうかしましたか?」
「いや、俺の気にしすぎならいいんだけど、なんか具合が悪そうに見えたから…。」
「あら、意外と心配性ですわね。特に問題はありませんわ。」
どうしても気になったので聞いてみたが、否定された。
「そう言えば、一夏さんの部活動への貸し出しはどうなっておりますの?」
「そうだね。いつからなの?星夜は知らない?」
セシリアさんが話題を変えた。
シャルは俺と一夏を見てくる。
「え…と、たしか今は順番を決めてる最中だよな?星夜。」
「あぁ、明日辺りには部活動掲示板に張り出すから、そっちで確認してくれ。俺達の口からは言えないから。」
「ふーん…。星夜は来ないの?」
「行きません。」
鈴がこちらを見ながら聞いてくるので速答する。
「星夜も行ってくれれば俺も楽なんだけどな…。皆は何処に入ってるんだ?」
一夏が今度から貸し出される事から全員の所属が気になったようだ。
「私は初めから剣道部だ。」
箒さんが言い、一夏が幽霊部員だったよな、と付け足す。
「私はラクロス。入って早々に期待のルーキーよ。」
自慢気に話す鈴、一夏もふんふんと頷いている。
鈴なら敵を気にせず、縦横無尽に駆け回ってそうだ。
「僕は…料理部…だよ。」
すこし恥ずかしそうに答えるシャル。
元々料理は得意だがレパートリーを増やすべく、入ったそうだ。
まぁ、恐らくは日本の家庭料理を習得して、一夏の胃袋を掴むためだろう。
既に一夏も興味津々なようだし。
「私は英国が生んだスポーツ、テニス部ですわ。幼い頃からやっておりましたので、上級生の方にも遅れはとりませんわ。」
立ち上がり、すこし大袈裟にポーズを取るセシリアさん。
やっぱり優雅さとか気にしながらやってるのだろうか?
「茶道部だ。織斑教か…織斑先生が顧問をしているから知ってるかも知れんが。」
淡々と言うラウラ。
なんでも、入部希望者が多くて、2時間耐久正座で耐えきった者だけ入部が許されたとか。
「あ、私はコンピューター部。ただ、あまり出れてない…。」
簪さんが小声で答える。まぁ、打鉄弐式の関係とかであまり出れてなくて堂々と言えないのかも。
「ふ~ん。まぁ行ったときはよろしくな。」
一通り聞き、満足した一夏が全員に声をかける。
「って話してたらもうこんな時間じゃないか。」
「本当だ。そろそろ教室に行かないとね。」
時計を見るといい時間なので食器を片付け、教室に向かった。
──
ある日の夜。
GEARからの連絡が入る。
「はい、天野です。」
『こんな時間にすまない。渋谷だ。』
「社長、なにかあったんですか?」
渋谷社長から直接連絡が入るとは珍しい。
『先程、GEARアメリカに襲撃があった。』
「GEARアメリカ…まさか!?」
GEARアメリカは俺の父さんと母さんが今いる場所じゃないか!?
