東風乃扇です!
ISアーキタイプブレイカーの事前登録が始まりましたね。
とりあえず登録はしました。誰を貰うかな…。
そんなことより本編だ!第57話!
9月27日、今日は『キャノンボール・ファスト』だ。
市内アリーナを使い行われるイベントで、アリーナの周辺もお祭騒ぎだ。
中で見れなくても大型のスクリーンで映してるので、それを見てる人もいる。
アリーナ外周の道には出店も来ており、朝から夜まで賑わうらしい。
そんな中で俺─天野星夜─はと言うと。
「はい、これで終わりですね。」
「しゅ~りょ~。」
「本音さん、虚先輩、ギリギリまでありがとうございます。」
ピットの隣にあるメンテナンスルームで、最終調整を行っていた。
「こういった特殊な装備は細心の注意を払うべきですから、天野くんは間違っていませんよ。」
「いつもお世話になってるからね~出来ることならやるよ~。」
今回は本当に助かった。この精度を自分一人で出そうとしたら時間がいくらあっても足りなかっただろう。
「では、私達はこれで。頑張ってくださいね。」
「頑張ってね~。」
「はい!頑張ります!」
2人は部屋を出て、観客席に向かった。
「え~と、これから開会式か…。」
最後に片付けをして、今日の流れを確認しながら部屋を後にした。
「お、星夜。もう少しで始まるぞ。」
「かなりギリギリまでやっていたようだな。」
ピットに入ると一夏と箒さんが話していた。
「あぁ、少し気になるところがあったからな。勝つためにも妥協なんてしてられないだろ?」
「なるほど、星夜らしいや。」
「準備を怠ると痛い目に会うのは何事も同じだからな。」
2人とも納得したように頷く。
開会式はスクリーンからの放送で行われる。
ISの競技用に作り直された市内アリーナ、その収容人数は東京ドームとほぼ同じ約5万人だ。
しかし、競技スペースなどを含める全体の面積は2倍近いらしい。
そんな大きさなので、よくあるスポーツの開会式と同じようにやるわけにもいかないようだ。
「皆さん、準備は大丈夫ですか?」
「開会式終了後、2年のレースが始まる、その次がお前達、専用機持ちによる特別レースだ。それまでになにか問題が発生した場合は、すぐに近くの職員に伝えるように。」
織斑先生と山田先生が入ってきて全員に声をかける。
「織斑、天野。お前達は初の公式の場での試合になる。周りを気にせず試合に集中しろ。」
「はい、拳法でも大会に何度か出てますし、そのくらいで乱れるような訓練はしてませんよ。」
「そうだぜ、見ててくれよ。千冬姉!」
「織斑先生だ。何度言えば覚える…。」
あきれながら出席簿でコツン、と軽く叩かれる一夏。
「では、皆さん、2年生の部が始まりますよ~。終わる頃に又来ますので、それまでここで待機してくださいね。」
先生達は他の生徒の様子を見るため、ピットを出ていった。
「お、そろそろだな。」
モニターに映るのは多数のラファールと打鉄。
それぞれがブースターなどを思い思いに付けてカスタマイズしている。
司会の声に合わせ、スタートのカウントがされ、全ての機体が一斉にスタートした。
キャノンボール・ファストの始まりだ。
──
「えっと…Fの35……Fの35……。」
競技が始まる少し前、自分のチケットに書かれた座席番号を見ながら歩く1人の少女が居た。
五反田蘭である。
「きゃっ!?」
「おっと…。」
チケットを見ながら歩いていたせいで、前に立つ人に気がつかずぶつかってしまう。
「大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます。」
ぶつかり、転びそうになった所を支えてもらう蘭。
相手は自分と同じくらいか少し上に見える男性だった。
「人が多いし、通路も狭いからしっかり前を見るんだ。」
「す、すみませんでした!」