『お、落ち着いて欲しい。まだ向こうは混乱しているようだが、人的被害の報告は入っていない。大丈夫だ。』
「そ、そうですか…。」
よかった。無事なようだ。
「でも、なんでGEARアメリカが?」
『あぁ、近くの米軍基地襲撃と同時に行われたようでね。アメリカ軍からIS、こちらからは何かしらのデータ、恐らくはデータウェポン関連を奪おうとしたようだ。』
「なるほど。」
『先日そちらで確認された、サイレント・ゼフィルスと凰牙が来ていたらしい。亡国機業の機動力は恐ろしい。十分に気を付けてくれたまえ。』
この間、IS学園を襲撃したばかりだと言うのに、今度はアメリカか…本当に神出鬼没だな。
「わかりました。」
『うん、一応ご両親の無事が確認できたら連絡しよう。』
「お願いします。」
電話を切る。
何が目的か知らないが、これまでの感じからすると、キャノンボール・ファストにも乱入してくるかも知れない。
「やっぱりデータウェポンかなぁ…。」
解らないことを考えるのはやめて、シャワー浴びて寝るか。
──
「はい、それでは皆さん。今日から高速機動についての授業をしますよ!」
山田先生の声が第六アリーナに響く。
今日は普段使っている第三アリーナではなく、楕円形に長い第六アリーナだ。
「では、専用機持ちの皆さんに実演をしてもらいます。」
山田先生がばっと手を向ける先にセシリアさん、一夏、俺が待機している。
「1人目は高機動パッケージ〈ストライク・ガンナー〉を装備したオルコットさん!」
「よろしくお願いいたしますわ。」
山田先生に呼ばれ、一歩前に出て、お辞儀をするセシリアさん。
「2人目は出力を調整して仮想高機動機にした織斑くん!」
「あ、えーと…頑張ります…?」
続く一夏は周りの女子が上げる声援に気圧されて、弱々しい挨拶になっている。
「最後は機体アタッチメントに増設ブースターを付けて、機動性を上げた天野くん!」
「全力で行きます!」
山田先生の声に合わせ、右手を振り上げて挨拶する。
「しかし、星夜のそれ、でっかいな…。」
「俺もそう思う。」
「その分、出力も大きそうですが…。」
一夏とセシリアさんが電童のバックパックに取り付けられた、ブースターユニットを見て感想を言う。
「ブースターユニット〈ヴァルハラ〉、出力の高さはお墨付きだけど、その分取り扱いが難しい…そうだ。」
受け取ってから使う機会が無かったので、今日が初使用だ。
「では、3人は準備をしてください。」
山田先生に言われ、それぞれ準備をする。
「星夜さんに一夏さん、お二人共センサーの設定は大丈夫ですの?」
「えっと、どれだっけ?」
「確か…高機動補助用のハイスピードモードだったな。」
「えぇ、それと各スラスターを連動監視にしますの。慣れないと酔いますわよ。お気をつけて。」
セシリアさんに言われ、設定の確認をする。
視界全体がより鮮明に映る。
「よし、設定完了。」
「電童、準備完了です。」
「ブルー・ティアーズも完了ですわ。」
それぞれ空へ行き、スタートラインに並ぶ、山田先生の合図を待つ。
「はい!では皆さん!行きますよ!」
フラッグを持つ山田先生が声を上げる。
「……3、2、1、スタート!」
フラッグが降り下ろされると同時にスタート。
一気に加速し、瞬時加速並の速度で突き進む。
しかし、ハイスピードモードに設定したバイザーのお陰で、視界は非常に鮮明だ。
「くっ!確かにじゃじゃ馬だな、こいつは!」
2人に遅れずついていけるが、ちょっとした事でバランスが崩れ、機体が揺れる。
『では、お先に♪』
慣れない高速機動に苦戦する俺と一夏を横目に、セシリアさんが一気に加速し、前に出る。
『よし!俺も負けないぞ!』
それに釣られて一夏も加速、セシリアさんの後ろに付く。
「継続的な加速ってのは慣れないな。」
2人を追いかけるように飛ぶ。
『あら、お二人共、私のヒップにご興味がありまして?』
『ばっ馬鹿っ!そんな訳ないだろっ!』
「残念ながらそんな余裕は無い!」
『ふふっ冗談ですわ♪』
軽く冗談を言うくらいの余裕があるセシリアさん。
俺と一夏はついていくので精一杯だ。
『折り返しですわよ。』
『段々わかってきたぞ。行っくぜぇ!』
「一夏、調子に乗って事故るなよ!」
IS学園の中央に位置する、タワーの頂上で折り返し、来た道を戻る。
セシリアさん、一夏、俺の順番でゴールを通り、減速し、先生達の元へ行く。
「はい!皆さんお疲れ様でした!」
山田先生が笑顔で出迎えてくれた。
「いいか、今年は異例の1年生参加だが、やる以上は各自目標を持って努力するように、キャノンボール・ファストは貴重な経験として必ず生きてくるだろう。訓練機組は選出を行うので各自割り振られた機体の準備を開始しろ!」
織斑先生がクラスの全員に声をかける。
今、織斑先生が言っていたが、本来ならキャノンボール・ファストに参加するのは整備課のある2年からで1年は観戦しかしなかったらしい。
恐らくは俺達、専用機持ちが多すぎるからだろう。
今回の授業で出場選手と整備班に、クラスをわけるそうだ。
「天野くん、初めての高速機動はどうでしたか?」
慌ただしく準備を進めるクラスメイトを横目に、山田先生が話しかけてきた。
「今までの動きと癖が違うので少し怖いですね。補助バイザーのお陰で綺麗に見えるのも違和感がありますし。」
「そうですね、動きと視界の違いに最初は戸惑うと思いますが頑張ってくださいね。」
「あと、思ったようにライン取りが出来なかったです。どうしても行きすぎますね。」
「上手い人は腕や足の角度を少し変えるだけで軌道の微修正が出来るそうですよ。」
「へぇ、それはすごいですね。」
「同じ様に増設ブースターを使うデュノアさんやボーデヴィッヒさんと話したらどうですか?何か得られるかもしれませんよ。」
「あ、はい。そうしてみます。」
訓練機を使う生徒達の方へ向かう山田先生を見送り、ラウラとシャルが作業してる所へ向かう。
「ラウラ、シャル、調子はどう?。」
「あ、星夜。」
「インストール作業は順調だ。問題ない。」
ブースターユニットが入っているであろうコンテナの近くで作業をしている2人。
頭部のヘッドギアのみを展開し、作業状態を確認してるようだ。
「星夜はどうかしたの?」
「問題でもあったのか?先程の飛行を見てる限り、大きな物は無さそうだったが。」
「いや、初めての高速機動だから、上級者の話を聞こうと思ってさ。」
一瞬、2人が深刻な顔をしたので誤解を解いておく。
「なるほど。そう言うことか。」
「高速機動は気を付ける所が多いからね。」
そのまま、装備のインストールが終わるまで2人から簡単な注意点等を聞いていると、一夏が来た。
「あっ一夏。」
「3人で何してるんだ?」
「ん?同じ増設ブースター組としてレクチャーを受けてた。」
「初心者に対するアドバイスは、上級者にとっても自分の技量を確認する貴重な機会だからな。」
「あぁ、なるほどな。」
一夏が頷くとほぼ同時に、ラウラとシャルのインストールが終了した事を伝えるメッセージボイスが流れる。
「良いタイミングだな、シャルロット、軽く流すか?」
「うん、そうだ一夏、星夜。映像回してあげるね。チャンネル304で。」
「お、助かる。上級者の視点をモニタリングできるのっていいよなぁ、助かる機能だ。」
「こちらは305だ。しっかり見ておくといい。」
「305…よし、設定完了。位置取りや加減速のタイミングがわかるのは助かるな。」
IS同士で視界情報を共有する機能があり、相手が見ている物をそのまま見れる。
テレビのバラエティとかである視界カメラのイメージだ。
「やっぱり、自分の顔が見えるのって違和感があるな。」
「そうか?鏡とかと一緒だろ?」
「あ~そう言う考え方もあるかぁ~。」
目の前に居るラウラやシャルの視界を見てるため、当然俺や一夏が映る。
この感覚が一夏的には違和感があるようだ。
ラウラとシャルは機体を展開し浮上する。
「よし、準備完了だ。シャルロット、そちらは?」
「うん、大丈夫だよ。じゃ、しっかり見ててね。」