頭を下げる蘭。
「あと、Fの列はひとつ後ろだ。」
ピッと指す方向を見ると確かに『Fー15』と書かれた席がある。
「重ね重ねありがとうございます!」
「なに、自分の席がその隣だからな。偶然だ。」
「あ、そ、そうなんですか!?」
時おり席の数字を確認しながら蘭は男性と歩く。
「あ、私、五反田蘭って言います。」
「スバル、スバル・アルクトスだ。」
「あの、アルクトスさんも生徒さんの招待で来たんですか?」
「あぁ、友人にチケットを貰ってね。ここだな。」
座席の番号を確認し、2人は座る。
「も、もしかしてその、友達って……。」
蘭は1度だけ会ったことのある人物を思い出す。
「天野星夜、よく『2人目』と呼ばれているな。」
「わ、私は一夏さん…『1人目』の一夏さんからチケットを貰いました。」
「星夜から話は聞いているが、なかなか愉快な人物らしいな。」
「あ、あははは…そ、そうですか…。」
2人は軽く話ながら開始の時を待つ。
──
ピット内に居ても観客席からの歓声が聞こえる。
「やっぱり2年生の人達は違うなぁ…。」
モニターに映るレースを見ながら呟く。
まだ半年程しか使ってない自分と比べるのもあれだが、動きが綺麗だ。
無駄な動きを無くし、フェイントなどを駆使したレース。
もう最終ラップの為、全員が妨害よりも加速を優先し、1mmでも前に出ようとしている。
観声も一段と大きくなる。
「流石に楯無先輩は居ないんだな。」
「去年まで専用機持ちの人は、色々あって基本的に見てるだけだったんだよ。」
隣に居る簪さんが教えてくれる。
各機体がゴールをくぐり、最後に大きな拍手と歓声が聞こえた。
「やっぱり勝負にならないから?」
「主に機密保持の部分かな、キャノンボール・ファストは人が多いから。」
「じゃあ、今回俺達がやるのって…。」
「きっと、男性操縦者の情報公開要求に対するガス抜きをかねてるんだと思う。」
「ま、理由はどうあれ、全力でやる。そうでしょ?」
簪さんと話してると鈴が横からやって来た。
既に甲龍を展開している為、床を滑るように移動する。
「当然。」
「で、星夜も簪もそろそろ展開したら?もう少しであたし達の出番よ。」
「うん、そうだね。」
簪さんと同時に機体を展開する。
「やっぱり皆のブースターと比べると、でけぇな。」
「俺もそう思う。」
一夏が俺と簪さんの装備を見比べて感想を言う。
「それが鈴のパッケージか!本当にすごいな。」
「ふふん!そうよ!これがキャノンボール・ファスト用に作った装備、〈風〉!」
一夏は初めて見る鈴のパッケージに驚いている。
今は軽く流していたが、今回キャノンボール・ファスト用の装備をつけているのは鈴だけだ。
セシリアさんの〈ストライク・ガンナー〉は本来強襲用、俺達は単なるブースターを増やしただけ、この差は決して小さくないだろう。
「純粋な訓練時間はラウラとシャル、装備の熟練度はセシリア、装備その物は鈴が有利なのか。」
一夏が周りを見ながら言う。
「ふん、装備だけで勝敗が決まる訳が無かろう。」
一夏の一言に強気に言い返すのは箒さんだ。
「そう、どのような勝負であれ、流れを掴んだものが勝つのだ!」
ラウラが勝利宣言の如く、大きな声をあげる。
「ラウラ、勝利宣言には早いんじゃ無いかな?」
ラウラを制すようにシャルが答える。
「皆さん、悔いの無いよう全力で戦いましょう。」
セシリアさんが締めると同時、ピットに山田先生が入ってきた。
「皆さん、これから出番ですが準備は大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。」
山田先生の指示に従い、ピットからアリーナへ。
『では、ガイドビーコンに沿って並んでくださ~い。』
ISを通して視界に表れるガイドビーコン。