「おう、瞬きすらしてる暇はないからな!しっかり見てるぜ。」
「代表候補生の動き、しっかりと参考にさせてもらうよ。」
2人はスタートラインに並び、合図と同時にスタート。
先程の自分達と同じコースを迷いなく、しっかりと駆け抜けていく。
「加速タイミングは機体の差かな、でも、減速は同じ位のタイミングか…。」
「ライン取りもほぼ同じ。2人ともブースターの慣らしが目的だから速度はもっと出るだろうな。」
あくまで練習であり、ブースターの初使用となれば慣らしの為、全力で稼働することはない。
それでも先程の自分や一夏と比べれば早いタイムでコースを一周し戻って来た。
「おかえり、2人とも上手いよなぁ。」
「慣らしで俺よりも良いタイム出してるもんな。」
「こっちはその為の訓練を受けている。そっちはやっていない。それだけの差だ。本番まで頑張れば埋めれる差だろう?」
「そうそう、2人とも初めてなんだから仕方ないよ。今の動き見て解らない所とか、気になることはあった?」
俺と一夏でいくつか質問し、それに2人なりの答えを貰う。
「うん、こんなもんかな、ありがとう。参考になったよ。」
「あぁ、ありがとう。さすがはシャルとラウラだな。」
「うむ、大いに精進するといい。」
「うん、僕はもう少し調整しようかな。」
ラウラ、シャル、一夏と別れブースターの調整をするため、機材が置いてあるエリアに行く。
「箒さん、隣使って平気かな?」
「あぁ、いいぞ。」
電童を機材に接続、調整の準備に入る。
「すまない、少し意見をもらっていいか?」
「俺でよければ。」
箒さんがディスプレイをこちらでも見えるようにする。
「先程、一夏と話したのだが、なかなか難しくてな。」
「展開装甲の配分か…。」
展開装甲はパッケージを必要としない装備だが、その代わりに燃費が悪い。
恐らくはそのエネルギーを〈絢爛舞踏〉で供給する前提の設計なのだろう。
「全てを開けるとエネルギーが持たなくて、開けないと出力が足りない…。」
「あぁ、一部だけ展開すると出力差がありすぎて制御できない。」
「なるほどな……。」
ディスプレイを見ながら考える。
「ねぇ箒さん、別に最初から最後まで同じ必要はないよね?」
「ん?どういう事だ?」
俺の言ったことがいまいち伝わらなかったようだ。
「スタートからゴールまで同じ展開状態を維持するなら、パッケージと変わらない。展開装甲は柔軟な対応をするための装備でしょ?」
「っ!そう言う事か。」
「そう、加速のタイミングだけ開けたりすれば燃費と出力の両方を取れるはず。」
「状況に合わせて展開状態を変えるのか、これは盲点だった。ありがとう、少し自分で考えてみる。」
「どういたしまして。」
「しかし、星夜のあれは大丈夫なのか?先程は少し振り回されているように見えたが。」
「あぁ、あれは完全にベガさんに合わせたやつ。これから調整して使いやすいところに落とし込まないと。」
「そうか、頑張ってくれ。」
会話をしながらも画面を見つめ、各数値を弄っていく。
授業の分だけだと足りなさそうだ。GEARで練習させてもらわないと。
キーボードを打ちながら思う。
本番まで2週間程しかなく、実際にこの第六アリーナを使った実習は数えるほどしかない。
全クラスが順番に使うのだから当然だし、放課後の申請ももう埋まっていると思った方が良いだろう。
「よし、これで一回飛んでみるか。」
「そうか、気を付けてな。私はもう少し調整している。」
箒さんと別れ、コースの方へ向かい、電童を展開。
「ブースター接続確認…よし。」
頭の中に流れる各情報から問題が無いことを確認し、浮上する。
「あら、星夜さんはこれからですか?」
セシリアさんが目の前にやって来た。
「あぁ、初めてだから調整も時間がかかってね。セシリアさんは?」
「そうですか、私はこれから一度降りて機体の確認ですわ。」
「そっか。頑張ってね。」
「えぇ、今ですとコースに沢山の方が飛んでらっしゃいますから、接触等にご注意くださいませ。」
「忠告ありがとう。」
セシリアさんが離れたのを確認し、センサーでコースの確認をし、先程と同じように飛ぶ。
セシリアさん、シャル、ラウラの飛んでいたラインや加減速のタイミングを意識し、小刻みに制御する。
「本番はこれに妨害が加わるのか…。」
飛びながら呟く。
今、制御で手一杯の為、このままでは本番で周りからの攻撃に対処仕切れないかもしれない。
その日は調整しては飛び、それを元に修正を行い再び飛ぶ、の繰返し授業時間を目一杯使ったのだった。
──
放課後、今日の内容を踏まえ、整備室でブースターを前に唸っていた。
「これだけやっても、機体のロールが安定しないな…。」
何度調整をしても、機体が安定しない。
このままでは当日に最下位まっしぐらだ。
「あまの~ん、悩み事~?」
「確か今日は〈キャノンボール・ファスト〉に向けた初実習でしたね。装備についてお悩みですか?」
布仏姉妹が整備室に入ってきた。
ちなみに本音さんの足元には、井上さんが作ったペットロボが居る。
「虚先輩に本音さん、ご指摘の通りです。性能が良いんですけど、なかなかピーキーな様で…。」
「天野くん、少しデータを見せて貰っていいかしら?」
「見せて見せて~。」
「あ、はい。どうぞ。」
仮想ディスプレイを展開し、各データを表示する。
「こちらの数値はもう少し低い方が使いやすいかと。」
「これは~こういじって~、こっちがこうだね~。」
2人がテキパキとキーボードを操作していく。
数分すると、作業が終わったらしく、手が止まる。
「大まかな調整ですがこの位でどうでしょうか。」
「次の実習の時に見せてね~。」
「あ、ありがとうございます。」
ディスプレイを見て、調整前後の状態を見比べる。
「結構数値が低いんですね。」
「熟練者の方は数値を上げる傾向にありますが、慣れていないのなら、扱い易さを重視した方が結果的に速くなりますよ。」
「これならあまのんも周りにちょっかい出されても平気かも~。」
なるほど、ベガさんの設定そのままで使うより、俺が完全に扱える範囲に抑えたのか。
「わざわざすみません。」
「いえ、本音が先日贈り物を貰ってますし。」
「えへへ~、そのお礼だよ~。」
足元のペットロボも吠えるような仕草をする。
「自分はあくまで仲介役をやっただけですが。」
「それでも嬉しいんだよ~。」
「また、調整で解らないことがあれば、いつでも協力しますから、その時は声をかけてください。」
「今回は解らないことが多いのでまた、力をお借りすると思います。」
心強い助っ人を得た。
その後は細かい調整の仕方を聞いて解散した。
──
後日、休日だが、少しでも練習する為にGEARに向かおうとしていると…。
「おはよう、鈴、簪さん。」
「おはよう、星夜。」
「おはよう、星夜くん。」
寮を出たところで鈴と簪さんが居た。
「星夜は出掛けるの?」
「あぁ、ちょっとGEARまでね。」
「GEARに?装備に何かあったの?」
「いや、純粋に授業時間じゃ足りないと思ってね、アリーナも一杯だしGEARで練習をね。」
「そうなんだ。」
「ねぇ、それあたしも行って良い?」
頷く簪さん、鈴からまさかの申し出だ。
…いや、装備の到着が遅かったから、少しでも慣れたいのか。
「こっちは別に構わないぞ。」
「じゃ、すぐに準備するから、ちょっと待ってなさい!」
言うや否や寮のなかに行く鈴。
「簪さんも来る?」
「え、うん!ちょっと待ってて!」
俺に言われて一瞬だけ、キョトンとした簪もすぐに準備に向かう。
数分後、準備してきた2人とGEARに向かった。
──
「へぇ、あんたのも大変ねぇ。上級者に合わせてあったなんて。」
「本音さんや虚先輩には助けられたよ。」
「ここが高速機動訓練用アリーナ?」
GEARに到着し、ISスーツに着替えてアリーナに向かう。
情報封鎖の一環から地下にある特別アリーナだ。
「ここは学園のと違ってほぼ平面だけど、本番もこんな感じらしいから丁度良いな。」
「ここの方が少し狭い感じね。」
「でも、練習には最適だね。」