それぞれがスタートラインにつく。
『会場の皆様!先程の2年生の部はお楽しみにいただけたでしょうか!?』
スピーカーから声が響く。
『これから始まるレースは!今年度の目玉!1年生の専用機持ちの部!』
\ワアアアァァァァァッ!!/
スピーカーの声に負けない位、大きな声が響く。
『総勢8機もの専用機達が音速の中で凌ぎを削ります!』
司会の声が響く中、中央の大型モニターには俺達、専用機持ちのプロフィールが表示されてる。
『皆様!ここから先は!トイレはもちろん!瞬きすら禁止!決定的瞬間を見逃してしまいますよ!?』
コース内の確認を行っていたスタッフ達も居なくなり、シグナルランプが真っ赤に点灯する。
全員が構える。
『では!これより!1年生専用機持ちの部を始めます!』
周りの歓声が一斉に消える。
会場の視線が全て俺達に向けられているのが判る。
『3…』
全てのブースター、スラスターにエネルギーを送る。
『2…』
送られたエネルギーが種火となって、解放されるその時を待つ。
『1…』
一瞬でも遅れないよう、全ての神経を集中させ、走り出す時を待ちわびる。
『スタートオォォッ!』
8機ものISが一瞬で加速し、周辺の空気が揺れる。
本来ならまともに前を見れないはずの速度だが、ハイパーセンサーが補正する。
「ちっ、出遅れたか…。」
先頭から
ブルー・ティアーズ
ラファール・リヴァイヴ・カスタムII
シヴァルツェア・レーゲン
甲龍
打鉄弐式
電童
白式
紅椿
の順になる。
自分と一夏、箒さんの位置はほぼ変わらない。
ひとつ頭が飛び出てるのはセシリアさん、その後ろに並ぶシャルとラウラ。
鈴と簪さんが並んでいる。
『そこだっ!』
最初のコーナーに入るか否かの所で仕掛けたのは箒さんだ。
空裂を振り、エネルギー刃が俺と一夏に迫る。
『だぁっ!?あぶねぇ!』
一夏は横に大きく避ける。
自分の頭を軸にして1回転する。
調度自分の体が逆さまになる瞬間にエネルギー刃が過ぎていく。
『貰った!』
一夏が避けたことによって、空いた空間をすり抜けるように、加速する箒さん。
「させないよ!」
横を抜けようとする箒さんに、ブースターユニットからミサイルを撃ち込む。
『ぐっ!』
『俺まで!?』
加速してる最中に目の前にミサイルが来たせいで、加速がそこで止まる箒さん。
ついでに一夏の前にもいくつか撒いておく。
ミサイルは2人に近づくと爆発し、爆風と煙で妨害する。
「お先に!」
カーブが終わり、直線に入った瞬間にブースターの出力を一気に上げる。
次は衝撃砲とミサイル、青龍刀と薙刀によるドッグファイトを繰り広げる鈴と簪さんだ。
『星夜!?もう来たの!』
『さすがだね!でも!』
2人は俺が近付いているのを確認すると、衝撃砲とミサイルの一部をこちらに割り振り、牽制をしてくる。
「ちぃっ!」
ミサイルと衝撃砲を確実に避けるため、大きく移動する。
見えない衝撃砲は元より、ミサイルもしっかり距離をとって避けないと、爆風の餌食になってしまう。
「もう少し温存しときたかったけど…。」
変に出し渋りをして、巻き返せなくなるのも嫌だしな。
そう思うと同時に、両足のハイパープラズマドライブを起動する。
「いっくぜえぇぇ!」
ハイパープラズマドライブが後方で圧縮した空気を解放する。
次の瞬間、電童が爆発的に加速する。
『えっ!?なんでそんな加速が出来るのよ!?』
『きゃっ!?』
2人の予想より早く復帰した俺は、ブースターユニットのビームキャノンを撃ち込み、体制を崩す。
「お返しだっ!」
そのまま、一気に2人を抜き去る。
『行かせるかぁっ!』
鈴が食らいついてくる。
「浅かったかっ!」
『拡散衝撃砲の威力!味わいなさいっ!』
横並びになると同時に、横に向けられた拡散衝撃砲を発射。
カーブに入る直前で大きく外側に飛ばされる。
「ぐっ!」
目の前にアリーナの壁が迫る。
「このっ!まだだぁ!」
両足のハイパープラズマドライブを突き出し、回転させる。
アリーナの壁に向かって正座のような形でぶつかる。
「ちょっと型が変わるが…疾風!激走脚!」
両足のドライブユニットをタイヤに見立て、壁を走る。
なんとか壁への直撃を避けたが、その隙に一夏と箒さんも行ってしまう。
「一気に最下位か…。スバルが見てるのにこの結果はカッコ悪いだろ…。」
そう呟き、壁を蹴り空中に戻る。
「一か八かだ。」
今まで余りの出力の大きさに一度もやったことの無かったが全出力を加速へと回す。
「ぐっおおぉぉっ!」
PICが消しきれない程の加速Gを体に受ける。
「これでぇぇっ!」
今回は普段の武装を降ろして替わりに、増設ブースターと一緒に入れた物がある。
それは大型の物理シールドだ。
普通のレースなら単なるデッドウェイトにしかならないが、今回はこれが必要なのだ。
シールドを展開し、前に構える。
「纏めて……ぶっ飛ばす!」
制御出来ないならしなければいいと、ちょっとなげやりな発想の元、固い楯と圧倒的な加速を使って全力の体当たりで突き進む。
『えっ?うわぁあっ!』
『なぁっ!』
『えっ!?ちょっ!?まっ!?』
『きゃっ!』
鈴と簪さんに追い付きつつあった一夏と箒さん、4人の集団に向かって真っ直ぐ突き進む。
この速度での接触は流石に恐ろしい物があるが、そんなことは言っていられない。
4人に構わず加速し、追い越す。
「シャルとラウラ…。見えた!」
『まさかここまで一気に来るとはね…。』
『だが、その加速も終わりだ。それでカーブは曲がれないだろう?』
最下位から一気に4人抜きをしたが、流石にこの速度ではカーブは曲がれないので、減速する。
減速と同時にシールドも格納する。
「ここまで来たんだ!もう少し欲張らせて貰う!」
『その意気や良し!』
『でも、僕やラウラを簡単に抜けると思わないでね!』
さっきの強行突破のお陰で後ろの4人はまだ距離がある。
この2人に集中できる内にどうにかしないと…。
「!?」
突然、目の前に二つの閃光が走る。
目の前を飛ぶシャルとラウラが急に撃たれた。
アリーナのバリアが破れた事により、緊急事態を知らせるサイレンが鳴り響く。
「ラウラ!シャル!」
ブースターにダメージを受けた事により、バランスを崩して、コントロールを失った2人が落ちていく。
「サイレント・ゼフィルス………!」
上空を見上げると、サイレント・ゼフィルスが此方を見下しながら笑っていた。
──
突如鳴り響くサイレン。
そして、大きな爆音と振動。
ただ、楽しかった特別な日が、一瞬であり得ない非日常へと変わる。
会場にいる5万人もの人間がパニックを起こさない訳が無かった。
全員が助かるため、出口をめざして動き出す。
「きゃっ!?」
何が起きたか全く理解出来なかった蘭、椅子から立ち上がった姿勢で固まっていたら誰かの肘が当たり、体制を崩す。
「大丈夫か?」
横の席に居たスバルが咄嗟に支える。
「あ、ありがとうございます。」
「全員がパニックを起こしている、下手に動くと危ない。落ち着いてきたら移動するぞ。」
スバルは冷静に周りを見渡す。
「一夏さん……。」
蘭はアリーナの中でサイレント・ゼフィルスと睨み会う一夏を祈るような目で見ている事しか出来なかった。
──
サイレント・ゼフィルスがライフルを構える。
その銃口の先には先程ダメージを与え、壁に衝突して墜落したラウラとシャルが居る。
「やらせるかぁっ!」
「シャル!ラウラ!」
俺と一夏でラウラ、シャルの前に立ち、大型シールドと雪羅のシールドを構える。
直後、複数のレーザーが降り注ぐ。
「お前……何者だっ!」
一夏が雪片弐型を構え、サイレント・ゼフィルスに問いかける。