軽く話ながら機体を展開する。
「ほぉ、それが甲龍の新パッケージか。」
「えぇ、〈風(フェン)〉よ。」
まるで新しい服を自慢するように、その場で一回転する鈴。
「パッケージは本当に見た目が変わるから、大分印象が変わるよな。」
「見た目だけじゃ無いってことを教えてやるわ。」
「私も…負けない。」
話ながらもステータスのチェックを行い、スタートラインで準備をする。
「じゃ、始めるか。」
「えぇ、いいわよ。」
「うん、大丈夫。」
コースに備え付けられたスタートシグナルを電童から遠隔で操作する。
カウントが始まる。
シグナルレッド…シグナルイエロー…シグナルブルー。
「スタートォ!」
3機のISが同時にブースターを吹かす。
加速によって歪む視界はセンサー即座に補正し、鮮明になる。
簪さん、鈴、俺の順番に最初のカーブに入る。
今日は実戦形式の妨害ありでやる予定だが、さすがに一回目はウォーミングアップをかねて飛ぶだけだ。
『貰ったぁー!』
カーブの終わりで少し膨らんだ軌道になってしまった簪さんの隙を、鈴が逃さず仕掛けインサイドから抜いていく。
「加速なら負けねいぞ!」
『まだ始まったばかりだよ!』
1人で突っ走る鈴を2人で追いかける。
『ふっふっふっ……。あたしの速さに誰も追い付けないのよ!』
「絶対に!」
『追い越す!』
上機嫌な鈴が通信を飛ばして挑発してきたので、絶対に追い越すと心に決める。
「カーブで越すのは難しいから、やっぱり直線だな。」
2つ目のカーブを曲がりながら鈴を追い越す算段をつける。
「少し外に行きながら……ここだっ!」
カーブが終わり、姿勢を直すタイミングを狙い一気に加速する。
「よし!」
『やるわね!星夜!』
『残念だけど、私が貰うよ。』
俺が鈴を追い越した直後、俺の後でスリップストリームを利用して加速した簪さんが更に前に出る。
「やっぱり1人で飛ぶよりも為になるな!」
こうして周りの皆と切磋琢磨してると自分の力量がどれくらいか分かりやすい。
皆に比べてまだまだだが、その分延びしろがあると思っておこう。
その日は朝から夕方までたっぷりと、時間を掛けて飛び続けた。
「あ~、疲れた~。」
「学園の授業時間よりもやってたからね。」
「2人のお陰で良い訓練が出来たよ。」
「あたしも思いっきり〈風〉を動かせて良かったわ。」
「レースの予行練習には丁度良かったよ。」
体に軽い疲れを感じながら歩く。
「ま、本番でもあたしが1位を貰うからよろしくね♪」
今日一番勝ちが多かった鈴が高らかに勝利宣言する。
「今日は練習、本番とは違う…。私が勝つ。」
それに対して簪さんが答える。
「そうだぞ、本番までまだ数日ある。それまでに力をつけて勝たせてもらうぞ。」
俺も同じように宣言する。
「ふふんっ楽しみにしてるわ。じゃ2人とも、お疲れ!」
「うん、星夜くん、鈴さん。お疲れ。」
「お疲れさま。」
寮の前で挨拶して別れる。
それから本番までクラスでの実習、放課後の特訓、本音さんと虚先輩に教わりながら調整して過ごした。
そして9月27日『キャノンボール・ファスト』開催の日となった─
今回はここまで!
次回はレースですね!
電童が付けているブースターは、原作の支援機のコクピットを外して背負ってる感じです。
ちょっと無理があるかな……(^^;
ご意見、ご感想などはお気軽にどうぞ!
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本「あまのんはどこまでやれるかな~?ギャオちゃん。」
虚「本音、お菓子ばかり食べてないで、しっかりと見てなさい。」
本「大丈夫だよ~お姉ちゃん。ギャオちゃんが録画してくれるから~。」
虚「それを見ながらレポートを書くのは禁止ね。」
本「がーん!」
虚「何が起こるかわからないのだからしっかりね。」
本「うん。」
次回!IS戦士電童
第57話《飛べ!光よりも速く!》
本「クラスの皆が勝てば今度こそ、デザート食べ放題~。」
虚「あなたは食べ過ぎ。」