「皆さん!ここは私が!」
「お、おい!セシリア!」
一夏の制止も聞かず、サイレント・ゼフィルスに向かい全速で飛び込むセシリアさん。
「1人で突っ込むなっての!」
セシリアさんを追うように飛び込む鈴。
「みんな!大丈夫!?」
簪さんがこちらにやって来る。
「ぐっ……、高速軌道中に撃たれたとは言え、無様をさらしてしまった。」
「あのまま壁に衝突してたら、絶対防御が発動してたね。」
シャルとラウラがゆっくりと立ち上がる。
「シャル!ラウラ!」
「無事か!?」
「ブルが直前にオートプレッシャーで軽減してくれて助かったよ。」
そう言うシャルの右手にはいつの間にかブルが装備されていた。
「だが、ブースターがやれた際に本体にもダメージが入ってる。直接戦闘は難しいな。」
「僕はなんとか動けるけど。あの速度じゃ難しいな。」
2人は増設ブースターを強制排除する。
無惨にも撃ち抜かれ、風穴が空いた装備がガランと地面に転がる。
「ここから支援砲撃をする!行け!」
「ラウラの防御は僕に任せて!ユニコーン借りるよ!」
ラウラは反動を殺すためか、ワイヤーブレードを地面に撃ち込んで、その身を固定する。
シャルはブルを解除し、ユニコーンを装備する。
「わかった!」
「いくぜ!」
「2人とも、無理はしないでね!」
俺達も鈴とセシリアさんを相手にしているサイレント・ゼフィルスに向かって飛び込む。
「喰らえっ!」
一夏が飛び込みながら雪片弐型を上段から落とす。
それと同時に、後ろから急接近した箒さんが斬りかかる。
「ふん…。」
サイレント・ゼフィルスのパイロットは冷静だ。
前後から迫る斬撃を2人が振り切る直前に動き、一瞬で一夏の背後に回る。
「なに!?」
「なんだと!?」
「甘いな。」
一夏を思いっきり蹴飛ばし、箒さんにぶつける。
そこを狙って撃ち込まれた衝撃砲、レーザー、ミサイルをシールドビットを使い、的確に防ぐ。
「これで!」
シールドビットの無い方から飛び込む、が上から来た別の敵に防がれる。
「おい!貴様の相手は俺に決まってるだろ!」
「凰牙!?」
ラゴウを装備した凰牙が俺の前で構える。
「あの時の傷の礼、受け取りやがれっ!」
「先に仕掛けてきた癖に、よく言うっ!」
凰牙との格闘戦になる。
拳と拳、脚と脚がぶつかり、火花が散る。
「星夜くん!」
簪さんが後ろから援護射撃を行う。
「2対1程度のハンデじゃあ、勝てねぇって事を教えてやるよっ!」
「私たちだって、あの時より強くなってる!」
「その身で思い知ってもらう!」
凰牙に2人で挑む。
──
「MもAもやるじゃない…。IS学園の専用機持ち達は少しガッカリね……。」
周りに誰もいない、ガランとした席の一つに座りながら呟く1人の美女、スコール。
こんな状況で平然と客席に座り見ていることから、この状況を作り出した1人、少なくとも知っていたのは誰が見てもわかる。
「あら、勝手に乱入しておいて、ひどい物言いね。」
そんなスコールに後ろから声をかける人物、楯無。
「これはこれは、ロシアの代表様。アリーナが大変な事になってるわよ?」
ここに居る時点で、高い確率で来るであろうとわかっていたので、スコールは冷静に答える。
「あれが彼等の実力だと思ってるなら、それは過小評価ね。」
「あら、そうなの。」
楯無と話ながら、スコールは席を立ち上がると同時に、ナイフを投げる。
楯無はしっかりと見極め、蛇腹剣〈ラスティー・ネイル〉でナイフを弾き、返す刃でスコールを狙う。
スコールは片腕だけ、ISを展開すると刃を受け止める。
「何が目的?『亡国機業』」
「このシチュエーションから予想してみたら?考える力も必要よ?」
「じゃあ、後で答え合わせをするためにも貴女にはここにいてもらわないとね!スコール!」
剣を手放し、代わりに多機能ランス〈蒼流旋〉をガトリングモードで展開し、構える。
構えるとほぼ同時に4門の砲口から大量の弾丸が撃ち出される。
しかし、スコールが作り出した金色の防壁に防がれる。
「止めましょう?更識楯無さん。」
「…………。」
楯無は何も答えず、ランスを構え直す。
「貴女の機体では私の防御は破れない。わかってるでしょう?」
「確かに…私の機体じゃあ、その防御は破れないかも知れない…。」
楯無はスコールを真っ直ぐ見つめる。
「だからって引き下がったら、それは私じゃ無いわね!ドラゴン!」
楯無が叫び、次の瞬間には左脚にドラゴンフレアが装備される。
直後、クラッシュレイをスコールに向け放つ。
「くっ!」
「流石にこれは防げないわよね?」
スコールは上体を反らし、クラッシュレイを避けた。
そこに合わせて、楯無はランスに大量の水を纏わせ突撃する。
「甘いわ!」
スコールは楯無に向かってナイフを投げる。
ナイフはランスの先端に当たると、爆発した。
「さようなら、また会いましょう?」
「!?」
爆発で怯んだ一瞬の内に、スコールはISを完全に展開し、飛び去った。
レーダーの反応を見ると逃走用にブースターを着けていたようだ。
「また、逃げられたわね……。」
あの速度では、外に待機していたスタッフ達も追いつけないだろう。
「なにか対策を考えないとね……。」
悔しそうな表情を浮かべる楯無だった。
──
「オラオラァ!どうした!?折角ハンデをやってるのにこの程度か!?」
「ちぃっ!」
凰牙と格闘しているが、防戦一方だ。
ラゴウを装備した凰牙と今の電童で最高速度に大差は無いだろう。
だが、こちらはあくまで長い距離を飛ぶための装備だ。
機動性は普段より劣る。
「このままなぶり殺しにしてやるっ!」
「そんなことっ!…させないっ!」
簪さんが凰牙を側面から荷電粒子砲で撃つ。
「チマチマと…うざってぇ!」
凰牙は俺を思いっきり蹴り、その反動を使い距離を取り、簪さんの射撃を避ける。
「ん…そろそろ時間か…?おいっ!M!」
「わかっている。A。」
凰牙はサイレント・ゼフィルスを呼ぶ。
それに答えるサイレント・ゼフィルス。
「何をする気か知らないが…。」
「思い通りにさせない!」
俺と簪さんで同時に凰牙を狙い撃つ。
「そんな狙いで当たるかよ!」
凰牙は大きく上昇。
回避と同時に外へ出るつもりのようだ。
「逃がすか!」
当然、全員が追おうとする。
『こいつは土産だ。』
『たっぷりと相手をしてもらえ。』
凰牙とサイレント・ゼフィルスから一方的な通信が入る。
その後、レーダー内に大きな反応が2つ、表れる。
「まずい!この反応は!」
「全員!気を付けろ!」
「デカブツが来るよ!」
俺、ラウラ、シャルで一夏達に警告する。
「逃がしませんわっ!」
「ちょっと!セシリア!」
鈴の制止を聞かず、セシリアさんだけサイレント・ゼフィルスと凰牙を追っていってしまった。
セシリアさんと入れ替わるように1体の大物が入ってくる。
人の様な上半身に獣の様な下半身。
まるでケンタウロスのようだ。
「お、おい……なんだよこれ…。」
「話は聞いていたが、これほどの巨体とは…。」
「え、これ倒せるの?まじ?」
「まだ外に同じような反応がある…。」
大型の敵を初めて見る一夏、箒さん、鈴、簪さんは驚きが隠せないようだ。
『お前達!散れ!的になるぞっ!』
織斑先生からの通信で我に返った一夏達、相手は複数の目からレーザーを放つ。
「織斑先生!避難状況は!?」
『アリーナ内は大体終わっている…が外周の方は大型機のせいでパニックだ。』
敵からの攻撃を避けつつ通信を続ける。
俺たちに追わせないために何て物を…。
『先行したオルコットの事もある、今、デュノア、ボーデヴィッヒ以外でエネルギーに余裕があるのは誰だ?』
全員のデータをリンクして確認する。
「電童、約7割は残ってます。」
「甲龍、約6割です。」
「打鉄弐式、約5割。」
「白式、4割だ。」
「紅椿も4割ほどです。」
『篠ノ之、紅椿の〈絢爛舞踏〉は?』
「…発動しません。」
織斑先生は全員のステータスを確認し、指示を出す。
『わかった。織斑、篠ノ之、ボーデヴィッヒ、デュノアはアリーナ内の敵を何としても倒せ。残りの3名は今すぐオルコットを追え。』
織斑先生が取った策は大胆にも1体を無視するものだった。
「えっ!?もう1体は!?」
当然、全員が不思議に思う。
一夏が織斑先生に聞き返す。
『そちらは学園側で持ち込んだ機体を使って、牽制する。周りに人がいる状況で、派手にやるわけにはいかん。』
「わかりました!鈴!簪さん!」
「えぇ!今行くわ!」
「皆!気を付けてね!」
俺たちはブースターを吹かし、上昇する。
「こっちはまかせろ!こんな奴は俺と箒で真っ二つだ!」
「星夜!輝刃を借りるぞ!」
「まだ増援があるかも知れん!気を付けろよ!」
「無茶しないでね!」
一夏が雪片を構え、箒さんが輝刃をストライカーモードで呼び出す。
シャルとラウラは敵の注意を引くため、援護射撃を開始する。
俺たちはセシリアさんの後を追うため、バリアの隙間を抜ける。
──
アリーナに大型の敵が出現する瞬間、蘭はスバルのお陰で何とか外に出た所だった。
「っ!?伏せろ!」
「きゃっ!?」
スバルが大きな声で周りに注意を促し、同時に隣の蘭をふせさせる。
\グガガアァァッ!/
「な、何あれっ!?」
蘭は自分の目の前に居るものが理解できなかった。
TV局の車が停まっていたはずなのに、次の瞬間には良く解らないケンタウロスみたいな怪獣になっていたのだ。
「話には聞いていたが……。」
「え……?」
スバルは周りのパニックと違い、冷静だった。
蘭はそこに違和感を感じる。
「とにかく、ここは危険だ。少しでも離れるんだっ!」
スバルが声をかけるが周りの人はパニックを起こしているか、腰を抜かして動けない人ばかりだ。
\グオオォォン/
怪獣は吠えるとアリーナに向かって跳ねた。
「中にいる専用機持ちを狙ってるのか!?」
「そ、そんな!一夏さんが!?」
蘭はアリーナに向かって走り出そうとするが、スバルに止められる。
「今、君が行ってどうする!?足を引っ張るだけだっ!」
「で、でもっ!」
「専用機持ちなら、大丈夫だ、信じるんだ。」
「うぅ……。」
2人が避難のために歩こうとする。
コンと近くにコンクリートの欠片が転がってきた。
「ん…?」
スバルが不思議に思い、顔を上げる。
そこにはもう1体の巨体があった。
その見た目は芋虫の背中にパラボラアンテナを付けたような形だ。
「おいっ!上ジャン!」
「もう1体居るバリィ!」
「は、早く逃げるんだわ!」
近くに居た数人がその存在に気づく、その声を聞き、全員が気づいた。
先程のケンタウロスと違い、これはこちらを見ている。
もしかしたらこちらを攻撃するつもりかも知れない、と不安に感じ、人々が蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。
「きゃあっ!?」
どっちに逃げていいか解らない人々は、我武者羅に走り出した為、お互いに押し合い、転ばせる。
その動きに反応したのか、芋虫は目を光らせ、背中のパラボラにエネルギーを貯める。
「くっ!」
スバルはとっさに上着の内ポケットから〈G─コマンダー〉を取り出し、コードを入力する。
「はぁっ!」
「えっ!?えぇ!?」
隣に居たスバルがGEOSを身につけたのを見て、蘭は驚きの声を上げる。
まだ一般にはGEOSの情報は出回っていないため、ISを身につけたように見えたのだろう。
「こっちを狙え!」
空を飛び、手に持ったライフルを敵の頭目掛けて放つ。
\ギッ!?キギッ!/
敵はスバルの攻撃に反応し、顔を上げる。
「そう!こっちだ!」
そのままライフルを撃ちながら、高く飛び注意を引こうとする。
\ギギ…ギッ!/
途中までスバルを目で追っていた敵が突如向きを変える。
スバルに対して背を向けるように素早く旋回する。
「なぜだ…?」
スバルは不可解な敵の行動を探るため、センサーを同じ方角に向ける。
直後に目的を知り、声を上げる。
「星夜!狙われてるぞ!」
──
『星夜!狙われてるぞ!』
アリーナの外に出て、セシリアさんの後を追おうと向きを変えた瞬間、スバルの声が聞こえた。
「えっ!?」
すぐに後ろを向くが、目の前に敵の放ったと思われるレーザーが迫っていた。
体をひねり、避けようとするが間に合わず、ブースターユニットに被弾する。
「うわあぁっ!」
「星夜!」
「星夜くん!」
直撃では無いが、右側に大きな穴が空いた。
俺はバランスを崩し、落下する。
「鈴!簪さん!先に行ってくれ!あいつを倒したらすぐに追う!」
『わかったわ!』
『無理しちゃダメだよ!』
俺を撃った敵は、こちらに狙いをつけている様で、2発3発 と撃たれる。
落下しつつも体勢を直し、近くにあったアリーナの入口に隠れる。
鈴と簪さんはすぐにセシリアさんの後を追う為、ここから離脱する。
『大丈夫か!?星夜!?』
「スバル、ありがとう。直撃を貰わずにすんだ。」
状況を確認するため、スバルと通信をつなぐ。
『今、敵は星夜が隠れた辺りを凝視している。お前が目標のようだ。何かしたのか…?』
「心当たりが多すぎるな。」
『相手の武装はパラボラアンテナ型のレーザー砲だけのようだな。』
「わかった。」
『こちらもできる限り援護する。早めに片付けるぞ。』
「了解。」
一度通信を切り、織斑先生につなぐ。
「ちっ、敷地内のはずなのに通じないのかよ。」
現状を報告しようとしたが、相変わらず強力なジャミングが行われているようだ。
「機体システムチェック…問題なし。ユニットチェック…右側が丸々やられてるか。」
ダメージの確認をする。
レーザーでブースターユニットを撃ち抜かれた位なので、電童には問題はない。
これじゃあいつを倒しても後は追えないか…。
「天野くん!大丈夫ですか!」
「あまのん!」
「えっ!?2人共何で!?」
機体のチェックをしていたら、布仏姉妹が来た。
「アリーナ内に怪我人等が居ないか確認をしていたら、大きな音が近くでしたので。」
「慌ててやって来たんだよ。」
「なるほど。」
2人の視線がブースターユニットに行く。
「まだ使うよね?あまのん?」
「え、あぁ、その予定。」
「なら、私達で直しますから外して下さい。」
「お願いします。」
ブースターユニットを切り離し、2人に預ける。
「じゃあ、その間に害虫駆除をしてきます。」
「はい、お願いしますね。」
「頑張ってね。あまのん。」
『星夜、そろそろ敵が動き出すぞ。』
「了解!」
入口から飛び出し、敵からのレーザーを避け、スバルと合流する。
「まだ周りに人が居るな。」
「あぁ、速やかに片付けよう。」
スバルと並び、敵を睨む。
今回はここまで、レースの描写って難しい…。
今回の敵はブロードンとパラボーンです。
ブロードンの見た目が何て言えば良いのかわかりづらい…。
ご意見、ご感想、お気軽にどうぞ。
──
千「ISの準備は?」
真「戦闘の影響でハッチが開かず、出せないと!」
千「何!?ちっ、外に何機か回さねばならんか…。」
真「現在、アリーナ外周の敵には電童が…2体?」
千「片方はGEOSか…手の空いている者はアリーナ外周の避難誘導を!」
真「は、はい!」
千「この距離ですら通信が出来ないとは…。」
真「他の設備も徐々に機能不全に陥ってます。」
次回!IS戦士電童
第58話《信頼》
千「とにかく、今できる事を!」
真「はい!」